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色づく街並み



「今日のお二人は私の弟と妹です。決して、私のお側を離れないでくださいね」



髪はクリス様に、瞳は私に合わせたのか。

そう思いながら差し出された手に手を重ねる。



「なんで当然の如く手を繋ぐの?」

「お兄様たちと初めての場所へ出向く時もこうですけれど……何か間違えておりますか?」

「君一体何歳なわけ」

「15ですが」



学院に通ってるんだから当然だと思うんだけど、何かおかしいだろうか。

レイを見れば、苦笑しながら「お嬢様の年齢になりますと手を繋ぐのは皆様卒業なさいますね」と言ってきた。


…お兄様たちに謀られた!?



「本日は嫌でも繋いでいていただきますが。正直、フィーネお嬢様を見失った場合、簡単に見つけられる自信が私にはありませんので」

「……ええ。人混みに流されたら終わりな気はしていてよ」

「それと、今日限りにはなりますが敬語を辞めさせていただきますね。殿下とお嬢様は出来るだけ庶民のような言葉遣いをお願いいたします」



お母様が聞いたら卒倒しそうだなぁ。

でも目立つし仕方がないよね、と「うん」と言って頷くと続いてクリス様が「わかった」と言った。



お父様に手を振って私たちは城下へと繰り出した。



手を引かれて歩く街並みはランタンでオレンジ色が灯り、人々が笑い合う。

屋台から香るいい匂いに前世を少しだけ思い出して心が弾む。



「フィー、余所見しない」

「だって、いろんなものがたくさんあるんだもの!」

「気持ちはわかるけど、本当子供みたい」

「私、クリスよりお姉ちゃんよ」

「じゃあ、それらしくしてよ」



呆れたように言うクリス様。

だけど、仕方がないじゃないの。



「だって…こうやって家から出るの、すごく久しぶりなのだもの」

「……ごめん、そうだったね。フィー」



多分、私関連の婚約打診きてからの報告とかも見てるんだろうなと思うけど、そんなに可哀想な顔されるほどのこともない。

忙しすぎてどうにもならなかったけど、まぁそこそこは身についたので。いや、「クリス様のお兄様たちのせいだったみたいですー」って言って詰った方が良かったのかな。でもなんか私が鈍いのも悪かったらしいし…。



「フィー、クリス。どうぞ」

「ありがと、兄ちゃん」



にっと笑って屋台の串を受け取ったクリス様は適応力が高い。私も受け取って「ありがとう!」と笑う。

フォークとナイフとお皿がないのにどうやって食べるのかしら、と少し考えてから「あ、これかぶりつくやつ」ということに気がついた。すっかり感覚がお嬢様である。平民として暮らしていける自信はもはやかけらもない。



「あつ…」

「舌、怪我してない?」

「大丈夫」



レイが心配そうに私を覗き込むと、屋台のおじさんが「兄ちゃん、妹が可愛いのはわかるけどちょいと過保護だぜ!」と笑っていた。

私もそう思うけど、レイにしてみれば主家のお嬢様だもんねぇ。



「美味しい!」

「タレが絶妙だな…」



その後も食べ歩きをしながら街歩きを楽しむ。ベルに髪を引っ張られて振り向くと、「それもちょっと、ちょうだい」と言ってくるので串を差し出した。キラキラとした顔をするのでついほんわかしてしまったけど、うちの子喋ってない!?



「妖精って、少しずつ成長してしゃべるようになったりならなかったりするらしいんだけど、ベルにとってはそれが今だったみたいだね」

「まぁ、いいんじゃねぇの?意思疎通はかれた方が楽だろ、人間も」



クリス様の頭上であくびをしながらそういう妖精は王子様に引っ付いている割に口が悪い。



「セシル」

「なんだ、クリス」

「ベルがどこかに行っちゃわないように見ててあげて」



クリス様の指の先をみれば、ベルは楽しそうにあちこちに行こうとしていた。



「……そうだな」

「フィーと一緒でおてんばなんだろうね」



おて……!?

私は立派な淑女ですけども!?

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