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妖精祭の儀式参加



ベルが嬉しそうに頭の周りを飛び回っているのを見つめながら儀式に使う神具を握りしめた。シャラシャラと音が鳴る錫杖はどこか心地よい響きに感じる。


一方、レティシア様は「フィンに可愛いドレスを着せるチャンスですのになんで儀式用ローブ固定ですの!?」と歯噛みしていたし、髪飾りを睨みながら「わたくしが選びたかったのに!!」と言っていた。王族席を恨みがましそうに見つめている。そんなレティシア様の髪飾りを選んだのは私です。


そしてにこにこと佇むクリス様は本当になぜ。可哀想。お兄ちゃんの前で女装して儀式参加とか可哀想。

陛下なんでそんな無慈悲な真似したの。そんなだからお父様に怒られるのです。

最近色々聞くようになったけれど、お母様曰く、陛下は仕事ができるクズらしい。だから王家からの色々突っぱねてるらしいんだけど、私の童女ルックではそっちしかまともな縁談ないらしい。むしろなんで?

とはいえ、「フィンがわがままを言ってくれるのなら縁談くらいいくらでもねじ込みますけれどねぇ」とのんびり言われたのはちょっと怖かった。


一夫多妻の国は絶対無理だろうし、私が「好みはお父様」発言しているせいで割と悩んでいるらしい。……だって、生まれた時からお父様という最高の殿方見てるから。あの、ごめんなさい。



「久しぶりですね、フィーネ様」

「ええ。クリスも元気そうでなによりですわ」



クリス様は儀式用の白いローブがとても似合っている。赤い瞳が神秘的に揺れて、ベルの姿を捉えると、軽く手招きをした彼の指に止まった。



「フィーネ様もベルも元気そうですね。安心いたしました。がんばりましょうね」



ベルがここまで懐くとはなぁ、とみていると美女スマイルのクリス様と目が合った。「はい」と同じように返すと、緑色の髪の少年のような妖精がクリス様の肩に止まる。



「あら、クリスティナではないの。あなたも儀式の参加者でしたのね」

「ええ。お父様がどうしてもと言うので」

「わたくしもですわ!せっかくフィンを飾り立てようと思っておりましたのに」



私いつかレティシア様のお宅にお人形として飾られてしまいそうな気がします。




神官に呼ばれて広場へ出ると、人が舞台下に溢れている。

今日ばかりは神殿を開放しているので平民も沢山いる。


中心にある宝玉に向かって、錫杖を持った三人で祈るように魔力を込める。

柔らかく、優しく。歌うように音が流れる。

呼ばれるような感覚で目を開くと、空をオーロラのような光が覆う。

錫杖が三つ、倒れたような音がした。


目の前にルミナス様より賜った杖が現れてそれを右手で握ると、次の瞬間、ルミナス様が現れてふわりと微笑んだ。もう片方の手を握った彼女は「わたくしの子よ。祭事の務め、大義です」と言う。その瞬間、手のひらに温かな感覚がする。


それが収まったと思えば、視界は元の神殿の広場に戻っていた。

落としたと思っていた錫杖は杖の代わりにたしかに握っている。変わったのは左手にある美しい石だ。



周囲を軽く見渡すと、レティシア様とクリス様も唖然とした表情を見せる。

それなのに、周囲はただ美しいオーロラのようなものに夢中だったということは妖精王様との逢瀬は私たちだけしか分からなかった現象なのかもしれない。


儀式の終わりが宣言されて神殿に引っ込むとレティシア様が上気したような顔で息を吐いた。



「わたくし、すごい方にお目見えしてしまったわ」

「レティシア様もですか?」

「あら、クリスティナもなの?」



どうやら、妖精王のお眼鏡にかなった人間がまた二人生まれたらしい。

困惑するような表情に、私もそうだったわ、と昔を思い返した。



「フィンのところにも美しい方がいらっしゃったわよね」

「はい。祭事の務め、大義でしたとお褒めいただきましたわ」



私たちは三人で夢でも見たような心地だったけれど、手に残った石や二人に与えられた魔導具は現実のものだった。



「僕も、これで並べる」



小さな声でクリス様が何か仰ったけれど、聞き返しても曖昧な笑みを向けられるだけだった。


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