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温室での逢瀬



なぜかクラウス殿下と温室に来ることになった麗かな午後。


午前は王妃様・お母様・ローズお姉様とお茶会だったよ!いつもより気合の入ったお菓子とお茶が出てきた。緊張で味覚えてないわ。

リズベットが震えていたので滞在日数三日間はちょっとかわいそうな気持ちします。光栄なことなんだけどね。

お姉様はここまでご一緒だったので、仲良く話していらっしゃるようでした。


「午後からは息子と話してきなさい」と言う王妃様の言葉に従って、私は殿下と温室に放り込まれたのである。



「これが噂の青薔薇か。株分けしてもらって城にも植えたことがあるらしいのだが、育たなかったと聞く。世話をしている人間が余程良いのだろうな」

「そう言って頂けますと、祖父が喜びます。祖母が愛した薔薇だ、と祖父自らが世話をしておりますので」



そう言って笑うと、クラウス殿下は驚いた顔をする。公爵の位に就いていた人が温室の世話をするだなんて思っていなかったんだと思う。そりゃそうですよ。私も思った。

愛するお婆様が愛した薔薇だからと毎日笑顔で通っている。なんか、温室の世話で空いた時間を領地の運営の手伝いに使ってるとこあるから……。



「それだけ愛情を込めて育てられているのだ。これほど美しいことにも納得がいくというものだ」



そう言ってくださるクラウス殿下は優しいと思う。なんかお爺様、ご友人には「重い」と言われたらしい。「貴様に言われたくはないわ!」と言い返したらしいけど。これ、類は……言わないでおこう。


それにしても、最近殿下とやたら関わることになっている気がする。わざわざアルお兄様が離されているところが怪訝なところである。

そうやって二人で温室を見て回っていると、誰かが制止するような声が聞こえる。大きな物音がして、クラウス殿下が私を後ろに隠すように前に出た。殿下、私よりも御身が大事ですー!!



「何事だ」



ピリピリとした雰囲気の中、いつもとは違う警戒心の篭った低い声でそう問うと、侵入者は「殿下に用はありませぬ」となりふり構わずこちらに近づいてくる。殿下は守らないと、と結界を張って相手を見る。

お爺様くらいの年齢の方だろうか。撫で付けられた白い髪、細身ながらも筋肉質な身体、鼻の辺りを横に真っすぐな傷がある。殿下がいなくて結界がなかったら怖すぎてピィピィ泣いてしまっただろう外見だ。



「クラウディア」



私を見て、そう呼んだそのお爺さんは懐かしそうに目を細めた。「お爺様!」と声を荒げる男がそこに入り込んできて、殿下と私を見て頭を下げた。



「王太子殿下、グレイヴ公爵令嬢。我が祖父が申し訳ございません!」

「アラン、ラドクリフ前侯爵がなぜここに居る」



そう、近衛の男を問い詰めようとする殿下の前にまた新たな人間が現れた。

マイ グランドファーザーである。



「殿下、フィーネ!ご無事ですか!?」

「お爺様!」



お爺様はラドクリフ前侯爵だという男を見て驚いたような顔をする。



「我が孫に何か用か、アレックス」

「孫……そうか。であれば、これはクラウディアの……儂の孫でもあるのだな。ああ、こんな奇跡があるのだな、クラウディア」



あっ、そういえばこの人がラドクリフ前侯爵だっていうならお母様のお父様か!えっ、この怖い人おじいちゃん!?

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