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久しぶりに領地に戻ることになりました



デビュタントも済んだので、領地に戻る事にした。した、というかそういう風になった。

アルお兄様は今年が最終学年なので、領地経営の勉強も佳境に入っているのである。私はそれについて行く事になったのだ。


それまでにいくつか夜会に出たけれど、何か結構な回数のヤバい人間避け結界発動数となって、何人かがしょっ引かれていた。こういうのって結構証拠が残ったりだとか、周りに企みを聞いていた人がいるものみたいで、しかも家からもトカゲの尻尾切りみたいにされるので恨みをガンガン買っている気がする。けれど、喧嘩を売ってきたのはそっちなので。


周囲の人を見ていると、自分がどう思われているかなんて、分かりたくなくても分かってしまう時がある。


要するに、グレイヴ公爵家の弱点は私だって思われている訳だ。

実際、私はお姉様・お兄様達より器量が良くない。お父様にもお母様にも付け入る隙がない。権謀謀略に長けた人間からすれば、私はその中で生まれたいいカモなんだと思う。

とはいえ、私も付け入られる様な何かをしたわけではないはずなのだけれど。



「おまえも領地へ戻るのは久方ぶりか」

「ええ。今年も温室の薔薇が美しく咲いていると聞いています。楽しみですわ」



本宅の温室には青い薔薇がある。それが、若き日のお爺様の瞳の様な美しく淡い青だったがために、グレイヴローズと言われていると聞く。

それをお婆様がこよなく愛しておられたので、年中見られる様に温室にて管理している。お爺様は愛妻家なのだ。



「今年は陛下達が訪問されるしな。いつも以上に美しいものが観れるだろう」



聞いてないんですけど!?

お父様達がいやに勧めるから社交落第点レッスンし直せの意味で領地へ行く事になったのだと思ってたー!



「フィンも大分社交に慣れてきている様だし、父上も問題ないと判断した。そのように不安な顔をしなくとも良い」



アルお兄様はそう言うけれど……あれ、ヒューお兄様も帰って来られるの?



「ヒューお兄様は帰って来られますの?」

「ヒュバードは……気にするな」



あ、お友達のところからまだ連絡が来ないのですね。お父様達はどこに行ったのか知っているような気がするのだけれど頑に教えて頂けない。ヒューお兄様、素行が悪い訳ではないから大丈夫だと思うのだけれど、一体何をやっていらっしゃるのか。


途中に立ち寄ったところで泊まりながら三日をかけて領地にある本宅までやってきた。

久しぶりに見たけれど、やっぱり大きなお屋敷だ。ローズお姉様とも来たかったけれど、ローズお姉様はお父様達といらっしゃるらしい。


中へと入ると、執事のジークフリートが「おかえりなさいませ、アルヴィン様、フィーネ様」と出迎えてくれた。ジークフリートはお爺様の住むお屋敷を任されている人で、もう一人のお爺ちゃんみたいな人だ。お母様の実家……ラドクリフ侯爵家の人達とはナディアと叔母様くらいにしか会わないからそのせいもあるのかも。この二人はお母様とめちゃくちゃ仲が悪いので吃驚する。でもナディアにあそこまで敵意を向けられる理由がわからない。



「よく来た。遠かったろう?」

「いえ、よく晴れてここまでの景色を楽しむ事ができました」

「街道の向日葵がとても綺麗でしたわ」



アルお兄様という最高の守護神がいてくれたおかげで楽しめたのもあるけれどね!安心感がすごいの……。でもいつまでも引っ付いていたらアルお兄様が結婚できないので妹も婚約者とか探すべきかもしれない。



「そうか!温室の薔薇も綺麗に咲いているぞ。今の庭はダリアが見頃だ。楽しむと良い」



ニコニコ笑顔のお爺様は今日も私に甘い。「菓子と茶も用意させよう」とか「新しいドレスや装飾品は入用か?」とか言っている。ありがたいけど、それって親にキレられる祖父母の甘やかしというやつでは?

今は亡きお婆様に似ているとかで本当に私に甘い祖父にアルお兄様が額を押さえた。



「お爺様、フィーネを物で釣ろうとするのは止めてください」

「しかしだな、リーディアナとクラウディアによく似ておってなぁ……」

「リーディアナはお婆様の名前でしたが、クラウディアというのはどなたでしょうか?」

「お婆様の異母妹の名前だよ」



なんでも、お婆様とは母君が違うらしいけれどすごくよく似ていて、仲が良かったらしい。そのクラウディアさんが嫁いだ家がラドクリフ侯爵家らしいので縁ってあるんだなって。貴族って高位になるほど意外にこういう繋がりがあるものだよね。



「それは甘やかす理由にはなりませんよ」



アルお兄様がそう言うと、お爺様は残念そうな顔をした。

でもお出迎え用のドレスあったかな。知らなかったから普段着しか入れてないかも。

それを伝えると、リズベットとドロシーが確認しに走った。



「お嬢様、ドレスは奥様がいくつか用意して入れて置いてくださった様なのですが……アクセサリーをそんなに持ってきていなかったようでして」

「申し訳ございません……」



結局、お爺様に買ってもらう事になりました。商人の人が家まで来て用意してくれるので、出向かずによくて楽ちんである。……つくづく、今更庶民としては暮らせないなって思う。


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