社交って慣れない
ダンスを終えて一息つくと、バベルが飲み物を用意してくれていた。それで喉を潤す。
……一応、勧めてくれる方もいたのだけれど、身内以外からは受け取らない様にキツく言いつけられているし、命を狙われている疑惑だってあるのだ。危険は回避するべきだろう。
会場を見渡せば、クロイツお義兄様と踊るローズお姉様や、ゼファード様と談笑するセーラの姿が目に入る。
何だか上手くいっている様でなによりなのだけれど、ホーンス様がストレスマックスな顔していらっしゃるのは……アルお兄様が私やローズお姉様が男性と話している時に複雑な表情をなさるのと同じ理由かもしれない。
一方で、数人とダンスをした後から気になっていたのだけれど、あの……聞こえる程度の嫌味の応酬すごい。すごいんだけれど、目の前の侯爵家とか伯爵家の殿方が「え?そんなこと言う必要ある?」みたいな顔してましたけどいいんでしょうか。
たぶん、これから時を経て私もああいう社交の仕方を覚えないといけないのだろう。
だって、あれ敵対する令嬢をボッチにするには結構効果的だもんね。やりたくないけどやらないといけない時ってあるもんね。
でも、「公爵家のお嬢様なのに……!」と青ざめた顔で震えていた人が、ご親族と思しきご令嬢を引っ張って行ってたの凄かった。
「フィン、とても可愛らしいわ!まるで天からの使いのようよ!!」
「ありがとうございます、レティシア様」
感極まったように抱きしめてくるレティお姉様を抱きしめ返す。相変わらず、私への評価が高い。何故だ。
「他のところにいても、悪口貶し合い蹴落とし合いですからね。あなたの側が落ち着くわ」
私も割と言っていない?言ってるよね?
心の中だけだっけ。
まぁ、貴族令嬢としてはそこそこの必要スキルではあるので本当はバンバン社交しなきゃなんだけれど。どうにも、お父様達が渋ってるんだよね。
私のお嫁入り先どうするつもりなんだ。たぶんこういうのってお父様が決めるんだよね?恋愛ができる人って私達の中じゃ少ないってよく聞くし、我が家だって政略結婚だもん。
「今は少しゴタついているようですが、今年中にはわたくし達も婚約が決まるかもしれませんわね」
「どうしてですの?」
「それはここでは言えませんが……。そういう事もあり得るという話ですわ」
複雑そうな顔をするレティお姉様。
もしかして、最近の魔物の活性化などが関わっているのかもしれない。
それに合わせて、何故かお父様を引き摺り落とそうという動きが見られるそうだ。
大変な時ってむしろお父様引き摺り落とさない方がいいと思うんだけれど。
「何事もなく、そうなれば良いのですけど」
そう言うと、レティお姉様は「そうね」といつものように微笑んだ。