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デビュタント



煌めくシャンデリア。

並べられた豪華な料理。

色とりどりのドレスを着た貴婦人。


昼と夜のパーティーではやっぱり全然趣が違うな。なんというか……女性陣の狩りをする様な目がより強さを増している。

私もああするべきなのかしら。前世では20代〜30代くらいで結婚する人が多かったからか、それも少し躊躇われる。気分的に。


雰囲気に圧倒されていると、隣のアルお兄様が気遣う様に私を見ていたので、大丈夫だという気持ちを込めて微笑んだ。


陛下主催の大きな催しということで、まずは陛下、それから王妃様、王太子クラウス殿下、リオン様の順での王家の成人済みの方々からのご挨拶を経て、楽団が音楽を奏で始める。


今年デビュタントの人間の中では一番身分が高いのが私なので、陛下達へのご挨拶はすぐに済んだ。


誘って欲しそうにアルお兄様に近づこうとする皆様は私が一緒にいるのでなんだか怖い目付きをしておられる。

……選ばれたいならそういう目やめた方がいいと思います。アルお兄様そういう方選ばない。



「フィーネ、いつも可愛らしい君が今宵は格別に美しく見える」

「ありがとうございます。殿下」



お兄様と一緒に臣下の礼をとる。学院とは違うので、アルお兄様も気軽に口を出したりはしない。

クラウス殿下も今日はいつもより煌びやかで美しさが際立っている。



「ファーストダンスのお相手を、お願いできますか?」



差し伸べられた手に、手を重ねるとなんだか少し恥ずかしい様な、気がする。その手が握られて会場の中心で向かい合う。


陛下の合図でダンスの曲が流れ始めた。

体格差があるはずなのに、いつもよりステップが軽く感じるのは、きっとクラウス殿下が非常に上手だからだろう。


それにしても、いつも練習はお兄様達かバベルだったし、サマーパーティーで踊ったのだって昔から知っているリオン様だった。だからかな、ちょっとドキドキする。



「殿下はダンスがお上手なのですね」

「そうだろうか?アル達の方が上手いんじゃないか?」

「いえ、アルお兄様はともかくヒューお兄様と練習した時は振り回されてしまって……ふふ、もう少し背丈が伸びれば良かったのですけど」

「はは、ヒュバードを揶揄うネタができたな」



体格差があると、加減がとても難しいらしい。現に、サマーパーティー前にヒューお兄様と練習をしたらしいミーシャさんは寮で「すごく上手くて、物語の騎士様みたいだった!」と言っていたらしいけど、私は宙に足が浮いちゃったりする。アルお兄様は逆に壊れ物を扱う様な繊細さでいつも眉間に皺を寄せていた。バベルもどちらかというと後者だ。

リオン様もそういえば上手だった気がする。



「君には……心に決めた人はいるのか?」



真っすぐに私を見るクラウス殿下に、これは誤魔化す方が後で後悔しそうだなと苦笑する。



「実際のところ、わたくしは未だ恋を知らないのです」

「それは……」

「理想が高いから、と良く言われるのですが……」



実際のところ、本当は父が母を想う様に私を愛してくれる人がいれば良いなーみたいな感じなのだけれど。



「だからでしょうか?恋、というものが少し怖くもあります」

「怖い……か」

「ええ、わたくしもヒューお兄様やお爺様と同じ血を引いていますから」

「それは怖いかもしれないな。だが、君に恋われたいと願う男もいるよ」



蕩ける様な笑顔で「ここにね」なんて言うものだから一瞬告白かと思ってしまった。ち、違うよね!?いや、そうかも!?


その後、音楽が止まったので礼をとって別れ、近くに来ていたユウの手を取った。頬がちょっと熱い。



「フィン?どうかした?」

「ユート様、なんでもありませんわ」



王太子殿下に好意を寄せられるとかないない!考えすぎよね!

私、性格が王子妃なんて向いてないってみんな言ってたしね……。


こう、腹の探り合いとかできそうにないし。

それに尽きるな?

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