ビーの駆除
ヒューお兄様が私の妖精石で結界を展開している間に、私とゼファード様が一帯を氷の膜で覆う。非常に寒いけれど、虫って寒さに弱いのだ。文句は言っていられないだろう。
目の前を見ると、蜂が餌が力尽きるのを待っているようにしか見えないため、なるべく作業に集中する。すごい怖い。なんでゲームのヒロイン戦えたの。
壁作りが終わったら今度は全員に祝福かけないといけませんので!手加減とかして死んじゃったら意味がないので、魔導具を手にしてベルと力を合わせて準備万端。
「見事だな」
「ありがとうございます」
実家でのスパルタ訓練の成果だね!
……止めたいと言うとお父様とお母様がめちゃくちゃ悲しそうな顔するから、やらざるを得なかったんですよね。部屋で嘆いていたときにアルお兄様が何か言いたげにこちらを見ていたのでおそらく何か知っているとは思うの。教えて、お願いだから。
「今より、ビーの駆除を行う!」
「「「はっ!」」」
殿下の指示で飛び出して行ったヒューお兄様とリカルド様とゼファード様。ヒューお兄様とリカルド様は見事な剣捌きで蜂を斬っていく。
……ヒューお兄様のルートってそういえば基本死なないけど、これヒューお兄様がやたらと強いからだったのね。
なお、アルお兄様のルートはエメルダ関連でヤバいのがあった気がする。あとアルお兄様自身も死ぬエンドがある。
ヒューお兄様がテクニック型だとしたらリカルド様はパワー型だ。一閃で数体を捌いている。
ゼファード様はすごく速い。パワー不足なところは魔法で補っているがその威力も先程、大きな魔法を使ったとは思えないものだ。
そして、その三人が撃ち漏らしたものを含めた魔物の幾らかを殿下は高い精度の魔法で燃やしていく。バベルも相当だと思っていたけれど、殿下はそれ以上かもしれない。
私も妖精石で援護をしているけれど、借り物の力なのでやっぱり本当にその能力を持った人には及ばない。
鬼の様に強い攻略対象パーティは、クイーンビーに向かう。強いからと言い聞かせてみても毒針を飛ばしている様子見ると変な悲鳴出るけど。
やめてほしい。殿下の死亡ルートの一つが魔物の毒での死だから。ヒロインはその後王妃に殺されます。ヒロインのナレ死が衝撃すぎてコントローラー落としたんだよね。
結界に力が入るってもんですよ。
「そんなに力を入れていると倒れるぞ?」
気遣って頂けるのは大変ありがたいのですが、殿下に何かあると私たち全滅するんですよね。王妃様、当初ほど過激さが無くなったけどそれでも殿下に何かあると何するか分からないので。正直、自分の子に何かあったらそれが普通だろうと思います。
ヒューお兄様がクイーンビーの羽を斬ってリカルド様が止めを刺した後、ゼファード様が氷の壁で向かってくるビーを防いでそれを殿下が焼き尽くして終わり……
だと、思った。
足元が崩れて、足が何かに引っ張られた。
顎が発達した大きな虫がブーツに食らいついていて、思いっきり地中に引きずり込まれる。
「フィーネ!」
ヒューお兄様の声が聞こえた。
手を強い力で掴まれるのを感じたけれど、魔物の力によって二人一緒に引き込まれてしまった。
空洞まで引き込まれる寸前、巨大な蟻の魔物が気が遠くなりそうなほどたくさんいた。
「フレイヤ、共に彼女を襲うものを焼き払わん!」
身体を引き寄せられ、力強い言葉と共に目の前に赤と金の光を纏った炎が舞った。