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実習の度にトラブルがある気がする


規定ルートの一つを回っていると、スライムが出てきた。実際見るとやっぱり可愛い。でも魔物である。


「倒すの……可哀想になりますね」

「そう言って毎年数名の女子学生が服を溶かされあられも無い姿にされ泣くのだ……」


クラウス殿下は複雑そうな顔でスライムを焼いた。

実際、さっき見かけた二年のお姉様は憎々しげにスライムを執拗に攻撃して、後ろにいた男子生徒が青い顔になっていた。……去年やられちゃったのね。


本日はみんな魔道士見習い風ローブか騎士見習い風服を着ているので余計にちょっと怖い感じになっている。

男性はほとんど青を基調とした騎士見習い服を着用していて、女性もほとんどは黒のローブに銀の刺繍が入ったものを着用している。私含めた数人の男女のみが白のローブに金色の刺繍が入ったものを着ているが、これは「非戦闘員」つまり光か闇の魔法使いの証です。闇の魔法使いは高位になればなるほど戦闘手段が出てくるけど、光の魔法使いは本気でそういうすぐに反撃できる手段がないので、光の魔法使いは絶対このローブを着用している。

他は個人の趣味で決めているみたい。リオン様のローブもなかなか清廉で良かったよ。

目の前にいるクラウス殿下は騎士見習い服を着ている。顔が良いとなんでも似合ってしまうなぁ。


私なんて鏡でどこをどう見ても童女でした。誰か助けて。背の高いイケメンの隣に立ちたくない。


「まぁ、このようなところだと散歩のようなものだな」

「殿下にとってはそうでしょうね」


そんなこと言いながらもクラウス殿下は、ゴブリンに追いかけまわされていた気弱な男の子を助けたりとかスライムに服を溶かされた今年の被害者のために救援信号を出したりとかしていた。さすが王子様である。


初級の森とはいえ、油断するとスライムに服を溶かされたりするので慎重に歩いていく。

急に森の雰囲気が変わったと思ったら蜂の魔物が出てきた。……これ、行けるダンジョンでも夏季休暇イベントで解放されるヒロイン家領ダンジョンで出るような魔物じゃなかったっけ。


「こんなところに毒性の魔物がいるのか……!?なぜ」

「クラウス殿下、ビーの特性って確か……」

「ああ。いるのなら、集団だ。マズいぞ、これは」


ああ、うん。これが虫系の魔物の嫌なとこで逆に言うとヒロインのなる早レベリングに最適だったところなんだけれど!

待って、こういうの襲われるのなんで私ぃ!?


周囲を見渡すとなんというかこう……スズメバチに囲まれた絶望感がある。なお、この魔物は人間も食べるタイプの肉食蜂です。


「救援信号出します!」

「頼む!」


量がエグいので緊急度高の赤い信号弾を打ち上げた。


「全力でやると森が燃えて魔物が外に出るし、かと言って喰われてやる謂れはない。どうするべきか」

「開けたところがあれば良いのですが……」


少なければ向こうを結界でガッチガチに覆ってこの中焼いてください、したんだけど。これそんなことしたら取り逃がしたやつに上から襲われてお終いですね。死ぬ……。

地図を確認した殿下が「この先に少し開けたところがある」と言うからそこまで走る事になりました。


そこまで走って行くと……尚且つ大きな蜂がそこにいた。


ダンジョンボスとかですか!?私死亡フラグですか!?


「クイーンビー……女王蜂のように見えるな」


それ、待って。ヒロインがそれこそイベントで遭遇する魔物じゃなかった?

えっ……待って。これで行くとその。


死亡フラグ、私にかかってきているとかありませんよね。


人間生きてたらそれなりの死亡フラグがあるかもだけれど、ヒロインのイベント肩代わりしているとかあんまり考えたことなかったよ。

私、一人だと引きこもって回復かけることしかできないんだけど。

一応、妖精石は……持ってる!


「女王蜂の周りには……ああ、やっぱりいるものだな。兵隊蜂、特に凶暴とされるビーだ」

「逃げ場、ありませんね」

「倒す他ないだろう」


やっぱり私もお父様やお母様みたいな攻撃にも使える魔法がよかった。こういう時に自分だけでは戦えないのだから。


でも、ここはやれることをやるしかない。

幸か不幸か私は一人ではなく、やたらと優秀な王子様とペアである。……待って、殿下戦わせるとか不敬じゃん。気付くの遅いわ私。

でででもやるっきゃないよね!そうよね!?


念のために自分も含めて、魔法を発動する。光の上位魔法祝福だ。


「炎よ」

「氷よ」


アルお兄様の妖精石を使って女王蜂の周りにいる蜂を狙って氷を放つ。結界の片手間になってしまうので女王蜂まで狙う余裕はないけれど、数の多い兵隊蜂ならなんとか数匹くらいは落とせるだろう。


「雷よ、魔物を打ち払え!」


聞き慣れた声と轟音と共に後ろの蜂が消えた。


「ヒューお兄様!」

「クラウス殿下、ご無事ですか?フィーネも」

「ああ。一年はどうした」

「教師に預けて置いてきました。ハルヴィンとゼファードがもうすぐこちらに来る予定です。教師は申し訳ないのですが、こちらに来れないかと。騎士団は足止めをくっているようです」

「ケビンは」

「避難誘導へ向かっています」

「ならうまくやるか」


魔法というよりは魔物を斬り倒してきたのか剣を抜いているヒューお兄様。……強いのね。

というかゲームでも思ってたけど騎士団どこで足止めをされてるの。襲われてるのこの国の王族なんだけど!?


「それにしても流石の腕だな。魔法騎士団あたりが欲しがるわけだ」

「卒業までに欲しいものが手に入らなかったら考えます」

「……おまえの叔父は同じことを言って逃げたのだったな」


レオ先生の親のことですね、分かります。叔父様は見事に叔母様の恋心を勝ち取って卒業したそうです。叔母様が騎士団とかはやめてほしいと言ったので入らなかったって聞いた。


すぐに駆けて来た二人を結界内に招いて、「纏めて殲滅する」と告げたクラウス殿下。


「ただでさえ蜂共がここに、これだけの数でいるのは異常だ。比較的弱いスライムや角兎、ゴブリン程度のダンジョンだからこそペアでの討伐実習が組まれていた場所だ。そこにこれだけの……強い方ではないとはいえ凶暴な毒性の魔物がいるというのは何かあると考えた方がいいだろう。特にクイーンビーはBランク相当の魔物だ。こんな場所にいる様な奴ではない」

「それで、策はあるのか。最低限クイーンビーは倒しておかないと増える一方だぞ」

「ゼファード、ここを氷で覆えるか?」

「グレイヴ嬢、祝福は使えるか」

「ええ、使えますわ。ゼファード様」

「祝福込みでしたら可能です」


その言葉に頷いたクラウス殿下。


「ここに来る途中、ビー達の数などはどうだった」

「どうやら、大半はここにいるようです。逃げたぶんは、レオナール教諭がなんとかするでしょう」

「それでは、この区域を氷で覆い、寒さで弱った魔物達を倒して行く。最悪でもクイーンは確実に仕留める」


そして、私は後衛を務める事になりました。うん、頑張る。

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