表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/203

合同実習



エメルダについていた付き人だった女の子は行儀見習いでついていた子爵家の令嬢だそうで、殴られたのを機に付き人を辞めたんだって。よかったね。


治療したお礼を言いに来てくれた時に退学するって言ってたけど、先日発表された成績を聞くと頭が良いようだったのでお父様に頼んで支援してもらった。「あの成績なら将来的に城で働けそうだし、一定の努力は求めるけれどそれでいいならば構わないよ」とのことです。グロース様と競うようにお勉強をしているので問題ないと思う。

え?成績悪かったら支援しなかったのかって?それは将来的にうちの役に立ってね、って感じで慈善事業ではないからね……。


そんな感じで男爵令息と子爵令嬢の仲をうっかり取り持ってしまったらしい私は、彼が貯めてた結構な額のお小遣いの範囲内で買えるそこそこのドレスを選ぶ手伝いもさせられた。あなた達想いを寄せ合うの早すぎない?


そんな感じに割と平和に日々は過ぎて、いつの間にか周りに人がいる環境になった。なんか、そうなってから別に時間が経っている訳じゃないのに、私の周りで婚約まで漕ぎ着ける人たちもちらほらいる。

ユウに「座敷童子……?」と言われた。和国、日本に近い文化っぽかったけど座敷童子……いるの……?


授業も大分進み、今日はなんと魔物を倒す実習である。学院に通い始めてから初めての夏季休暇で、アルお兄様やヒューお兄様がお父様にダンジョンへ連れて行かれたのは、こういうのの下地があったからかぁ……。

今日は初級の魔物しか出ないちょっと暗い森のダンジョンです。冒険者になったばかりの人とかが来るところだよ。薬草とかも採取できるから、たまに薬師見習いの人が凄い怖い目でぶつぶつ何かを言いながら薬草を取ってるって、ヒューお兄様が言ってた。


残念ながらこの一・二年合同演習。これはゲームのイベントである。該当学年の生徒とある程度の親密度が有ればスチル付きのイベントが始まり、親密度が低ければ「合同演習がありました」という一文で終わらされてしまう。その後、森でのレベリングができるようになる仕様だ。


なお、ゲームではその時の親密度でパートナーが決まるが、現実でそれやると王子様がいる以上女子がすごいこと(控えめな表現)になるので、普通に一年は二年とペアを組めるようにくじです。

しかも生徒じゃなくて先生が選ぶくじです。

レオ先生ほんっとに他人に興味がないのでこういうところはランダムだと信用されているのがこう、なんとも言い難いですね。


そして、私のパートナーはと言うと……。


「よろしくお願いいたします、クラウス殿下」


クラウス殿下である。まぁ、クラウス殿下とクリス殿下が組むことになるよりかは、心的ストレスがかなり楽なので、とてもありがたいと思います。


「ああ、よろしく頼む」


なんか、嬉しそう?なんでかしら、と首を傾げれば悲しいかな我が従姉妹のナディア・ラドクリフが「攻撃魔法も使えない子が殿下と組むだなんて、荷が重いのではなくて?」とクスクス笑っていた。


「あら、ナディア。わたくしの可愛い妹に……何か文句でもあって?」


絶対零度の微笑みを浮かべた女神がそこにいた。後ろにいるクリス様は顔が引きつっている。


「フィンには防御魔法があります。攻撃魔法が使えないからと一つの属性魔法を馬鹿にするのはおよしなさい」

「何を偉そうに」

「実際、わたくしはあなたより身分が上です。控えなさい、見苦しくってよ」


ローズお姉様って怒るのね。私が反撃してやろうと思ったけどもう片付いてしまった。


「ごめんなさいね。ナディアはわたくしが抑えていたつもりだったのだけれど……」

「あの人、何がしたいのです?」


クラウス殿下狙いかな。えーあれが王太子妃になるのはちょっとなぁ。狙ってるならそれでいいから、素行を良くしなさいな。


「ラドクリフ侯爵家はしつこく私の妃候補に娘を入れたがったからな。追い落とそうとしているのだろう」

「侯爵家の娘ですのに入っておりませんの?」

「少し国を越えたら、交流のある小さい国がいくつかあるだろう?ああいう女は他国に対してもあの様な行動を取りかねないからな。外交で油断をしても良いことなど一つもない。だから素行不良として外している」


猫くらい被ると思うけど、まぁ殿下の前でやっちゃうくらいだから態度に出るよね。どんまい。


「そういう訳で残っている中での有力候補が君とトーラス嬢だよ」

「わたくし……ですか?」


レティお姉様だけではないのですね!?



「なぜ驚く」


そもそも、そんなに交流がなかったし……。

王子様のお妃ってお腹が痛くなりそう、ストレスで。すでにクリス様のせいでそういう感じはあるけれど。

それらの言葉を飲み込んで、笑顔で曖昧に濁しておいた。保身です。


「まぁ……今まであまり、交流もさせてもらえなかったしな」


仕方ないと言い聞かせるように呟く殿下の目が怖いのですが、もしかして知らなかったの私だけとかそんなことないよね?

後ろを振り向くと、バベルが可哀想な子を見る目で首を左右に振った。

私だけかぁ……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ