表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/203

勘違いはどちら



中間考査が終わってのびのびとできる……と思ったら怒濤のサマーパーティーの資料作りである。

夏季休暇前にサマーパーティーとやらがある。いわゆる、親交パーティだ。

その費用の算出だとか、衣装を用意できない平民や下位貴族のための貸し衣装の準備だとか、出す食事の種類だとかを必死に会議に会議を重ねて決めていく。

……アルお兄様とクラウス殿下の目が日に日に死んでいく。輪をかけて忙しいもんね。


サマーパーティー、本来ならヒロインがその時一番好感度の高い攻略対象に、ドレスとアクセサリーを贈られてエスコートしてもらうんだよねぇ。いいなー、私もちょっぴり憧れちゃうなー。


……ローズお姉様はすでにクロイツお義兄様から、その瞳と同じ菫色のドレス一式を贈られていた。銀色で薔薇の刺繍が入っていたところを見て独占欲強いなと真顔になってしまったわ。

ミーシャさんはニコニコと「わー、お似合いですよ!」と言っていたけれど、自分の髪と同じ銀を使った薔薇と自分の瞳の色である菫色を使ってきたクロイツお義兄様を思い出しながら、お母様の血筋も独占欲強いのかしらと思ってコッソリお母様にお手紙を出してしまった。普通にクロイツお義兄様の性格だと思うって返ってきた。


帰りに、そろそろ私もドレス考えないとなーと思っていたところをリオン様に捕まりました。ニコニコしていた。


「サマーパーティーの衣装ですが、私が一式用意しますので」

「はい?」

「フィーネ、君は安心して当日まで過ごしてください」

「えっと?」

「それでは」

「えっ……待ってくださいまし!?どうしてそうなるのですか!?」


追いかけようとしたらヒューお兄様に捕まって「いいからいいから」と追い返されてしまった。何がいいんだ。


生徒会での作業が落ち着いた頃に、サロンでその話をローズお姉様・レティお姉様・ミーシャさん・セーラ、なぜかついてきたアナスタシア様に言うと、一瞬無言になってしまった。


「フィーネ、あなた何故そんなに鈍いのです」

「アナスタシア様、フィンはこういう子なのですわ……」


呆れた顔のアナスタシア様にローズお姉様は困ったような顔でそう言った。

なんかこの反応を見るに、リオン様が私のこと好きみたいじゃない。


「フィーネ様関連ではライバルも多いですしねぇ」

「全員が全員ヘタレなところがまた……」

「リオンハルト殿下は淡い黄色に金色の糸でリオンハルト殿下の紋章を刺繍したドレスを贈ってきそうですね」


しみじみ言うセーラに、レティお姉様は誰かをヘタレ扱いし、ミーシャさんは恐ろしいことを言い出した。婚約者でもないのにそこまでやらないでしょう!?


「話を鵜呑みにすると、わたくしモテるようですわね……?」


何もしてないけど。

後、ミーシャさんに関してはちょっとそれ他人事じゃないぞぅ?

……ヒューお兄様がうちの御用達のデザイナーに早くから水色のドレス頼んでたの知ってるからな。貸しドレスが始まる前にきっと届くと思うよ。独占欲ドレス。


「モテますわよ、あなた」


事もなげにレティお姉様が言い切った。


「王族特攻魅了スキルでも所持していますの?」


酷い言いがかりである。

というか、高位貴族は大体持っているはずだ。そういうのかからないためのアイテム。


「実はうちのお兄様も興味を持っているようで」

「国から出られるとわたくし達が会えないので困りますわね」


レティお姉様、なんでそんなに私の評価高いの?あと、アルス様はユウを揶揄っているだけでしょうに。

……あれ?もしかしてユウのファーストダンスのお誘いそういうあれ?


「フィンが国内にいるようでしたら、わたくしはアルヴィン様か空いた方の殿下に嫁げば良いのですけど国外は今からですとキツいかもしれませんわ」

「レティ、あなたは他所の公爵家の令嬢なのよ?うちの子についていく選択を何故しようとするの?」


お姉様はドン引きしていたが、レティお姉様は「フィンはわたくしの可愛い妹でしてよ!」とドヤ顔をしていた。

いや、妹、違う……。血は繋がっておりません。

そういう事情で狙われているアルお兄様可哀想……だけどエメルダより全然良いわ。


そんな話をしていると、ガシャンという音の後悲鳴が聞こえた。結界に何か当たったようだ。

振り向くと紅茶を被ったエメルダがいた。


「わたくしにこんな事をするだなんてどういうおつもり!?」

「いえ、わたくし嫌がらせが多いので、常に結界を張っているだけですわ。何もしなければそうはならないはずなのですが」


口惜しげに逃げていく彼女を使用人が追いかけて……殴られていた。嫌なやつだな〜。


「あんなのに仕えていたら貴族を嫌いにもなりますわね」


とりあえず、足を挫いたらしい彼女の怪我だけでも治してあげようかな。

そう思った私は、考えるのをやめて立ち上がった。

何もしないよりはマシでしょうし、せっかくの可愛らしい顔がキツく睨んでいるせいで台無しだもの。


この後、寮に帰った私は数冊の分厚い本を抱えて転んで、クリス様より「君って結構残念だよね」としみじみと言われてしまったので、やっぱりあれはみんなの勘違いね、と確信するのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ