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厄介な人が多い?



アルお兄様にヒューお兄様の件を話すと、「うちの人間の恋路に口を出すとろくな事にならん。放置しておけ」と言われた。目を逸らされた。どうにもならないってことでしょうか。


……相談されても実際何もできないのだ。だって、別に何かした訳でもないので。

正直、誘拐された時とか変態に襲われた後、「こんな事になるくらいならいっそ一生閉じ込めておいた方が安心だよね?」とガチトーンで言った兄なのでどうにもできない気がする。アルお兄様がドン引きしていた。私もしている。アレに本気で目をつけられたら実際、家族含め全部捨てて逃げるくらいの覚悟が必要だと思う。あとはもっと身分高い人を恋人にするかしかないけれど、本末転倒だ。お父様にも手紙を一応書いておいた。数日後に「言いたくないけど本気で手に入れるつもりなら振り切るのは至難の技」と返ってきた。

……本気でないのを祈るしか。


廊下で大きな足音が聞こえた。ミーシャさんは今日も元気にケビン様に追いかけられていた。

ミーシャさん、なんでそういう……執着心の塊系に好かれるの?





「そういえば、もうすぐ中間考査だが準備は整っているか?」


いつもの如く貸し切った図書室の個室に堂々と入り込んでいる皇太子様は、私のクッキーを勝手に食べながらそう尋ねた。せっかく作ったクッキーの半分はすでに彼の胃袋に収まっている。……甘党なんだね。


「ええ。準備は整っております」

「わたくしも、今回は一番を目指せましてよ、お兄様!」


胸を張るアナスタシア様。褒めて褒めて、と言わんばかりの様子に私もお兄様たちの前ではこうなのかなぁ、と思ったり。


そんなことを考えつつも、お勉強を続けていると、また私の安息の地のドアが開いた。ユウだった。


「おい、アルス。どういうつもりだ」

「どういうつもりとは?」

「アルス」


珍しく怒っているようだ。アナスタシア様もちょっと慌てている。


「心優しい公爵家の令嬢が避難場所としてここを提供してくれているだけだ。おまえが考えているようなことはない」

「おまえがそのつもりでも、周囲から見るとセレスティアがフィンを囲っていると思われる」

「ユートが女を愛称呼びするなんて珍しいな?」


クックッと笑うアルス様にユウの眉間に皺がいった。腹立つ笑い方するもんな、アルス様。


「ここに逃げ込んだのはわたくしの判断です。お兄様を責めるのはお止めになって」

「悪いが、初めはそうでも今入り浸っているのはコイツ自身の判断だ」

「落ち着いてくださいませ。別にここに来るのはお二人だけではありませんし……」

「フィン、君もよく考えるべきだ。君だって望まぬ婚姻を押し付けられたくはないだろう」


その危険が一番強い奴が寮にいます!


「俺はいいぞ。ちびは面白いし身分にも問題無い。すでに近しいところにリリアナも嫁いで来ている。そう悪い環境では無いと思うぞ」

「フィーネならばわたくしも上手くやっていけると思いますし、確かに……」

「ほら!コイツらは!こういう!!調子の良い奴らなんだ!!」


アルス様とアナスタシア様を指差してお怒りのユウに「確かに調子がいいな」と頷いてしまった。あとなんとなくヒューお兄様が脳裏に浮かんだんだけど誰か理由を教えて。


「では次からはクリスティナでも呼びます。女性が多ければ問題無いでしょう」

「あれは駄目だ」

「なんでですの!?」

「駄目なものは駄目だ。フィン、おまえもできれば普段から離れていろ」

「離れていろも何も……同室ですわ」


そう言うと、「は?」と地を這うような声がユウの喉から出た。


「あれは、おまえを見る目がおかしい」


なにそれ。

中身はただの苦労性の弟ですよ。


「クラウス殿下はリディア国王妃様の親類の女性だと言っておられましたが」

「……何にしても、フィンを見る目が他と違う」

「ユートが言うならば案外そっちの人間なのかもしれんな」


セレスティアに伝わる勘の良さなのですか!?

クリス様、男疑惑までは行ってないみたいですけど百合?疑惑が出てしまいました。ごめんね!


「ですが、なんと言いますか……なぜそんなことが分かりますの?」


不思議である。

クリス様に関しては「監視対象」という意味で特別な目を向けられているのだろうけど、ここまで敵視みたいなのされるもの?


「分かりませんの?」

「ふ……はは、ははは!!おまえ!!奥手が過ぎるな!?これなら俺が拐ってしまっても文句は言えまい!!」


指差して笑うアルス様と呆れた様子のアナスタシア様。ユウは頭を押さえていた。頭痛がするのかしら、と思ってきらきら〜と魔法をかけると、バベルが後ろで「お嬢様、違う。それ、違う」となぜか片言で呟いた。


「それよりも、ユート。おまえまさか俺に説教をするためにここに来たのか?」

「それはついでだ」

「あ、やっぱりそれも目的の一つでしたのね」


アナスタシア様がそう言うと、ユウは「当然だろう」と苦笑した。


「それでは、わたくしにご用事でしたか?」

「ああ」


ユウは頷くと、コホンと一つ咳をして本題を切り出した。


「まだ少し後の話になるが、この夏……夏季休暇初めの夜会がデビュタントとなるだろう?」

「はい。学院に通う者は大凡がそうなりますわ」

「それで、そのファーストダンスの相手が決まっていないようならぜひ、俺と踊って欲しい」


見知った相手だし申し出はすごくすごくありがたい。ユウは多分、身長差なんて物ともせずに見事にエスコートしてくれると思う。思うのだけれど。


「申し訳ございません。もうお父様伝に相手が決まっているのです」


曰く、王命だそうで。


「婚約者候補の一人として、王太子殿下と踊ることになっております」


殿下が私を選ぶはずないのに、困っちゃうよね!お兄様がお友達だからそう言ってきたのかもしれない。


「リオンハルト殿下も同じような表情で悔しがっておいででした」


しみじみとしたバベルの言葉に、「そうか」と疲れたようにユウは言った。


「二番目は俺に空けておいてくれるか?」

「わたくしで良いのですか?」

「おまえが良いんだよ」


そうですか。私も知ってる人がエスコートしてくれるのは安心できるので嬉しいです!


帰ってからこのことをクリス様に伝えると、思い切り舌打ちをした上で「これだから東の人間は」と忌々しそうに言った。

クリス様から聞くには、東の国の人間は勘が鋭くて相手をしたくないらしい。


「君もほんっと厄介な人間にばっかり好かれるよね」


言わないけど、多分身の周りで一番厄介なの、殿下とうちのヒューお兄様ですよ。

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