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ヒロインは目をつけられている



「どうせ恋愛するなら、うちに婿入りしてくれて大抵の魔物より強くて、金勘定がうまい人が良いのですが」


誰かいませんかね、と言うミーシャさんは少し離れたところでイチャイチャしている我が愛しの姉と未来の義兄を見ていた。


「その中で一番必要な条件はなんですか?」

「残念ながら、一人娘ですので婿入りはなるべく叶えたいところですし、魔物と戦えないと死にますから……お金は私がなんとかすれば良いのでものすごく欲しいですけど、どうしてもって感じではありませんね。ええ、そういうのが得意ならとてもとてもありがたいですけど」

「婿入りと腕っ節だけならば伯爵家ですしある程度探せそうですわね」

「うーん、婿入りがなかったら先輩にお兄様をオススメするんですけど」


一年の中に混ざるミーシャさんは、なぜかそんな相談をしていた。

ヒロイン……そんな環境なの……?ゲーム内では養子でもとったのかな。


「周囲がなぜか長男多いんですよね」

「うちのヒューお兄様は婚約者いませんよ」

「何の話だ?」


後ろからひょこっと現れたヒューお兄様。きょとんとした顔も可愛くて素敵だと思います。


「ミーシャさんの好みの男性の話……?ですわ」

「実際は彼女の領地に必要な方、みたいな感じになってしまっていましたが」


興味を持ったのか、条件を聞きたがったヒューお兄様に説明をすると、少し考えてからニコリと笑った。あ、なんかロックオンした目だ。これリリアナお姉様がジュードお義兄様見てた時の目つきだ。

なんかもうヒューお兄様ルートに行くしかない状況に追い込まれそうな美少女に心の中で合掌した。


……うちのお兄様、カッコいいから許して?


「じゃあ、俺なんてお買い得だと思うよ」

「いえいえいえ、あのそのえっと公爵家の方をうちみたいな貧乏伯爵家が婿にもらうなんてそんなことしたら闇討ちされます!」


腰が引けている。

逃げている。

……何かやったのかしら、とヒューお兄様を見るけれど、本人はニコニコと笑っていた。獲物を狙う目で。

いつの間にこんな事態になっていたのかしら。


「まず、俺は次男だから婿入りは可能だし、腕っ節もそれなりには強いよ。魔法もそこそこ使えるし。兄上のスペアとしての役回りもあったからそれなりの教育は受けていて、なんなら持参金持って婿入りもできると思うんだ。な、メリットの方が多いんじゃないか?」

「ひぃっ……」


完全にセーラの後ろに隠れた。悲鳴上げるほどの何をしたの、とヒューお兄様を見るけれど、困った顔をしていた。

セーラは見目麗しい憧れの青年と、可愛らしい優しい先輩を交互に見てから「アリでは?」みたいな顔で私に頷いて見せた。あれ、セーラも狙ってたんじゃないの?

後で聞いたら、「ミーシャ先輩ならいっかなって。ヒュバード様も伯爵位継げますし」と貴族令嬢らしい冷静な答えが返ってきた。そうだよね、ホーンス家は後継いるからセーラは嫁がなきゃだもんね。


「シュトレーゼ様、ヒュバード様が何かいたしましたか?」

「いえ、そそそういうわけではなく!なんか……獲物を見るような目をしていらっしゃる気がしたので」


バベルの問いに答えるミーシャさん。間違っていないのが辛いところです。妹、弁護できかねます。


「そんな目してる?」

「していますわ、お兄様」

「酷いな」

「具体的に言うと、嫁ぐ前のジュードお義兄様を見つめるリリアナお姉様のような目をしていらっしゃいますわ」

「……血は争えないよな」


目を逸らした。

なんか聞くところによると、うちの家系の人って一途なんだよね。ゲームのヒューお兄様といい、今のローズお姉様といい、後はリリィお姉様やお父様、お爺様もその感じがある。


「まぁ、うちのヒューお兄様は一途なだけですので、一生余所見さえしなければとても良いパートナーになりましてよ」

「いちず」

「ええ、一途なだけです」


小さな声で、「かんきん、しんじゅう……いちず。よそみげんきん……」と呟くミーシャさん。

あら?転生者?

私がいるんだし他にもいるよね。


「お友達からでもいいよ」


爽やか笑顔だけれど、多分これは「お友達からでもいいけど、周りの男は牽制させてもらうよ」だと思う。クリス様が笑顔で「なにこれ」みたいな顔をしていたので、首を左右に振った。

グレイヴ家の恋路に気軽に手を出すとろくな事になりません。


ミーシャさんの手を取って微笑むヒューお兄様がこちらに一瞬目線を送った。ハイハイ、撤収ですね分かりました。

クリス様とセーラに声をかけて離れた。


セーラは寮に帰るらしく、専属のメイドさんと歩いて行った。


「あれは、なんだったのですか?」

「あれは、獲物を見つけた捕食者と、哀れ目をつけられた美少女です」


クリス様から目を逸らした。


いつからそうだったのかは知らないけれど、監禁心中EDを知っているらしいミーシャさんがヒューお兄様をある程度避けてはいたはずなのでどこをどうしてルートに入ったのか、今日は頭を悩ませているかもしれない。

ゲームでヒューお兄様に目をつけられたきっかけって何だっけな。


アルお兄様に今日の件報告しとこ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 特に恨みもなく悪行もしてないヒロインに見えてる監禁フラグのお世話するって普通に酷いな? しかも自分は王族嫌がっておいて他人には相手の想定外に家格が上の男を推すってどうなんですかね。 何か、主…
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