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意外にバレない




「今日はご友人も一緒なのですね」

「えぇ……同室のクリスティナよ」

「ふふ、クリスティナ・ディアンと申します」


すっかり「ご友人」にさせられた私は色々と言いたいことを抑えて、バベルに彼……彼女を紹介した。今日も私より美女っぷりを発揮する殿下にどうしたらいいか分からない。

そしてこの状況について誰にも相談できないんだよね!


「どうしましたか、フィーネ様」

「なんでもありませんよ、クリス」


ボロが出ないように愛称呼びを強要されている。うっ……不敬……フケイ……。


なんか、私に関しての悪い噂は嘘だったと王宮には報告が入っているらしいけれど、貴族の令嬢を裁くときは必ずきちんとした証拠がなければならないとのことで、もう少し時間かかりそうなのだという。「陛下が母上を無実の罪で裁こうとした時の名残りだよ」とクリス様は鼻で笑っていた。リオン様といいクリス様といい陛下のせいで苦労し過ぎている……。


私よりも美しい女生徒になっているクリス様と一緒に過ごすことになったのだけれど、なんか周りの雰囲気が和らいだ気がする。うーん、あの二人がやらかしたからかな?懲罰室に放り込まれた二人は、一日経っても出てきていない。


それはともかくとして、今日から生徒会活動がはじまるのである!

お兄様たちに恥をかかせるわけにはいきませんので、身嗜みをきちんとですね……。髪纏めるくらいですけど。


「というか、バレませんの?」

「何のために母上に縁がある伯爵家の名前借りてると思ってるの」


いや、私は他人だし完全なる油断と思い込みで気がつかなかったけれど、今から向かう先にいるのはあなたの兄とお城で良く顔を合わせるような面子ですよ。


……なんて、思ったこともあった。


「はじめまして、クリスティナ・ディアンです」

「ああ、母上から聞いている。よろしく頼む、ディアン嬢」


殿下!その女、あなたの弟ですよっ!?


「アレン・グロースです。本日よりよろしくお願いいたします」

「フィーネ・グレイヴです。よろしくお願いいたします」


ヒューお兄様の「妹の他にも女生徒がいて助かった」という発言により、私の相談先は潰れました。私はともかくとしてあなた方顔見知りではありませんの!?しかも結構な頻度で顔を合わせていたのではなくて!?


ふとクリス様の顔を見ると扇で隠して口の端だけ上げて笑っていた。「ほら、バレなかっただろ?」みたいな顔だ。悪どい。でもどこからどう見ても美女なので突っ込みどころがない。まだ線が細いから許され……陛下も線が細い綺麗なタイプでしたね。


生徒会の仕事というのはほとんど雑務だ。特にこの時期は特に忙しくはないらしい。

ただ、夏季休暇後には、秋にある学院祭の準備だとかがいっぱいあるんだとか。

今日はとりあえず、全員の顔合わせとどんな風に過ごしているかの説明だった。

グロース様も今日は態度が軟化していたので気が楽だ。


……ところで生徒会役員用のサロンって必要?全部生徒会室で話せばよくない?


「仕事はそう多くはないとはいえ、生徒からの要望や先生の手伝いなどでそれなりに集まる機会があると思う。何か分からなくて、私が公務等でいない場合は三年か私以外の二年に聞くといい」


それにしても殿下、こんなにちゃんと説明とかしてくれる性格だったんだなぁ。

アルお兄様、昔めちゃくちゃ殿下に苦労してたイメージだけど、今はそうでもなさそう。顔が良い上に、ジェントルマンになったというのになんで婚約者いないんだろうね?

おすすめはレティお姉様ですよ!


書類を種類ごとにファイリングしていく。乙女ゲー特有のご都合主義というか、割と現代でもあるような文房具とかがあったりする。……中近世ヨーロッパってホッチキスとかあったのかしら?意外となんでもあるので、生活が楽なのは助かるところだ。


少しして、今日の活動が終わったので図書室へ向かおうとすると、グロース様に呼び止められた。


「なんですの、グロース様」


今度は何を言われるのかな、と警戒していると「すみませんでした!」と勢いよく頭を下げた。へ?何?


「最初に話した時から、あの態度はなかったと思います。それに、……噂みたいな酷い人じゃないってわかるまでにたくさん酷い態度を取りました」

「噂?不思議なのですが、わたくしの噂なんてどこで聞いたのですか?」

「幼馴染みからでした。昔から彼女の言うことは予知のように当たっていて、その彼女の言うことなら……とあなたのことを誤解していました」

「……幼馴染みというのはトラント嬢でしょうか?」


男爵家の御子息が侯爵令嬢とはあんまり連みませんよね、と思って尋ねると、彼は頷いた。

だってね、彼女あの騒ぎの時イベントがどうのって言ってたもんね。誰のイベントかは知らないけれど髪とか引っ張るのは今後一切やめてほしい。ハゲちゃう。


「以前ほど絡んで来なくなったので、何もないと思っていたのですが懲罰室に放り込まれたと聞いて、何か間違ったのではないかと」

「……失礼ですが、グロース様。状態異常防止のアイテムはお持ちでしょうか?」

「いえ、俺は家の後継ではないので」


これ、あの異様な粘着。魅了だ。おそらく魅了の効果でトラント嬢の言ったことを過度に受け取ってああなってたんだわ……。被害者でもあるのかー。簡単に恨ませてくれないのね。


「バベル。至急手配して」

「かしこまりました」


そんなことをしてもらうわけには、と真っ青な顔をする彼に溜息を吐いてこちらで調べたことを口にする。


「トラント嬢は魅了を得意とする闇の魔法使いだ、という情報が上がってきております。セレスティアの皇女殿下より、皇太子殿下へとそれを使用していたとの報せも受けております。……生徒会役員には現在殿下達もいますので、状態異常防止アイテムを持っていないあなたを、このまま参加させていては殿下達に危険が迫る可能性があります。至急手配しますので、受け取るまでは寮から出ないようにしてくださいませ」


先生にも伝えておかなきゃ!

もう、王族もお兄様達もいるんだからそれくらい先生も把握しといてよね!顧問は……レオお兄様だわ。あの人、他人に興味ないから……。


「お嬢様、一気に諦めた顔になりましたが」

「レオ先生は先生になっても変わらずアレだなと思っただけです」

「ああ……」


バベルは納得し……遠い目をしていた。


研究室でくしゃみの音が鳴り響いた。

人の少ない場所であるからか、よく響く。


「風邪ですか?」


うつさないでくださいねー、とどこか間延びした声で言う青年に灰色の髪を束ねた男は笑いながら応える。


「可愛い従姉妹が噂でもしてくれているのかな?」

「良い噂だと……良いですね」


赤毛の青年は、教師である男から目を逸らした。絶対そんな良い噂じゃないな、と思いながら。


「はは、想ってくれるのならどんなことだって構わないさ。ところで、ホーンス」


資料の中から細かく数字が書かれた3枚の紙を確認して、彼……レオナールは微笑んだ。


「これ、1枚目半ばから計算を間違えているからやり直してね」

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