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なぜ、は尽きない




何がどうなっているのかしら、と思いながらも魔物討伐の最前線に立った。

一年と三年。

その両方で自分ほどの光の魔法使いがいないと理解しているからだ。


それはそれとして、私だって言いたいことはある。


例えば。

なぜ今政治学の講義を聞いているはずの生徒がモンスターに立ち向かおうとしたのか、だとか。

なぜ逃げろと言われた女がここに残って邪魔しているのだとか。

なぜ授業前に元気に友人の兄と追いかけっこしていた姉の友人がボロボロで倒れているのか、だとか。


なぜ、おまえ達を守ってやっている私がおまえ達に後ろから邪魔されて罵られねばならないのか。


アルお兄様がいなければ魔物の餌にしても心が痛まなかったのにと内心で舌打ちをした。





以前は二年との合同授業だったように、今日は三年との合同授業だった。

アルス・セレスティア皇太子殿下とアナスタシア ・セレスティア皇女殿下、ユート・スメラギ王太子殿下と三名の他国の王族がいるためか、レオ先生以外にも何名か騎士のような人が来ていた。

自国の王子には普通に王族からの影が付いているのと、クラウス殿下にはリカルド様、リオン様にはヒューお兄様がついておられる。


「久しいな、フィン」

「ユート王太子殿下、お久しゅうございます」


手紙のやり取りはしていたけれど、会ったのはリリアナお姉様の結婚式以来だ。リリアナお姉様の旦那様は……セレスティア王国王兄の御子息なので。

セレスティア帝国では基本的に王の後継は指名制だ。魔法に命かけてるような国なので、魔力で全部決まる。

ユウはアルス殿下とは昔から関わりがあったらしく、仲が良い……って手紙に書いてあった。だからかは分からないけれどお姉様の結婚式に出席していた。あの時確かご挨拶行こうとしたらヒューお兄様に「狙ってると思われるから今はやめなさい」と言われてしまったのだった。


「元気そうでよかった。何か有れば力になろう。これからは生徒会で一緒になるしな」


かつての美少年は程よく筋肉のついたイケメンになっていた。見上げる首が痛い。爽やかな笑顔がそのままだったので、そこが変わってないのは素敵だ。

穏やかな笑みはお父様に通じるものがあるしね!!


少しお話をして別れた後、基礎実習とかいうので、魔導具……魔法を使う媒介になるものを使っての実習を行うことになる。

私とお兄様、ユウはその……最上級と言っても過言でないそれは隠して、それぞれ適当な杖を持っている。妖精王から賜ったものをそう簡単に出すようなことしたらね……。ルミナス様は自慢して欲しい感じだったけど。


「各自、ちゃんと持っているかな?持っているならよろしい。説明をしよう」


レオ先生が魔導具の説明を始める。


「そもそも魔導具というのは、妖精が人に与えたその力の一端であると言われている。魔導具作成の可能な妖精というのはもうほとんどが妖精の国へ引っ込んでしまっていて、新たな魔導具というのは珍しいんだ。この学院にある魔導具だってもう骨董品と言って差し支えない代物だよ。そういう事情もあって詳しいことは解明されていない」


木の杖を前世の有名な創作に出る魔法使いのように振って見せる。紫色の光が弾けた。


「同じ力を普通に使うよりはこういうものを通して魔法を使う方が効果は上がる。例えばここに……うちの生徒に頼んで作ってもらった呪詛の籠もった水晶があるだろう?」


どれだけ怨念籠もってるんだ。呪いのせいで真っ黒の水晶……普通は濃い紫くらいで止まるものだ。


「はは、婚約者の妹の悪口を聞いてしまったらしくてね!うっかりやり過ぎたらしいけれど……真っ黒!」


チラッとアルお兄様を見たら溜息を吐いていた。……クロイツお義兄様じゃありませんよね?


「これに、浄化の魔法をかけて……かけてるんだけどね。弾かれてるな?アイツどれだけ怨念込めたんだ?」


レオ先生の表情が変わる。面倒そうにした彼は、妖精と目配せして杖を手に取った。浄化を頑張るつもりはあるようだ。


「さっきは弾かれた魔法だけど、様々なファクターが揃えば、先ほど使った魔力程度でもそれなりの効果は出る」


兎さんがレオ先生の杖を持った手にどかっと座った。先程と同程度の魔力を練り上げたレオ先生は「浄化」という言葉と共に魔法を放つ。それは水晶を包み込み、少し薄まった紫程度まで戻した。


豆知識だけど、呪術を解く方法は二つ。一つは同じ闇の魔法使いの上位魔法……浄化。もう一つは光の魔法使いの魔力による中和だ。基本的には大勢の光の魔法使いを集めて中和を図ることが多い。上位魔法の使い手ってそこまで多くないからね。


「まぁ、こういうことができるから魔導具を乱暴に扱ったりしないように。今の二年生の何人かは杖折っちゃってさぁ……賠償問題になったんだよねぇ」


魔導具は……非常に高額だ。聞いた何人かは顔を真っ青にしていた。


「それじゃあ、やってみようか」


そう言って、一年と三年が二人一組で組んでの実習を始めようとしたとき……獣の唸るような音が聞こえた。

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