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原作は何処へ?



エメルダに勝利(?)して教室で学校の説明を聞いた後、私はヒューお兄様とローズお姉様とのお約束通りにサロンに来ていた。

バベルは明日から来る予定なので今日はいない。クラスは同じなのでよかったよかった。彼はすっかりイケメン執事になってしまって……他所のマダムに誘われたりしているらしい。うちの子に変なこと教えないでください!

ちなみに遅れている理由はお父様と一緒に領地の魔物退治に行ってたからです。


「フィン」

「あら?アルお兄様?」


呼ばれたのはヒューお兄様とローズお姉様だったはずなのに、と首を傾げるとアルお兄様は苦笑して「ヒュバードとロザリアは用事ができたそうだ」と言った。二人揃って?

えーお姉様に甘やかしてもらおうと思ってたのに。


「私では不満か?」

「そんなことはありませんわ。わたくし、アルお兄様のことも大好きですもの」


輝く金の髪に青い瞳を持つ我が兄は……物語の王子様のように美しくなっている。優秀かつこれだけ顔の整った男性を挙げるならお父様以外いらっしゃらないと思っていたけれど……年々うちのお兄様が美貌に磨きをかけていく……!

なぜ……なぜ……。私はどこをどう見ても小学生だというのに……!


「なぜそんな悔しげな顔をする……」

「わたくしの女としての沽券に関わりますので、見なかったことにしてくださいまし」


私もお母様みたいに美女になりたかった。残念ながら私はお父様の方のお婆さまの遺伝子が出てしまったらしい。お父様はお爺さま似だったらしくって、私が領地へ行く度にお爺さまがすごく喜んだ。小さくて可愛いものがお好きだとか。


「ところで、グリンディアがまたおまえを目の敵にしていたそうだが」

「お母様のレッスン通りに追い払いましてよ。……本当に再教育なさったのかしら?」

「グリンディア夫人はマナーに厳しいと聞く。一応は対応をしているはずだ」


お母様いわく、「公爵家の愛娘なのですから、家の名前を使えば大抵のことは解決するわ」である。

王族は無理だけど、今の王族に姫様いないから女の戦いは同格か格下に限られる。同格っていっても私のことを「わたくしの可愛い妖精さん、お姉様と呼んでもよろしくってよ」となぜか溺愛してくれているレティシア様と我が愛しのローズお姉様しか学院内にはいない。つまり無敵である。


「アル」


お茶を飲んでいると、お兄様が呼ばれて声のした方を見る。

金の髪がキラキラと輝いて、赤銅色の瞳が私を見ている。クラウス王太子殿下だ。


「殿下、なぜここまで?」

「冷たいな。私とて……君たちが必死に隠してきた姫君の入学を楽しみにしていたんだぞ?」

「見ましたね?それでは」

「待て。おまえはそろそろ不敬だぞ。妹がいるならばだいたいの者は私に紹介するぞ」

「不必要です」


断言した……!?いいの、お兄様……。


「アルお兄様……?」

「フィン、下がっていなさい。襲われるから」

「お兄様!?」

「同意もないのに何かするわけがなかろう!」


そんなに女好きなの?えっ……ゲームの裏側にはそういう事案が……?

同意があったら子孫残すのは王族の義務だから有りなの?後で誰かに聞こ。


「アルの言うことは行き過ぎたシスコンの発言だから聞かないでほしい。改めて、私はクラウス・リディア。生徒会長も務めている。何か困ったことがあれば相談してくれ」

「お心遣いありがとうございます。わたくしはグレイヴ公爵家が三女、フィーネと申します。よろしくお願いいたします、王太子殿下」


カーテシーをして微笑む。お母様から指導を受けたそれは見苦しくはないはずだ。

……なんか殿下が後退りしたけど。


「殿下……」


複雑そうな顔をした体格の良い方が額に手を当てて殿下の首根っこを捕まえていた。……殿下の対応雑すぎでは。

私が見ていたことに気がついた彼は困ったように微笑んだ。


「殿下が申し訳ない、フィーネ嬢。俺はハルヴィン伯爵家が次男リカルドだ」


リカルド・ハルヴィン。

騎士団長の次男である。自分も騎士の道をと志した爽やか真面目系ワンコ男子……だったと思う。5つほど年上の優秀な長男がなんでもできてしまい、長男も騎士をやっているというちょっと不憫なタイプでもある。その兄が第一王子リオンハルトを推しているので仲も良くないという重ね重ね可哀想な人だ。私たちの間でも噂になっている。


「殿下はそうは見えないかもしれんが、真面目で良いお方だぞ」

「……?はい」

「一度二人でお茶でも……」

「申し訳ございません。お父様に、異性からのお誘いはお断りするようにと言われておりますの。……お兄様かバベルが一緒にいてくださるなら別なのですが」


ヒロインはいいの?私は関係ないからいいんだけれど。魔王騒ぎがなくても、色々と波乱のある年にはなりそうだし、ヒロインとは出会っておいた方がいいと……あ、もしかしてここにいらっしゃらない方のルートを選ぼうとしているのかしら。


エメルダのよくわからない暴走といい、殿下たちの謎行動といい……何がどうなっているのかなぁ。


その頃、小心者のヒロインはうっかり妖精オタクの伯爵家長男と出会っていた。

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