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入学しました



あれから時は過ぎて、15歳になった。

今日は学院の入学式だ。

一足先に在校生は新学期を始めているそうだからもうゲームのストーリーは始まっている……はず。

このゲームのヒロイン結構ビジュアルが可愛かった……と思うので見るのがちょっと楽しみだ。


……ついでにやたらと厳しい淑女教育からの卒業ができたので非常に嬉しい。


なんだかわからないけど、あのパーティ以降やたらと厳しい淑女教育を受けることになった私は何度か理由を聞いてみたんだけど、最終的にお母様が号泣しながら「理由は言えないのだけれど、これはフィンちゃんのためなの……!お願い、頑張って……!」と言われてしまったので必死にやったよ。お母様を号泣させる何があったっていうの……。


あとは、お茶会に行く時は必ずアルお兄様かお姉様かクロお兄様が引っ付いているようになった。なんか王太子殿下から声をかけられた時アルお兄様がずっと返事を返していて、お礼くらいしかできなかったりもした。アルお兄様、一応殿下の先輩かつ友人ポジションなのにそういうのはいいの?


「フィーネ様!」

「セーラ様、ごきげんよう」


挨拶をしてセーラを見ると、後ろに何か見覚えのあるような……ないような……男性がいる。首を傾げると、セーラがその人の腕を引っ張って前に押しやる。


「フィーネ様とはお会いしたことがないかもしれませんけど……わたくしの兄のケビンです」

「セーラの兄のホーンス伯爵家嫡男、ケビンと申します。アルヴィン様にはお世話になっております」


あと、ヒューお兄様のクラスメイトらしい。

どこかで聞いた名前だと思ったら攻略対象ですね。


ケビン・ホーンス。

妖精庁の長官の息子だ。彼自身、妖精の研究には熱心で、妖精と話すヒロインに出会い、ヒロインとその妖精に興味を持って彼女に近づく。その研究を手伝っていたのが彼の担任でもある……レオお兄様である。彼ではなく、隣国セレスティア帝国の皇太子ルートで明かになるのだが、彼の研究も一部人工魔王作製に利用されていたそうだ。

……今のレオお兄様なら作ろうと思えばもう作ってる気がするけれど。

攻略対象で外交相の息子であるコンラート・ゼファードと喧嘩するシーンも多くて大人の腐ったお姉様に人気だった。


「アルヴィンお兄様のご友人でしたか。わたくしはグレイヴ公爵家が三女フィーネと申します」


クラスメイトのヒューお兄様ではなく、アルヴィンお兄様の名前を出したということは、最近出てきた「王位継承権は生まれた順にするべき」とか言ってリオン様を担ごうとしている人間の派閥ではなく、王太子殿下の派閥である、という意思表明なのかもしれない。

当事者のリオン様は王位を継ぐ気はないらしく、「クリストファーたちも大きくなったし、学院を卒業したら臣籍降下するよ」と言っているのだけど、ソフィア様の父君がまだ動いているらしい。

ヒューお兄様はリオン様の派閥というよりは本当にご友人という感じ。そう見られることに関しては「仕方がない」とは言ってらした。


「本当はもっと来たがってた人はいたんだけど、入学式の準備や生徒会としての活動で忙しくしていたから、妹がいる俺が見にきたんだよ」


そういえば、ケビンとセーラは仲のいい兄妹なのだという描写があった。ヒロインと一緒に妹への誕生日プレゼントを選びに行くイベントがあったはずだ。

そこで帰りに花の紋様の髪飾りをお礼と称してプレゼントしていた気がする。

……意外と覚えているものね。


受付まで連れて行ってもらって、入学式に出る。王太子殿下はなんか原作より上品になっている気が……もっとこう、俺様な印象だったんだけど。まぁ、あのパーティの時も紳士的だったし、ヤンチャな殿下も紳士的な殿下も殿下の一側面なのかもしれない。

挨拶の最後にこちらを向いて微笑んだ気がしたのだけど気のせいかな?うん!気のせい気のせい!


入学式を終えて教室へ向かおうとすれば、懐かしのエメルダがいた。侯爵家で再教育したって聞いてたんだけどなんで私の目の前に立ち塞がるの。解せぬ。


「あら、ここは15歳以上の者が学ぶ学舎でしてよ?あなたのような幼子が来る場所ではありませんわ。お帰りになったらいかがかしら?」


あ、相変わらずだな!?本当に再教育したの!?

あと確かに身長は伸び悩んで150cmにも満たないし胸はつるぺただけれど、人が気にしているところを突くものではないと思うんだ。

そして、エメルダが再教育で済んだのはお父様の慈悲だ。それを無駄にした人に何も言い返せないようでは我が公爵家の恥である。

持っていた扇を広げて、不快を表すように目を細める。


「あら、仮にも侯爵家の方ですのにわたくしの顔も覚えておりませんのね?わたくしが許可したのならともかくとして……格下の、あなた如きが、わたくしに話しかけるなど……我が家を侮っていらっしゃるのかしら?」


エメルダの取り巻きが青い顔になり、彼女は顔を真っ赤にしている。

いや、そんな顔するなら身分を考えて喧嘩売って欲しい。


「わたくしはグレイヴ公爵家の娘です。これはグリンディア侯爵家からの、明確な、我が家への悪意、……そうとってもよろしくて?」


後ずさる彼女たちを見て、扇をバシン、と音を立てて閉じた。


「であれば、その挑戦、我がグレイヴ公爵家として全力でお相手して差し上げてよ」


そう言って優雅に微笑んで見せる。こういう時の微笑みは武器なのだ、とお母様は仰った。私がやってどこまで効果があるかはわからないけれど。


「申し訳、ございません。フィーネ、様」


悔しげにそう言う彼女に「お退きになって?わたくし、ここを通りたいの」と言って端に退かせた。

小さく「覚えていなさい」とか聞こえたところをみると反省皆無じゃないですか……。もうこういうのやめてよー。

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