愛しい者を守る剣
金色の光はフィーネを包んで魔力を少しだけ回復させる。
そして、それは人の形を取る。その女性は金色の光をそのまま溶かしたような美しい髪に足首まであるヒマティオンを着用している。心配そうにフィーネを覗き込む女性と、やれやれとでも言うように後ろから二人を見下ろす青年。
光の妖精王ルミナスと闇の妖精王ノクスがそこにはいた。
「鏡を完成させてくれてありがとう。わたくしの子よ」
「火のがあれだけ削ったのだ。これで我らがヤツを消すことも可能になった」
そんなことを言う二人は微笑んでいて、その後ろで戦うクラウスの方で「我が子よ!その猛る胸の炎、見事である!!」と自らの愛し子の魔力にブーストをかけているペレストがいた。
一瞬、唖然としたクラウスであったがその力を受け取って好戦的に笑んだ。
剣を構え直す彼の足元には、その剣身に刻まれた魔法陣と同じものが広がった。そこから金と紫の光が周囲を渦巻く。
剣が纏う赤い炎。フィーネが果敢に立ち向かう彼の無事を願って祈りを捧げると、その祈りがクラウスを祝福するように赤い炎が金の光を纏う。
その剣は光を集め終えたのか、やがて収束する。闇の妖精王が来たことで強まった呪いに苦しむグノーシアの目に映ったのは圧倒的な力。全てを飲み込む光の奔流。
「これで……終わりだ!!」
剣を振り被ったクラウスは、その光の奔流をグノーシアに向けて放った。
悲鳴すら発する前にそれはグノーシアを呑み込み、やがて消えていく。
落ち着いた頃にはゆっくりと異空間が現実世界の光の妖精王の祠がある場所へと戻っていく。
完全に帰ってきたフィーネたちが見たのは、レイが片腕のないバベルを担いで移動するところであった。
フィーネが名を呼ぶと、ホッとしたようにバベルは笑った。そして、生きていることバベルを見てホッとしたフィーネは泣いた。
後ろからそれを見ていたクラウスはフッと笑うと後ろからクラウスの名前を呼びながら馬を駆る友人二人と兄の姿があった。
どこをどう見てもブチギレている。それはそうだ。彼は本来王に次いで真っ先に守られるべき存在である。その後ろにいるリオンハルトは説教を始めそうなアルヴィンの名を呼んでとりあえず下がらせると容赦なくクラウスに拳骨を落とした。
「今回は運が良かったのです。……私に二度も弟の死を見せないでください」
溜息と共にそう言ったリオンハルトに「すまない」と口に出すクラウス。そして、彼はフィーネを見て口元を緩めた。
「けれど、後悔はしていない」
真っ直ぐにフィーネを見る弟の姿を眩しそうに見つめたリオンハルトは治療のためにバベルの側へと向かった。
そして、クラウスはフィーネを送り届けた後、城に帰ると祖父とギルバート、それから母にこってり絞られた。
ついでに謹慎をくらったし、その期間中ずっと王太子としての心得を叩き直された。
後悔はしてないけど、怒られてシワシワのピ○チュウみたいになっているクラウス。