帰還 3
フィーネたちが王都に帰ってきた頃、クラウスの周囲には赤い羽を持つ妖精たちが助けを求めて集まっていた。
フレイヤを通して妖精王を、この土地を助けてくれと訴える彼らはとても必死でその訴えの中にはクラウスが見逃せない出来事も含まれていたため、彼はアルヴィンと共にその件について調べていた。
リオンハルトの方にも光の妖精がほぼ同じ内容の訴えに寄っていたが、彼はクラウスと相談の上、解決するための陰陽石を作る方向での協力の方が望ましいということになりそちらに専念をしている。
現在レオナールを欠き、アルバートが行方不明、フィーネが目的のために旅をしているために陰陽石の製造はリオンハルトとミーシャの二人に委ねられている。
ここでリオンハルトが抜けるのは望ましいことではない。
「アルバートも少し自由人が過ぎないか」
「だから父が公爵家を継ぐことになったのですよ」
アルヴィンがそう言うと、クラウスも頷いた。思えば、レオナールも大概であった。成果を残していたからこそ何も言われなかったが、レオナールはやれあの国の書物が欲しい、やれあの国の魔法は特殊らしいと飛び回っていた。フィーネはそんな従兄弟の話を聞くのが好きだったからかたまにこっそりと資金援助をしていたこともヒュバードがレオナールに対して厳しい態度を取っていた原因の一つである。
誘拐や他者からの危害を恐れて、ギルバードたちがいる場所にしか向かわなかったので箱入り娘として育ってきたフィーネではあったが、その本質はどこか彼らに似通っているのかもしれないとアルヴィンは思案する。
「それで、光の妖精王の祠は魔物の掃討と魔道具の設置が完了したのだったな」
「はい。火の妖精王の祠に関しましてはダンジョンの中にある都合で魔物がいくら消そうが湧いてくる状態です」
「では、私が向かおう」
そう言うクラウスに「王太子が向かおうとしないでください」とアルヴィンは額に手を当てる。
そんな彼に苦笑を見せて、クラウスは立ち止まった。
「そもそも、呼ばれているんだ」
「妖精王にか」
「あぁ」
妖精の愛で子。
妖精王から強い加護を得た人の子。
力を得ているからこそ何かあった場合に力になるべきは彼らである。
なんやかんやアルヴィンもマリンの周囲の魔物を蹴散らしていたし、魔導具はフィーネが領地に送っていたもので事足りた。従者には「公爵家の嫡男の仕事ではないですよ」と釘を刺されているが、マリンの周囲に魔道具を設置して彼女がキレない存在が彼だけだったのだから仕方がない。
そうして彼は秘密裏に例の穴からダンジョンに潜り込み、虫系の魔物を火力で一掃しながら進んだ先にフィーネたちと再会することになった。
その際に見たシャドウボクシングをしながら「くまー!!」と叫ぶ妖精に宇宙を背景にした猫ちゃんの顔をしたが、すぐに気を取り直して「久しいな」と告げる。
顔色の悪い思い人に少し胸を痛めたが、気持ちを押し殺して微笑みかけた。