帰還 2
先に進むと、なんか魔物がやたらと集まっている場所があった。あのあたり祠でしたよね、と少し焦っていると伯父様の妖精が突撃していった。何かあったら可哀想なのでフォローしようと思ったらバベルが後ろから思いっきり虫たちを焼いていた。
「いつもより火力が上っている…?」
不思議そうな顔をした彼だけれど、「火の妖精王様のお膝元ですもの」といえば納得したように頷いた。
そして、伯父様がテディを抱き寄せた瞬間、業火が虫モンスターを一掃した。バベルに魔法を行使した様子はなく、どうしたのかしらと思っていると高笑いが聞こえた。そのあと、煙でむせたようで咳をしている。
煙の向こうにいたのはレティシア・トーラス。
黄金色の縦巻きロールが見事な絶世の美女である。
…まだむせているけれど。
「ゲホッ、ゴホッ!!わ、わたくしにかかればこれくらいなんて事ありませんわ!!おーほっほっほっ!!」
懲りずに高笑いをしてさらにむせた。
「トーラス嬢は優秀なのにああいうところが残念ですよね」
エドが心底可哀想なものを見る目をしていたけれど、否定しづらかった。
そろっと近づいて、背中をさすっていると少しずつ落ち着いてきて、煙がなくなった頃にはけろりとした顔で「まぁ!わたくしに会いにきてくれたの?可愛いフィン。髪を切ったのね、可愛らしいわ」と相変わらずの全肯定お姉様っぷりを発揮してくれた。抱きしめないでください。胸で窒息します。
「トーラス公爵令嬢様、お嬢様が窒息しつつあります」
「あら、ごめんね。大丈夫かしら」
今度は私が背中をさすられる番になった。
ちょっと申し訳なさそうなレティシア様の顔にしょうがないなぁ、と苦笑する。
「ところで、レティお姉様はどうしてこちらに?」
そう尋ねると、何度か目を瞬かせたあと、ドヤッと胸を張った。
「ペレスト様を守るという大変名誉な役目を仰せつかりましたの!!」
なんか嫌な予感がするぞぅ…!!
そんなことを思っていたら、ビーの大群が押し寄せて来ていた。だから虫はやめてってばぁ!!
「フレイヤ!」
「任せて、クラウス!!」
その奥から、声がした。
まさかと思いながら炎の先を見れば、燃える火のような瞳が見えた。
「久しいな」
そう言って口角を上げたクラウス殿下は、「それで、その素手でクイーンビーの首を引きちぎっている凶暴生物は魔物か?」と聞いてきた。
「どこからどう見ても愛らしいくまちゃんなのに」
伯父様……。
それが魔物を引きちぎっているから怖いんですわよ。