和国での保護
和国に保護してもらいました。
和国はリディア王国の東にある海と山に挟まれた国です。この山の向こうを少し行ったところがリディア王国の辺境で、そこをもう少し西に行ったところが我が家の領土になります。森と湖が避暑にもってこいだったんだけど、誘拐されちゃったんだよね。悲しみ。
こっちについてからすぐにお手紙を出してもらった。ユウのお父様とお母様が優しかったので、衣食住の確保を約束してくれてよかった。
服も泥で汚れてたので、ユウのお母様が用意してくれた。なんかやたらと着せ替えさせられたけど、お母様もそういうタイプなので「女の子を持つ母親の楽しみ」なのかなと思っている。
食事は和食だったよ。作り方を聞いたら「貴族令嬢が料理?」と首を傾げられたので、「王立魔法学院に入学したら一食は自分で作らないといけないので、料理は貴族の嗜みなのです」と答えたら吃驚していた。
「どういう制度になってるの!?」
「どうって……寮に入って実家よりは多少自立した生活を送るだけのようですよ。料理は魔石使った魔力コントロールも重要な要素なので、魔力の大きさと同じくお嫁入りのときの注目ポイントになったりもします」
だから、貴族令嬢はだいたい少しくらいは何か作れる。お母様もお菓子作り得意。
「でも、稀に魔力のコントロール云々よりも壊滅的に料理ができない方がいらっしゃるので、そういう方は同じ歳の同じ性別の従者を引き取って入学させる場合もありますね」
お父様のことです。
「なるほど、それ故に我が国の貴族のリディア王国の学院への留学が少ないのかもしれんな。こちらではそういったことは使用人の仕事だからな」
文化の差ですね。
せっかくいるのだからと、和国の歴史や文化を教えてもらって過ごしていたところ、家族からの手紙が届いた。
なんでも、手紙が届いてから3日以内にはこちらに来れるそうだ。無事でよかった、早く会いたいと両親から連絡が来て嬉しかったのでユウに手紙を見せて「うちのお父様とお母様から届いたの!」と言ってしまった。微笑ましげに見られてしまった。なぜ。
「そういえば、フィンって両親のこと大好きだよな」
「お姉様とお兄様のことも好きですよ」
「……そっか。それはちょっと羨ましいな」
ユウも陛下夫妻と仲良しなのに?
そう思いながら首を傾げると、彼は苦笑した。
「父上…陛下には王妃である俺の母以外にも3人の側室がいる。弟が2人と妹が3人いるんだけど……今回の騒動もあったからわかるかもしれないけど、俺は兄弟たちとはそんなに仲が良くないんだよな。だから、フィンが羨ましいよ」
どこの国も王位継承権争いは怖い。
今回の事件も側室の人と王子様自体は関与していないとして罰とかも受けていないらしいし、ユウはこれからも身の回りに注意しなくちゃいけない。
「とりあえず、身を守らないといけない時はこれを使ってください……」
「宝石……?受け取れないよ、そんなもの。あの時だってほとんど俺が助けてもらったんだし」
「宝石じゃなくって、妖精石っていうんですよ」
自分の魔力を重ねて石として抽出するイメージで放出する。親指くらいの丸い石を作ってそれをユウに見せた。
「こうやって、私たちの力を石として出したものを妖精石というんですって。妖精と協力したら今渡した石くらいは濃い色のものを作れますよ」
「君が使っていた風の魔法はこういうことだったのか」
なるほどね、と彼は私のあげたそれを日に透かして見る。
使い方をレクチャーして、癒しと結界を作る感じを覚えてもらった。そのあと、使った分の魔力を足す。
「綺麗だ。ありがとう、大切にする」
「はい!」
ドヤ顔を決めた。
くすくすと笑ってユウはアークの名を呼んだ。ユウの手にアークは小さなその手を重ねる。その手から光が漏れる。
「結構、キツいんだな」
息を吐くユウの手にあるのは美しく輝くオレンジ色の石だった。ファイアオパールだっけ?あれに似てる。
「これを持っていけ。何かの助けにはなるだろ」
もらうだけはちょっとな、と私の頭をガシガシ撫で回してユウは笑った。
……美少年の笑顔、破壊力がすごい。