伯父様といっしょ 1
伯父様が同行したいと言い出したけれど絶対疲れるからやめて欲しかった。
いえ、本当に。
「ははは、旅なんてギルに爵位を押し付けた時以来だねぇ!!」
伯父様、死ぬほど目立つ。
その上、朗々と講義をしながら進むので周囲に人がいない事がなかった。イイ声ダナー。
「風の妖精王の祠は場所がわかっているのか?」
「はい。まぁ……」
その場所は本来は風光明媚な観光地として森林浴に最適と知られていた場所。
現在では災害のせいで湖が荒れ、木は薙ぎ倒され、祠は半壊していると聞いたけれど、多分今回の件が終わった後で多少直ると思う。
「ターナー侯爵領、風雲の森ですわ」
「えっ!?」
エドが驚いたように振り返る。
そして、真っ青になっていた。
「本当にあの場所へ行くおつもりですか!?」
「ええ」
「けど、あの場所はとても王族の方や公爵家のお嬢様をお迎えできる場所では……」
「なんかあんのか?」
ランスロットの問いに、一つ溜息を吐いて言いづらそうに表情を歪めた。
「風雲の森が災害で荒れていることはご存知でしょうか?」
そう言ったエドが話したのは、まぁだろうなという話。
荒れた土地に盗賊団が住み着いちゃったらしい。倒れた木材を勝手に使って家まで建て始めちゃったものだから始末に負えない。
国には上奏して騎士団を送って欲しいと言ったそうだが、陛下は無視。ある程度大きな武装組織を持てるのは隣国と隣接しているうちとか辺境伯領とかに限られるので手出しもできず、結果としてある程度警備に人を出して後は放置をするしかなかったらしい。
「まぁ、盗賊団とか自分で対処しろっていうのもあるんだろうけど、パーシヴァルは割と悪い奴と組んだりしていたみたいだから関係者だったかもしれないねぇ」
あの男の死後、ゴリゴリ悪事の証拠出てきて妃殿下がガチギレしていた。
「地獄の沙汰よりもより厳しい罰を受けるように神殿で祈った方がいいかしら」とか言いながら扇一本折ってた。それまでバレなかったあたりがあの男の無駄な運の強さとか優秀さなのだろう。
多分だけれど、そこに辿り着くまでにもっと酷い目に合わせていると思う。風の妖精王様が。
「けれど、その辺りは伯父様が一緒にいるのなら問題なくってよ」
「あ。数に入れてしまわれるのですね」
「あら。伯父様もしかして帰ってしまわれるの?」
「いいや。付いて行くけれど?」
バベルはそんな事を言うけれどそもそも、伯父様は私たちでは止められないし止まらないから、出来るだけ便利に使う他ないのだ。その倍くらい疲れるけれど、伯父様はお父様と同じくらいお強いので安心感は増す。とても疲れるけれど。
「ところで、そこにいる魔物の生態については覚えているかな。バベル」
嬉々としてすごく大きい鶏……ホケホッホーという魔物を指差して伯父様は笑った。
「お嬢様、アレの肉は絶品だと聞きます。今日のディナーにいたしましょう」
黒いオーラ纏ってない魔物って食べれる。なので貴重な食料である。
嬉々として剣を持つバベルの後ろでランスロットが弓を番えていた。
「焼くなよ!!」
彼の腕では損傷が激しくなりがちであるからか武器を持ち替えた彼は、もうすでに食べる気満々だった。エドは後ろで調味料の確認をしている。クリス様との従軍経験もあるからか、侯爵家出身の御令息なのにエドは割と旅に適応していた。あと中性的な見た目の割に食い意地が張っている。