手がかりは何処から 2
伯父様は「何もフィンのセクシーシーンとか見たいわけじゃないのに〜」とか言いながらランスロットに引きずられていった。おそらく本来なら不敬なんだろうけれど、ランスロット曰く「閣下のが怖ぇよ」とのことである。
伯父様自身は「えぇ〜、ギルってば結構可愛いよ〜」と言っているけれど、そんなことが言えるのはお母様か伯父様だけではないかしら。
「僕がここにきたのは、何を隠そう遺書を届けたかったからなのだよ」
「アルバート様は死ぬ予定があるのですか?」
「僕ではなく僕の愚かな息子のだよ。まぁ、そういうところが似てしまったのだから仕方がないね」
サラッとそう言って書状を取り出した伯父様。
おそらく私は血の気の失せた顔をしているだろう。
差し出されたそれに目を通すと、「なんてことやってるのレオお兄様!」と言いたい気持ちと、…少しだけ羨ましく思う気持ちが混在する。
方法はどうあれ、レオお兄様は結ばれないはずだった愛する方と結ばれたのだ。本人はもしかしたら満足しているのかもしれない。
それはともかくとして、もう会えない私たちは悲しく思うのだ。
どうして、と思うのだ。
「まぁ、恋に狂ってやらかさなかっただけマシかなって思うんだけれどガウェインがキレてキレて、葬儀が大変だったよ」
カラカラ笑う伯父様を見ながら、内心はわからないけどちょっとだけ「人の心ないのかな、この方」と思いました。
「それで、御子息の遺書に書かれていた薬草なのだがこちらでは珍しい薬草ではなかったか?」
ユウの言葉に伯父様は頷く。
え、そうなの?
バベルの顔を見ると、「そうですね」と言って説明を始めた。
「これは便宜上、魔力抑制薬と呼ばれています」
そう言って薬の事が書かれているあたりの文章を指で指し示して、「我が国では調合が困難な薬剤となっておりますが」と薬草の一覧を次に差し示した。
「ここから下の薬草は全て和国で取れるものになっております。鮮度や薬師の質の問題もあり、我が国では調達は難しいものですが」
「我が国は優れた薬師が多い。そもそも輸送での鮮度の低下の心配がこちらほど高くない」
「そういうわけで、こちらですごくお金のある人に嫁ぐか和国に嫁いでしまうのがお嬢様のためでは?とレオナール様は考えていたらしいですね」
そうなると、レオお兄様の想定では私また魔力マシマシになるってことになっちゃうんですけど。
「まぁ、そういう事で息子の遺書も役に立つものだろう?」
「伯父様、軽口はおよしになって」
「だけれど、現状お前は苦しんでいるんじゃないかい?」
例えばそうだとしても、身近な人の死の話を聞いた後にそれらを考えられるわけがなくって物憂げに息を吐いた。
苦しいのは、まぁ確かに少しは認めるけれど。
「もしや、貴殿には人の心を解する機能がないのか…?」
ユウの言葉に、「ユート殿下も息子と同じ事を仰る!!」と楽しそうに笑う伯父様を見て、心の中で割と久しぶりに「助けてお父様」って思いました。
ガウェインがたまにポロッと言う。ちなみにレオナールも同じことをガウェインに言われている。