再会は山の中 1
水の妖精王様は後にして、先に国境近辺の土の妖精王様に会いに行くことにした。遠いのでさっさと終わらせたいのもあるしこの近辺最近魔物が多いらしいのでちょっと見ときたいのもある。やばそうだったらお祖父様に報告して帰った方がいいですしね。
というわけで。
「山登り!です!!」
かつては誘拐のせいで旅行スタイルのドレスで移動する羽目になったけれど、今日は装備バッチリです。バベルとドロシーは何故か執事服とメイド服のままだけれど。
「これが一番慣れておりますので」
「私はこれで一番のパフォーマンスができるよう鍛錬しております」
逆にすごい気がする。いつもこの服で支えてくれているから、大体の事象を対応できるように鍛錬しているのだと思う。守られる側としては大変ありがたい話だ。
そうして山登りするときに担がれかけたが、そこはやめてもらった。
「本当に魔物が多いな」
ランスロットがボヤくと、バベルがダークボアと呼ばれるものすっごい大きな黒い猪を叩き斬っていた。剣に纏った炎が切断面を黒く焦がしている。
「バベルはやっぱり頼りになるわね」
小さい頃からそばにいてくれてるから知っているけどやっぱり強い。魔法剣をこれだけ使いこなせるのなんて同年代ではヒューお兄様とハルヴィン様くらいではないかしら!
そんなことを言っている間にも赤い刃が魔物を斬り伏せていく。その後ろでランスロットもまた魔物を斬り伏せている。その剣が切り裂いた傷跡は凍り、悲痛な声を上げる。
ドロシーは魔物がこっちに来ないように植物を操って巧みに誘導していた。基本的に二人がほとんど討伐してしまうのでこちらには来ないけれど、漏れた魔物は彼女が鎖鎌のようなもので仕留めていた。騎士服が似合いそうなのに剣ではないのは「この服では携帯に不便でございますので」という理由であって、彼女自身は割となんでも扱えるらしい。
エドは後ろから援護をするのが非常にうまかった。タイミングよく上から氷柱を落とすのとか神業である。
「何もしてないの私だけね」
「何もしないでください」
「戦闘後の治癒役だと思っててくれ」
バベルから体質関連のこと聞いたランスロットもなかなか遠慮なく休んでろって言う。とはいえ、別に死にたいわけじゃないので素直に従っておく。セシルは「お前の周囲過保護しか集まらねーのか!?」って言ってる。ベルは「そうなの!」と元気よく同意していた。なんで。
とりあえずは、と思ってなんとなく魔道具のあの杭みたいなやつ持ってきてるんだけど、ある程度減った後じゃないと意味ないしなぁと思っていると、前方で戦闘音がした。