闇の妖精王 1
シュトレーゼ領、思ったより魔物の被害が大きかったみたいだ。レオお兄様とかからの話がなければ片っ端から治療して回るところだけれど、魔力の発散くらいでしか役に立てない。
「魔力の発散程度の規模が違うから十分役に立ってますよ」
エドに言われて、「そうなの?」と聞くと二人共が頷いた。まぁ役に立ってるならいいや、と目的地であるとある湖の祠に向かった。
「こんなとこに何があるんだよ」
「見ての通りの祠」
愛で子ではないので私単体では出てこないだろうな、という自覚があるためルミナス様に頂いた杖を召喚する。魔法少女の気分である。
「あら、こんにちは。ここはノクスの棲家ね」
「いや待て、知らぬ者が珍しく参拝に来たかと思えば貴方の差金か」
黒髪金眼の美青年がルミナス様の姿を見た瞬間に現れた。どこからどう見てもお疲れのご様子。
「もう辞めてくれ……魔王がバカのせいで復活したせいで散々だ!!風のは怒り収まらぬとどうにかしろと突いてくるし、火のもレティとかいう少女が可哀想だから早くなんとかしろとうるさいし、水のはアルがどうのこうのと泣き喚くし俺は今追い込まれてるんだ問題を持ち込むな!」
「でもこの子、リーディアナとクラウディアの孫娘よ」
そう言うと、死にそうな顔をして俯いていたノクス様は顔をあげた。
「君が?」
「はい」
「今いくつ?」
「16ですわ」
そう言うと私に手を翳して「間に合うな」と言って祠に向かって放り投げた。えっ!?何。何なの!?
「おい!フィーナに何して…」
「水底の鏡を持ってきなさい。息はできるはずだよ。全く……あの子たちとはまた違った目の離せなさを持っている気がするね」
「でも放って置けないのね、可愛い子」
「いい加減に俺を幼児扱いするのは辞めてくれないか光の!!」
不思議と息ができる水中に混乱しながら、説明はしてくださいと心の中で叫ぶ。
水底の鏡ってそもそもどんなものだろう。というか私の年齢とか間に合うとかと何の関係があるんだろうか。
「おいこれちゃんとうちの姫さん戻ってくるんだろうな!?」
「困りますよ!!何かあったら!!この辺り灰塵に帰しますよ!!?」
ランスロットとエドが妖精王様たちに詰め寄ってるとは知る由もなく、私はとりあえず言われたことをやろうと水底に向かって腕を動かした。
ノクスはガッツリ振り回され系。
他の妖精王からの苦情は全てここに集まる。ルミナスは「ふふふ」で全部済ませるので。