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踏んだり蹴ったりです!




暑い。

ひたすらに暑い。

おまけに見知らぬ山の中。


フィーネ・グレイヴ、6歳。

誘拐されました。


家族で国の東の方にある領地へと避暑に訪れ、お母様と護衛と侍女数名でその領内にある湖に来ていた。リズベットと散策をしていたところ、急に現れた怖い顔したおじさんに腕を引っ張られて馬で連れ去られた。リズベットが悲鳴のような声で叫んでいたのを最後に意識が途切れて……山。何日か暗い場所で脅されたり薬で眠らされたりはしたけれど体感的には気づいたら、山。

護衛いたのになんで拐われたかな私!


いえ、今の状況を見るに逃げ出すこと自体は簡単だったのです。

深夜に隙を見てヒューお兄様からいただいた妖精石に魔力をかるーく通して縄をすぱーんと切り、小さい身体でこそこそと小屋を這い出たら……一緒に見知らぬ少年まで来たけれど。


「むむ…さすがに連絡手段がないのがつらいところ」

「魔法で手紙は送れないしな。闇の術者ならば転移とやらが使えると聞いたこともあるが、俺は土だしな」

「そんな呪術が……!詳しく聞きたいところですけど私も光ですね」

「風使ってたのにか!?」

「あれは種も仕掛けもある人頼りです」

「その種と仕掛けとやらも詳しく聞きたいが、今はなぁ……」


二人で途方にくれる。売られたりだとか、口に出すも悍しいことだとか、お家に何かされたりだとかの前に逃げ出せたのは良いことだけれど、見知らぬ山は困ります。


「えーっと、あなたはここがどこかご存知ですか?」

「うーん、たぶんうちの国とリディアの境辺りだとは思うよ。……ああ、俺はユウだ。君の名前は?」

「私はフィンです。6歳です」


指を両手を使って6本立てて見せると、「俺は8歳だから……俺の方がお兄さんだな!」とユウは笑った。

そこそこ良い服を着ているので貴族だろうとは思っているし、向こうもそう思ってくれているとは思う。気になることとしては、その服が和服っぽいというところだ。


……ゲームに和服出てきたっけ。

覚えてないなぁ。


「とりあえず、山を降りるしかないですよね?」

「いや、こういう時に下に降りるのはむしろ危険だと叔父上に聞いたことがある。上を目指すべきだろう」

「先人に従うべきですね」


本当は誰かプロがいればよかったんだけど、この状況はなぁ……。うう……お父様が恋しい。


「しかし、俺たちがこんな山の中のいることなどみんな知らないからな……ここまで来てもらえるかはわからない」

「頂上から見た景色に見知った場所があることを祈る他ないですね」


そう言って、いつもよりは多少シンプルだけれどよそ行きのドレスのお嬢様な私と、品の良い山登りし辛そうな袴を履いた和装のユウは頑張って山を登り始めた。

ルールは2つ。

1.無理をしない。

2.暗くなったら動かない。


近くにあった洞窟で身を寄せ合って少し眠って、明るくなるのを待ち、登山を始めた。

一生懸命登るけれど、正直私たちの様な良いとこの子がこの服で登山だなんてキツイと思うの。実際キツい。助けてお父様。


なんとなく脳内で「フィンはすぐお父様に甘える!」というお姉様の声がした。いわく、ファザコンを直さなければお嫁に行けないらしい。そ、そそ、そんなことないし!私お姉様たちほどじゃないけど可愛いし家柄も最高だからへーきだし!


「礼装は山登りには向いてねぇよ、誰だよ誘拐したやつ」

「仕方ありませんわ……来てしまったのですもの。どうしてもダメな時は魔法を使いますので言ってくださいまし」


励ます様にベルとユウの妖精さんが頑張れ頑張れとジェスチャーしてくれているけれど、まだ小さな貴族令嬢の体力のなさをなめないでほしい。


そういえば、ユウの妖精さんは人型だなと思ってジィッと見つめてしまった。照れた様にユウに隠れる姿は非常に可愛い。リカルド様……えっと確か攻略対象の騎士団長の息子の妖精さんも同じくオレンジの人型妖精だったはずなんだけれど、何人か候補がいるのかな?


「ん?アークが気になるの?」

「妖精さんのお名前ですか?」

「ああ。使役するものに名前をつけるなんて女々しい、なんて言われるが……好意を示してくれる存在の名を呼びたいと思うのはそうおかしなことではないだろう?」


そう微笑むユウ。ベルもその言葉で嬉しそうに彼の周囲を飛び回って……。


その瞬間、私たちは急に足元に開いた穴に落ちることになる。


「もういやーーーーー助けてお父様ーーーーー!!!!!」


帰りたい!

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