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旅立ち 3

ご乱心




「ああ、あの子の綺麗な髪がこんな……。殺してやる。娘を連れて行った人間、首を刎ねるだけではすまん」



フィーネが察した通り、ギルバードはちょっとどうかと思うほどブチギレていた。旅に邪魔だからと置いていった髪もそれを助長したし、「探さないで」と書かれた手紙も更に彼を煽った。



「ギル」



そんな夫に話しかけるディアナもまた非常に怒っていた。

夫と同じ色の髪はディアナのお気に入りだったし、手紙はディアナの教えた通りの見本のような美しい字だ。

彼らの愛娘は、幼い身体を別にすれば夫婦の特徴を継いだ愛らしい少女である。

しかもその容貌は双方の早世した母親にそっくりだった。



「バベルとドロシーを向かわせました。あの子達、犬みたいにフィーネを見つけるのが上手だもの」

「ディア、その犬はあの子を連れ去ったりはしないだろうね」

「大丈夫よ。フィーネが家を離れて生きられると思ってはいないでしょうし」



おっとりと微笑んでみせたディアナの手にある扇は罅が入っていた。

それを見ながら、アルヴィンはレイに「何故出ていったかわかるか?」と尋ねていた。



「魔王対策の何かを思いついたか、ご自分の寿命に関する何かを思いついたか、単純に重苦しい束縛から逃れたかったかのどれかではありませんか?」



フィーネは割と自然にあの重苦しい両親や姉兄たちのギッチギチの束縛を受け入れたが、嫌になってもおかしくはないと思う。

だが、それでも考えられるとすれば。



「嫌ならばもっと早くこういった事態になっているだろう。前者二択だろうな」



溜息を吐いて冷静にそう告げて、そっと部屋の扉を閉めた。

フィーネは可愛い妹であるが、アルヴィンはそれだけだとは思っていない。あの妹は確かに臆病だしすぐ泣くが、図太いことを知っている。つい甘やかして過保護にはなってしまうけれど。

特に一つ肝が据わった時など手に負えない。多少のサバイバルなら知らぬ間に教え込んでいた伯父の知恵でこなしてみせるし、実は危ない人間からの逃走用とか言って乗馬もそこそこの腕だ。今回判明した事情が無ければ意外と外でも生きていける。本人は貴族じゃなかったら死ぬかもとか思っているが、両親が思っているほどフィーネは繊細ではない。


おまけに、可憐な容姿の割にやる時は手加減が全くない。



「旦那様方をどうなさるつもりで?」

「手に負えん。放置して父上が進めていた計画を私が請け負うしかないか…」

「いいや、それは私がやる」



いつの間にか冷静になったのかギルバードが扉から出てきていた。



「フィンのことは心配だけれど、落とし前はつけさせる。必ず。だが、それはそれだ。早くあの連中を殲滅してあの子の治療法を探したい」



それが国の問題に関わっているからある程度自由にやっているが、これがほぼ全て娘のためなのでどんな顔をしていいかわからないとアルヴィンは思う。

そして、ブルーが持ってきた手紙に目を通してまた頭痛がするというように頭を押さえた。



「マリン様にはもう少し頑張ってもらってくれ」



アルヴィンに帰ってきてという泣き言の書いた手紙を送ってくる妖精王。アルヴィンは開き直ってこき使うことにした彼女に魔王一団に関しての情報を引き続きよろしく、と返す。



「暴走しなきゃいいですけど」

「あの妖精王は常に暴走してるだろう。ところで、あのアホの処刑は今日だったか?」



エーリヒから情報を絞り切ったレイはにっこりと微笑んで、「今頃、首がゴロン…と落ちているでしょうね」と告げた。

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