ガラスの靴はもういらない 4
お父様に言われて結界をつくる魔道具を設置しながらここに来た。そして、それに使用されているのは私の妖精石だ。
だからこそ発動すればなんとなくにはなるけれど、相手がどの程度の力を持って押し入ろうとしたかくらいは想像がつく。
「……相当な力を持つ方が押し入ろうとしているようですわ」
腹立ち紛れに結構大きな石を設置した筈だ。私の結界がリオン様には及ばないとはいえ、普通の光の魔法使いのものよりは出力が高い。
そうなると、自ずとそれだけの力を持つ存在というのは限られてくるものだ。
「結界はまだ破れていないのですね?」
「はい」
リオン様と目が合う。
優しく微笑んだリオン様は「ギルバード、お祖父様を連れて撤退の準備を」と告げた。
「私がそれまでは保たせます。幸いにも、彼女の妖精石が使われているのなら干渉はできますしね」
「殿下、どうするおつもりですか」
「ただの時間稼ぎです。直ぐに追いかけますよ。リカルド」
「はい。俺も残ります!」
ここで残っている方が邪魔になる事はわかった。であれば私のできることなんてそう多くはない。
祈りを込めて2人に祝福の魔法をかける。
「必ず、追いかけてきてくださいまし」
先王陛下の体力を考えると私はお父様たちと撤退準備をした方が良いと結論付けて、そう言う。
「ええ、必ず」
「絶対追いかけますよ」
そう言って二人は馬に飛び乗った。
私は先王陛下をちょいちょい回復させながら馬車に放り込み、ベルにこっそりと頼み事をする。
「フィン、経路の確認は良いかい?」
「問題ございませんわ。バベルも準備はよくって?」
「はい」
城内の避難もさせて、私たちは馬車で駆けていく。
少しだけ心配になって、外を向く。
「ベル、お願いね」
歴史を紐解いた答えは、検証が終わっていないから間違っているかもしれないけれど、それでも何もしないなんてできるはずがない。
ベルも心配だけれど、それでももう何もしないなんてできない。
クリス様が願ってくれた未来を脅威のないものにするために、私だってできる事があるはずだ。