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その茨が消えるまで 7



リオンハルトが出発したら、ギルバードが待ち構えていた。クラウスの差金だろうか、と彼から渡された資料の件が頭を過ぎる。



「お久しぶりです。グレイヴ公爵」

「ええ、お久しぶりですね。リオンハルト殿下。私もあなたの政務に同行しても?」

「構いませんよ。心強いことです」



何故か二人の後ろに猛吹雪が見えたリオンハルトについて行くことになったリカルドは腕を無意識に摩っていた。クラウスからの頼みではあったが受けたのは失敗だっただろうかと少しだけ思う。


リカルドが王都に滞在したままであれば、ハルヴィン家の不祥事で大変神経を擦り減らしただろうことは明らかなので、これはクラウスからの心遣いでもあった。命令の当初は。


彼の妹に至ってはハルヴィン伯爵の子供ではないことまで発覚してしまってリカルドが命令を受けた後、修羅場である。母親の実家にも返せないので伯爵家に軟禁された状態である。


「それではわたくしがお父様に似ているはずありませんわねぇ」とは、それを聞いたリカルドの妹、アリアドネの言葉である。

儚げな美少女から飛び出たざっくりとした大雑把な感想にハルヴィン伯爵は笑って「まぁ、娘だと思っていることに変わりはないしな!」と養子縁組をすることになるが別の話である。


とはいえ、リカルドに向けるギルバードの視線は厳し目である。

釘を刺すように「裏切るようならその場で殺すよ」と告げるギルバードに「わかっております」と頭を下げた彼だったが、「俺って何かやらかしたか?」と少し悩んだ。彼は母親と兄のあれこれをこの時はまだ知らなかった。



(アリエッタが恋しい)



昔は本が好きで、大人しく、穏やかな婚約者の気性をつまらないと思っていたが、年齢を重ねる毎に思う。優しく寄り添ってくれる彼女の存在がいかに自分を救ってくれるかを。というか、そういう性質だからこそゆっくりとではあるが思い合っていけたのだろうと考える。



(あー……平和になったら改めてプロポーズしよう)



指輪は何色が良いだろうか、自分の色を身につけさせるのって気恥ずかしいんだよなと現実逃避を少しだけする。

ギルバードが何かしら怒っていることだけがわかるので現実逃避をしないとやってられない。彼は見た目ほど大雑把かつ豪胆では無かったので。



「それで、殿下の力が及ばなかった時のことは考えておられますか?」

「ふふ、ゴリ押しするしかないでしょうね」



リオンハルトとギルバードの会話を見ながら溜息を吐くリカルドの少し後ろで、ライナルトに言われて来たレイは「人使いが荒いな」と思いながらも顔に出さずにいた。慣れている。


アルヴィンと同じく水の魔法使いである彼の元に、アルヴィンから妖精伝に「領地に飛ばされた。泉から出れるように交渉中だ」というメッセージが届いたので同行することになった。

人間は闇属性の大規模な転移魔法でないと転移できないが、水の妖精は側にある水を媒介に移動できるらしい。ただし綺麗な水に限る、転移できるのは妖精だけという注釈付だが。


ブルーは「アルってばぁ、死んじゃやだ〜アタシとずっとここに居て〜って精霊王様にギャン泣きされてるんだぁ」と疲れた顔で言っていた。

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