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その茨が消えるまで 4



コツコツと窓を控えめに叩く音が聞こえてリオンハルトは窓際に向かう。

王族であるのに不用意な、とヒュバードがいたら小言をもらってしまうだろうとリオンハルトは苦笑した。


幼馴染のうち、エーリヒは何度もハルヴィン伯爵とリオンハルトを裏切り、ヒュバードは恋に生きて王都を離れた。クロイツはロザリアと領地に戻っていることもあるが実はそんなに頻度は高くないが、こっそり王都に来ている時もある。手紙のやり取りだけは彼の物質転移魔法で頻繁にしている。


エーリヒは他でもないフィーネを酷く傷つける要因となった。

生かしてはおけないと思ったら彼女の父親の手のものが今捕らえているらしい。


エーリヒの母親はリカルドを産んだ少し後から舞台俳優に入れ込んで愛人関係を結んでいたり、ハルヴィン伯爵と一緒に出た夜会で得る情報の一部を実家伝に他国に売ろうとしていたことが告発されたのでおそらくはエーリヒに手を回す余裕はない。


思考が別の方向に行ったことを反省しながらリオンハルトは窓を見る。

薄く緑色に輝く羽根を見つけて眉を顰めた。



「気付くのが遅ぇ」



窓を開くと乱暴な言葉遣いでそう言う弟の妖精だったものにリオンの妖精であるカリオンが「追い出しますか?」と言って首を傾げた。



「緊急なんだよ、こっちは。フィーとベルがどうなってるか情報来てないのか?」

「心を壊して療養のために領地へ戻った、とは聞いていますが」



リオンハルトの返答に思いっきり舌打ちして、セシルは腕を組んだ。カリオンはにっこり笑ってはいるが非常に腹立たしそうにセシルを見つめる。

けれど、セシル伝にフィーネの状態を聞いてリオンハルトの瞳に少しの殺意が籠る。



「要するに、私たちの父親を血祭りにあげて彼女の心を取り戻そうということですか?」

「何だお前。顔の割に過激だな…。そうじゃねぇよ」

「そのうちに王位からは追い出しますが」

「話進めていいか?」



穏やかで優しい、理想の王子様という評判の男から出た不穏な言葉に少しだけ引いて、そう問うとリオンハルトが頷いたので続きを述べる。



「普通ならば、妖精が人を思ってかけた魔法を解くなんて難しい。それになんと言っても、あいつ自身の魔力で作られた妖精石が結界みたいに身体を覆っている状態なんて術者は手が出せないことがほとんどだ。けど、それがフィーとお前なら別だ」



フィーネとリオンハルトが別とはどういうことだろうか、と首を傾げるとセシルは一瞬だけ面倒そうな顔をした後、説明を始めた。



「魔力っていうのは人間の間で6種だと思われてるらしいが実際は8種ある。

通常の火・水・風・土・光・闇。そして、人間の持つ器具では検出できないらしいが、無色っつーのがある。それが昔のお前だ」



その言葉に、昔光の妖精王より言われた言葉を思い出す。「無色の魔力を染め上げたから光の属性となった」、彼女はそう言っていた。



「検出できないだけで、人である以上魔力はみんな持っている。無色の魔力を持つ人間っていうのは……魔力同士の相性もあるが、どの魔力にも染めることができる魔力ってやつだ」

「水に染料を入れればその色になる、というのと同じものと考えて構いませんか?」

「うん。多分そんなところ。だから、その方法で手に入れた魔力の匂い?波長?っていうのかな……それは元となったの人間と同じになるはずなんだ」



フィーネが治癒、リオンハルトが結界の魔法に強い適性を示したのは能力差や魔法の質が違うということではなく、性格が反映されてのことだとセシルは言う。


フィーネは良くも悪くも生まれ持っての家族や周囲に愛された公爵家の姫君だった。守られることは彼女にとってある種当然のようになっている。だからこそ直ぐに父親を頼り、周囲を頼る。そして、家族が傷つくと悲しいから治癒に強い適性を示した。


リオンハルトは逆に生まれた時から疎まれ、幼いときは幾度か生死を彷徨った。守られることは当然でなく、母と自分、そして好意を持つ存在を守りたいという願いが結界の適性を強くした。


同じ質の魔力を持っていても環境の差で適性は変わる。



「例えフィー自身が家族だけが自分に触れていいものと限定していても、同一の魔力同士が反発して弾かれることはないはずだ。リオンハルト、お前ならフィーに干渉できる可能性は高い」

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