願い星 燃えて、流れて、そして 6
魔物の大量の出現。
それはいきなりのことだった。
後退すれば村があり、戦う力のないその場所は蹂躙されて何も残らないだろう。
住民の避難も兼ねて戦力を割くしかなかった。
食い止めるためにとクリストファーと彼を守る兵士が残る。
この中で一番強い魔法使いは間違いなくクリストファーだった。上位魔法である雷が弱い魔物を倒すと同時に、強い魔物を傷つけ、そしてそれに向かって剣を取る護衛達。
しばらくすると強い魔物ほど、クリストファーに向かってきている事に気づく。
「どういうことだ……?」
バチバチと音を鳴らしながら魔物を消していく。ピアスに魔力を通すと結界ができる。人数を減らさざるを得なかった為に怪我人を治療しながら戦う。
魔物の多くが消えた頃、一行の目の前に美しい青年が現れた。
褐色の肌を持つ銀髪の男は心底楽しそうに彼らの目の前に立った。
「やはり妻の望みは聞いてみるものだ。このように強い者が隠れているなんて思いもしなかったよ」
ギラついた瞳の色は紫。楽しそうに口角を上げた彼がその目に映すのはクリストファーのみであった。
小さな声で「セシル」と己の妖精の名を呼んで、セシルが妖精王からの贈り物をクリストファーに渡した途端のことだった。
剣を振りかぶった男は結界をないもののように破壊してクリストファーとその周囲に攻撃を行う。それに突き刺すように雷を纏った一撃が男に向けられた。
「さすがは風の妖精王に愛された男ということか」
「エド、皆を連れて撤退せよ」
口笛を軽く吹いて愉快げに瞳を細める男に対してクリストファーの表情は険しい。
反論をしようとする従者をクリストファーは「分からないのか。足手纏いだ」と切り捨てた。
アミュレットに手を当てて回復の魔力をその身に使うと、背後から「クリストファーに対して」攻撃する者がいた。
それは器用にも、彼の服だけを裂いてアミュレットを落とさせた。
「貴様、何を…!?」
「いやはや、我らの王は第三王子殿下ではありませんゆえ…な!」
馬を一頭引き寄せて、その男は駆け出した。
追うにも、それを許してくれる敵ではない。
「あはは、光の魔法使いがあれだけの魔法を込めたものを盗むなんて我らでも考えない愚かさだよ。これだから人は面白い!」
そんな事を言いながら彼はクリストファーへの攻撃の手を緩めない。クリストファーは軽く舌打ちしてレイピアに風を纏わせて相手の剣の一点を狙って突きを行う。
身を捻って避けた男はエドワルド以外が逃げるのをつまらなさそうな顔で見つめた。
「逃げたとて後で追いかけて消すだけなのにな?」
「追いかけさせると思っているのかな」
キッと自らを睨むクリストファーに男は「良いだろう」と楽しそうに笑って見せた。
「私はグノーシア。万物を破壊する魔の王である」
グノーシアはそう言ってクリストファーに黒炎を向けた。