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願い星 燃えて、流れて、そして 2




クリストファーを擁した一団は北方、セレスティア帝国との国境を目指していた。

雪がちらつき始め、兄のアドバイスを聞いて荷を改めて考え直したのは正解だったかと溜息を吐いた。

吐いた息が白く、霧散する。



「俺が火の魔法使いであれば良かったのですが」

「それはそれで、他の者から批判をもらうことになりそうだよ。温室育ちの王子様ってね」

「殿下は好き好んでそういう環境にいたわけではありません。王都へ帰り次第潰しましょう」

「……いや、あくまで冗談だから」



さらっとそう言って笑ったエドワルドに本気を感じてクリストファーは引き攣ったような笑みを作る。

ただ、一部にそう言われるだろうということは確かだが。それならば自分の持つ風の魔法で同行者に温風を届けることもできただろう。その辺りは少し残念にも思う。


それでも同行者たちの多くは文句も言わず、任務を全うしようとするクリストファーに向ける目は変わってきていた。



「もうすぐ国境だ。気を引き締めていかないとね」



目線の先には荒れた大地。

魔物が踏み荒らしたその地には多くの被害が出ていた。セレスティア側にも同じことがいえる。

現在、セレスティア帝国では国境に多くの光の魔法使いが交代で絶えず結界を張っている。


リオンハルトが結界の強い力を持った妖精石を一際多く製作して、魔道具に変えて順次各地方へと送り出しているおかげでリディア王国への被害は少ない。

けれど、それはリオンハルトの手の者が行ける範囲内での話だ。


リオンハルトとその周囲が作ったその魔道具は、けれどもその全てが目的通りに行き届いているか、と言われるとそうではない。

欲深い人間はどこにでもいるものだ。いち早くそれを手に入れれば自分は助かるものと多くの金銭を内部のものに支払い、魔道具を掠め取った貴族もいる。


けれども、その結果手に入れた魔道具に意味などないとまだ誰も気が付いていない。


奪い取られた魔道具が行き渡らないことで僻地になる程に魔物の被害は確かに王国内でも増えてきていた。


それ故に、リオンハルトは今回の件で国境に向かうことになったクリストファーが出発する前に密かに接触していた。

王城には秘密の通路がいくつかある。そのうちの一つが離宮と後宮を繋いでいた。



「君の荷物に魔道具を隠し入れておいたから設置してきてもらえますか?」



異母兄は爽やかな笑みを浮かべながら既に入れているとクリストファーに言ってきた。

辺境は特に被害が大きくなりやすいため、と取り扱い説明書と共に委託された。


いつも穏やかな長兄が憎々しげに「愚か者が」と窃盗犯と依頼した貴族のことをそう呼ぶ小さな声はとてもフィーネには聴かせられないなとクリストファーは苦笑する。


その数日後に辿り着いた彼らは、クリストファーの指示の元でリオンハルトの妖精石が入った魔道具の杭を埋めていくことになる。

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