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願い星 燃えて、流れて、そして 1





旅立つ朝、クリストファーはフィーネに贈られたピアスを身に付けた。彼女の魔力を感じて愛おしげに琥珀を撫でる。



「気持ち悪いな」

「うるさい」



セシルに言われた言葉に反論すると、やれやれといった感じでセシルはクリストファーの頭上に留まった。


まだ婚約者ではないから、彼女が自分の見送りに来ることはないけれど。

そう思いながら胸の辺りに手をやるとより強い優しい魔力を感じる。



──君の心が僕にある限り、必ず生きて貴方を迎えにいく。



クリストファーはそう自分の心に誓う。

あの男の魔の手に落としてなるものか、そう決意を固めて部屋を出た。






病弱だった王子様が責任者、だなんてついていく者たちは簡単に認められるものではなかった。


これがクラウスであれば?

王太子という位につくとはいえ、クラウスは剣技が優れている上に魔法に於いてもトップクラスの実力を誇る。彼に敵う人間はそうはいない。


リオンハルトであれば?

彼はヒュバードやリカルドと張り合える実力を持っており、その真骨頂は結界での守護にある。


しかし、クリストファーはそういった実力を国に示す機会がまだなかったこともあり、認められてはいない。



(実際、僕は体格のこともあるから剣術では兄上たちに劣る。魔法はまぁ……それなりに得意ではあるけれど、実践経験がないのが痛いな)



どうしても彼らよりも遅く生まれたがための能力差、体格差は埋められない。

だからこそ、知識で穴を埋めるしかない。


しかし、それでも進まなければならない。


対外的な目的とそれによって国にもたらされる利益などを説明し、クリストファーは彼らと共に旅立った。





少しして、離れた場所。

グレイヴ邸では、フィーネが祈るように指を組んでクリストファーの出発したであろう場所に向かって瞳を閉じていた。


青い顔は心配からだろう。それを気遣うようにドロシーが肩に防寒具を掛ける。



「お身体が冷えてしまいますよ、お嬢様」

「大丈夫よ。……クリス様はもっと寒い場所に行ってしまわれるのだもの」



不安気に揺れる瞳。そこにベルが映り込んで、「シャキッとして」と厳しい顔をした。



「戦士を送り出したのなら、自分に相応しくなって帰って来いって大きく構えていればいいのよ!」



無茶なことを言う妖精だけれども少しだけフィーネの表情が綻ぶ。

ドアをノックされて、フィーネが返事をするとバベルが姿を表す。


部屋の空気の冷たさに一瞬、眉間に皺を寄せて指を一つ鳴らした。

暖炉に火がつき、部屋の空気が一気に暖かくなる。



「ありがとう、バベル」

「いいえ。お嬢様たちの安らぎこそが我らの使命なれば」



恭しく頭を下げて、彼は優しく微笑んだ。



(殿下には無事に帰ってきてもらわねば。明るく、楽しそうに笑うお嬢様こそ、俺を助けてくれたフィーネ様なんだ)


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