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第三王子クリストファーが深い茶色の髪に宝石のような碧眼を持つ恋人に託されたアミュレットには、膨大な量の魔力が注がれていた。

付いている石は琥珀に見えなくもないが、紛れもなく特上の妖精石。光の妖精が嬉しそうにソワソワとクリストファーに寄っていくような強い力がそこには込められていた。


願いが籠っているからこそ強い力を持つのだろうとセシルは宿主でもあるクリストファーに見解を述べる。



「逆に言うと、願いに反した事になると途端に言うこと聞かなくなるかもしれねーけど」

「そういうこともあるのか?」

「むしろ、そういう事もあるから強い能力者が搾取され過ぎずに済んでるんだよ。特に光の妖精石パクったりするやつは正真正銘の馬鹿だね」




光とは、照らすだけの存在ではない。

そう言う自分の妖精に彼が詳しく事情を聞こうとした時だった。

ドアを叩く音が聞こえて、「入って」と告げると血相を変えた侍従が飛び込んできた。



「エドワルド、どうした」

「どうしたもこうしたもない。貴方の行く場所はどう考えたって、成人前の王子に行かせる場所じゃない。やはり辞めるべきです!」

「辞められるわけがないだろう。陛下は…父は。僕がお邪魔なようだしね」



視察、と銘打ってはいるが、戦況の悪化などを鑑みれば戦争に行けと言われているようなものだ。

悔しげに俯く自らの侍従に、クリストファーは笑いかける。



「大丈夫だよ。約束したんだ、必ず迎えに行くと」

「……殿下が彼女を諦めると、そう口にすれば」

「それはできない」

「彼女だって理解してくれるはずです!」

「だろうね。泣いて縋ってきそうだったよ」



けれど、とクリストファーはフィーネに差し出されたアミュレットを握りしめる。



どうしても、欲しいのだ。



兄達との王位継承権関連での争いを避けるためにと病弱な王子をやらされていた。そんなクリストファーが大きな功績を立てることは難しかったし、下手をすれば尋常ではない時間がかかる。


その間、ずっと光の妖精に愛された思い人が独身のまま待っていてくれるだろうか?


おそらく、彼女は待っていたいと願ってくれるだろう。

けれど、彼女を取り巻く環境がそれを許すとは思えない。学院在学中はおそらく守られただろうけれど、卒業後そう遅くない時期には婚約と結婚が決まっていただろうことは想像に固くない。


特に、アルヴィンはフィーネを自領に留めて分家や親類から婿を取ろうとしていたところがある。



「僕が彼女を娶ろうと思うのならば、これが最初で最後のチャンスになるかもしれないんだ」

「それで命を落とすかもしれなくても、ですか」

「怖くないと言えば嘘になるよ。それでも兄上達にだってもう譲れないんだ」



ミイラ取りがミイラになった。

王妃などはそう思っているだろう。


エドワルドに向けて、有無を言わさぬように完璧に笑顔を作った。

彼は、一瞬詰まって、それから「俺も共をいたします」と彼に剣を捧げた。



「この命尽きても、きっと殿下を御守り致しましょう」



そう言った彼の剣の周りを、青い蝶とそれが纏う魔力がふわりと舞った。

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