表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/203

妖精の住まう森へ



双子の兄姉と王子様と執事と従兄弟。

五人揃うだけで厄介なことになるだなんて誰が思うのだろうか。

私は妖精の住まう森といわれる場所を歩きながら溜め息を吐いた。



事の始まりは今朝。ゆっくりとお兄様とお姉様と三人で朝食をいただいた後、最近はレオお兄様のおかげでわかるようになってきたお勉強の復習をしようと本を開いた。そうしたら、来客があったようで走るような足音がして、「バベル、何かしらね?」と聞くと同時に私の部屋のドアが開いた。



「フィーネ!遠足に行こうか!?」

「バベル、私にはちょっと状況がわからないのだけど貴方はわかる?」

「レオナール様が非常識なことしかわかりかねます。」

「そうよねぇ。」



その非常識に慣れつつもある。最近では文献を頼りに自分の中の魔力を石として外に出す実験をした。

私のものは小石くらいの琥珀色の石で、レオお兄様のものは紫色の石だった。

その後、意識がぷつっと消えて気がつくとアルお兄様にめちゃくちゃ怒られた。ちょっと理不尽じゃない?


「学院の近くに妖精の住まう森っていわれているところがあるんだ。」

「勝手に説明を始めないでいただきたい……。」


バベルがここ最近で一番のうんざりしたような声を出した。護衛兼執事としては面倒ごとの臭いは避けたくて当然だと思う。


いわく、古い文献に妖精王の記述があったので足を運びたいとのことで。



「レオナール様、当家ではなくご実家の者を護衛につけた上でご自身と信頼できるご学友で探索してくださいませ。お嬢様を巻き込まないでいただきたく思います。」

「なぜだい?フィンは当代一の光魔導師となるだろうと言われる逸材だよ?今のうちに色んなところに足を運ぶのはそう悪くない話だと思うけれどね。」



頭が痛い。

確かに魔法の実践に関していえば家庭教師からもレオお兄様からも高評価をいただいてはいるのだ。ただ、癒し特化なのだけれど。結界も多少できるけれど癒しほど得意ではない。将来は癒し手にでも志願しようかしら。

……公爵令嬢が志願してはみんな頭を痛めるわね。



「レオお兄様。先日の件でアルお兄様から“レオナールからの誘いは断るように”と言われておりますの。」

「アルも誘えば問題ないだろう。」

「アルお兄様はクラウス殿下のところですわ。」



遊び相手兼将来の側近候補として度々第二王子のところへ向かわされている。帰ってきた時に疲れた顔をしているので、ちょっと可哀想な気もする。

曰く、「ヒュバードと同じ齢のはずなのになぜあんなにも違うのか。」だそうです。アルお兄様、私たちはたぶん大人しい方なのですよ。



「レオナール、フィンを巻き込むなと何度言わせれば気が済む!」

「ヒュー、早かったな。」

「レオナールお兄様が来たら連絡をするようにと皆に通達してあるだけですわ。仕方のない人ですね。」



ヒューお兄様とローズお姉様が現れると、ヒューお兄様は真面目なのでお説教を始めようとした……のだが、「ヒュバード、ローズ。フィーネはいますか?」という聞き覚えのある声に振り向いた。



「リオンハルト殿下、なぜこちらへ?」

「君とフィーネに会いに来たんですよ。君たちと一緒にいると面白いことがあると聞きましたし。」

「私たちと、というよりは“レオナールお兄様と”、が正解だと思いますよ。リオン様。」



リオン様にトラブルメーカー扱いされるのは遺憾である。全ては貴方を癒したところから始まってる気がするのに。


まぁ、私は主要人物の関係者ではあるけれどあくまでモブなのでしわ寄せはヒロインにいくだけなのです。ごめんね、ヒロインちゃん。


そもそもゲームの知識ももうあんまり覚えていない。一応覚えていることをノートに記してはあるけれど、ゲームは各ルート一周ずつしかやってないので結局イベントなどの細かい情報はまるでない。

そういうのは生前流行ってたヒロイン転生とか悪役令嬢転生とかチート転生する人がしっかり覚えていればいい話である。

なんかモブ転生だけど攻略対象と恋愛する読み物もあった気はするけれど攻略対象の10分の2が兄だし、従兄弟は黒幕だし、比較的仲が良い第一王子様は中ボスなのでなんかそういうことにはなりにくい気がしている。


そういえば、ゲームではライバル令嬢がいる攻略対象は5人で、そのうちちゃんと婚約しているのが3人だったっけ。うちのアルお兄様、ローズお姉様の婚約者となる確か侯爵家の銀髪メガネ、あとは私と同い年になるはずの伯爵家の騎士団団長の次男だ。あとの2人は婚約者候補だった。


上位貴族の息子たちがなぜあまり婚約者を決めていないか、みたいな文面見た覚えがあるけれど、私は「王太子(第二王子)が婚約者を決めていないから」だと見ている。


……基本的に王妃様関連以外では平和な国だし、王に子どもができないとかいう理由以外では一夫一妻制なので、できれば娘を王太子妃にしたいと考える貴族は多い。

特に第二王子・第三王子と釣り合う年齢の子女を持つ親はそうだ。そして、その関係上よほどの理由がない限りは釣り合う令嬢の立場がはっきりするまで令息たちもまた気軽に婚約者を決められない状態にあるんじゃないかな。


そんなことを考えながらボーっとしていたら、どこかに行く・行かないの問答をヒューお兄様とレオお兄様がしていた。どこかにって森か。



「レオお兄様はなぜその森に行きたいのですか?」

「妖精王がいるからさ!」



疑問を口に出すとレオお兄様は嬉々として語り出した。

聖書と古文献の記述を元に色々と調べた結果らしい。……王宮図書館の禁書棚に潜り込んだとか私は聞いていません。聞いてないったら聞いてません。



「直接会えたなら僕の研究が進むし、邪魔があったら例の研究に戻せばいいし」

「行きましょう。バベル、準備を。」

「フィンならそう言ってくれると思ったよ。」



みんなびっくりしているけれど、この男が将来人造魔王を創り出すことを知っているのはここにいるメンバーでは私だけなのだ。私は将来の不安を取り除きたいのである。黒幕系従兄弟を黒幕にするわけにはいかない。


そう、私は黒幕系従兄弟の凶行を止めるために付き添いを決めた。結果、ヒューお兄様もローズお姉様もリオン様もバベルも来ることになったのです。


……たすけて、おとうさま。


心の中のお父様に祈った。

私、お父様みたいな人と結婚する……間違ってもレオお兄様みたいな災厄系とは結婚すまい。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ