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胸を刺す覚悟




──なんだか、嫌な予感がする。


特に何かがあるわけではないというのに収まらないコレは何なのだろうか?


気持ちが通じ合って、これから一緒に考えていけるようになったというのに、私がそれ以上に何かを求めているということなのかしら。


そんなことを考えていたけれど、やはり嫌な予感ほど当たるもので。



「クリストファー殿下が……!?」



セレスティア帝国の近辺は現在魔族と名乗るものが魔物を従えて暴れ回っていると聞く。そんな危険地帯に何故第三王子たるものが行かなくてはならないのか。

混乱した頭がそのように訴えてくる。


いいえ、きっと意味はあることなのです。


けれど、それでも行って欲しくない。



「止めることはできないのですか?」

「陛下直々に呼び出してのご命令だからね。きっと無理だろう。それに、チャンスだという一面もある」

「どういう意味ですの?」

「私たちがフィンの相手に求めている条件が分かるかい?」



お父様に尋ねられて、家柄や人柄等かと思ってそう言うと苦笑しながら「違うよ」と言って苦々しげな表情を作る。



「我が家と王家の共通の条件は、お前を何があっても守れること。そこに王家都合の、フィーネを国外へと出さない事という条件が加わる」



そんなに私は価値があるのかしら。

そう思いながらベルを見ると、不安げな顔をしていた。



「そして、その技量を持った優秀な人間……できれば殿下達との子を残すことを望まれている。これは、魔力の強い人間の血を残していくことで次代に優秀な魔法使いの誕生させる可能性を高めるためでもあると思うが……」



今代の王子は三人とも魔力が強く、妖精に愛されている。

だからこそ、という一面もある。


そして、もう一つ。



「私達を苦しめるためにお前の身を求めているという可能性も強く否定はできない」



胸が痛くなる。

違うの。追い詰めたくて好きになったんじゃない。傷つけたくて好きになったんじゃないの。



「この任務から無事に帰ってくることができれば、その技量を認めざるを得ない。正式に婚約は叶うだろう」

「けれど、それでは」

「信じて待っていて、としか言えないなぁ」



突然、扉が開いてクリス様が現れる。

軍服を着て一層凛々しく見える。



「すぐに、というわけではないけれど、顔合わせがあったからこんな格好なんだ」



苦笑して、近づいてくる彼は私の手を取って跪く。

私の指に指輪をはめて唇を落とした。



「きっと、君の元に戻ってくるよ」

「けれど……」

「不安にさせてごめんね。けれど、僕も君を得る資格が欲しいんだ」

「それでも……わたくしは」



行かないで、と声に出そうとした瞬間、強い覚悟のこもったその瞳に見つめられる。

私が声に出そうとした言葉は吸い込まれるように消えていく。


私は結局、クリス様に泣いて縋る事はできなかった。

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