求める未来
今はお互いに婚約をすれば何が起こるかわからないというところから、候補止まりだけれど、近い将来にはクリス様に嫁ぐ。
そういうことになっている。
少し照れてしまうけれど、お父様やお兄様が何か頑張ってくれているからそのうちに堂々と二人で歩けるようになる…かしら?
早くそんな日がくれば良いのに。
そんな事を思いながら今日もクリス様がいらっしゃるのを待つ。やっぱり家の外に出るのは賛成できないらしい。
でも、一介の貴族が王族に通わせるのって問題はないのかしら。
そう思っていたけれど、陛下的には誰かが業を煮やして私を引きずり出せば王宮に引っ張れると思っているらしいので積極的に連れ出すように言っているようだ。
「まぁ、絶対にそんな真似させたくないけどね」
溜息を吐いて肘をつくクリス様は絵になる美少年っぷりである。
やってきて早々に「あの娘に気に入られているようだな。早く王城に迎え入れるが良い」って言われた話をされた。
「迎え入れてどうするつもりだ、という話だよねぇ。母上だって婚姻前から王城に泊まることなんてそうない話だったらしいし、住まわせようなんてしている事が気味が悪い」
「……申し訳ございません。わたくしが弱いばかりに」
「フィーが弱いというわけではないよ。あの男が悪辣なんだ」
そう言ってクリス様は私を安心させるように微笑んだ。
レティシア様ももう婚姻秒読みなんて噂が飛んでいるあたり、トーラス公爵もひたすら王家を嫌がっている感じが伝わってくる。
王家、というよりも陛下を嫌がっている感じするけど。
「まぁ、僕たちの進退にも関わるからこういう話はせざるを得ないけれど、せっかく会えたんだ。フィー、君の笑顔が見たい」
そう言って彼は私の手を取ってその指先に口付ける。
私を見つめるその瞳と、声に籠る熱に私は浮かされる。
恐る恐る笑顔を作ると、クリス様は幸せそうに微笑んだ。
「うん。君の笑顔は一番綺麗だ」
「ふふ。お上手ですこと」
「僕はいつだって、君へは本当のことしか言わないよ」
「…はい。クリス様」
「なぁに?」
「わたくしも、あなたの事が」
好きです、と口に出すと一瞬だけ驚いた顔をしてそれから顔を真っ赤にする。
素直に気持ちを言葉にするのはとても難しいことだと思っていたけれど、ちゃんと伝えられた。
「反則…っ!こっちはまだ何にも手が出せないのにさぁ!」
そう言って目を背ける姿はなんだか少し可愛らしい。
その後すぐにお父様に呼ばれて行ってしまったけれど、心がほわほわした。