恋心と告白と
なんか、それとなーく殿下たちが順番にいらっしゃるのですが、お父様たちとの密談のおまけになっている気がする。
私がちゃんとクラウス殿下とリオン様に「クリス様のことが好きです」と伝えたのもあると思うけれど。
それでも、「君とクリスの身の安全のためにまだ三人の王子の婚約者候補という立場でいた方がいいと思う。だから正式な婚約は待って欲しい」と言ってくださったクラウス殿下、人が出来過ぎている。申し訳なさで埋まってしまいたい。
そして私まだ告白できていません!!
お父様に「そういうことは自分で伝えた方がいいよ」と言われているのですが、目の前にクリス様がいると「はわわ〜」ってなってしまいます!!助けてください!
「自分の気持ちを素直に伝えれば良いだけではないの」
リリィお姉様にそう言われたけれどこういうのって理屈じゃないと思うの。
私ってば前世もあんまりそういう経験なかったんだもの。
そうやって悩んでいるとクリス様が来る日になってしまった。
「とびっきり可愛く致しますね!!」
「やめて!!そのピンクのふわふわのいかにもなドレスではわたくし何歳に見えるかわかったものではありませんわ!!」
「……女性は若く見られたいものでは?」
ドロシーの暴挙を止めようとしていると、バベルがそんな疑問を口に出したため、「限度があるのですわ!!」と返す。
そんなドレスを着ようものなら、学院に入る前の子どもたちと混ざっても違和感が全くないという悲しい仕上がりになってしまう。
結局のところ可愛い系のドレスの方が似合ってしまうのでそちら方面にはなったけれど、多少控えめにしてもらった。
「やっぱりこちらのフリルの多い方にしては…?」
「そちらは愛らしいけれど、年頃の令嬢が着るには少し子供っぽ過ぎますよ。ドロシー」
呆れたようにいうリズベットの安心感がすごい。
本当はクリス様に頂いたピアスなども着けるのがいいのかもしれないけれど、お父様がきちんと婚約してからの方がいいと仰るし、クリス様の瞳の色のようなルビーの耳飾りをつけた。
「久しぶり、フィー」
「お久しゅうございます。いらっしゃいませ、クリストファー殿下」
ご挨拶をすると、「今日は一段と美しいね」と彼は微笑んだ。
その言葉に照れてしまう。そんな私に、クリス様は嬉しそうに手を差し出すのだ。
そしてそれを満足そうに見つめる両親と姉夫婦。見ないで欲しい。
いや私が告白できない理由の一つ、あなたたちが見てるからっていうのもあるのですが。
「君の周りにはいつも誰かいるね」
「えぇ……もう少しだけ離れていて欲しいですわ」
せめて声の届かないところまで。
思ったよりガチな声になってしまったなぁ、って思ってたらクリス様がくつくつと笑っていた。何も面白くはない。
私が告白をする上では。
「ふふ、そういう顔も可愛いけれど、今は僕に集中して欲しいな」
ジト目が可愛いはずあるか!?
いやないと思う。
「まぁ、好きな子は何をやっても愛しく思えるらしいけどね」
「それにも限度がありましょ……なんて?」
素で言い返してしまって、また怒られるぅと思う前にクリス様が私の手を取って口付けた。
「最初は兄上たちのお嫁さん候補だと思っていたのだけど、いつの間にか君を思うようになっていたよ。
フィー、僕の可愛い人。どうか、僕の妃になってはくれませんか?」
それに対して何と口に出したかは分からないけれど、おそらく了承したのだと思う。
夕方にまた花と手紙をセシルが持ってきたから。
「フィーネはこの調子で大丈夫でしょうか?わたくしたち、箱入りで育て過ぎたのではありませんか?」
熱を出しそうな私を見ながらお母様が、心配そうにそんなことをお父様へと尋ねていた。
お父様は苦笑しながら「そうだね」なんて言った。