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異世界捜査官  作者: かりおん
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開いたトビラ

薬莢が落ちる音を聞かない日は無かった、血が舞い、人が死ぬ

いつからだったろうか吸い込まれそうなほどの青空に何も感じなくなったのは

雨上がりの空の虹に何も感じなくなったのは

引き金を引くその指の重みを、忘れたのは


「立花さん、教授は第一ポータル研究室にいるようです、出来れば殺さず、生きての拿捕をと」

「善処はする、博士が無闇に抵抗しなけりゃな」

オペレータとのやり取りを終えると、隣にいた教授の助手と名乗った女性が話し掛けてくる

「教授は無事なんですか?いまどこに?」

「研究室とやらに閉じこもっているようだ、わざわざ防衛システムまで起動させてな」

ポータル研究所は普段の静寂さを忘れたかのように、けたたましくサイレンが鳴り響き尋常ではない雰囲気を出している。

「特別捜査官、やはり警察は動けません、ポータル研究所は治外法権、日本の警察は踏み込めない」

現場を指揮していた隊長が歯痒そうに告げる

「だろうな、でなけりゃ俺は呼ばれない」

現場には機動隊まで出動していたが、どうする事も出来ない現状に、隊員たちは苦心の表情を浮かべていた。

「心配ない、俺が片付ける、人間一人連れ出すだけだ、武装集団100人相手にするよりはマシだろ」

突入の準備を整えると、オペレーターより通信が入る

「立花さん、教授がいる研究室より異常な重力波動を感知しています、ポータルを開くつもりのようです」

「どこでもドアで逃げようってのか、これだけ騒ぎを起こしておいて」

「逃げられては、追跡は困難になります」

「最短ルートを教えろ、久々の日本での休暇の最中だ、とっとと終わらせる」

「防衛システムが起動しているため、研究所内には侵入者排除ドローンが展開されています、くれぐれも御気をつけて」

通信を終えると、深呼吸をひとつ、気を落ち着かせる

死線はいくつも越えてきたが戦場に飛び込む前の緊張はいつになっても慣れやしない

「国際連邦警察特別任務課特別捜査官 立花 円 これより任務に当たる」


『ポータルとはゆわゆるワープホールのようなものです、発生原理は解明されていませんが、早島教授が発見した転重力粒子がそれを発生させる可能性があるとして、国連を中心としてポータル研究所が設立されました、10年前の第26回実験において小規模でありましたがポータルの発生に成功、しかしその後研究所の予算は削減、ポータルの研究は小規模なものとなりました。』

任務前のブリーフィングでオペレーターより聞かされた情報を思い出していた

「ディジー、予算削減は本当か?ここのドローンはどれも最新型だぞ」

「あくまで公表されている情報では、です。この研究所に関しては明らかにされていない事が多く、特任課でも全てを把握しきれていません」

オペレーターであるディジーのため息が聞こえる

ドローンは数こそ多いが脅威ではない、あくまでも排除用ドローンであるためか、武装こそあれど、どれも非殺傷武器だ

「階段はドローンで封鎖されています、研究室の地下5階までは通気用ダクトを通るしかありませんね」

「ダクトか、ドローン相手にし続けるよりはマシだな」


幸いダクトにはドローンはおらず、目的の研究室まではスムーズにこれた

「研究室内の重力波動が増しています、ポータルが開いている可能性があります」

「了解、突入する」

ロックされていた研究室のドアを爆破し、室内へ突入する

「早島教授、あなたを逮捕する!」

部屋に入り、大型装置の前にたたずむ男に叫ぶ

なんだあれは・・・

部屋の中心にある円形の大型装置、その円の中に異常な光が発せられている

「教授!装置を止めろ!逃げるつもりなら、射殺する!」

「・・・残念ながら手遅れだよ、もう止められはしない」

教授は不敵な笑みを浮かべこちらに振り向く

「ディジー、教授を撃つ、殺しはしない、・・・ディジー?」

通信が遮断されていた、部屋の所為か、あの装置の所為かはわからんが

「装置を止めるんだ教授、あなたの研究成果を破壊されたくなかったらな」

「言ったろう、もう止められない、巻き込むつもりはなかったが、ここに来たのが運の尽きだったな」

「どういう意味・・・・!?」

言葉はかき消された、凄まじい轟音と共に、光が増す

「・・・えますか・・・逃げ・・・さい・花さん・・・」

途切れていた通信が繋がった様だが上手く聞き取れない

「暴・・・ます、このまま・・・巻きこま」

体が引き込まれる感覚、いつの間にか装置の光が球体となっていた

その球体に室内のあらゆるものが吸い込まれていく

このままでは自身も吸い込まれかねない

体の全身を使い踏みとどまるが、次第に体は光の球体に向かっていく

「ようやく夢が叶う!幾年にも蔑まされた私の夢が!」

この轟音の中でも聞こえるほど、歓喜に満ちた声で教授が叫ぶ

気づけば部屋の入り口付近から既に装置まで数メートルの距離まで引き寄せられていた

光の球体のほぼ真下まで行っている教授は既に体が宙に浮いている

「世界に別れを!私は新たなる世界へ旅たつ!」

恍惚なその表情のまま教授は光の球体へ吸い込まれていった

ふざけやがって

休暇を邪魔された挙句に目標を取り逃がすとは

光の球体は次第に大きさを増し、もはや自身が飲み込まれるのも

時間の問題だった

「・・・くそったれが」

円は激しい光に瞼を閉じ、そして光に飲み込まれた。


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