曲がり角で女の人とぶつかりました
私は真っ暗な異空間に放り込まれた
私の何が嫌いなんだろう?
神様らしく無いから?
だとしたら嫁いだお姉ちゃん達は?
あの二人は自由に生きている
世間では政略結婚だと噂されているのはネットとかでみたけど
たまたま恋した相手が同じ学校に通う神龍の同級生で
トントン拍子で結婚しただけだ
「ドラゴンなんだから自由に生きる。お父様の言っている事は世間体を気にしているだけだから無視でいいのよ」
それがお姉ちゃん達の生き方だった
それじゃあ私は?何で神様らしくしなきゃいけないの?
何で私だけ喋ったらダメなの?
何で私だけ笑ったらダメなの?
何で私だけ屋敷から出たらダメなの?
何で私を認めてくれないの?
何で私だけ・・・・
「何で・・・」
私は真っ暗な中で膝をついて泣いていた
ーーーーーー1時間経過ーーーーーー
いい加減泣き疲れた私はアイツにどうやって復讐するか思案していた
アイツの酒棚に毒入りの酒でも入れとくか?いやー、アレが毒を食らうわけないか
物理で殴る?ムリムリ。さっきも効いてなかったし
ーーーーーーー更に1時間経過ーーーーーーー
さすがに待ち時間長すぎでしょ、何やっているのアイツ
まさか氷河期に入った惑星じゃなくてこの異空間に幽閉?
ふざけんな!こんな異空間に居られるか!
ーーーーーーー更に更に1時間経過ーーーーーーー
「ふんっ!」
ドスンッ
「ふんっ!」
ドスンッ
何やっているかだって?
壁殴りだよ壁殴り!
あの糞親父、直径300メートル位の異空間に閉じ込めやがって。
アレか?
龍に戻っても窮屈しないように無駄に広いのか?
はは・・・・・
ふざけんな!
ーーーーーーー更に更に更に1時間経過ーーーーーー
「ふえーん、パパ許してー。私が悪かったから」
わざとらしく泣き喚いてみるが反応がない
あれ?コレって放置されてね?
ーーーーーーー更に更に更に更に(ryーーーーーーー
ペラッ
「あー、新規連載ねー。魔法少女物か」
少女読書中(漫画)
ガバッ
慌てて身体を起こす
いやいやいやいやいやいや
マジで放置されてね?食事は?トイレは?というか学校は?
ユランが助けに・・・・
無理か、ユランは異界を渡れないし
お姉ちゃん達は?
あー、どうだろ喧嘩の仲裁してくるかなあ
コトンッ
「ん?」
背後から音がしたので振り向いたら着替え一式が乗ったテーブルが転送されていた。
着替えろって?見るからに防寒着なんですが
まあ、寝間着で異界に行くよかいいか
スッ
「ふえッ!!」
着替えて愛用の剣を腰に差した辺りで違和感を感じた
腰の高さにあったテーブルが目線の高さにある
そう、私が立っている地面だけ消えて私は落下し始めたのだ
「ひぃややややややややぁ!!」
「うーん・・・・・」
気がついたら私はコンクリートの床にうつ伏せに倒れていた
口から白い息が出ているのがわかる
「寒い・・・・」
ここはどこだろう?
見た限り直径100メートルはありそうな・・・・部屋?
パイプとかあっちゃこっちゃに延びている
グオオオンッ
「!? うわ、大きい」
頭上から音がしたので見上げたら巨大なロケットの噴射口が
あー、ここはロケット発射場か、なんだー
何でそんなところに私は居るの?
ん?
ロケットのエンジンから音がする
↓
つまりは打ち上げ直前
↓
私が居るのはエンジンの真下
『発射シーケンス確認終り。発射まで残り5分』
うわーどうしよどうしよ!!
『ソコの君!何処から入って来たんだ!』
スピーカーから男の人の声が響いた
管制室辺りから私を見ているに違いない
カメラか?
!あったカメラだ
私は非常事態だと伝える為にカメラに向かって大きく両手を振る
『右手の扉を開けたのでソコから出て壁に描いてある緑の矢印にしたがって避難するんだ!』
私は全速力で扉に向かって駆け出した
扉を通り壁を見る
緑の矢印はすぐに見つかった
矢印に従い最初の角で右に曲がる
ところどころ蛍光灯が切れている廊下に出たが
何て長さだ1キロ以上は絶対にある
少しずつ昇り坂になっているせいで先が見えない
『彼女は何処まで来たんだ?』
不意に壁に設置してあるスピーカーから声がした
『・・・・・・』
『よし、打ち上げ続行だ』
もう1人が何か喋っているが聞き取れない
管制室での会話がスピーカーから出てきただけなのか?
長い長い廊下を駆け上がりながら色々と思考する
何でロケットの真下に居たんだ?
記憶が無い
おや?
ここは何処?
記憶に無い
ヤバくね?
私は誰?
私はアエラ
あ、名前は覚えている
というか名前しか記憶に無い
廊下の途中で矢印が左の通路に曲がっているのに気付き左に曲がる
「うわっ!ストッ」
「え?きゃっ!」
曲がった先は下り階段になっていました
ちょうど階段を駆け上がってきた女の人に気付くのが遅れ
彼女を巻き込む形で階段から落ちてしまった
ガシャン、ガン!
ドーン!!
「あ、あ。はあー」
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
「ヒグッ。ひぃ」
私は受け身を取り損ねて顔面からコンクリートの地面に激突してしまった
口の中に血の味が広がるのがわかる
歯が折れたみたいだ
鼻血も・・・・
あ、女の人首から落ちたのか、目を見開いた状態で
固まっているんだけど
白い息も出ていない、まさか死んで
「おーい、凄い音がしたけど大丈夫か?」
階段の下から男の人の声がした
「階段から落ちただけー」
女の人が声を出した、生きてたようだ
「え?どれどれ?」
階段を昇ってきた男の人が私の顔を覗き込んできた
「あー、目の下に裂傷と鼻の骨が折れたみたいだなあ
歯も何本か折れてるなあ」
「ヒグッ」
「あー立てるかい?」
私は首を縦にふりゆっくりと立ち上がった
男の人が横に立って支えてくれている
「それじゃあ、医務室まで連れていくから」
「ちょっとまてー。私は無視かー」
男の人がキョトンとして女の人を見た
「どうせ大丈夫だろ?」
それだけ言って私を医務室まで連れていってくれた
いや、良いのか?
「それで?君は何であんなところに?」
怪我の手当をしながら男の人が聞いてきた
「覚へて無いれふ」
目の下の傷は消毒して医療用接着剤で塞いでもらったが
歯が折れたせいで喋ると痛い
暖かい医務室に来てから余計に痛く感じる
「覚えて無いっか・・・・」
「てか、君!足速いね!まさか階段で出くわすと思わなかったからお姉さん驚いたよ」
私とぶつかった女の人が話かけてきた
いや、あなた首から落ちたはずなのに何でピンピンしてんの?
「覚えていない?」
気がついたら初老の男性が医務室の入口に立っていた
「大佐、もうよろしいので?」
「後はAIにでも任せとけば勝手に終わるさ。そんな事よりそこの闖入者だ。で、君は何者なんだ?」
「あー!自己紹介してなかった。私はメリナ。で、あなたを此処まで連れてきたのがルカリス。そしてそこの白髪のオジサンが基地司令のコリンズ大佐」
基地司令をオジサン扱い??
なんだこの女の人は???
とりあえず私も自己紹介だ
「私はアエラ。アエラ=クラ」
「「アエラ=クラ?」」
「?」
男性陣が目に見えて困惑しだしたんだけど
え?私の名前に何かあるの?
「何か覚えている事は?」
コリンズ大佐から質問が飛ぶ
「・・・・・・」
覚えている事
「私は・・・・突き落とされた事は覚えています、何か怖いというか嫌いというかそんなものに」
「突き落とされた、かあ」
皆が黙り込む
ルカリスが何かを思い付いたか私に訪ねてきた
「IDは持っている?それか身分証になる食糧配給証とか」
ナニソレ?
「・・・・何ですかソレ?」
「・・・・・」
沈黙が広がる
「そうだ、手首に個人認証用のバーコードが有るじゃん」
メリナさんがそう言って右腕の袖口をめくってきたが・・・・・・
「あ、アレ?無いなあ・・・・・おかしいなあ・・・・」
ルカリスさんがコリンズ大佐に何か耳打ちした
「メリナ、アエラを検査機に」
「え?あ、ハイハイー!」
コリンズ大佐の命令にメリナが従う。
「じゃあ、アエラちゃんここに横になって」
「ここ・・・ですか?」
何か良くわかんないけどベッド?見たいな何かに横になるように言われた
「あ、服は脱いでね。下着は良いから。後、剣も外してね!」
「あ、はい」
何か気迫に押された気がする。男性陣が退室したのを確認してから服を脱いでベッドに横になる
「それじゃあ、検査するよ!眠くなったら寝ちゃって良いから!」
元気だなあこの人
「あのーメリナさん?」
「ん?なにー?」
私はメリナさんを最初に見た時から気になっていた疑問をぶつけた
「何で息が白く無いんですか?」
「え?」
メリナさんが驚いたように私を見た
「だって私、アンドロイドだし」
「え?」
「え?」
えーッとだから丈夫なの?
そもそも息してないから寒くても白い息が出てないの?
ベッドが装置の中に入り込む
「ねえ、アエラちゃん」
メリナさんが話かけてきた
「もしかして、アエラちゃんって良いところのお嬢様とかじゃないかな?だって他の移民の女の子と違ってアエラちゃんって身長も高いし、栄養失調で病気がありそうな感じじゃないし」
移民?栄養失調?
「ところでさっきのロケットは?」
「あー、アレね。アレは他の惑星に移住する移民を乗せた最後のロケットだよ」
え?最後?移住?
何だか混乱してきた、コリンズ大佐とルカリスさんは?アンドロイドなの?移住しないの?
何だろう眠気が襲ってきた
「アエラ!アエラ!!」
「っは!?」
目が覚めたら居間の鏡の前で倒れていた
周りを見渡す為に上体を起こしたらユランが
すかさず抱き付いてきた
「よかった。もう2度と会えないんじゃないかと」
泣きじゃくるユランを引き寄せながら考える
私はアエラ=クラ。明日から学生。
社会保障番号は95-88-307147718451
総資産 約75万アウレリウス金貨。
好きな食べ物。揚げパン、鰯
嫌いな食べ物。イチジク
うん、私だ
「痛ッ!」
「ど、どうしたのその傷」
さっき転んだときの怪我が痛みだした。
「待って、今治すから」
ユランが魔法を掛けてくれたお陰で痛みが引いたのがわかる
鏡で眺めていたら傷がふさがっていく
ん?
「うげっ!?」
何か硬いものがいきなり口の中を転がったので思わず吐きだしてしまった
見てみると折れた歯の歯茎だった
折れた歯の代わりに新しい歯が生えてきた
なんだか腹が立ってきた
「・・・・・・シャワー浴びてくる。朝ごはん用意しといて」
「は、はい」
私が不機嫌になったのを察したのかユランが静に離れて行った
あー、腹が立つ
何だったんだ昨日のアレは
“普通の人間として異界に墜ちるだけ”
とか糞親父は言ってだけどこうして戻ってきた訳だよなあ
シャワーを浴び終え着替えながら思案する
大体いきなり異界に放り込むとかなに?
メチャメチャ痛かったんだけど、人間て階段で転んだ
だけであんなに大怪我するわけ?脆すぎでしょ!
あとあのアンドロイドのメリナってなに?
マジでアンドロイドなの?
移民?
あー、もうわかんないことだらけだよ!
着替えが終り。部屋を出る
私が創った手前、糞親父に言われるまでもなく
あの世界の人達を放置する気はないし
何をするにも情報だ、放置していたあの世界の現状だけでも予備知識で欲しいなあ
呪いが始まるまでにタイムラグがあったのも気になるなあ
何で私を1度別の異空間に閉じ込めてから異界に落としたんだ?
何か仕掛けをするにしても長すぎる
2階の自室から1階に降りダイニングに入るとユランが
食事の用意を済ましていた
ユランは入ってきた私に一瞥し
私が座る椅子を引いてくれた
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
端からみれば異様な光景かもしれないが
私が考え事に夢中になっているときの食事
は流れが決まっている
いつもバケットを最初に取りいつもオイルサーディンを乗せて食べる
そして1枚目のバケットを食べきる直前にユランが
紅茶を1杯淹れてくれる
そんな感じで流れが決まっているのだ
食事を終えてユランがコーヒーを淹れ新聞を私の手元に置き一瞥
「・・・・・・・」
普段ならコレで朝食の流れは終わりなのだが、私は
食事中に思い付いた事を実行する為にユランに一言
指示を出すことにした
「ジランがこの街に来たら私のところに」
「畏まりました」