【02-03:念願の一歩、二章の終わり】
第3層のエリアボス攻略が決定された。
9月27日。午後4時。
調査隊専用パワードスーツの<ミカガミ>の15機を各自用に調整され、それぞれが装着する。
最大の特徴は全身装甲と、iイルミネーターを採用した統合情報処理機能だ。
調査隊のメンバーの若宮、四之宮、周防、戸村、浅間の5名には<ミカガミ・機動力型>をフィリスが調整し提供した。所謂機動力という点において重視されたタイプで、高機動というほどではないが、他の数値より重点的に調整されていてた。
また武装にはレールガンが採用される。
このレールガンの正式な名称は40式超電磁砲。
また格闘用の装備としての40式高熱刀身軍刀、40式高振動穂先短槍の二つも採用する。
格闘戦を重視した構成ながらも、装着者の格闘能力のスキルが高い為に高い性能を示す。
これらの通常兵器もあるが、道具持ちMPを消費する魔剣化(魔法の機能を刻印された)した小さな小道具も持ち、これらは攻撃魔法のLv1に揃えられる。
攻撃魔法関していえば<ファイアーボールLv1><サンダーLv1><アイシクルランスLv1>の三種類がスタンダートな機能だ。
攻撃魔法Lv1は三種類とも最高射程距離は20mだ。それ以上は魔法の崩壊が始まり効果を持たない。
来栖、奄美の魔法使い専用の<ミカガミ・ウィズ>は防御力、積載量を強化された通常の機体より頑丈さとタフさを兼ね備え、高い積載量から専用の40式熱線砲を両肩に装備でき、この熱線砲の破壊力は一撃で第3層のモンスターをキル出来る性能を示す。
またこの<ミカガミ・ウィズ>に関してはパーツに奄美が汎用紋章魔法を刻印し、全体的な防御力は随一であり、耐久力もずば抜けている上に、機動力においても高い性能を示し、攻防に揃えられた高い性能を持つ、しかし、奄美がいなければ作ることも整備する事も出来ないために完全な自作機に近いようなものでもある、通常に関していえばフィリスが行い、必要と判断した箇所のみ奄美が刻印を行うという手順を踏む。
バックアップ要員のメカニックのフィリス、ドローンサービス社の谷口、佐久間、悠木、指揮車両の瀬戸内、加藤、速水、波田間の8名はパワードスーツを装備するも、直接的な戦闘にはかかわらず、後方支援を主に担当する。
陸上自衛隊ゲート突入部隊は小隊専用の<スサノオ>を着込み、手には使い慣れた40式光線銃、サイドアームズの40式高熱刀身軍刀を腰に下げる。
一時はレールガン、短槍も使っていたが、使い難いという事で今はお蔵入りだ。
この<スサノオ>は試作型紋章動力機構、試作型紋章人工筋肉、試作型紋章装甲の三種類を採用した極めて強力な性能を示す、この小隊専用でもあるのだが、他ではMPの関係で使えないので、実質的の専用パワードスーツだ。
また<スサノオ>にはLv1の攻撃魔法の三種類を採用した小物が有り、分割する湖で相互干渉をなくさせる効果もあって、三種類の攻撃魔法を選択して使うのが基本となる。
攻撃魔法の他にも強化魔法の<剛力>、防御魔法の<ダメージカット>の二種類も採用しているので、MPに余裕が有れば極めて高い性能を示す。
二種類のパワードスーツ<ミカガミ><スサノオ>のどちらかを装着する歩兵は、攻撃魔法などの魔法装備もあるので道具有りMPが許す限り魔法が使える、これゆえに魔法を操る特殊歩兵、魔特兵と呼ばれたりする。
所謂精鋭部隊の様な物だ。
この二つの隊のみでゲート内部に広がるダンジョンを攻略するので、二つは相互にお隣さんと呼ぶ。
◆
第3層のエリアボス前。
調査課の調査隊7名、陸上自衛隊ゲート調査特殊第01小隊の分隊10名。
「こちら西田、調査隊隊長殿聞こえるか」
「良好、第01小隊小隊長殿」
「事前の作戦会議もあるが、こういう現場での調整も必要だ」
「ですね。まっ、奄美、来栖の二人の強烈な冷気攻撃、後に雷撃攻撃、最後に火炎攻撃でしたか」
「二人が今回もキーマンだ。強力な魔法攻撃でダメージを与え、しかる後に通常兵器で叩く、この戦術こそが最も安定した物だ、前回の様な近接戦闘は今回は止めだな」
こんなやり取りをしていると、四之宮は自分が16歳の少年の未成年であることを忘れがちになるが、波田間や速水からすれば、能力さえあればよい、実際のところ。
(なんかいつの間にか隊長だものな、なし崩し的にという奴か)
四之宮は正式な物ではないが、すでに隊長と認められているために誰も文句がない。
(才能は常に疑うが、しかし少しでも負担を減らせればよいさ)
自身の軍事的な才能は疑うものの、少しでも負担を減らせればと考え今まで来た。
(ユキの奴も居心地がよさそうだし、まあ俺も居心地が良いのだが)
「では頼む」
「ふと思うのですが」
「なんだ」
「火炎瓶でも投げたらどうでしょう」
「つまり火炎瓶を投擲し妨害する?」
「蛇なんかは炎を嫌うでしょう」
「事前に行ってもらわねば困るが、失敗したのその案は採用だな」
「失敗しないことを祈りますよ。祈ってかなえられたらラッキーです」
隊長同士笑って作戦を行う。
エリアボスは火葬に繋がる階段を守るのでそれ程移動はしない。
「ユキいつもの奴を頼む」
「了解」
強化魔法<強羅>にて7名全員の筋力・人工筋肉を強化する
「了解」
防御魔法<オールカット>にて7名全員のダメージをカットする。
「攻撃開始」
「灼け」
腕を振るう。
双頭の大蛇に攻撃魔法の<ファイアーボールLv2>が炸裂し、大蛇の床から炎の柱が立つ。耐性があるのか耐え切る。
もう片手を振るう。
<サンダーLv2>
雷の束が収束し放たれる。
大気を焼きながら震わす轟雷が鳴り、相当の大蛇を灼く。
「砕け」
<グラビティ>
重力の収束した小さな塊が、相当の大蛇に向かって飛ぶ。
接触した瞬間、嫌な音をたて相当の大蛇の体を壊していく、体に直撃すると、聞くに堪えない悲鳴やなんやらの声が相当の大蛇より飛び出し、骨肉が砕ける音が響く。
瀕死の大蛇に来栖が<アイシクルランスLv1>を放ち、相当の内の片方を氷の中に閉じ込め、砕く、が耐性があるのが耐える。
「シオ」
「あ、ああ?」
「サンダーが最も効く」
「各員、サンダー一斉射撃」
調査課の面々が<サンダー>を一斉に放ち、瀕死の双頭の大蛇をさらに追い込み、皮や肉が灼ける臭いが充満する。
分隊から<ファイアーボールLv1><サンダーLv1><アイシクルランスLv1>を放つが、火球・氷結には耐性を持っているらしく効果はイマイチ、雷撃はよく効くがダメージを与えに過ぎない。
「砕け」
再び放った<グラビティ>の同時2発。
相当の大蛇の体に直撃し、聞くに堪えない悲鳴、骨肉が砕ける音が響き、双頭の大蛇は息絶える様に大きく悲鳴を放ち倒れた。
「倒したな」
「だねシン」
「白兵戦が効かない相手とはいえ、あまり良い死に方ではない」
「うん。可哀想とは思わないけどね。だって近付いたら食べられそうだもの」
「なんかパイが食べたくなった」
「そういうときもあるよね~無性に食べたくなるとか」
「お~い夕食だぞ」
奄美の声に二人が振り向くと、自衛隊の分隊からお裾分けのレトルト食品のハンバーグ、及びコンソメスープ、三品目にチェリーパイだ。
二人が顔を見合し駆け出す。
そうして夕食を食べ、腹を満たしてから双頭の大蛇をダンジョンの外に持ち出した。
ちなみにサンプルの売買は許可されており、防衛研究所からは特に注文もないので地元の生物研究所などに売却してた。これらは戸村、周防の系列の研究所だ。
◆
アパートに帰る。いつもの時間より早い午後8時30分。
くたくたに疲れて休むわけではないが、疲れているのには変わりなく、アパートでシャワーを浴びてからベッドの上で休む。
いつもの9時に帰るるのでいつもより早まった。
ドアをノックする音。
気付けは9時になっていた。
ドアを開ければ、いつも通りの佐倉さんが胸を張って立っていた。
「寝ていました」
「健康的でよろしい体重は」
「うっす」
すでに日課の体重計乗り、53kg。
「また減った。しかも今日は四kgも」
「食うの、あの忘れていました」
「気味の仕事先に連絡したら忘れていたと言われたわ。直ぐに着替える」
ドアを閉めてから着替え、ドアを開ける。
「今から焼肉よ」
「よっしゃあ」
殆ど姉のようなお隣さんだが、体重管理には厳しく、お肉をひたすら食べも、翌日にはもう肉はいいと思うほど食わされた。ちなみに支払いは佐倉さんだ。
いつも通りのバーガーショップでの朝飯、シオとの合流、桐ケ谷高校での学生生活。
◆第4層指揮車両:9/28日
第4層に到達。
「第4層到達、事前情報無し、遭遇率上昇中、Lvゲージ表示、MPゲージ表示」
「調査隊隊長に通達、開始せよ」
iイルミネーターの光点が点滅し、直ぐに遭遇した。
「画像出します」
小動物の小さな鳥、数匹が威嚇する様にこちらに声を出す。
『こちら四之宮、食料を出してみる』
「こちらは速水許可します」
『了解』
食料を出した四之宮に、小鳥たちは喜んでついばみ、お腹がいっぱいになると、感謝の様に近付いて頭をこする。
結果として四之宮の判断は正しく、友好的なモンスターの二種類目だった。
報告を受けた指揮車両では歓声が沸く。
『こちら西田』
「こちら加藤や、友好的なモンスターがいたで」
『ほう。そいつは良かった。とすると四階は平和だな』
「そや、なんか偶数はよい響きや」
『じゃうあ3階から降りるぞ』
「了解や、あっちにも通達するわ」
極普通の小鳥の様だが、このダンジョンで生きるのならどんな特殊能力を持つかは全くの不明だ。
◆
四階の有効的なモンスターは小鳥の外見から名前の悩まされたが、遭遇した敵対的なモンスターのスライムの強化版を一撃で叩き潰す力を見せた。
画像を見た戸村が超音波と見抜き、音波雀と名付けられた。
第2の休憩ポイントも見つかる。
第2層と同じような規模の廃村、今回も水などは獲れそうにないがモンスターからの攻撃に耐えられるので安心して過ごせる。
◆9/29・9/30
29・30日で第4層は十分探索され、10/1日より第5層に到達することになる。
◆10/1
アパートより登校し、そのモノレール駅の前にあるバーガーショップでのいつもの高カロリーメニューの食事、常連からは覚えられ、当然の様に店員からもよく覚えられていた。
食べていると、シオと合流し二人でさらに食べ、登校。
そんないつも通りの朝。
モノレールの駅に上がる階段を上り終える前に、何やら前方がうるさい。
俺はそこに視線を向けると、一組の男女、それも同じ高校の制服を着込む。
何やら別れ話らしい。
「何やら面倒な」
「ユキ、一応言っておくがあれは別れ話だ。間違ってもナンパではないので突っ込まない様に」
「俺からすればお前だよ。シオ、冷静過ぎて相手を怒らすぞ」
シオからすればそんな事はないと言った所だが、こんな別れ話をこんな朝からすると、大抵の彼氏・彼女が感傷的になり、結果してトラブルを引き起こす。
他の人々も数名、迷惑そうな顔で永遠と続く別れ話を聞かされていた。
気の長い方だが、シオは段々とイライラし始め。
「てめえらいい加減にしろ!」
ついに切れる。
「そんなにいちゃつきたけれぱ他所でしろ。ここは通学なんかの通り道なんだよ。簡単にいえばてめえらみたいな連中が邪魔だ」
凄まじい怒声で怒鳴るのなら二人もムカッと来たかもしれないが、静かに言うのが非常に怖く、通行止めに困っていた学生や社会人もよくやったと言った所だ。
「すみません」
男性が詫び、やっとのこと通行ができるようになる。
しかし。不幸なことは1度のみならず、直ぐに2度目も運ぶ。
前方の改札口の方で悲鳴が聞こえる。
「行くぞユキ」
「熱くなんなよ。どうせ適当な禿だって」
突っ走るシオに、俺も後に続き、何やら包丁を振り回す通行人を怪我させているよくわからない禿の男がいた。
「通り魔だ」
「通り魔ね。軽く片付けよう」
「右」
「了解だ」
指示を受け、通り魔の右側に走る。
こちらに気づいた通り魔は、包丁を投げつけた。
護身用の砂鉄グローブで弾き、この通り魔は悪質なのか、懐からさらに武器を取る。
「銃!」
左を走るシオが加速し、男の足にスライディングを食らわす。
バランスを崩した男は倒れる。
跳躍した後に、体重を乗せて男の背中に着地する。
潰れたカエルの様な声を出し、男が気絶したらしい。
「怪我人の皆さん集まってください、今より応急処置をしますので」
シオの住んで力強い声に突然の怪我にショックを受けていた通行人が正気を取り戻す。
俺が応急処置の箱を取り出し手一人ずつ処置する。
◆
事件の後に警察から色々と聞かれ、新聞記者なども現れたが、時間がないのでモノレールに乗り込んで急いで登校した。
当然の様に遅刻、教員に散々怒られた。
そうして過ごし放課後。
「やっとのことダンジョンだ」
「ああ。なんか今日は精神的に疲れた。朝からトラブル連ちゃんだ」
金城ダム前のゲートのある施設、そこで俺は思い出す。
「そういえば今日から第2小隊、第3小隊が到着する筈だ」
「ああこんなにトラブルに弱いと思わなかった」
到着したダムの施設は増設されていた。
調査課の方に行き、タイムカードを押してから調査課及び関係者に挨拶。
「第15旅団第51普通科連隊第4中隊第1小隊長の西田冬樹2等陸尉だ」
「本日付で指揮下に入ります。第2小隊小隊長冨阪尭春3等陸尉です」
「同じく本日付で指揮下に入ります。第3小隊小隊長風間勇志3等陸尉です」
「よろしく。県の調査課の波田間忠孝です。まあ若い連中が良く無茶する課ですよ」
「県の調査課の副課長の速水茜です」
顔合わせと作戦会議の二つだが、奄美と四之宮も参加することになる。
奄美に関しては魔法の第一人者であり防衛研修所にも研究室を持つために、自衛官も研究者と言った所で安堵するが、四之宮に関しては特に肩書が調査隊の隊長だが、情報系の専門家でもあり、調査課、第1小隊の使うⅰイルミネーターのプログラムの改良加えるなどの功績も大きいが、知らない者からすれば若過ぎると言った所だ。
「では始めましょう。まず判明している第1層から第四層にまでの資料を読ん見ながら」
第1層は通称訓練用フロア、主にLv上げが基本的なしようとなるエリアだ。出現モンスターは物理的な攻撃に非常に強い耐性を持つスライム、動く者を襲うスケルトン、スライムやスケルトンを捕食する巨大蝙蝠の三種類が出現する。
第2層は初の友好的なモンスターのヘビードラゴンがいるエリアで有り、このエリアでの安全性はこのヘビードラゴンによるものが非情に強い。出現する敵対的モンスターはスライムを纏った骸骨のスライムスケルトン、骸骨蝙蝠のスケルバットの二種類だ。
このベビードラゴンによって初の中継地が発見され、少しずつ物資が集積されているが、自衛官たちの間ではこの中継地となった村規模の施設は、異なる世界と人の遺跡であるという声が強く、実際の所判明しないも、学術調査も行われる予定だ。
第3層は耐性を持つモンスターが現れた初のフロア、ここに出現する大蛇は耐火性の皮膚を持つ、この皮膚のメカニズムはまだ解明されないも、非常に高い耐火性を持つ為に耐火性の新素材となる。バトルアクス、ラウンドシールドを持つスライムを纏った骸骨の戦士、通称はバイキングスケルトン、腐敗した肉体を持つゾンビ、第1層のエリアボスであったジャイアントスケルトンも稀に出現する、これらの4種類が敵対的なモンスターである。
第4層は第2の有効的なモンスターの音波鳥の暮らすフロア、二番目の中継地が発見された事も有り、このフロアに出る敵対的なモンスターは強化型スライムの一種類のみ、物理に非常に強い耐性を持つ、また強力な酸で溶かすなど、極めて強いモンスターの代表格だ。
白兵戦、物理攻撃(レールガン、レーザー、プラスター)、攻撃魔法のLv1を中心とした耐性などの数値が記載されていた。
なおこのゲート内部のダンジョンでは爆発はどんなことが有っても起きないことは既に立証されていた。必然的に火薬式の89式5・56mm小銃や手りゅう弾やTNT爆薬などは使えない。
装備状況。
第1小隊・第2小隊・第3小隊<スサノオ>
40式光線銃、40式超電磁砲、40式高熱刀身軍刀、40式高振動穂先短槍
40式攻魔<ファイアーボールLv1><サンダーLv1><アイシクルランスLv1>40式強化魔<金剛>40式防御魔<ダメージカット>
調査課<ミカガミ・通常式><ミカガミ・機動式><ミカガミ・ウィズ>
40式超電磁砲、40式高熱刀身軍刀、40式高振動穂先短槍、40式熱線砲
40式攻魔<ファイアーボールLv1><サンダーLv1><アイシクルランスLv1>
Lv状況
第1小隊Lv20。
第2小隊Lv1
第3小隊Lv1
調査課Lv20。
奄美使用可能魔法
ファイアボールLv1:火球を放射する、最高射程距離はおよそ20m、耐性を持たないモンスターを一撃で焼き殺す破壊力、人ならば焼け死ぬレベル
ファイアボールLv2:20mの範囲内の目標点を中心に火柱を作る、耐性があっても即死レベルの高温、その中心点の直径は凡そ10m
サンダーLv1:雷撃を放ち相手を焼く、最高射程距離は20m、耐性を持たないモンスターを一撃で感電死させる高圧電流、人ならば即時レベル
サンダーLv2:雷撃を収束させた雷撃を放つもの、直線距離でおよそ50mの射程を持つ、破壊力抜群だが、それ以上にぶつかる時の衝撃力もすさまじい、耐性を持っても即死レベル。
アイシクルランスLv1:氷の塊をぶつける、接触した物を無差別に凍結する極めて強力な魔法の一つ、最高射程距離は20m、人ならば一瞬で凍死する様なレベル。
アイシクルランスLv2:最高射程距離80m、幅10mの範囲内に極寒の冷気を走らせる致死レベルの冷気は、外皮や吸い込んだ冷気によって外部・内部から凍結させる。
グラビティLv1:極小の重力子を放ち、範囲内の物を破壊する重力の塊。極めて強力攻撃魔法の一つ
ヒールLv1:傷を癒す治癒の魔法
ヒールLv2:通常のLv1より範囲が広く射程も長く効果も随分と高い、微少乍ら再生効果も有ったりする
キュアLv1:一時的な症状の緩和、どんな物にも効果がある物の、一時的な応急処置で有って完治ではない。
剛力Lv1・2+強羅:筋肉などを強化すもの。
ダメージカットLv1・2+オールカット:ダメージをカットする、効果は半日。
◆
「これらの事だが、第1小隊は第2小隊、第3小隊の訓練を担当する。」
「はっ。確かLvというものはダンジョンのモンスター撃破を繰り返し得るモノでしたか」
「その通りだ。Lv1とLv10なら二倍近くの身体能力差がある、Lv20なら大人と子供並だ。道具有りMPも4倍近くに増える為にここまで上がれば一人前だ」
「西田二尉、道具有りMPというのなら道具無しMPもあるのて゜しょうか」
「よい質問だ。道具無しMPを持つ者は基本的にいない、しかし、奄美の様な魔法使いは道具無しでも使う為に使われる、もし道具無しMPがある物は間違いなく魔法使いだ」
「なるほど」
「奄美、こいつらに魔法でも見せてやれ」
「どんな魔法にはします」
「そうだな。火柱やら雷束は不味いから、冷気で」
「了解です」
「よろしく頼む」
「よろしく頼むよ」
「お任せあれ、後なのですが、範囲内には入らない様に、それだけは守ってください」
「了解だ」
「了解だ」
外に出る。
適当な場所、ダムから流れる道が流れる水路だ。
「二人ともゲームの経験はありますか」
富坂、風間の二人は頷く。
「ティルズが好きかな」
「自分はスパロボだ」
これに奄美はニコリと笑ってから、水路に向けて手を振るう。
数十m先までの水路が凍り付き、一瞬の事に二人の尉官は言葉がない。
「こんな物です。Lvが上がれば使えるようになりますよ」
「あ、ああ想像以上だ」
「こんな物を放たれたら困るな」
「火柱や、雷束は目立ちますから、それに冷気の魔法のみこんな事も出来ます」
奄美が砕く感覚で、氷漬けになったものを全て砕く。
ダムから流れる水が凍りを押し流す。
「何かと便利な魔法なのです」
「魔法というモノはどのようにして覚えるのかな」
「魔力を使った法則の学問、それが魔法ですが、魔法をどのように覚えるのかという点については禁止ですのでお答えは出来かねます。どうしてもというのならゲート内部のダンジョンのたどり着くガンゲイル王国の魔導院にご連絡のほどを」
「本当に異世界が有るのか?」
「俺は異世界帰りですから、感覚的に分かるのです。知っているってね」
二人の質問に答え、暫くしてから第1小隊が第2・第3小隊の訓練を行う
調査課もLv上げに励むことになっている。
◆10/2
久し振りの休暇は、シオ、周防、戸村と出かけた。
◆
10/3日~10/28日。
調査課はLv上げに励み、+20にまで上がった。
若宮Lv[46]来栖Lv[36]奄美・浅間Lv[40]四之宮・周防・戸村Lv[47]
後方支援の6名は+5
波田間・速水・加藤・瀬戸内・悠木・フィリスLv[15]
◆
10/29日。
10月最後の土曜日。
on-line通信での周防とのアーマードコアでの対戦。
ひたすら白兵戦で戦う。
シオ、戸村は同じように対戦し、ひたすらバランスを競うように戦う。
元々ゲーム好きなので特に問題なく対戦は深夜まで続く。
◆
秋のど真ん中でもあるが、南の島はまだ暑く、それでいて夜風は冷えるというまさに秋の季節だ。
そんな朝方。
ヘビードラゴンのピオが、暢気に眠りこけた周防の頭の上で、陽気な声を出して鳴いていた。その凛々しい顔立ちはまさしく侍とでも言おうような容姿だ。
その黒曜の両目がうっすらと開き、直ぐに大きく開く。
「はっ」
(落ち着け。ここは)
土曜日に密かに飼っていたヘビードラゴンが使用人に見つかり、慌てて連れて逃走したが、当然の様に親友の仄の元には直ぐに親が黒服どもを指しけることは容易に理解できた。
そに切り札のスマホを使い、直ぐに奄美の所に飛んだ。
こういう時の奄美の頭の回転は非常に早く直ぐに理解し、強化系を使ってすぐに現れ、そのまま深夜の船に乗って逃走した。
それらの手配をした奄美には大変な感謝だ。
その奄美は個室のドアを背に何故かカロリーメイトを食べていた。
「起きた?」
奄美の頭を使っている時の声、魔法を使うときの声とよく似て低いトーンの声だ。
「起きたぞ」
「さっきね。ピオがお腹が空いてカロリーメイトを漁っていたから、一欠けら上げといた」
「感謝、よかったなビオ」
「ピォ」
「今度は俺らの食事も考えないと」
「ちなみにこの船はと何処に」
「鹿児島、台湾の方が近いけど、鹿児島の方が遠いし、逃げるなら遠くの方へ」
「よし、なら日本語が通じる」
「ピオ、話した通りリュックへ」
「ピオ」
周防のリュックへの潜り込むピオ。
それを周防が見た。
「もしかして話したのか?」
「そうだよ。言葉は大抵通じるし。言っている意味は少しは分かる程度になったよ」
「おお!私も少しだけならわかる」
「お互いドラゴンテイマーの素質があるかもね」
ドアを開けて外に出る。
食道で食事し、疎らな客もいるが、季節なのかやや人が少なめだ。
周防の躾からかなり丁寧に食べる。
リュックの中にいるピオが時々顔を出し、周防の食事を齧りリュックの中で咀嚼している様だ。
「ひとまずあと1時間で鹿児島に降りる」
「ふむ」
「そのまま船の乗り場で別の船に乗り換えて沖縄に戻る」
「・・随分となんというか、思い切って懐に入るのか?」
「出ていく船は真っ先に思い付くけど、戻ってくる船は無警戒だしね。相手もそれは予想していないと思うしね。後はゆっくりと仲間に連絡し、ゆっくりと説得するしかないね」
「うむむ。こういうのもなんだが口下手なのだ」
「そういうところはあるけど公衆電話から連絡はでそうだしね」
「公衆電話?」
「町中の適当な場所にある有料電話」
「ふむ」
「ここが緊急連絡先」
何時か世話になったビジネスホテル、この電話番号を覚えた周防は、時間を見る
「降りるよ」
◆
真からすれば不思議な経験だ。
ゲーム仲間でもあり仕事仲間でもあり、よく遊んだりする友人の一人だ。
頭の作りが人と違う様で、年齢偽装もあっさりと行い、その他の行いも全く申し分ない。
それで乗り換えた船は豪華客船だ。大きくはない小さな客船に伯がついたような船だ。
個室をしっかりと抑え、船員に案内されてはいる。
「ピオ、ご協力感謝するよ」
「ピョォ」
「そうか。ピオも楽しんでいるか」
「ピョ」
「ピオからすれば見知らぬ世界だし、当然興味がわくと思うよ」
そういうと奄美は椅子にもたれ直ぐに寝息をたてた。
私も仮眠を取る前にピオと遊び、色々と説明してから仮眠をとる。
◆
再び仮眠から起きると、奄美は椅子に座りどこかで調達したのか再びカロリーメイトを齧っていた。
ピオを探すと部屋の窓から海を眺める。
「はよ」
奄美の陽気な声が聞こえる。
「おはようだ」
時刻は午後1時、昼時には過ぎた時間帯だ。
どうやらかなり疲れていたようだ。
「ピオ、そろそろ食事に行くぞ」
「ピォ」
リュックに中に飛び込む。
二人して食事に行き少しは気楽に食べられた。
食事の後は部屋に戻り、再び仮眠。
「周防」
「ん?」
奄美の手には携帯ゲーム機、家庭用携帯ゲーム機、短距離なら通信対戦も出来る奴だ。
受け取ると、ソフトはアーマードコア。
「まさか」
「そそ、船の中で暇になると思ってね。」
「見事!」
「じゃ。対戦すっぞ」
やることができると人というのは妙なもので、途端に時間の流れが変わる。
ピオは海を見ていた。
白熱した対戦もあって時間を忘れる。
「そろそろ夕食だね」
「だな。ところでピオ」
「ぴ?」
「もし、この海と空がどこまでも続くのならどこに行きたい」
「ピォ」
意外にもリュックの中だった。
この二は二人して笑う。
◆
夕食の後は船のデッキでの星空を見る。
ピオは大パノラマの星空に言葉がなく呆然と夜空の星々を眺めていた。
地球上にはいないような生物のベビードラゴンだ。
目立つと思い、また防寒着も兼ねて着ぐるみをつけさせている。
海の夜風は冷たい、秋にもなる頃でもあるし。
「言わないのか」
私がそういうと、奄美はニコリともせずに不愛想な顔で、またカロリーメイトを齧りながら頷く。
「君の判断を尊重する」
色々な感情が胸の中を行き交うが、私から言えるのはこの言葉だ。
「ありがとう」
口下手な所がある私のこのところが何か惜しい気がした。
「どういたしまして、塩味のカロリーメイトは微妙だ」
なんとも変な友人で有った。
この日の夜は何気ない会話をしながら星空を見ていた。
ピオは世界というモノを初めて知る。
一つの閉じた世界のダンジョンからこの世界に訪れ、この世界の一部でもあまりに広大な物語の様な世界だ。この者達の行く先には何があるというのか素朴な疑念が湧く。
◆
沖縄に戻る。
港の公衆電話で、ビジネスホテルに連絡する。
「ミアキ・カデンツァよ」
「奄美・信雪です。お久しぶりですンデンツァさん」
「何でも女の事の逃避行中とか、一応部屋はとってあるわ」
「感謝です」
少し話し込み、それから自転車に乗って向かう。
ホテル・タンデムの前で自転車を止め、このホテルで休み、ホテルから仲間に連絡した。
相当な騒動になっているらしく、情報は混乱するも、何とか連絡を取り合い落ち着いた。
周防真の祖父の周防真三はカンカンだったが、見つからない孫の心配の余り入院してしまう。こうなってはと二人で会いに行く。
当然の様に非常に怒られた。
◆11/1日~12/31
久しぶりのアパートのベッドの上で起きた。
いつも通りに佐倉さんと話、バーガーショップに行き、登校し、昼飯を食べ放課後に仕事場にないく。
こんな循環を行い、第5層を攻略し、第6層に行き着き、ここでも友好的なモンスターの子猫を見付ける。このダンジョンの有効的なモンスターの好みである植物を与えると協力関係を築けた。
第7層を攻略、第8層に行き着き、個々の友好的なモンスターの子犬も、野菜を好む。
◆1/1
正月、仕事の関係先巡り、特に周防真三の御老には丁寧に挨拶。
そんな新年を迎え。
1/3までは休暇を過ごす。
アパートから仕事場に行く。
午前8時。
ドローンサービス社の車が入ってくる、夏とは違い日が当たる場所に誘導した。
「おはようございます。谷口さん、佐久間さん、悠木さん」
谷口、佐久間から挨拶が帰る。
「久し振り、元気そうで何より」
いつも通りドローンを下ろし、この調整を行う。
「なんか性能が随分違いますよね」
「あ、わかんだ。マイナーチェンジって奴」
「特に安定感が違います」
「そそ、部品を変えるだけではなく、プログラムも軍用を少し利用したの」
「ちなみに進路はどうするのです」
「この会社に就職だよ」
「そりゃあ。遺跡調査のベテランですし、手放さないでしょうね」
「そっ。月給が50万」
「素晴らしい年俸600万ですか、凄いじゃないですか」
「なのよね。異世界は近そう?」
「あと1、2層ですね」
「ついにかあ」
「今直ぐに可能ですが、色々と面倒も多そうです」
奄美の視線の先には、自衛隊の背広組だ。
(背広組?なぜ彼らが)
「奄美の知り合い」
「ええ、まあ」
(奄美がここまで渋るなんて、嫌な連中なのかしら)
「超面倒な連中です。関わらない方が無難です」
そういった所で制服組の一人がこちらを見てニコリと笑う。
「奄美博士!」
「お久しぶりです」
護衛の一人と共に向かってくる。
人の良さそうな制服組の一人でどうやら防衛庁の官僚の様だ。
「良かった。防衛研究所に戻りませんか」
「そういう訳にもいかない物で、それに紋章エンジンは完成させたでしょう」
「素晴らしいものです。お弟子の来栖銀河でも行えそうな、それでいて戦車のエンジンとしては信じられないものですよ。そこで戦闘機や」
「落ち着いてください。紹介します。防衛庁の職員の整備計画局の篠川乱造です」
「悠木双葉です」
「よろしく。では新造の」
(かなり仕事熱心な人なのね)
「篠川さん」
「はい?」
「エンジンなら全てに可能ですが、全ての船を新造エンジンにした場合、その維持費は」
「僅かな数値の変化に過ぎません」
「野党とかが、予算について色々と言いますよ」
「そんな物だと理解しております」
「そもそも紋章化についての改善点などの改良はまだわかっていないのでしょう」
「後々に可能だと判断しております」
「紋章化はいうなれば出力を強化する方式、この伝達系に関係する部分の付加は跳ね上がります。結果としてそのエンジンをを搭載するものの耐久年数を激減させる欠点かありますが」
「確かにその点は改良の必要がある、しかし、もう必要ではない様々な船・戦闘機が有ります。実験用にお釈迦にしても全く構いません」
「研究者としてその姿勢は納得で来ません。それらには」
「しかし」
二人の白熱した会話。
悠木もドローンの実験などで分かるが、紋章化は非常に問題の多いものでもあり、これらの改善の為には、紋章化を行う技術者と同じくらいの汎用紋章化を行う必要があるのだ。
(確かに面倒な連中)
悠木はそこまで思いふと考えた
(そっか。奄美が唯一の魔法使いであり紋章使いであり、それは防衛庁の整備計画課は放さないわよね)
当然の物だ。
奄美の紋章化の研究はそれほど資金を必要としないために、上からかなり評判のよい技術と言われていたし、技術のノウハウを培うために多少の資金を使うのは別によいと思うのも理解はできる。
そしてあることを察した
(そんなお宝の様な少年を手放さない防衛庁整備計画課からすれば、異世界へと繋がる門は邪魔ものか、確かに面倒だわ)
しかし。奄美の戦闘能力は恐らく個人としては最高峰のレベルだ。
LvUPによる身体能力強化、魔力の強化によって、その戦闘能力はけた違いで有り、一般兵では敵う筈もない、そうすると当然の様に個々のダム前にある第4中隊を使うしかないわけだが、それは甘いという認識だろう。
奄美の能力を知る自衛官なら間違いなく戦わないことを優先する、モンスターが氷漬けや雷撃で破壊される映像を見れば真っ向から戦う気には思えない筈だ。
特に重力系の攻撃魔法を受けたモンスターは想像を絶する痛みを受けて絶命する。医者でもグロテスクな死にざまというほど、グロテスクな死に方をする魔法の一つなのだ。
「という訳で必要な兵器開発よろしくお願いします」
「し、しかし、そのような巨額の」
「異世界の資源」
「で、ですが」
いつの間にか奄美に押されている篠原を見て悠木は可哀想だなと思ったりする。
「奄美、魔法でもあげたら」
「ダメ。この方々は軍医から散々無理と言われている。防衛庁でも魔法使い増産計画は一応あったけど、想像を絶する来栖の執念にほとんどの者が、一般人では死んでしまうと医者にいっているから、あと1秒で来栖は死んだ。それを押し付けるわけにもいかないのもひつの側面なんだ」
「本人はけろりとしていたけど」
「全身を鋭い針のドリルで全方位から穴をあけられるような痛みだよ」
「確かに痛そう」
「普通の人なら即死レベルだよ」
「うん。無理」
「魔法を得るとは狂気との比べっこと揶揄する人もいるぐらいだ」
「確かに正気じゃないわ」
「後篠原さん」
「はい」
「あとすしで繋がります」
これを受けた篠原は複雑な顔になる。
喜ぶべきか、悲しむべきか、怒るべきか、悩むべきか、抗議すべきか、歓迎すべきか
そんな複雑なモノが入り混じり、なんとも複雑な表情になる。
「軍医は喜びますよ」
「でしょうね。未知の薬か、これには大変な額が用意されております」
「他にも未知の種子」
「農林水産業のますますの発展ですな」
「未知の鉱石」
「工業分野、しかも手付かず、幸運なのかもしれないことは重々承知しておりますが、ガンゲイル王国からの病という点もあります」
「免疫検査はダンジョン内で」
「ゲートがゲートならよいのですか」
「では何なら嫌なのですか」
「ステーション」
「駅?」
「はい。整備課の若い者からこんなことを言われました。何処に繋がるかもわからないダンジョン、ならどこから入ってくるのかわからないモンスター、存在する筈もない遺跡、これらを結び付けると下手したら複数の世界に繋がる、故に駅と」
「確かに問題がありそうですが、目の前の薬草を捨てますか」
「劇薬のようですが、そうですね。捨てるなら調べてからです」
「さて、篠原さんとしてはどうするのです」
「上に提出したら首を絞められそうです」
「そうですね。紋章化をしたレーザーガン、レールガン、ブラスターのエネルギーパックやマガジンを調べてみればかなりの事になります」
「そのような報告は」
「そりゃあそうですよ。知らないのですから」
「奄美、どういう事?」
「紋章機械工学の実験で生み出された廃品です。まさか廃品を装備ですとは報告できませんから」
「酷い、そんな贅沢な装備を使っているのに実験データ一つ寄越さないなんて」
「あれもね。少し考えモノなのですよ」
「もしかして製造の事ですか」
「それもあります。弾薬に一つ一つ刻印するしかないですから、しかもモンスターによく効くのですが」
「二次被害ですか」
「いえ」
「とすると、出力の強化による過負荷による耐久年数の」
「その通り、過負荷過ぎるので、これらのマガジンは切り札です」
「なるほど、他には」
「フィリスさんが作った<スサノオ・強化ユニット>ですかね。名前の通り強化ユニットですが、慨存のパワードスーツを一撃で破壊するだけではなく、数機を輸送するほどの余剰出力が有るのです」
「それはまた、素晴らしい性能です。それらは紋章化などは」
「使われておりません。ある意味応用はされておりますが、フィリスさんも紋章機械工学を研究する一人ですし」
「やはり惜しい、異世界に帰るのを辞めませんか」
「そういう訳にはいきません。あそこでやることが有りますから」
「支援はしますが、外交は任せてもらいますよ」
「ええ。ただ魔導院とは争わないでください。ガンゲイルの唯一の教育機関ですし」
「ええ。その点は上とも話はついておりますが、ただ奄美博士を易々と超える魔法使いがごろごろしているとは本当ですか」
「掃いて捨てるほど居ますよ」
「了解です」
◆
「調査課の営業を開始します。なお奄美君の報告により異世界は近いそうです。またダンジョンのモンスター資源化についての調査報告もあります」
各員がページをめくり調査報告を読む。
「すでに戸村、周防両家による新資源の研究成果は上がっています。スライムがもたらした超耐震性素材、スケルトンがもたらした超軽量鋼繊維の二つです」
研究開発の結果に作られた二つの素材からの新技術は、すでに両家の飛躍を成し遂げるに足りる驚異的な巨額をもたらし、両家より今後もよろしくという文字が記載される。
「また」
生物研究所より、スライム、蝙蝠の両方の報告もある。
スライムは粘菌の集まりで有り、一応生物ではあるが、内部的には粘菌だ。
蝙蝠はこのダンジョン特有のもので、この蝙蝠には視界の確保のために暗視ゴーグルより性能の良い目をしており、放たれる超音波はショットガン並みの破壊力を持つ。
スライムスケルトン、骸骨蝙蝠などからも新しい技術が発見されていたりする。
これらからダンジョンは宝の山であり、これらの簡単経済的な価値は兆に届くようなレベルだ。さらに踏み込めばさらに上昇し兆を易々と超える。
経済的なことを言うのなら、これらが人を狂わすに等しい宝の山でも、未来ではあって今ではないのだ。
◆
報告会議の後、ダンジョンに潜る。
第4中隊の第1小隊・第2小隊・第3小隊も同時に潜る。
第一層から第8層を通り、第9層に潜る。
現在の平均Lvは100、道具有りMP=106、道具無しMP=550
身体能力でいえば通常の自衛隊で使われるようなパワードスーツを易々と突破する身体能力を持ち、余りの高い能力からこの育成法が考えられるが、負担が大きすぎるという声も強いのも事実てあった。
遭遇するモンスター、恐らく敵対的なモンスターなのだろう。
巨大なサソリ、これが複数の個体。
「来栖」
「了解です師匠。今回はサンプル確保無しでもよかったと」
「構いません。派手に」
「了解です」
来栖の好む重力系<グラビティLv2>を放つ、重力子が複数体の前方に作られる。
<グラビティLv3>は作られた重力子の壁というべき球体から、極小の重力子を数十個に分けて作り、来栖の意思の元、一つ当たり数十の極小の重力子が散弾の様に幅5メートルはある巨大なサソリに接触すると。
「!?」
サソリの悲鳴というべき声が一瞬だけ残り、直ぐに重力子がサソリをミンチに変えた。
他のサソリも別の重力子より放たれた極小の重力子によってミンチだ。
凄まじい破壊力かもしれないが、これでもLv3、Lv4は切り札だというべき強力さを持つ。
次に現れた多頭の蛇のヒュドラに向け来栖が別の魔法を放つ。
<サンダーLv4>
雷撃の嵐を受けたヒュドラは、その落雷に匹敵する高電圧、破壊力の嵐を受けて炭化する事すら許されずに塵となる。
「見事な腕前です。ただ制御感覚が掴み難いとも思いますし、なるべく制御を心掛け下さい」
「はい。Lvまではどれくらい差が有りますか」
「来栖は放電系が苦手ですからね。放射系は抜群に上手いのですが」
魔法使いにもタイプ言うものが有り、得意不得意もちゃんとある。
来栖は万能型の魔法使いながらも、攻撃魔法では自らを中心とした一定方向への放射を得意とする。この点なら免許皆伝と言い渡したくなるほど卓越するが、全方位や一つを支点を中心とした放電系というモノが苦手だったりするのだ。
一定方向、前方のみの方向性、所謂に指向性への攻撃魔法を得意とする。
魔法特有の難しい感覚的な制御法もあるが、来栖は非常に優れた資質を持つ。
このまま魔導院の試験を受ければ1年と掛からず、同じ様な階級の上位正規魔術師になる事は確実だ。
しかし。
(研究よりダンジョンに潜って暴れるのを好むのは困ったものだ)
つまり時代の流れの研究者や技術者に向かない、戦闘的な性格があるので、困ったものなのだ。
弟子の来栖の年齢は奄美より年上の25歳だが、精神的にはまだ上だろうが、他の魔法使いの知り合いや友人に仲間などがいないために、経験値や発想が絶対的に不足なのだ。
「もういいかユキ」
「ええ。弟子が戦闘的過ぎて困るのも何というか」
直ぐに歩き出し。
来栖がLv4までの魔法を使い。
炎の波、雷の嵐、氷の大通路、重力の嵐。
これらの四種類だが、重力に関していえば実際的にはLv5に相当するが、しかし、魔法の分類的に言えばLv4、このような面倒な事も有って来栖の切り札と収まる。
ちなみに消費の事を考えればLv1は1MP、Lv2は4MP、Lv3は16MP、Lv4は64MP、Lv5は256MPぐらいだ。しかし。道具無しMPを持つ来栖のLvは100、総MPは550、一時間当たりの回復量は45・8ぐらいだ。
来栖からは師であるアマミの魔力が増大と共に、その実力も第1・第2・第3小隊の攻撃魔法のLv1としても、同じように奄美が使えば10倍近い差がある。拳台の火の玉としても奄美なら等身大の火の玉を放つ、しかもこれでも諸事情の為に制限している方だ。
奄美の真価はまたそこにはない。
魔導院での学習・訓練などの鍛練を行った結果、魔力が足りなくても魔法を習得する、そして戦いを重ね経験を積み、ゲームのようなLvUPで魔法を使用可能になる。
正規魔法という分類ですら膨大だ。
汎用魔法は途方もない数が有る。
これらの他にも様々な魔法に精通する、その膨大な知識だ。
初めて奄美の魔法を見る者は、何の冗談だとか、CGとか、映像処理とかというが、それはLv5などの魔法だ。
まさしく破壊の為に作られた魔法のランクに入り、一撃で密集した軍を叩き潰す強力な物だ。
しかも、奄美にからすれば、これらのランクでもまだまだという。
また魔法の系統も熟練度というモノが有り、使い慣れる歳用MPが減る。
こんな事も有って、師である奄美の攻撃魔法というモノは一撃で一つの部隊に匹敵する。
特にLv5は、軍人なら真っ向からの戦いは遠慮したくなるような破壊力を持つのだ。
◆
各隊に分散する探査用のドローン、今では小型の早期警戒機の様な物で、各隊に対する電波状況の支援なども行う、陸自でも正式採用の話でも出るが、お値段の関係上でコストダウンをめざし中だ。
この採算度外視のドローンにより、探知されたモンスターの情報も、今後のダンジョンでの潜りも考え、データ採取も頻繁に行われる。
またこのドローンは多少の積載量の余剰が有り、物資を運ぶことも可能とする優れ物なので、下手なパワードスーツより高価だ。
これを一人で制御する悠木は優れたドローンの使い手で有り、これらを保有し・維持するドローンサービス社とは波田間だけではなく、周防・戸村の二つからも契約の話があるのだが、すでに調査課との契約を結んでいるので当座は無理だ。
通常の使い捨てドローンが数千円、探査用ドローンは凡そ1万倍だ。
これらから得られた情報は調査課に送られる。
この為に調査課も情報支援を受けてこれらを頼みとしていた。
「あれ」
三代目の指揮車両の一部に設置された有機専用のドローン制御ペースの中でおかしい反応を見た。
「フィリス!」
反対の席に座り、調査課の探査チームのパワードスーツのメカニカルチェックを担当していたフィリスは暢気にポッキーを齧っていた。
「はっへぇ」
「光!」
「ふぉはぁちとぅ(了解任せて)」
フィリスもチェックすると、有るはずのない反応を見付ける。
「ひぁりぃ(光)」
口のポッキーをリスのように口に入れて食べ終える。
「光です。光発見、光量率増加中、出口です!」
当然の様に波田間も速水もその方向をしっかりと聞き、9層にいる探査チームに伝える。
「周防、ピオを先頭に」
「ピョォ?」
「別によいが」
「ピオ、言っておきますが、優しい世界ではないのです。」
「ピー!」
「分かりました。全く異世界に行くのはよいのですが、やれやれ」
しばらく歩くと、ピオが止まる。
「やはりそういう事か」
「いえ、倒れている人がいます」
「ピオ!」
「ピー!」
倒れている人に近付いたピオが治癒の力を使いこの人を癒す。
「ドク!」
ドクと呼ばれる軍医が呼ばれた。
軍医、看護師免許のある衛生兵が調べるが、直ぐに首を振る。
「この人は人間じゃない」
「人間じゃない?」
軍医がライトを照らすと、背中を向けているようで、その背中には鴉の羽の様な漆黒の翼が生えていた。
「ピュ!ピー!」
奄美が駆け寄る。
汎用魔法の<街灯>を使う。
まだ息はあり、また着衣は魔法使いの魔導院の正規魔術師の証の長衣だ。
「生きていますが、厄介なことになりました」
「治癒できるかね?」
「ええ。簡単にできます。ただ幸運中の不幸ですね」
「ピッ?」
「いえ。癒しの光を宿れ」
正規魔法の治癒系統のヒールLv4を掛ける。
人を安心させる暖かな光がこの鴉翼の人のかかる。
「う」
「やあ、バードマンの魔術師、生きているか」
ガンゲイルの魔法使いたちが集う魔導院の言葉を使う。
「生きている」
「名前だけは教えてくれ、俺は奄美信雪」
「シュリクク」
「ひとまず運ぶ、医者も居るから安心しろ」
「他にはいない」
「のようだ。今は休め」
◆
異世界の扉をくぐる。
調査課の探査チーム、陸自の第4中隊の第1・第2・第3が踏み入れた。
場所としては山岳、海、砂漠、草原などが入り混じる広大な土地だ。
奄美が事前に作っておいたガンゲイル王国の国土マップ、周辺国の地理などのマップ。
これらからこのような特殊な地形は、バードマンの聖地であるウルクルイだと判断した。