【02-02:9/1日~9/26】
アパートより登校する。
学校は桐ケ谷家高校、一般的普通科の高等学校だ。
「あら、お隣さん」
声の方角から隣のアパートの一室の住人と分かる。
その方角に視線を向けると、箒を持った女性だ。
20代程の女性は可愛い分類にはいてるだろうし、相応に持てるとも思えるし、悪くはない容姿だが、あまりに善良な雰囲気過ぎて、直ぐに騙されそうな女性にも見受けられた。
身長の方は160cm程度、服装の普段着から別に仕事に行くわけではないらしい。
「隣の奄美信雪ですよろしく」
奄美が速水のようにこやかな笑みの後に頭を下げる。
「これはこれはご丁寧に、佐倉七海です」
「こんな安いアパートに越すなんて珍しいですね」
「そうよね。安いからお財布には助かるのよ」
「ええ。知っています。」
「高校生?」
「はい。よく中学生の様な顔と言われますが、高校1年生です。佐倉さんのお仕事は看護師ですか」
佐倉の顔には驚きが現れる。
「ええ。看護士よ。市内の病院に勤めるの、やりがいのある仕事よ」
「そうですか。それは良かったです。」
(自衛隊の看護士資格を持つ衛生兵か、それも情報系関係も絡む)
「それではこれで」
「ええ。学生さんも頑張って」
学校まではモノレールだ。
その近くのバーガーショップで朝飯のバーガーを食べ、友人の四之宮と合流した。
身長174㎝位の中肉中背の高校1年生の男子、調査課では探査チームの隊長兼隊の運営やらなんやらを行う、ダンジョンの攻略法の基礎を作った元引き籠りだ。
「ようユキ」
奄美信雪から名前の最後の一文字を取ったあだ名だ。
「おうシオ」
四之宮志雄、名前の二文字をとった物だ。
「最近は景気がいいなあ」
「全くだ。だからこそ体はしっかりとさせなきゃなあ」
「体は資本、まさにそう」
「何せ死ぬまで使う仕事道具だ」
これにシオが笑う。
他の客からは朝の冗談としてはあまり良くないが、学生なので無視していた。
それでも朝方の閑散とした時間帯だ。
取り留めない挨拶などよくある事だ。
食事後登校する。
桐ケ谷高校の制服は、紺の縁にラインが有るジャケット、ボウタイ、白いシャツ、藍と緋のチェックのズボン、靴には指定はなく、鞄も指定はない。
女子の方はズボンからミニスカートに変わる。
市内の気候としては、南にある島の為に、日本本土からすれば熱い印象はあるが、また涼しく、代わりにムシムシとした蒸し暑い気候だ。
海が直ぐ傍にあるために常に風が吹き付け、結果としては過ごし易い気候を持つ。
しかし、照り付ける太陽の暑さは本物だった8月に比べれば、9月はまだ過ごし易い。
高校に校舎に入り、職員室に向かう。
事前に通知されているように、学校の見取り図も二人は覚えおり、四之宮に関していえば細かな数値まで覚える。
「失礼します」
朝方の職員室には職員が集まっていた。
「ああ。四之宮君が案内したんだ。やっと引き籠りから離脱だね」
嫌味なことを言う若い教員、他の教員からにらまれて気づき、適当に言葉を濁す。
「担当教員はこちらの」
白髭のおじいさん、何やら定年間近な人だ。
「黒古享祐、よろしく頼むぞい。しかし、奄美君は2年間国外に暮らしていた。四之宮はゲーム三昧の生徒と聞くが、まるで訓練された兵士のような雰囲気を持つ」
「はあ?」
「先程の冗談じゃ。その方が良い事も有る」
四之宮は苦笑し、奄美には油断のならない教員のように思えた。
「まあ県の職員より来た話ですので身元は確かでしょう」
「君は安全管理ができないようだね」
「は?」
「身元が確かでもなぜご家族が現れない、何故国外にいたのだ」
「お仕事の都合と聞きますが」
「まあいいさ。何かあった時の事は誰かが引き受けるのだから」
「ちょっと変な所が有りますが、ベテランですのでお気にせずに」
なんとも変な教師との対面だった。
◆
クラスでの紹介し、四之宮と同じクラスの為に喜んで机を前後にした。
学業の面では不安の残るために、勉強には一生懸命だ。
この為に真面目な転校生と元引き籠り思われた。
短い休み時間は四之宮と話し、この会話に興味を持った他の男子と話す。
そんな感じで少しだけ馴染め始めた事も有り、昼休みになれば、三年生の場所を聞き、そこに知り合いがいると言って抜け出した。
そこに身長180㎝近い179cmの高校3年生の男子の浅間が現れる。
黒髪の短髪、引き締まった身体つきの頼れる先輩だ。
腕っ節が強い訳でもないが、危機察知能力に関しては誰にも負けない才能を持つ。
「よう奄美、四之宮」
「ちーす。浅間先輩」
「学校では初めてですね浅間さん」
「なんか新鮮だな」
「それはこっちのセリフですよ。」
「浅間さんの学生服は、インパクトが有りますね」
「そうかい、まあ双葉も追々来るだろう。学食に行くぞ」
「了解です」
「浅間さんは面倒見が良いから助かります」
学食まで進むと、女子高生姿の悠木双葉がいた。
高校3年生の朱いボウタイをつけたブレザー、カーディガン、ミニスカート、タイツ姿。
亜麻色の髪は真っ直ぐな癖のないストレート、大き目の瞳と大きなメガネをしたスタイルもよい方の女子高生の悠木双葉。
「おっす二人とも。雄真にしてはよくやるわ」
「俺への扱いが酷い件について、まっこいつらの面倒位は見るさ」
「ちーす悠木先輩」
「久し振りです悠木さん。なんか朝合わないと学校だなと思いますよ」
こんな会話に悠木はうんうんと頷く。
「ひとまず注文はしておいたわ。焼肉定食特盛」
「おお。双葉が奢る、すげえ珍しい」
「ごちになります」
「足りるかな、いやさすがに足りるよね」
四人で食べる。
他の生徒もおやと思うような構成ではなく、その食べる量が普通の物の二倍近い事に軽く驚き、これらを食べるのが男子生徒は分かっても、女子生徒が食べる様な量ではない。
しかし。
ポン酢のかかった野菜、分厚い焼肉には焼肉のたれ、丼のご飯、他と違って極普通のサイズの豚汁、追加品のマグロの炙り、これらが特盛だ。
「御馳走さま」
四之宮が食べ終わる。次に奄美が食べ終わる前にドリンクを配る。
「ごちです。まああれですね。平和な時間が流れる」
「そうそう平和がね」
「で、救援隊とかのLvは」
「そうですね。警備隊が16、6、救援隊が17、調査チームが10ですかね」
「意外にLvが上がったのね。前回の戦いなんて魔法を使わなかったじゃない」
「仕方ないのですよ。どんなモンスターなのかはわかっても、フロアボスの耐久力は今後のボス攻略戦の参考になりますよ」
「ゲームネタはいいね」
「女子からすれば微妙なんだけどね。まっ、今更だけど」
事前の打ち合わせでゲームらしく、出来ればネットゲームらしく離すことで、会話をしても不思議に思われない特にVRMMORPGならまず疑われないという四之宮等の提案により、ネットゲームの会話を行うように偽装してから会話していた。
◆
学校での午後の日中を過ごした放課後。
ダムに行き、そこでのタイムカードを押す。
時刻は04:00.
ゲート前に駐屯する陸自の小隊、通称モグラ、主な装備は専用のパワードスーツ<スサノオ>、レーザーライフルの光線銃、レールガンの超電磁砲、格闘専用の高熱刀身の刀、高振動の穂先の伸縮式の槍。
同じく活動を行う県の調査課には、専用のパワードスーツ<ミカガミ>、自衛隊と同じ武装、奄美、来栖の魔法使い専用の<ミカガミ・改>現場での通称はウィズ。
また陸自ゲート調査特殊01小隊、県調査課の共通な特殊武装が攻撃魔法を刻印された魔法機能を有する武器所謂魔剣だ。この魔剣が最も強力な武器でもある。
2Fを探索する。
昨日のエリアボスを倒したことで、米軍の派遣調査員の二人は、相応にダンジョンの生き方を学んだようで、訓練に勤しんでいた。
奄美が先頭になり、一階を突破し、二階に入る。
遭遇したスライムを鎧の様に纏ったスケルトン、骸骨の蝙蝠の二つは敵対的なモンスター、クリスタルの小さな翼竜は友好的なモンスターだったので、クリスタルベビードラゴンと名付け、この小竜には餌を与え手懐けた。
子竜に餌を与え、暫くの間は協力してもらい、敵対的なモンスターと遭遇した時に頼もしい用心棒になる。
見た目は可愛らしいクリスタルペルードラゴンだが、敵対的なモンスターには冷気のブレスをはきどんなモンスターも一撃で仕留める、しかもダメージを負った自衛官の傷を癒し、それだけではなく、傷を負った者を重点的に守る優しさと知恵を見せた。
この為にクリスタルベビードラゴンの事をイルカと呼ぶ者も多かった。
このベビードラゴンに案内され2Fにて巨大な村規模の遺跡を見付ける。
ヘビードラゴンも居るので、安心して内部を探索し安全を確保すると、今後の中継地になる事は容易に想像でき、しかもヘビードラゴンがいるので安心して休めるので、食料などをヘビードラゴンに提供し、探査隊は一度引き上げた。
08:00、ダム。
「Lvが上がらないが、友好的なモンスターと遭遇し、一定の協力関係を築く事に成功する、彼らは伝説の竜に似るも、暴虐な所は一切なく、怪我した物を癒し、また怪我した物を守る知恵と慈悲の心を持ち、どんな敵も一撃で凍らせると力を持つ、小さな竜ながらもクリスタルのように澄んだ心を持つ小さな友たちの事を忘れてはならない。彼らはダンジョンの中でも非常に希少な者達であり、ダンジョンの探索にかかせられない心強い水先案内人である。また彼らの案内で巨大な遺跡を見付けたことは、ダンジョン探査の大きな前進であることは筆舌を尽くし難い功績である」
奄美のダンジョン探査記録をつけ終え、調査課のメンバーが夜食を食べるのに混じり牛丼特盛を食べ終える。
「クリスタルベビードラゴンは是非家族に迎えたいな」
「シンに凄く懐いていた物ね」
「ああ。ただあの中から一体というのも難しいものだ」
一匹と呼ばないところが本気さが分かる。
「確かにね♪、あの可愛さなら一緒に暮らしたくなるわ」
悠木も話題に乗る。
「あの可愛さはよいわあ。しかも治癒の力に冷気の力、家族に居れば助かるわあ」
加藤も偉くお気に入りの様子だ。
「でもね。あのような生物がいたら間違いなくラボ行きよ」
フィリスの現実的な台詞に、家族に向かい入れようと考えていた二人は溜息を吐く。
「あの可愛さよ。当然のように家族にと思う者は多いわ」
フィリスの言葉に誰もが納得だ。
「2Fの護衛だけでも十分よ。あの可愛さが癒しを生むのよ。旅先の良い事と一緒」
「だけど、もしかしたらテイムできるかもしれませんよ」
聞き慣れない単語を口にした四之宮に、周防が尋ねる。
「四之宮、テイムとは何だ」
「飼いならすという意味や、手懐けるという意味だ」
「ヘビードラゴンをか」
「そうだ。もし成功すればモンスターテイマーなるな、怪物を手懐けた者の意味だ。ヘビードラゴンでも竜だからドラゴンテイマーになるな」
「気軽に二階に行けるようになるのなら試したいことだな」
「俺からすれば違った意見かな」
奄美が言う。全員の視線が集まる。
「テイムだったか、彼らをある程度は手懐けられても、家族や一族から引き剥がすのは反対だ。それは非常に辛い事だ。しかも俺達には彼らの生態も分かっていない、彼らの病を分かっていないという事だ」
「何事も一歩を踏み出さねばならないことになる彼らとの関係の強化が絶対に必要だ」
「では関係の強化と言い彼らの一人を引き剥がすのは人として正しいか、必要な事と、正しいという事は全く違う別物だ。また彼らの生物としての構造に興味を持つ者がいないとも限らない、その危険性に会うのは人ではなく彼らだ。その一人目の犠牲者を作るのはどうかと考える」
「確かにそうかもしれない、しかし彼らの協力なくして2階は突破できない、そんな彼らのことをよく知る事だ。それこそが最も確実な一歩であるし、彼らとの相互理解こそが我々がダンジョンの内に置いての探査を行う為に必要不可欠な事だと私は考える、彼らの治癒の力は奄美のヒールには及ばないが、それでも強力な治癒の力は怪我人を癒す為に必要であると言える」
「ねえねえ、なんで議論しているの~」
「いやなんとなく」
「なんとなくしたくなった」
「シンも甘々もぶつかってみてどうだった」
「悪くないかな」
「面白い、突っ込んだ話はあまりしないからね」
「という訳で喧嘩ではなく、議論のぶつけ合いでした」
要するにじゃれ合いだ。
全員からすれば驚くべきことであるが、二人とも議論を吹っ掛ける様な理屈っぽさが有ったりするも、それを悪く思う事はないらしい、むしろ楽しんでいるところから二人の仲の良さを理解できるし、その仲裁のように話した戸村のやり方には褒められるようなお手並みだ。
「中々面白い会話でした。奄美君は彼らにはそのままに、周防君は彼らのを知る為には変化も止む終えないと、どちらも一長一短であり、誰もがどちらにも共感するような内容です。良い議論でした」
波田間がこうまとめると一人一人がポツリと意見を話す。
ヒートアップしないように戸村が少しずつフォローし、時には仲介し、結果として議論を円滑に行わせる潤滑剤になる。
まるでオイルのような女の子だ。
◆
Lv上げのためにダンジョンに潜り1Fで+1してからゲート出入り口に戻り、休んでからタイムカードを押して、自宅のアパートに戻る。
アパートの部屋に戻ってシャワー、歯磨き、今日の学校の復習、明日の学校の勉強、明日の準備を行い、ちょっと時間が余ったという所でゲームをしていたらドアが叩かれる。
外に出ると。
私服姿にお裾分けなのかカレーを入れた鍋を持つ看護士のお隣さん
「佐倉さん、どうかしましたか」
「カレーのお裾分け、学生だから料理は作らないかなと」
「飯だったら」
と言いかけて非常に腹が空く、その俺の顔を見た佐倉さんは微笑してカレーの入った鍋を渡した。
「感謝っす」
「ええ。しっかり食べるのよ」
(さすが自衛官、健康的なメニューだ)
夜食はカレー二杯だった。
◆
朝方起き、時刻は午前6時。一日8時間は寝たいが、色々と有って6時間だ。
久し振りに体力訓練を行い、静かにトレーニングしたので騒音は安心だ。
そんな7時に準備などを終え、鍋をお隣さんに返す。
「あらおはよう奄美君」
「おはようございます佐倉さん、昨日は助かりました。夜食に丁度良かったです」
「え?」
「ええと?」
「二杯はあったわよあれ全部夜に食べたの?」
「はい。美味しかったのと、医者から痩せすぎだと怒られること何度も、どうも太りづらい体質らしいです。そんな訳で体重もさほど変化なく」
「あらまあ、そういう体質の人はいると聞くけど、どこかのボクサーのような体質ね。それで体重は」
「体重ですか、数字としては36kgです」
「奄美君、それは本当?」
「はい」
「ちょっと待ってね」
佐倉が部屋に消える。そして直ぐに体重計を持って現れる。
「載って」
載ると体重はいった数字ほど。
「・・・壊れたかしら、いえ、でも」
絶賛混乱中。
「こんな体重なんで体脂肪も似た様な数値で、軽いなと」
「鍋の二杯が食べられているからこんな数字はでない筈なのに、奄美君」
「はい」
「このままだと死ぬわよ」
さすがに俺も困るように黙る。
「見たところがりがりという訳でもない、高校1年生にしては極めて健康的な平均的な体格、だけど体重が異常に軽い、はっきりと言って中学生の体重ですらないわ」
やはり本職の看護師らしく直ぐに色々と話してくれた。
朝はいつもハンバーガー四個というと、その高カロリーを考えたメニューも加える為にナゲットとポテトとサラダも食べる事と言われた。
兎に角太るために手を尽くす。
所謂拒食症の人の様な体重のようらしい。
そんな訳で朝飯を求めて登校。
モノレール近くのバーガーショップでのLサイズの朝限定しかも高カロリーのバーガーを四個、ナゲット、ポテト、サラダ、スープはコンソメスープだ。
朝方の疎らな会計においても驚異的なメニューの量に、会計が済んでも店員から覚えられるのはよく分かる様な大量の食事だ。
四之宮と合流すると、二人して体重のことが気になるらしい、時給1250円の仕事についているので奄美同様のガッツリと朝飯を食べる。
◆
朝方は過ぎ、直ぐに昼時間になる。
ただ後期の身体測定を行ったので、奄美、四之宮の体重の異常な軽さが噂になる。
学校の記録員もその異常な軽さには驚き、校医が二人を見てから首を何度も捻る。
「健康です」
二人が大喜び。
「放課後に病院には行けますか」
「あー。仕事が有って、ほら一人暮らしですので仕事がないと生活できないのです」
「俺の食費を補うのが仕事なのです」
「土日は」
「日曜日なら」
「なら日曜日に個々の病院」
「シオ、暗記してくれ」
「スマホに登録しろよ。俺は暗記ノートじゃないぞ」
スマホに登録し、昼飯時になる。
校医から連絡が有ったらしく太る料理が選択肢なしで出された。
美味しそうかもしれないが、非常に高カロリーなハンバーガー、チキン南蛮、ハンバーグ、コロッケ、ペペロンチーノ、グラタンという超高カロリー食ばかり。
「やっぱり軽かったかあ」
浅間が口を開く。
「雄真も、私も校医から太れ、これでは拒食症だと言われたわ」
「俺はまだマシな45kg」
「普通はないわよ。女子が体重を口にするのは、24kg」
「35kg」
「39㎏」
「軽量級って奴か」
「軽過ぎよ。なんでこんなに軽いのよ」
「不思議ですよね。凄く食べているのに」
「引き籠り時代の四倍は食べているぜ」
傍からすれば軽過ぎるだろと言えた。
食事を完食し、その後も特製のデザートをバクバク食べる。
他の学生からは見るだけで腹が満ちそうな量だが、四人は平気で食べていた。
小柄な女子よりもよほど軽い体重だ。特に悠木の体重は軽く、普通なら等に倒れているような軽さだ。奄美や四之宮も同世代の軽い男子をぶっ飛んで最下位独占だ。
少なくても桐ケ谷高校の不思議の一つになったのは言うまでもない。
◆
授業などに答えてから、放課後、校医の元で体重測定、体重が少しも増えないことに校医も首を傾げた。
あれだけのカロリーを摂取して太らない極めて特殊な体質としか言いようがない。
しかし、軽いなんてレベルではないのも事実だ。
悠木は小学1年生の平均体重、奄美は小学5年生の平均体重、四之宮は小学6年生の平均体重という高校生の平均的な体格なのに、この体重は異常だ。
浅間はまだ常識的な体重だ。少なくても三人に比べれたら。
放課後の仕事に向かい。
調査課の営業時間は午後04:00からだ。
それまでに近くのバーガーショップで高カロリーメニューを一通り食べる。
その後にゲートのある自衛隊の基地に行く。
この体重減少の症状は自衛隊にもあるので、普通の肥満を心配する人以上に軍医が痩せすぎだといい、食事のメニューを高カロリー食にかえた。
まるで拒食症患者のようだと。
ちなみに統計的なデータを扱う四之宮がデータたから、ダンジョンで潜りLvが上がると体重が平均2kg減少することを突き止めた。
この為に調査課、西田小隊の今日の仕事及び任務は太る事だ。
料理長が太らせて見せるぜと考え付いたのが腹持ちの悪いクリームパスタ、これをLvのある物全員に食べさせた。それに備蓄が足りなくなりスーパーに買い出しに行ってもまだ食べさせ体重が安全圏に入った者には運動するなと言い渡し、ひたすらクリームパスタをすする音が基地には聞こえた。
仕事が終わり、帰宅。
色々とやっているうちにすでに午前9時、あれだけ食べたのに小腹がすいたなと。
(なんか今日は食べてばかりだな)
体重計に乗る。
「よし37kgだ」
一日で2キロ太るという。
ドアが叩かれる。
(佐倉さんかな)
ドアを開けると、案の定の佐倉がいた。
私服に着替えた姿で、さっぱりとした格好だ。
「奄美君、休みに病院に来てほしいの」
「ええと、どっかの総合病院に校医がいけと」
「たぶんうちね。一番大きな病院だし。昔は違ったけど、それで今日のメニューで太った」
「2kg太りました」
「たった2kg?あんなメニューを食べてどうしてそれだけしか太らないの」
両目を大きく開けた佐倉はかなり驚いていた。
「今日は何か食べてばかりです」
「一応聞かせてもらえる」
朝のメニュー、昼のメニュー、夕方のメニュー、仕事先でのメニュー。
食べる量も相当なものだ。
「うーん。普通の人なら数キロは太りそうな物よ」
「一応数キロかなと」
「まあ1日で2kg、うん。一週間もあれば14kg、49kgか、まあ善は急げね」
「急激に太るとダメなんじゃないですか」
「健康な人はね。でも奄美君は異常に軽いわ。それはもう今にも倒れる様な体重の軽さよ。健康状態を考えたら危険すぎて即入院、さすがにこんな痩せた子は初めてよ」
「ご心配おかけします」
「礼儀正しいのはよい事よ。好感が持てるわ。でもこのままのペースで太るのよ?」
「はい」
ちなみに今日のお裾分けはグラタンだった。
◆
食べてばかりの生活を繰り返し、日曜日になる頃には4kg太り、39㎏。
校医の入った総合病院、佐倉さんの勤め先になる病院だ。
桐ケ谷高校組、夕陽女子高組はここでの検査を受け、医者からいえば健康な人より健康な診断だが、むしろここまで健康なのは健康な成人より遥かに健康的だとお墨付きをもらう。
しかし、体重が異常に軽い為にこのままのペースで太る様にと言われた。
◆
体重が安全圏に達したのが翌週の日曜日、9/11だ。
一日に2kg程度が順調に増え22kg増の57kgだ。
お隣さんの佐倉さんに伝えるとホッとされた。
少なくても太りづらい体質でも食べ過ぎれば太るという事も分かり、またカロリーとペースによる一定の期間を考えれば無理なく体重を増加できることになる。
◆
9/12日。放課後になり、同じ仕事仲間の四人は直ぐにモノレールに載って仕事場に行き、そこでの自衛隊基地に入り。
「おう来たかガキども」
隊長の西田は挨拶をする。
ちなみに小隊の戦闘員の平均Lvは10だったりする、この隊長の西田は部下の制止も効かずに、ダンジョンの探索を行うが、Lv的には既に20というトップLvの男だ。
またLv+1毎に道具有りMPが+1されるので、Lv10は+10、Lv20は+20という驚異的な数字になり、初期の数字を数倍に上回る。
更にちなみに悠木、浅間の二人は既に成人しているが、西田の様な年齢からはケツの青いガキだったりする。
「今日はシーフードピザだ。タップリ食ってからお仕事だ」
やたらと食生活の豊かな基地だが、それはLvが上がると体重が2kg減少する奇妙な現象が必ず起きるので、軍医が太らせるために料理長に任せているのだ。
これらのLvが上がる予定では無い者に関してはヘルシーメニュー、逆にLvが上がる者には高カロリーメニューだ。
調査課の警備隊、救援隊、探査隊の三隊の者は、Lvを上げるので必ず1日これぐらいは食べなさい言う指定されたカロリーが有る。
食べてから調査課の施設群に行く。
竜胆研究所のフィリスがこれから装着するパワードスーツを整備を終え、メカニカルチェックを行っていた。
「はい♪」
フィリスが機嫌よく挨拶する、自らの試作機枷売却でき、しかも後継機まで開発できたことが相当嬉しかったらしく、気分上々だ。
4名が挨拶する。
施設内にある指揮車両には波田間、速水、加藤、瀬戸内の四人がそろそろと搭乗していた。
調査課の警備隊の若宮、来栖も必要なカロリーを摂取し、来栖はひたすら紋章魔法の鍛練だ。若宮は体力トレーニング、二人とも185cmを超えた長身な上に大柄な体格から結構な迫力が有ったりする。
ドローンサービス社の谷口、佐久間はLv1の為にLvも上がる予定はない為に仕事を終えると、のんびりとビールを飲む。
「じゃあ。2Fの調査開始です」
2F、調査隊の面々の7名。
いつも階段の方に集まるクリスタルの体をしたベビードラゴン達だ。
「こいつらって種実類が好きだよな」
種実類とは堅果とも呼ばれるピーナッツなどのナッツ類だ。
2Fに行くのなら自衛隊からナッツ類の袋の束が渡される。
自衛隊としても今後のゲート内部のダンジョン調査にはベビードラゴンの力がどうしてもいると判断したために、毎日のように彼らの生態を調査し、大好きな食べる物を見つけ出し、結果としてナッツ類を好む為に、これらを供給する。
結構可愛がっている関係だが、ベビードラゴンに対する安定した食料供給、ベビードラゴンは手を貸すという関係だ。
持ちつ持たれずという関係を築くに至る。
賢いベビードラゴンは簡単な言葉も理解でき、怪我どの場合に呼べば集まる。
そんな訳でベビードラゴンとの敵対などは絶対に回避しなければならない、この事はダンジョンでに潜る際の最低限のルールの一つとなる。
二階の探索を行い、モンスターはベビードラゴンが片付けるので、特に苦労もなくサクサクと調査は進み、別に宝箱が有る訳ではないので、特に問題なく一日の調査を終えた。
1階でのLv上げをこない、地上に戻り、書類仕事をして帰宅。
自宅、学校、職場の三つを循環するだけの日々であるが、体重とLvあげを均等に上げていき、平均Lvが20に達すれば3Fに潜ることになっていた。
◆9/26
9月26日月曜日。
調査課Lv
浅間・奄美Lv[20]、若宮Lv[26]、来栖Lv[16]、四之宮・周防・戸村Lv[27]、波田間・速水・加藤・登内・悠木・フィリスLv[10]
[Lv+1]に付き[道具有りMP+1]が基本
[道具有りMP=魔法機能を持つ魔剣化した道具を扱う場合のMP]
「ⅰイルミネーター。ON」
7名のiイルミネーターが起動する。
「ゲート内部に突入開始、最短距離コースを表示する」
参謀役だが、時としては波田間の不在時の司令塔にもなる速水が素早く指示する。
「攻撃許可は奄美のみに許可する」
平均Lv23。初期Lvの道具有りMPの4倍近いMPを持つ計算になる。
身体能力も強化され、今では100mを11秒台で走る。
「スタート」
作られたCGのダンジョンマップ。
出入り口のゲートからダンジョンに入ったことを示す光点が点滅し、それが高速で進む。
「遭遇率。相変らず減少しています」
「最短コース他のコースとの比較を表示します」
表示された表、今までの探索で培われた1Fのコース比率は、現在のコースが最短だ。
この最短は距離的なものではなく、時間的なモノだ。
遭遇率が低いために止まって攻撃する必要がないための、最短コースなのだ。
「四之宮には感謝です。これを作るのは大変だったですね」
「後で甘い物でもやればよいのでは」
「男の子は甘いものより塩辛いものだ」
「そうなんや、将来高血圧になるわあ」
「無駄口はそこまで、次に備えます」
話している間に1Fのフロアボスの領域に入るが、素手に倒されているのでヘビードラゴンの待つ2階に入る。
「2階に入りました」
「相変らずベビードラゴンがおるわ。まあいつも通りに食事の提供と」
現場では食事の提供が行われ、食べ終わってからヘビードラゴンを連れて3階を目指す。
「遭遇率いつも通り、モンスターに変化なし、他の要素の変化なし」
「3階に潜りつつあります」
「縮小マップ」
3階にはいると、マップの倍率を上げ、今までの倍率の1/10にする。
「調査隊リーダーより全攻撃許可申請」
「許可します。また奄美の新しい魔法などのデータ集めも」
「こちらオペレータ」
二人のオペレーターが命令を伝え、現場の四之宮が了解と答える。
「奄美の使える正式化魔法は」
攻撃魔法<ファイアボール><サンダー><アイスランス>
強化魔法<剛力>
防御魔法<ダメージカット>
治癒魔法<ヒール>
Lvが上がることで使える次の段階の魔法が
攻撃魔法<ファイアーボールLv2><サンダーLv2><アイシクルランスLv2><グラビティボール>
強化魔法<剛力Lv2><強羅>
防御魔法<ダメージカットLv2><オールカット>
治癒魔法<ヒールLv2><キュア>
Lv2からは範囲系でもあるが広範囲ではない
<強羅><オールカット>の二つは他の範囲より広く、上手くすれば多くの者にLv1の効果を与える。
<ヒール2>は通常のLv1より範囲が広く射程も長く効果も随分と高い、微少乍ら再生効果も有ったりする
<キュア>一時的な症状の緩和、どんな物にも効果がある物の、一時的な応急処置で有って完治ではない。
「3階、探査開始」
電子音が響く。
「遭遇、画像出ます」
現れたモンスターはスライムに覆われたスケルトンの強化版というべきか、バトルアクスという大振りの斧を持ち、片手にはバイキングが使うようなラウンドシールド、丸い盾だ。
「バイキングスケルトンと名付けます」
「他の画像出ます」
映し出されたのは後方から2体のバイキングスケルトンが歩いて来る。
「交戦許可は出します。倒してください。」
「調査隊に交戦許可を出す。一応ですが、サンプルの確保を」
「調査隊の視点画像に切り替えてください」
「了解」
3階の調査隊が遭遇した3階のバイキングスケルトン、バトルアクス、ラウンドシールドを持つ、たいして強くなさそうだが、スライムを纏う事から強力な防御力を持つことが予想でき、攻撃手段もバトルアクスとラウンドシールドのタックルという中々厄介なものだと予想できる。
「師匠」
「うん。焼くのは臭いので氷漬けにしよう」
「サンプル確保も楽ですし」
調査隊屈指のMPを持つ師弟の奄美と来栖。
「前は任せた」
「了解」
来栖の紋章魔法の攻撃系の<アイシクルランス>が放たれ、目の前のバイキングもどきを一瞬で氷漬けに、その後に破壊することもできるが障害物としての邪魔に置いた。
「じゃあ。凍ってくれ」
奄美が腕を振るう。
凄まじい勢いで気温が低下し、近寄るモンスターも気配を察したのか、動きが鈍る。
もう片手を振るう。
数mはあるダンジョンの天井近くまで氷に覆われる程の冷気によって数十m先まで氷に包まれる。
普通なら化け物かといいそうだが、奄美の性格からして人に害を出す少年ではなく、むしろ人に害を出す物に拳固を振り下ろすような少年な上に、その性格から最も無害な少年Aの称号であるのは秘密だ。
そんな訳で、誰もが感心すれど危険とか、脅威とか全く思わない。
そんな警戒心を抱かせない少年なのだ。
「アイスクリームが食いたくなったよ」
「砕かないので?」
「来栖、サンプルは持って帰れが鉄則だよ」
「ですな。砕かなくて正解でした。しかし」
「少し重そうだね」
『聞こえるか調査隊』
「はい。こちら四之宮」
『遺跡より輸送部隊を派遣することが決まった暫く待て』
「了解」
会話を終えてから四之宮が話す
「小隊より輸送部隊が来るそうだ。遺跡からなので直ぐに来る。暫く待機」
◆
自衛官が輸送し、調査隊は待機の暇から、やっとのことで進む。
映像が切り替わり指揮車両。
「ドローンを放出する、データ収集を開始せよ」
『こちら悠木、ドローン許可が下りたので展開する。後、あの超強力な魔法は道具でも使えるの』
「こちらは把握していないが、奄美なら間違いなく使えるように道具を作るだろう。あの性格だぞ、間違いなく提供するさ」
『瀬戸内もお喋りになったわ。でもあんなに強力だとドローンを巻き込むわ』
「戦闘中は下がるしかない」
『OK。その案で行きましょう』
調査隊が運ぶ調査用ドローンの五機を浮かす。
悠木ご自慢の特技<複数使い>名前の通りドローンを複数操る、遠隔操作だがダンジョン内の電波状況は非常に良いのと、軍用の部品を数多く使う事から安定した航空を可能とする。
しかも、非武装としたとしても、攻撃魔法の機能を持つ道具を持つバードスーツ部隊、及び、魔法使いの師弟が居るので、攻撃力は必要ないと判断された。
「遭遇、別タイプです」
「画像出します」
移されたものには明らかに腐敗したたぶん人型の様な、生物とはとても言えないゾンビだ。
「四之宮よりサンプル確保許可と」
「許可する、先程と同じように氷漬けに」
「四之宮、奄美、来栖に氷漬けと」
「後方より新手、ドローンより映像出します」
映し出されたのは、一体の強大な蛇、こちらはかなりの重量に速度だ。
「四之宮、後方より新手接近中、巨大な蛇だ」
「四之宮より後方の蛇に奄美、前方のゾンビに来栖を当てるとの事です」
「許可する。ドローンは安全圏に、欲は出さなくていい」
『こちら悠木、倍率映像は確保するわ』
「了解、ああ、許可します」
「視覚映像出します」
三階の調査隊、前方のゾンビに向け、来栖が野球のピッチングの様に勢いをつけてアイシクルランスを放ち、ゾンビを氷の中に閉じ込める。
後方に立つ奄美は、無性にカロリーメイトが食べたいが我慢する。
「眠れ」
放った<アイシクルランスLv2>を放ち、後方数十mを壁、天井、床、蛇を冷気という強烈な死の接吻を送る。
凍り付いた蛇に周囲の壁、床、天井が数十mと続く。
「腹減ったあ」
「ぶれないなお前は」
奄美と四之宮が何気ない会話をする。
「他の魔法の実験もしたいし」
奄美が魔法を使うとき声のトーンが落ちるのを来栖は知っていたが、その声から放たれる簡単な言葉は、聞きようによっては非常に怖いものだ。
弟子の来栖も似た様なものかもしれないが、魔法というモノを見せる師であるアマミは、どこかこの世とは違った何かを感じさせるのが、来栖からすれば悩みの様な物だ。
「師匠休まれては」
「いや、別に元気だよ」
「Lv2の魔法を連発しては魔力は別としても精神の方が」
「確かに、魔力と精神は違うから、分かった少し休もう」
「全員休憩」
視点が切り替わり指揮車両。
「精神ですか」
「奄美曰く、魔力とはタンク、精神とは制御する為のやる気だそうです。やる気のない奴にやらせてもあまり効果がないのはそのためだそうです」
「精神を下げるのは疲れか、確かに疲れると集中力が落ちる、これはまた一つの事です」
「精神的な疲れって結構響くやろ、ってなことはこの休憩って長くなるんかい」
「少なくても奄美が倒れたらこの調査隊の攻撃力は半減です。しかも回復・応急の使い手も居なくなる、かなりの痛手です。そうならない様にするしかないでしょう」
◆
『速水副課長、サンプルの確保は出来たが、奄美の様子』
「結構なペースで使いましたから疲弊していますか」
『元々タフな奴だが、少し反応が鈍いな』
「エリアボスの居場所まで持つと思いますか」
『持つだろうな。少なくても後方を俺達が固めれば、前方のみなら簡単に対処できるだろうし。それはそうと魔法訓練場が欲しい所だ』
「ええ。可能ならば実験を行えるのなら問題ないです。奄美のLv2の映像を送ります」
『ああ。今届いた』
会話が途切れた。
『こいつは凄まじい魔法だ。二体が同時に冷凍、大蛇が瞬間冷凍、こんな物を使われたら確実に倒される』
「他の物はまだです」
『なるべく早くした方がいい、装備の把握は優先事項だ』
「なら後方を頼みます」
『了解だ』
「四之宮に回線を開きます」
『こちら四之宮』
「西田隊が後方を守る、エリアボスを発見するために調査を開始せよ」
『了解、後ろから火の弾が飛んできませんよね』
「しっかりと20mの距離はとってある、Lv1なら問題ない」
『了解です』
◆
第3層に潜り、すでに1時間を経過、遭遇するモンスターの殆どを奄美のLv2で凍りつかせるか、焼き尽くすかぐらいだ。
「友好的なモンスター及びエリアボスは未だに不明です」
瀬戸内がそう報告した。
速水はペットポルのウーロン茶を飲みながら報告を聞き。
「何か問題は」
「四之宮より変化なし、隊員は共に健康安全、奄美は質問はしっかりと返しているようです」
(問題なし、しかし)
「各員のMP状況」
「出します」
瀬戸内の素早い操作で各員のMPは状況が出る。
奄美、来栖のMPは飛び抜けており、使用されたMPの事も有っても、他の隊員のMPを上回る。
(Lv状況?)
瀬戸内の気配りらしく、経験値とLvに関係するゲージが出る。
「瀬戸内グッジョブ」
「はっ。精神地のゲージ化はまだ出来ません。四之宮がこの手の事は行いますので」
「その四之宮はダンジョンの中だから明日ぐらいですね」
「それぐらいです」
調査課では無理を言わないのが不文律だ。
(なにごとも一長一短)
速水はそう思う。
四之宮の優れたところはタイの運営やダンジョンの攻略などに加え情報に非常に明るい為に、極普通にプログラミングする、どこかで習ったらしいが本人は言わず、非常に得難い人材の一人と言える。
「しかし、このダンジョンはどこまで続くのでしょうか」
瀬戸内が疑問を口にする。
「ガンゲイル王国まで、としか言えませんね。それ以上は必要ないですし」
「最近よくゲームなどをするのです。四之宮から勧められたMMOとかゲートに関係するゲームです」
「続けてください」
「その中でゲートとは扉であるという考えと、駅であるという考えが有ります」
「駅?」
「はい。駅です。遍く世界に通じる駅です」
「それはちょっと好みじゃないですが、夢のある話です」
「はい。この駅という考えはいいかえればどこからも入ってくることを意味しますから非常に危険なものです。しかし、奄美が繋がっている世界に確信を持つのは確固たる根拠があるのでしょう。魔法使い特有ではなく、異世界帰り特有の、自分はそう思いますよ」
「そうかもしれませんね。いっその事の帰巣本能とか」
「かもしれません」
◆
2時間の探査、四之宮が算出した遭遇率プログラムはしっかりと的確にとらえており、高効率の場合に遭遇するのが殆どだ。
「遭遇率75%を超えます。新タイプ確認」
「加藤映像」
「了解、映像出ます」
巨大なスケルトン、巨大なカトラス。
「1Fのボスやなんか」
「中ボス?」
「全員の攻撃許可を下ろします」
視点変更。
「各員攻撃態勢!」
「ほら」
防御魔法<オールカット>で全員にダメージカット効果を与える。
「最後」
強化魔法<強羅>で全員の筋力・人工筋肉を強化した
「来栖」
「はい。師匠」
「生け捕りにする」
「可能でしょう」
「シオ」
「無茶を言うなよ。いや無茶じゃないかも、“Attention, please!”、」
全員が注目する
「このでか物を捕獲する、それも無傷で、作戦は奄美に一任」
「では、両手両足を掴む、その後に輸送」
実にシンプルだ。
「来栖、若宮さん、浅間さん、そして俺の担当だ、ダメージは半日ほどかかるから気にせず」
後はつかみかかり、捕獲する。
元来た道をひたすら戻るのみ。
◆
「まいど」
纏まったサンプルを売却し、特にエリアボスだった巨大スケルトンは非常に高く売れ、戸村、周防の二つが何度も交渉を持ち掛けて戸村にカトラス、周防にスケルトンを売却した。
総額2千万。
この大金を皆で分けるのが楽しみでならない加藤だった。