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【01-04:8/4~8/7】


「本日の営業は終了です。土曜日に関しては役所は休みですが、奄美君曰く、Lv上げは容易いので土曜日に集中的に全員のLv上げを行いたいとの事です」


警備担当の若宮、来栖は内心でガッツポーズ、加藤に関しても内心諸手を上げて喜んだ。

他の悠木、フィリスも喜んだ方だが、佐久間、谷口、竜胆博士は微妙。

瀬戸口に関していえばLv上げには興味が全くないモノの、今後の事を考え参加することにした。



金曜日の8/5、現在の宿屋のビジネスホテルの部屋に戻り、歳の近い浅間、悠木、フィリスの三名からの紋章学に関係する質問に答え、また三人のそれぞれの知識から紋章学についての様々な応用が決まり、この考案されたモノは悠木式実験術式(仮)のように名前がつくのを嫌う三人の為に、代わりに魔法に関係する初歩的な知識を提供していた。


高校3年生にももなると、さすがに受験が考えられるが、浅間、悠木の二人にはすでに仕事先が決まっているのに大学に言って学ぶ必要はないという考えだ。

フィリスに関しては大学2年生の為に好きな機械弄りをしている。


奄美からすればやっと落ち着ける環境になり、高校1年生でも、今後の事を考えればどうなるのかわからない、だが速水の善意を無下にする気はないので、高校には通うつもりだ。引きこもりの友人の事も有り、どうしたものかとも思うが、剣道好きで地元の剣道クラブには通っているのは知っている。


そんな事を考えながら寝付く。

翌日の朝食を食べ、シャワー、着替えを終えてから、仕事場に向かう。


朝早く、時刻はまだ06:00。

それでも年の近い男女は既にいた。


「浅間さん、悠木さん、フィリスさん、おはようございます」

「はよ」

「はよよ」

「おはよう」

「時間も余っていますし、適当な道具を魔剣化して潜りません」

「了解だ」

「もちろん」

「意外に魔法を使う事を隠さないよね奄美君は」

「ええ。隠しても意味眼程度ですからね。でもこの世界での価値から考えるとあっちから人が流れついたりしたら、洒落じゃないことになります」

「それは魔導院の学生レベル?」

「そうっす。正規レベルも、導師レベルも」

「逆に一般レベルなら」

「言葉の分からない単なる外国人っす。基本的に魔法を使う物は魔導院に所属し、管理されますからね。もしそんな魔法の使い手がこちらに来たら洒落にならない、俺の様な戦闘系は一般レベルならマシっすけど」

「うんうん。そんな一般人がアフリカに現れても意味はないね」

「他にも、南米とか、中央アジアとか、中東とか、そんなところに現れてもな。言葉が分からないからどうしようもないし、奄美の様な日本語が扱える日系っぽい奴だから安心できるな」

「それはさておき、魔剣化に関しての制限は、初歩的な攻撃魔法の3種類の紋章が刻印できる平面を持つことだしね。それなら準備万端よ」


フィリスが取り出したグローブ。

紋章の刻印が可能で、しかも単なるグローブと誤魔化すことができる武器だ。

悠木は木刀、浅間は伸縮式の槍だ。


「じゃあ。紋章に関しては三種類の内にどれにします。攻撃魔法の事です。汎用紋章は研究中なので、まだ実戦レベルには達しません。他の強化、防御の二つの内から選ぶのもありですから、5種類っすね」

「確か二重に関しては出来るのか」

「バッチです。ただ攻撃・強化・防御の内から二重です。攻撃魔法に関しては3種類からつを選んでください」

「攻撃の中から2種類は選択できたはずだが」

「お勧めはしないっす。その理由は相互干渉の法則にある攻撃魔法同士のデメリットの足の引っ張り合いです」


浅間は微妙な瞳の色で相互干渉の法則を思い出す。


(相互に干渉しあう法則乍ら、一部には干渉しあわない物もある)


つまり攻撃魔法同士は干渉しあい、攻撃魔法・強化魔法・防御魔法はそれぞれ非干渉の関係にあるという事だ。奄美の紋章学の研究も進んでいるらしい。


「浅間さん?」


奄美が浅間に話しかける。

少年らしい真っ直ぐな瞳が印象的な少年だが、なんとも財布的な苦労が垣間見れる。


「奄美、飯は食っているよな」

「はい。1日3食っす」

「量は足りているか」

「昼飯は実質2食っすから、足りて入ると思うっすよ」

「体重は軽くなっていないか」

「検査で調べた時に言われたんすけど、体脂肪率が同世代と比べて低すぎるそうです。そんな訳で体重は軽く増えるはずなんすけどね。中々上がり難くく」

「まあ日給1万円はかなりお得な額だが、お前の技能の事を考えると、波田間さんはお買い得なことをしたな」

「そうっすかね。8時間で1万円っすから時給1250円、しかも納税無し、お得過ぎです。お互いにとってという意味で」

「言うな」

「だって実験機の手配とかできませんし、何かとお世話になっていますし、速水さんも時々様子見と弁当といろんな話を持ってきますし。有り難いです」

「なるほど。まあ大丈夫ならいいんだが、どうも痩せているように見えてな」

「痩せる?奄美君は別に」

「阿保、痩せていないでしょうが」

「なんかな顔の輪郭が微妙に細くなっている」


浅間に言われフィリスも悠木も奄美の顔を見る。

微妙な輪郭だが、確かに僅かに頬がこけていた。


「痩せている?」

「うん。確かに痩せている」

「なんかLvUPの度に体重が軽くなるすよ。よくわかんないっすけどね」

「さすがの紋章使いのLvは専門外なのだな」

「浅間さんは減ったのですか」

「ああ。2キロ落ちた」

「話を戻すとして、攻撃魔法は<ファイアーボール>、<サンダー>、<アイシクルランス>、強化系が<剛力>、防御系が<ダメージカット>の5種ね。私は<アイシクルランス><ダメージカット>」

「了解です今掛けます」

悠木の木刀に二種類の刻印を施す。

「私は<サンダー><ダメージカット>」

「了解です」

フィリスのグローブに二つの刻印を施す。

「ばっちっす」

「俺は慣れた物が一番だな<ファイアーボール><剛力>」

「う~す」

浅間の槍に二つの刻印を施す。

「奄美君のは」

「紋章っす。俺は自分に魔力向上の紋章を施したっす」

「それって、、魔力取得の術式と同じ?」

「そうっすよ」

「痛いんじゃないの」

「死に程痛かったっす。二度は味わいたくない痛みっすよ。でもおかげで魔力が増えたからバッチ完了っす」

「お前も無茶をする方なんだな」

「当たり前っす。死ぬよりはマシっす。生きていればきっといいことがあるっす」

何でもないように笑う奄美に、悠木は何も言えず、浅間は歯を噛み締めた。

「奄美君、無理をしたらダメよ。貴方の言葉でいうのなら生きていればいい事がある、でも死んだらそれでおしまいよ。例えその世界に何かあるにしろ。貴方はただ一人の貴方なのだから」

「うっす。大事にするっす」

「ならよし」



【門】この内部に入る前に四人はこの黒く渦巻く禍々しい【門】の前に立つ。

奄美が意を決し内部に入る。浅間、フィリス、悠木のも同時に入る。


「真っ暗」

「落ち着いてください。今紋章で明かりを灯します」


奄美が街灯用の紋章を描き、一般の昼間には届かないもの、それなりの光量が辺りを照らす。

三人から吐息がもれた。


「紋章学も発展していますから、Lv4になっていますので、ヒールは一回です。それでも随分余裕があります。道具無しだと+20ですね。浅間さんが道具有で+4です」

「この明かりはどんな紋章なんだ」

「汎用紋章、魔法外魔法を紋章化した紋章学の実験分野の紋章よ」

「あら、双葉ちゃんは詳しいわね」

「仕事の後の実験でね色々と試していたのよ。私も紋章学には興味が有るし」

「そんなことが・・・羨ましい」

「音符、そういう子供の様な事を言わない。パワードスーツは使い捨てには出来ないでしょう」

「それはそうだけど。羨ましい」

「来週から居残りしてみる」

「もちろん!」


どちらが年上なのか微妙な会話の後。


「初めての四人PTだ。奄美ホストを頼む」

「了解です。では行きましょう。その前に、魔剣化された装備の使用は分かるとはも居ますが、敵一体につき一キルの計算で6体を倒しLv+1ですよ。浅間さんと俺に関してはLv4なのでお気にせず」

「LvUPの感覚はニコチン酔いだ。他にも酔っているような感覚になる。そうなったらLvUPだ」

「ユウくん、なんでニコチン酔いを知っているの」

「阿保、何で知ってんのよ」

「実験だよ。ニコチンを吸うとどれだけ体力が減るのかという」

「ふーん」

「知能が足りない、奄美君から分けてもらいなさい」

「奄美のっすが映るだろ」

「酷いっす」

「まあまあ、急ごうぜ、早く狩らないとバレるからよ」


浅間の言葉に二人も納得し、奄美が先頭を進み、直ぐにスライムを発見し、こちらに向かって粘菌のように進む。


「はい。こちらが噂のスライム、所謂雑魚モンスターの一つですが、接近されたら逃げてください、溶かされたらたぶん死にますから、それじゃあ悠木さんかフィリスさんのどちらかの攻撃魔法で終えたいと思います。火、雷、氷のどれも抜群に聞きますからご安心を」

「おめえは話がなげえな」

「性分なのかも、お二人とも遠慮しないいですよ。軽く氷漬けも、雷撃攻めも可能ですから」

「私がやってみる」

「双葉ちゃん応援しているわ」


<アイシクルランス>を使う

悠木の木刀の前に現れた氷の塊が、高速にスライムにぶつかり、そのままスライムを氷漬けし、音を立てて砕け散る。


「経験値+1、魔剣魔法解放回数-1。残る5」

「相変らずこの感覚は苦手ね」

「苦手か、まあ慣れるしかないな」

「相変らず、凄い威力ね。下手な現代兵器を超越する」

「言わない方がいいですか」

「言うな、お前がそんな事を前置きに言うときは碌でもない」

「サンプル確保の事ですよ」

「・・・辞めよう。欲は出さない」

「なら強くはいいません。こんな会話の途中ですが、スケルトンが近づいています」

「はい。私がやります」

「どうぞ。スケルトンは魔法攻撃を受けると直ぐに活動を停止します。そのスケルトンの骨などは未知の物質だそうです。今だに竜胆研究所でも不明と言っていますね」

「<サンダー>」


フィリスのサンダーがスケルトンに直撃し、雷光を放ってスケルトンに電撃が包む。

炭化した骨がもろく崩れ去る。


「経験値+1、魔剣魔法解放数-1、残る5」

「残るは蝙蝠だな、前々から疑問だが蝙蝠は何を食ってんだ」

「スライムと思いますよ。あれだけの体格を維持するにカロリーのある物を食べないと」

「・・・これを食べるの?奄美君、それは本当?」

「スライムと蝙蝠が戦う姿は何と背も見ましたから確かと思いますよ。でもスライムも蝙蝠の死骸を食べているのを何度も見ましたから、お互いの話なのかもしれません」



フィリス、悠木の二人がLvUPした。

当然の様に魔剣魔法解放数=MPの残りはなくなり、そのまま失神。

奄美と浅間で担いで運ぶ。

出入り口のゲートを超えて、元のダム前の広場につく。

二時間ほどのゲート内部のダンジョンでのLv上げ。

二人を休ませている間に、浅間、奄美の二人は近くのスーパーで買った飲み物と、小腹を満たすサンドイッチを食べていた。

そこに調査課の6名が入る。


「予想するべきでした」

「二人ともちょっと話そうか」


波田間のため息とともに速水の説教を受ける。



1時間も説教を受け浅間、奄美の二人ぐったりと日陰に座り込む。


「いつもながら無鉄砲だなお前らは」

「緩んでいるなら組手でもするか」

「その体力は温存することをお勧めします。あの中で体力は貴重です。なぜならモンスターには物理的な攻撃の殆どが聞きません。ましてやLv1で解放できる回数は6、Lv上げのための数値6、体力は残しておいて損はないです」

「話がなげえ」

「だが、貴重なアドバイスだ。浅間はどう思う」

「もし潜りLv上げをする気ならなるべく楽する事だ。楽を繰り返し失われる体力を少しでも微々たる量でも温存する。悪い事は言わない、微少でも残すべきだ」

「・・・いつも突撃バカの様だが、なるほど確かに危険な現場を踏んだだけはある」

「言葉には説得力があるのはよいとしても、物理攻撃が効かないのは初耳だ」

「そうですね。簡単にいえば魔法攻撃1回で1キルです」


若宮、来栖も頷く。


「物理攻撃で倒せる回数は20以上、それもパワードスーツを着込んでからです」

「うむ。」

「それはLv幾つの時だ」

「3です。浅間さんの体力からの数値と、パワードスーツの数値を重ねての、攻撃回数からの敵の物理耐久度は優に人を超越します。モンスターと物理攻撃で戦うのは賢くない。むしろ無謀です」

「威力向上でも?」

「そうですね。一番耐久度の低い蝙蝠でパワードスーを着込み5回です。それぐらい攻撃力が向上しますが、接近戦をするリスクを考えれば魔法攻撃により遠距離戦が正しい攻略法です」

「スケルトン、スライムに関しては」

「スケルトンは蝙蝠のおよそ3倍、スライムには物理攻撃が効きません、全くの無効化です。まあ見たらわかりますよ」

「奄美がいなければ攻略は出来ない訳か」

「いえ、魔法を使える者がいるだけで攻略できます。魔法が使えさえあればよいのです」

「もし、モンスターが強くなったらどうなる」


来栖が尋ねる。

奄美は考えてから口を開いた。


「Lv上げをするしかありません」

「そのLv上げの結果、物理攻撃力も上がるのか」

「上がります。俺も、浅間さんも上がっています。来栖さんや、若宮さんのような白兵戦の訓練を受けた方々なら易々と成長すると思います」

「そう、か」

「もし、白兵戦での経験を積みたいというのなら俺が魔法での援護を行いますが、もしくは強化系、防御系の二つの紋章を刻印した魔剣を使えばよいと思います」


来栖は口元を緩め、この若い魔法使いの心意気に感謝した。


「それで頼む」

「はい。若宮さんは」

「同じく、考えるのは苦手でな」

「了解です。それで魔剣化する品は種瀬さんしていますか。早い段階で馴染んでおく方がいいです」


来栖は頷き、懐から愛用の砂鉄グローブをと出す。

若宮は伸縮式の警棒だ。

強化系の<剛力>、防御系の<ダメージカット>の二種類を掛け、攻撃魔法とは違い一時的でも効果時間は非常に長く、だが攻撃魔法に比べては消費が高いために使用回数は計算できない、この二つの魔法は切り札的な物だ。


「四人とも、準備はいいか」

「・・・・・ぶっつけ本番ですか、無謀ですよ」

「それでも1日が貴重なんだ」

「毎日潜りたいが、警備やらなんやらが必要でな、そうもいかんのだ」

「了解です。浅間さんは」

「正気じゃないっていいたいな。だが勝ちはあると思うぜ。行こう」



「あれがスライムか」

「確かに物理攻撃が効くようなものじゃないな」

「浅間さんが狩りますか」

「いやお前に押し付ける」

「了解です」


<ファイアーボール>を使い、火球がスライムにぶつかり焼き尽くし、辺りには嫌なにおいが充満する。


「臭うな」

「ああ。酷い臭いだ」

「サンプル確保はせず、スケルトン、蝙蝠の限定狩りを行います。攻撃可能な二種類のモンスターと遭遇しないうちは強化・防御の魔法は控えてください」

「了解だ」

「了解」

「奄美、Good」


浅間が親指を立てる。

奄美も頷き、先頭として汎用紋章の<街灯>の紋章を掛けた棒を振りながら進む。

飛行型のモンスターの蝙蝠は、動きが非常に鈍い上にダンジョン内の天井や壁に引っかかり大して動けず、しかも攻撃手段も余裕で避けられる程度の速度に加速した体当たりしかない、この事も有るが、この蝙蝠は意外なことにスライムを狩ることに長けているらしく、上空からスライムに向け何らかの攻撃を行う姿が確認された。

その蝙蝠と遭遇したが、同時にスケルトンも遭遇する嫌な状況下だ。


「防御系優先、次に強化系をおすすします」

「了解」

「了解だ」


<ダメージカット><剛力>の順で使い二人でガチンコ対決。


「モンスターとガチで戦うとか、正気じゃねえ」

「でも」

「ん?」

「動きが非常に良いです。もし兵士ならエース級ですね。悪くないですよ」


若宮、来栖は、相手の攻撃を完全に数cmのレベルで見切っての反撃を行い、この攻撃が連続して行うという連続技にも覚えがあるらしく、見事な攻撃を叩き込んでいた。



「被害なし、スケルトン撃破」

「被害なし、蝙蝠撃破」

「時間はかかりましたが、どうです使用した感想は」

「かなり良い、力が信じられないほど上がっている」

「うむ。拳の感触が通常とは随分違う、まるでサンドバックを殴っている様だ」

「了解です。数値とするのならどれくらいの向上と思いますか」

「通常時を1とするのなら+4~5は行く」

「それだけじゃない拳をぶつけてもこちらの拳が痛くない、まるで体を守っている様だ」

「攻撃力は+4~5、拳を守るような感覚を持つ。効果が切れたら伝えてください」

「了解だ」

「了解だ」


スライムは奄美が狩り、スケルトン、蝙蝠を二人が狩る。


この流れでLv上げを繰り返し、結果としては二人の格闘能力があるからこそではあったとしても強化系・防御系の二つの恩恵は非常に強く、また効果時間もかなり長く、攻撃魔法で戦う回数と同じぐらいの時間が続く、そうしてLVが上がると若宮、来栖の二人には酔いが入り、結果として撤退した。



調査課の全員のLv上げが終わり、6名とも上がり酔いでぐったり、悠木、フィリスも殆どの魔剣魔法解放回数が回復していない物の、上がり酔いから立ち直った。

そんな頃には15:00まで時間は進み、昼飯を食べて居なかった二人はスーパーの売れ残りの惣菜を食べていた。


「そういえば、何のために県の職員が調査しているのです?なにか知っていそうな浅間さん」

「ん?ああ調査か、まあ簡単にいえばゲートなんてものの実態調査を置押し付けられたのさ。県も国も頼りなれねえ」

「何故です」

「法律がない、どんな国でも相応の常識がある。異世界に通じるゲートが有る、これを大真面目にいえば発狂野郎だ。だから俺は調査課に協力する。」

「後学のために聞きます。賢くないですよ。身を亡ぼすようなものです。それも時間と共に」

「かもしれねえ。でも俺の様な何の脳もない奴を谷口さんは竜胆研究所に紹介した」

「浅間さん、別に隠さなくてもよいのでは」

「ん?何のことだ」

「浅間さんの勘です。今まで浅間さんは勘だといって色々と回避してきました」

「ああ。勘の事か、どうもこれが鋭いらしい、これのおかげで色々と回避してきたな」

「そうそれだけはどんな魔法使いでも編み出せないものですよ。魔法は万能な術ではない、この世の一部を知るのみの道具にしか過ぎない。前任者が残した物です」

「ふーん。その前任者の名前は分かるのか、以外と奄美の名前が載っているとか」

「漢字は違いますが、天海豊秀あまみ・とよひでそう書きます」

「御先祖にいるとか、なんか血脈的な関係は」

「ないです。そもそもこの天海はいつの時代の人なのかも不明ですから」

「そっか。」

「そんな訳でよくわかっていないのも一つの一面です。まあそれは置いて、県の調査の話は法律がない、また法律が作れない、この為に異世界に通じるゲートを一つの県に押し付けるのは異常ですよ」

「まあな。俺も思うが、こればかりはなたぶん相当揉めていると思うぜ。今の県の知事は国と喧嘩するほどの政治家だ。そんな県の都合もあるし、まあ国にも都合があるだろう。とするのなら今やっているのは意外と美味しい話なのかもしれない思うぜ。力じゃない、このゲートの中に広がるダンジョンの事も少しずつ分かり始めている。おりゃぁこれが職業になるかもしれないとも踏んでいる」

「じゃあ。術式志望ですか」

「・・・お前ですら死に程痛いというほどだ、1度で十分とも思うが、まだ先だぜ」

「いいっですね」

「ん?」

「魔法をどんな風に思います」

「そうだな。やっぱり便利な力って思う。もしくは特殊技能とか、ゲームとかの魔法使いはアタッカーって感じで、でもお前を見ているとアタッカーというより、技術者って印象が強い、まだ未熟なレベルの紋章だが、お前は少しずつ周りの意見や協力の中、ゆっくりと確実に発展させている。それを見るとさ。ああ技術者なんだなって思うわけだ」

「魔法と魔法使いを別々に考える人は初めてです。ユニークな意見ですよ。あっちの魔法使いに聞かせてやりたいです」

「ガンゲイル王国ってのは人口1千万名ぐらいの小国だよな」

「日本からすれば東京都の人口程度です」

「領土とかはわかるのか」

「北海道ぐらいです。あっちの気球や飛行船を使った測量もありましたし」

「意外に大きいな」

「戦争の事ですか」

「なるんじゃないかってな」

「ならないと思います。その理由は通路となるゲートです。あのダンジョンの中を大軍で通るなど正気じゃない。魔法使いの導師クラスでも全体からすれば極々一部の極一部に過ぎないのですよ。最高導師が来るのなら話はべですが、あの方は何と言ったらよいか」

「そういえば、その王国には仲間がいたのか」

「あ~やっぱり気になりますよね。まあ事情があるのです。でも居たのは確かです。懐かしいです。王都再整備計画の時はよく働いたものですよ。男性の建築を研究するガンフォー、魔導装置を研究する女性のフレイア、薬草を研究する女性のエマの三名です。この三名が魔法使いでの気の合う仲間って奴らです。ああ腹減った。久し振りにガンゲイル王国料理が食べたいです」



調査課6名はそのまま入院。

個人によってはLvUP酔いが厳しいらしい。


ビジネスホテルに帰る前に友人の家に行き、その友人とのゲームの時間。

アーマードコアのゲームで、ひたすら白兵戦装備で戦うという無謀ぶりを発揮し、その友人に散々ボコられた。


「何で白兵戦装備なんだよ」

「凄く楽しい、遠距離武器の奴に一撃を入れる爽快感がたまらない」

「もうちょっと考えて構成しろよ」

「白衣戦こそ男のロマン」

「まあ気分は分かるけどよ。そういえば近くのゲームショップ小さな大会が有る」

「行こうぜ。白兵戦装備だけどな、弾除けにはなる」

「勝ちを目指そう。お前だって結構やるじゃないか、そういや新しい追加パーツとかは」

「要らぬ。武士には刀で十分」

「偶には脳みそを使えよ。この脳筋ビルドはやばいって」


散々遊んだ後ビジネスホテルに戻り、翌朝に友人宅に直行。

外出準備を終えていたので朝飯を食べてから向かう。


「おーし行くぞぅ」

「おうおう行こうぜ」


小さなゲームショップでの大会はひとまず挨拶、その後に戦いだが、白兵戦装備オンリーの俺の機体に誰もが唖然としていた。

友人の機体の方はバランスの取れた機体。

対戦相手も軽量級のバランス機の二機。

突っ込んで白兵戦に持ち込もうとする俺に対し、友人の援護攻撃もあり、一機を撃破したのちに、今度は友人の方に加勢に行き、ひとまず一回戦勝利。

対戦相手の二人は、何で負けたのかがわからないらしく悩んでいた。

ちなみにこの大会で勝つと特別なパーツが手に入る。

そうして二回戦。

対戦相手はバリバリの軽量級高速機の二機。

友人の援護、突撃精神からの特攻で一機を撃破、残る一機の強力なロケット弾を食らい片腕が破壊される。

満身創痍の俺に対し、残る一体を余裕綽々で友人が片付けた。


「俺ってもしかして白兵戦の」

「はいはい落ち着こうか。ひとまずこのブロックは休止だ」

「結構規模が大きく毎週慕いな」

「誰にだって予定はあるさ。たまにあるから集まるのさ」

「~さの語尾は役作りか」

「おめえがもちょっと頭を使って戦ったら凄く助かるが」

「おいおい、白兵戦だからびっくりだろ」

「お前はピエロか何かか、まあ二機は撃破しているからよいが」

「何で白兵戦に特化しないんだ」

「いや、だって効率的じゃない」

「何のための効率なんだ」

「そりゃあ。まあ好きなのは白兵戦だが、射撃武器がないと不安でさ」

「まあ白兵戦の場合、寄って斬るオンリーだしな。だがメカ同士の白兵戦はロマンだ」

「それはあるな。しかし、追加パーツが欲しい」

「あれだろアサルトライフルと銃剣が組み合ったタイプの試作品。ガンスラッシュ」

「それそれ、それが欲しくてさ」

「うーん。俺の場合は白兵戦特化機だ。しかし、射撃武器も持っているぞ」

「あの5発のみのプラズマハンドガンか」

「破壊力抜群、このハンドガンで威力が大きく射程が短いが、それでも格闘武器とは違うだろ、この装備だと相手が警戒する。間違いなくな。その為に布石を置くのもよいと」

「雑誌に書いていた」

「そそ」


こうしてブロック1からブロック2の二回戦突破のプレイヤー達と戦う。

俺の白兵戦特化機の白夜、友人のバランス中量級の正眼

対戦プレイヤーの軽量級高速機のファイナルヘブン&中量級格闘戦機のミニッツ


「格闘戦記は任した」

「了解だ。実は羨ましいだろ」

「実は見てみたかった。白兵戦にはやっぱり興味があるからな。そりゃあ。頭の方がおかしいとは思うが、それでも」

「了解だ」


全速力のオーバーブーストで接近してくる中量級格闘戦機のミニッツ。

片腕のシールドをパージ、ハンガーから白兵戦用のナイフを取り出す。

ピルの隙間を縫うように突っ込んでくるミニッツに、迎撃する様に実剣のソード、実剣のナイフを構え、接近してきたミニッツに向けてオーバーブーストを使う。

独特の排気音が響く。

一瞬の静寂

斜めに滑るように進んだ白夜がミニッツの片腕を切り飛ばす。

一瞬で反転し、背後から一対の剣とナイフで斬りつける。

この連続攻撃を背後から食らった対戦相手は共学の余り操作を間違えて飛び跳ねる。

近接戦闘で負けた以上勝ち目のない相手と判断したのが、でたらめに動く。

エネルギーが切れる間を図り、その瞬間にノーマルブーストで接近し、一頭の元切伏せて倒す。


「つまらぬものを切った」

「本気を出すと強いんだよな」

「終わったのか」

「ああ。まあコンボの連続技」


次は3ブロック、4ブロックの戦いが終わった後の決勝戦だ

合計16名からプレイヤー。

決勝戦の相手は意外なことに同じぐらいの年齢の女性、目付きの悪い不愛想な片方と、ニコニコと微笑む暖かそうな片方というコンビだ。

しかし。試合を見せてもらえば、この目付きの悪い方は腕利きの白兵戦特化の剣士、愛想のよい方は性格が良いとはとても言えないスナイパーという嫌な組み合わせだ。


「負けてもよいから全力でぶった切る」

「お前は単純で言いな。勝っても負けてもよい上に斬ればそれでよし、このゲームの世界に現れたらすぐに順応しそうだ」

「寄らば着るではなく、寄って斬るそれだけだ。だからこそ楽しいのだ」

「スナイパーは抑えるが、射程距離が違い過ぎる、弾幕で押したいが、援護が必要だ。この攻撃に関しての」

「あれを使えばよくないか」

「そりゃあ。まあそうだな。タイミングはいつもの」

「了解だ」


対戦相手

白兵戦特化高速機:古びた鉄、狙撃重視高速機:ごるご一三

始まるなり両機は突進する。

これに対応する様に俺と友人も突撃する。

ミニマップにはごるご一三の狙撃射程範囲に入り、威嚇のために攻撃してきてた。

細かなブーストの変更を行って避け、高速機はその最大速度の速力で突進。

これに対し、俺はソードを持つ手をパージし、ハンガーからプラズマハンドガンを手にする。これに相手は少しの空白後、突進を中断しかけた。

そこに放たれた西岸からのアサルトライフルの弾幕に、突進していた古い鉄は、回避からビルの谷間に隠れる。

狙撃を行うことで効率的に相手の行動を抑えていたごるご一三の射撃。

接近する俺と友人の二機に対し、狙撃銃の性能では連射性が低いので、ごるご一三は立ち止まり狙撃の為の砲台になる。

ミニマップの中に現れた古びた鉄。

今までのブースト量からほとんどのエネルギーを使い過ぎた古びた鉄に対し、俺は反転しプラズマハンドガンでの射撃を行い、直撃せずに避ける。

エネルギーの殆どを失って射た古びた鉄、そこに二撃目が放たれる、今度は避けられる図に直撃し、直撃の硬直が起こる。

三発、四発と撃つ。

どれも直撃し、シールドをパージ、ナイフを取り出し手の白兵戦に移る。

正眼は、狙撃ライフルの威力・射程・弾速は恐ろしいが、連射性に秀でるアサルトライフルの方が、攻撃には向いていたことを確信するも、僚機の事が頭に浮かび、接近はせずにギリギリの射程範囲で射撃戦を行いながら、ギリギリのラインに踏み込めないでいた。


白兵戦に発展する俺と古びた鉄、ナイフの白夜に対し、相手はダメージを負うもブレードを握り、片手には小振りのソードを握る。

ナイフでは苦しいもの、片手に残った一発の威力の為に相手は接近戦を挑むも直ぐに離れる。

エネルギーが回復しつつある古びた鉄に対し、斜めに滑るように斬撃と合わせた移動方で相手の片腕を切り落とす。

この瞬間に勝利を確信した。

相手はその斜め上に進む。胴体からピットを射出し、今度はこちらが防戦一方になる。


(ピットと剣とか反則だろ)


「ユキ、ちと不味い」

「こういう時は奇遇じゃない方が良かったぜ。今防戦一方」

「同じく、起死回生の策はあるか」

「体当たりかな」

「こっちもダ。ハンガーウェポンを搭載するんだった」

「じゃあ。まあ、当たって砕けろ」

「了解だ」


二機が最後の切り札を使う。オーバーブースト、この最高速度を出すブーストの使用時間は数秒、二人が中量級のために搭載できるジェネレーターも大きく、ラジエーターも大きい、その為に相手機より長い時間使えるメリットがあるが、これを捨ててまでも攻撃力に転換するバーストブースを使う。

立ち止まる二機に、困惑したように様子をうかがう二機。



結果としてはよかったのかもしれなが、敗北した。

この二人と交渉し、アサルトライフルと銃剣が組み合うガンスラッシュだけは分けてもらった。

ただこのガンスラッシュは非常にピーキーな物だった。

ただその条件も有ったりする。


「対戦かあ。ネット対戦ねえ」


どうやら剣士の相手が必要らしく、スパーリングの対戦相手が条件だ。


「来週なら可能かもしれない、何せ今はビジネスホテル暮らしだ」

「来週のいつ頃だ」

「今日当たりに不動産を決めるから、まあ環境の整備も必要だし、日曜日位だな」

「ビジネスホテルに泊まる金があるのか」

「今は仕事先が有る。いつか志雄にも紹介したいぞ」

「俺は引き籠りだからな」

「よくここに立っているのは何処でしょう」

「精神的な意味だ」

「うーん。志雄」

「あ」

「お前剣道の」

「三段だ」

「よしよし、んじゃあ。Lv上げと行こうか」

「はぁ?Lv上げ?」

「ああ」

「話は終わったか」

「おうおう、あんたらもLv上げをしてみるか、知性は上がらないが、体力が上がるぜ、まあさすがに三名は運べないが」

「おい、雪、大丈夫か、妄想とか」

「何気なく酷い事を言うなお前」

「いいじゃないかなシン」

「ホノもそう思うか、しかし、なんとも変な話だな」

「少なくてもこんな少年たちが悪い事を考えるとはとても思えない」

「同感だ。奄美、その提案を飲もう」

「僕もよいよ」

「そうか。じゃあ。ひとまずその場所に直接行っても武器がないからな。それもよし」



「立ち入り禁止らしいぞ」

「うん。入れないね」

「奄美」

「まあまあ入ったらわかるよ。ここからは視界に妨害が起こるからね」


奄美がロープを飛び越えて進む、三人も進み、そして気づく。


「なんだあれは」

「黒い渦?」

「危険な感じがビンビンする。ああ」


黒い渦、【門】の前に奄美が立つ。

友人の四之宮志雄も近くに来る。


「なんだよこれ」

「ゲート、この中を探索する仕事をしている、ちなみに日給1万円」

「中々いい額だ。どんなところだ」

「巨大なダンジョンだちなみに俺のLvは5だ」

「高いのか」

「モンスターを30体狩っての数字だ」

「弱いのか?」

「攻撃魔法が抜群効く。弱点突いたみたいな」

「魔法って俺を助けた時に使った火の弾か」

「そう」

「俺は使えないんだけど」

「安心しろ。その為の道具は持ってている」


女性の二人が後ろに立つ。


「名前を言ってなかったな奄美信雪だ。」

「四之宮志雄だ」

「周防真」

「戸村仄だよ」

「周防、戸村、渡しておくぞ」


奄美が渡したグローブ、四之宮、周防、戸村の三塁に渡す。


「着けてみな」


三人がつける。

三人の表情が変わる。


「分かったろ。練習無しだぜ。突っ込む」

「少し待て説明しろ」

「簡単な話だ。俺は魔法使いなのさ」

「厨二病か」

「使い方は分かるだろ。何よりもその証拠さ」

「む」

「モンスターはスライム、スケルトン、蝙蝠だ」



内部に入り、奄美を先頭に、四之宮、周防、戸村の三名が続き。

遭遇したスライムに向け、奄美が火の弾で焼き尽くす。


「酷い臭いだ」

「引き籠りには辛い訓練だぜ」

「しのしのはヒッキー」

「そうだよ」

「こいつはこれでも剣道の段持ちだ。弱くはないさ」

「へー。結構強い」

「何故か危機感というモノが、周防、お前は」

「同じく剣道の段持ちだ」

「今日でLv2はあげるぞ。来週の日曜日までは鍛えておけよ」

「一応確認だが、これは遊びじゃないよな」

「下手したら死ぬな。まあ安心しろ。俺のLvは5だ。毎日潜るからな」


このまま遭遇戦を繰り返し三人がLv2になる。魔剣魔法解放回数も使い切り、奄美が強化系の<剛力>を使い三人を外に連れ出す。


「どうだLvになった時の上がり酔いは」

「死ぬほどきつい、マジかよ」

「軟弱な」

「シン、これは本当にきつい」

「休んだらLv3を目指すぞ」

「回復魔法」

「まあ使えるが、余計酷くなるぞ」

「きついぜ」

「体験しておけ、そのうち楽しみになるぜ」

「後で殴る」

「シン」

「よく言った周防俺の分も頼む」

「ああ」



夕方には治り、三人の魔剣魔法解放回数のMPを回復系の<魔力送信>を使い、三人のMPを全快する。これにより奄美のMPは-21になった。


「んじゃあ。二度目行くぞ。繰り返すようだが、来週の日曜日までに鍛えておけよ」

「ドンだけMPが有るんだよ」

「魔法使いか、妙な話だ」

「でも楽しい」

「それはある」

「お前ら気楽でいいな」



二度目になると慣れた物で、一人が確実に一匹を仕留め、奄美が囮になる中、他の三名が三匹を仕留める。

この作業で直ぐにLv3に上がる。

今度はマシになり、精神的な踏ん張りもあってゲートの外に出る。


「おーしLv3だ。じっくり休む。その後に解散だ。あそうそう。グローブはやるよ。来週に備えろよ。後MPは日で回復するぞ」


よく喋る友人に四之宮は上がり酔いにくるんでいた。

周防、戸村も同じく苦しみ、だが、文句は言わない。

ゲームのような仮想現実では味わえない、危険かもしれないが癖になるようなものだ。



「番号がない?」

「ああ。というのもスマホは持っていないんだ。こっちに来たのも最近だし」

「不便な」

「魔法とかで」

「無理無理。俺は低レベルな魔法使いだし」

「あれでか」

「そそ。あれでね」

「信じらんねえ」

「四之宮、お前は」

「引き籠りに入らねえよ」

「何たることか、分かった今から契約しに行こう」

「んじゃあタクシーに乗るか」



一番安いプランでスマホの契約を行い、四人で番号を交換し、近くのファミレスに入る。


「すげえ疲れたぜ。なんか一日色々と有り過ぎて、今ならカプセルホテルのカプセルでねぐっすりと眠れそうだ」

「あれは狭いぞ。寝たらわかる。で、ひとまず感想を聞きたいがいいか、まずはそうだな一番ひるまなかった周防」


黒髪のストレートの武道系女子、周防は出された水を飲みながらじっくりと思考を纏めた。


「その前に聞きたいことがある」

「なんじゃ」

「毎日潜っていると聞くが」

「特に守秘義務はないんだが、まあ俺の無尽蔵じゃないMPによるものだ」

「私からすれば魔法の腕前は抜群だがな、私に関しては上がっても7、今は8ぐらいか、しかし、奄美は私と同じように使った。合計回数は既に13を超え、魔力を分け与える回数も計算したが21、合計すれば34だ。十分脅威なレベルだ」

「何処で学んだとか気になるのか」

「ああ。まあいつもなら魔法なんてと鼻で笑うが、自分が使えば、さすがに信じる」

「魔法はな、あのゲートより繋がる世界の一つの王国で学んだ」

「マジか!」

「ああ。マジだ。だからあっちに行くために頑張るのさ」

「異世界か、異世界なんだな。異世界だろ」

「四之宮落ち着け。ニンジンをぶら下げられた馬ではあるまいし」

「おう」

「まあ理想郷なんて所じゃない、こことは違うが、人が住めば同じような物さ」

「そうか。しかし、あのダンジョンはどこまで広がる」

「謎」

「なに」

「まだ調査中なのさ」

「そうか。何のために私達に力を与えた」

「簡単じゃないか、志雄ならわかるか」

「そうだな。まずは腹が減り過ぎて死にかけたらわかるな」

「はいはい。注文してくれ奢るよ」

「救援か」

「正解、俺のような危険な場所に行くなら、相応に戦えて、相応に人数がいて、相応に素早く動ける者が必要なのだ。いつでもハンバーグが食べれる仕事じゃない」


三人とも納得だ。

あのダンジョン内部での遭難は悲惨さを極めるのはよくわかる。

下手したら生きたまま食われるかもしれないあのダンジョンで、いざとなれば通信一つで現れる救援隊が有るのか、ないのかでは全く違う事は実感していた。

ウェイトレスに注文し、12時間ぶりの食事だ。


「そんな役所でも、凄く楽しかった」

「戸村は銃とか詳しいか」

「どうして?」

「こんな仕事をしていると、なんというか、一般人と、戦える奴を臭いで分かる」

「臭うかな」

「ああ。臭う、火薬の匂いだ。なんつうか、そんな微妙な体の動きがある」

「臭わないと思うけど」

「分かった分かった。臭いはしないが微かに動きからなんというか癖の様な物を感じるのさ」

「シン」

「周防に関していえば、ばっちり剣道少女だな。居合いなどもする性格だ」

「鋭い」

「まあ銃に関しては使用しない方がいい、スライムには効かない、スケルトンにも効かない、蝙蝠なら利きそうだが、その為に武器を持つのは賢くない、何せ遭遇率からいえば蝙蝠は少ないからな」

「何より魔法で一確だから?」

「そそ。重量のある武器を持ちながらダンジョンに潜るのは賢くない、殆どの場合で聞かない相手と戦うのに重い道具を持てば動きが鈍る。結果として損害を増やすだけだろう」

「魔法使いは頭脳派?」

「本気になればな。いつもはふざけまくっているバカだが、本気モードになると頭の回転がそこそこよくなる」

「しのしのより」

「ああ。ただ勉強が出来るのかはまた別さ」

「ふ~ん」

「日本には2年も居なかったからな。日本語が通じるのもまだマシさ」

「ガンゲイルに2年か」

「本当に色々と有った」

「あまあま」

「ん」

「そこのご飯は美味しい」

「料理にもよるが、不味い飯は死に程不味く、美味い飯はここの高級料理並だ」

「・・・」

「どんな時代も変わらず、貧乏人は不味い飯、金持ちは美味い飯さ」

「あまあまは」

「自炊だ。それか仲間の手料理とか、他にも知り合いの店での酒盛りか」

「酒は美味いか」

「周防、その歳であるコールは不味くないか、まあいうならばここのビールよりは美味くはないが、高い度数という訳でもない、エール、ワイン、ラム、まっ色々だ」

「うむむ。」

「シンは酒飲みなの」

「なんつうかイメージを壊さない奴だな」

「そう見えるのか」

「まあな。なんというか旅の人みたいな、まあ剣士なんて言うのが最も合うがね」

「ふむ。妙な二人組だな。私はよく和風少女と言われるぞ」

「和風は分かるが」

「和風剣士少女の剣豪って感じだ」


四之宮も奄美の言葉にうなずく。


「シンにここまで言う人は初めて」

「そうだな。何やら新鮮だ」

「志雄の場合は、剣豪っていうより戦士って方が強い」

「そうかぁ?」


周防、戸村は納得する。


「武器選ばずが鉄則だしな」

「そりゃあ。まあそうか、考えてみれば、武器を選択するときには、効率的か、が最優先だしな」

「あまあま、僕は」

「間違いなく、ランサーだ。槍を振り回す、槍を突き刺す、そういった一種のリーチを使う戦い方が印象的だ。ほれ午前中の大会で、一回戦は槍を使う、あの戦い方は実に気持ちの良いものだ。一瞬の間を取り方も上手かった。」

「何か口説かれているのかな」

「そういう感性の持主じゃないな、むしろ戦う事に全力なのだろう」


料理が届き、それを食べながら、支払いはさっさと済ませ。


「そういえば何処に雇われている」

「周防、この国では法律のない事が出来る所と言えばそう多くない」

「裏稼業という訳ではないな」

「ああ。そんな所とは関係を持つと大変だ。何よりも金が払われるかも謎だ」

「むぅ。難しい」

「シン、たぶん役所だよ」

「役所?そんな所がなぜ」

「まあ正解だ。県民の安全確保らしい。あんなのが町中に現れたら大惨事だ」

「それで日給1万か、もしかして、そういう事なのか」

「・・・」

「ユキ」

「まあ、救援も欲しい、俺らが防ぐのに失敗した時の戦える者が欲しい、それは贅沢だろ。救援だけで十分だ」

「まだ力が不足しているが、当座は救援の仕事は引き受けよう、しかし、私にも都合が有るぞ。何よりも鍛えなければならない、LVが上がったデメリットがないとも限らない」

「Lvが上がると身体能力が上昇する、またMPの増加する、回復速度も上昇する、デメリットはLvUPの際の上がり酔いだ。上がる人で減少していくがな」

「武装に関してはどうするのだ」

「それに関しては自前でというしかない、魔法のアイテムが作れるが、まあすまん」

「いやいい。少なくても、私はこの状況が楽しいからな」

「どうすっかねえ剣道用の防具は防げるとは思えないな、何か防具になりそうでしかも軽くて行動を阻害しないで、んなものがあったら、まあ、有る訳がないがな」

「しのしのもお悩み中」

「ああ。防具もそうだが、必要になる衣類だろ、靴だろ、武器だろ。手元の財布は軽いだろ」

「しのしの、いい言葉、財布は軽い」

「なんか仕事を探すしかないかもな、装備の整えだが、金が入る日給の仕事かあ」

「ゲームで稼ぐ者も居るらしいが」

「ああいうのは課金プレイだ。入った分出る。結果として儲かっていないのさ」

「まあ当座はグローブのみでいいと思うぞ。どんな武器より強力だ」

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