表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
[現代社会にダンジョンが現れたら~注意・異世界業務は役所のお仕事です]  作者: 123456789
異世界への一歩を踏み出したらお役所は戦争です
13/14

【03-04:4/1日~異世界の村役場の仕事】



◆4月上旬。


ダム前のゲート内部のダンジョンを突破し異世界に戻る。

久し振りに戻ったこの世界が新しい生活の場となる。


村を整備するのはお隣さんの自衛隊に応援を求む。

快く承諾した自衛隊と図面やなんやらで村を整備した。


村の中央に広場と村役場、谷口総合商社、魔法ギルド、それらの後ろに各員に家がある。

また村には新しい住民も来る。

中央官僚で総務省異世界庁の緋村瞳子だ。ちなみにとても明るく元気な女性の為に直ぐに馴染んだ。ただ谷口、佐久間地と同じくLv1なので弱い。

そんな緋村は、暇になると予想しサイドビジネスとしてコンビニを経営している。

そんなウルクイル日本自衛隊基地南シャルクク村には直ぐに人が来た。


東側には日本海岸が広がり、西側にはフレイザー大草原が広がり、北側にはガンゲイル王国最大の砂漠のスピーア砂漠が広がる。南側にはガンゲイル王国最大のバードマンの住処のアンプルマ大山脈が広がる。

この西側のフレイザー大草原に暮らす、日本との関係もあるヴィエラ族から使者が来た。


「どうされた使者殿」

奄美信雪が使者に温かいお茶を出し問う。

「はっ。ヴィエラ族の領地である大草原の北、スピーア砂漠との国境に妖魔が現れました。報告によればかなりの数らしく急ぎ援軍の要請に来ました」

「これはハーブティーだ。エマご自慢のな、力が戻るので」

死者はそれを聞いてすぐに飲む。味が分かったらしく結局すべて飲む。

「好い飲み物です。これなら、いやいやいや」

「まずは向かうにしろ準備するしかない、それでは待てますか」

「はっ」

直ぐに村の主な仕事場に出向き連絡、その後に自衛隊にも連絡。

自衛隊は居残りの普通科分隊を残し、中隊規模での援軍に向かうことが決まる。

車両で向かうべきではあるのだが、急ぐのならヘリで行く必要もある。

先行の千本小隊をCH-47Jチヌークでの急行。

富坂小隊、風間分隊、後方支援担当の立花小隊は陸上兵器の輸送も兼ねて進む。


シャルクク村も出撃準備にかかる。

自衛隊との共同開発の41式大型トラック、41式指揮車両、41式パワードスーツ収納大型輸送車両、41式機動戦闘車の四両にそれぞれ担当ごとに搭乗し、援軍を求められたとき用の救援物資なども輸送するための物資が倉庫にあり、男性はこれをトラックに乗せた。

トラックには魔法使い組が搭乗、指揮車両には波田間、速水、加藤、瀬戸内、輸送車両には魔法使いでは無い戦闘員が搭乗、戦闘車には谷口、佐久間、緋村の三名の戦闘能力Lv[1]が搭乗する。


「どうしたみんな、暗い顔して」


気分でも悪いのか、全員顔が優れない。


「師匠はよく平気ですね」

「おうよ。元々は奴隷兵士だぜ?それはもう毎日が戦場よ」

「師匠はなんというか、苦労されましたか」

「少しだけな。良い経験だぜ。三千対1万と戦った傭兵隊の気分だぜ」

「負け戦ですか」

「いや、3千の傭兵隊が勝ったぜその1年間続く戦争は、損害も殆どなし」


全員が話を聞いていた。少しばかり奮起したらしい。

魔法使いの兵士を魔法兵とも呼ぶが、魔法兵専用の装備を自衛隊より提供されてた。

魔法使いの強化系で筋力を上げられるために通常の歩兵より荷物が重い。

41式50口径熱線銃、41式6・8mmPDW(個人防衛兵器)、41式300mm多目的銃剣、41式高熱刀身軍刀、41式魔法兵用簡易パワードウェットスーツ<ヒミコ>。

これらの装備の使い方の基本又は応用も話、戦いの場に出れば戦うしかないが、それまでに必要な知識はなるべく与えておく、また若宮・来栖による武道訓練もあるので、一般的な人々に比べれば極普通の兵士レベルの格闘能力はある。

ちなみに手榴弾などは使わない、味方を誤爆する恐れがあるからだ。手榴弾を扱うだけの訓練儲けていない上に経験すらないから仕方のない事だ。



到着したヴィエラ族の象徴的な街のアルク=レイドに到着する。

トラックから緊急物資を下ろし、シャルクク村魔法兵班は魔法ギルドの前なので職員と共に物資を運ぶ。

シャルクク村小隊は魔法ギルドの前に停まり、魔法ギルドの者が誘導する。


「おう。家族が揃うのは久し振りだな。元気していたか」


父親のシャルククが話す。五名が飛び付き母親のディーバがよしよしと頭をなでる。

この子たちは幼くから魔法を習い、ゲート内部のダンジョンで鍛えと戦闘的な魔法使いのように育てられたが、戦争は経験しないし、想定もしていない上に、訓練も受けることもなかった。

そんな訳で戦争に対する魔法使いの知識・技能を持たない。

魔法兵ではなく、魔法使いという訳だ。


「ゆっくりとしたいところだが」

「戦だしな」

「おうよ。久し振りに戦えるのは嬉しいねえ」

「気持ちはわかる。奴隷兵士同士だからな」


シャルククが話すと、信雪が人の悪そうな笑みでニヤリと笑う。その近くのエマが思いっきり足を踏み信雪が飛び上がる。


「言いたくはないですけれど、戦争を喜ぶのは感心しません」

「力を振るうのが楽しんだよ。だろ、特に知略とかさ」

「師匠はまだマシな指揮官ですよ。中には犠牲を行って勝とうとする者も居ますから」

「来栖さん、このバカを甘やかさないで」

「エマ、余り見習いを虐めのものではないわ」

「もう姉さんも」

「それにどうしたって戦に出るのよ。少しでもケガをしない、少しでも生き延びられる方が良いのではない」

「それは、ですが、ハイ解りました」

「ええ。恐らく戦争を経験した者は少ないわ、シャルクク、ノブユキの二人よ」

「つまり誰もが戦は初めてと、まさかの全員が新兵なのですか」

「そうねえ。二人を除いては新兵ね」

「敵襲、敵襲」


シャルクク小隊の戦闘可能な班は、魔力無しの普通歩兵で構成される41式普通歩兵用高機動パワードスーツ<武尊>を着込み。

現場の隊長の四之宮は、戦争だということに複雑な思いだ。

全員が新兵、そんな者達で戦う戦争に不安がないはずもない。

肩から吊り下げる41式50口径熱線突撃銃、41式300mm多目的銃剣を見る。

確かに安心させる効果があるのはなんとも不思議だ。

腰には41式6・8ミリPDW、反対側には41式高熱刀身軍刀。


「志雄」

「ああ。若宮さん」

「休んでも居られないようだ。すでに敵襲の鐘がなった」

「休み時間位くれよ」

「行くぞ隊長さん」

「了解です」



「ドローン射出します、数10」

「ドローンシグナル感知、データリンクはじめ」

「01,02,03,04,05,06,07,08,09,10完了」

「映像出ます」


早期警戒機・偵察機・哨戒・物資緊急運搬機=ARMMから映像が集まる。

映像から適正力の先兵はそれほど多くはない、数は凡そ2千。


「速水、どのように見ます」

「はっ。まあ小手調べでしょうか。少し当たって相手のレベルを把握するための先兵です」

「なるほど、そのように見えますが、何か気になる印象です」


波田間がスクリーンに映し出された映像を指さす。


「毒、もしくは油でしょうか」

「この世界の事です。酸という事も考えられますよ」

「どちらにせよ。これは厄介なことになりますよ」

「敵はバカではない、相応の知能があってこちらまで浸透してきた、魔法兵班、歩兵班の二つの班は城壁外で敵を叩け、それだけで事足りるでしょう」

「味方から苦情が出ますよ。経験させたかったと」

「聞こえません。我々の経験値という事にしておきましょう」

「加藤、瀬戸内」

「了解や」

「了解」


魔法兵班、歩兵班に通達がいく。

魔法兵班8名、歩兵班5名の13名だ。

信雪が強化・防御魔法をかける。

紋章強化魔法の、第1位の剛力の、第2位の強羅の、第3位<紋・金剛Lv1>

紋章防御魔法の、第1位のダメージカットの、第2位のオールカットの、第3位<紋・エクスカットLv1>

広範囲に渡り強化魔法と防御魔法がかかる。


「敵はたったの2千だ軽く片付けるぞ」


繰り替えすが二つの班で13名だ。


「いやいや、2千だぞ!」

「シオ情けないことを言うなよ。適当に撃っていれば簡単に終わるって」

「くそ、歩兵班弾幕を張るぞ」

「おい、魔法兵班、支援を始めるぞ」

「観測距離既に300m」

「歩兵班のお隣に陣取って、俺の使う魔法に追従してくれ、攻撃を行うポイントも指定するから、新兵に酷は言わないさ」


こういうところがこの師匠の好い所だなと素直に来栖は感心する。


「銃は?」

「おーい。銃なんて護身用だ。俺達は魔法使いだぞ?武器は当然の様に魔法だ」


歩兵班の隣に陣取り、歩兵班が攻撃を開始すると50口径の熱線突撃銃から12・7mmの大口径熱線が放たれ、敵兵をなぎ倒す。

アマミご自慢のオリジナル魔法の一つの攻魔系光熱子第1位<レイLv5>の上位の第2位<レイラLv5>の上位の第3位<レイガLv1>を構成する。

他の魔法兵もそれを見て<レイガLv1>を演唱し構成する。

信雪の魔導院式の高速詠唱は行わず、ゆっくりとした詠唱と構成なので全員が追い付く。

8名から放たれた光熱子の本流は、敵の上空に飛び、敵陣中央で解放され、地上に向けてクラスター爆弾のような、散弾砲のような効果を発揮する。

歩兵班の5名が呆れるような効果だ


「なんつう破壊力」

「さすが魔法」

「甘々容赦ない~い」

「さすがは魔法使い」

「遊んでいる場合か、射撃、射撃」


歩兵班も射撃を再開する。

信雪率いる魔法兵班はさらに次の魔法を放つ。

信之オリジナルの二重魔法だ。

放たれた<レイガLv1>

レーザーのシャワーのようなものだ。

光熱子の散弾が降り注ぐ中、妖魔たちは既に敗走を始めた。

そこに到着していた自衛隊が追撃し、アルク=レイドの戦いは幕を閉じる。

光熱子第3位<レイガLv1>によつて千数百が倒されていた事も有り自衛隊は追撃作戦を行うだけで済んだ。


「戦争で一番楽なのは魔法兵だ。立って魔法を使うだけだしな」

「脳筋と何が違うの」


フランの言葉に信雪は微苦笑して


「魔法バカで戦争は十分なのさ。だがお前たちには先がある、今は良く生き延びろ」


少なくても新兵である兵士と変わらない魔法兵班の者にはよく届いた。


「じゃあ。撤収だ。」



戦争は勝利で終わったわけではない、大草原に侵入した妖魔を掃討するのが今回の戦争の勝利のための目的だ。その為に努力を惜しまないのが戦争というモノだ。

そんな訳で魔法兵として活躍した魔法兵班を含む、シャルクク村小隊は、自衛隊との協議を行う。

自衛隊も日な事も有って、大草原の情報を集め、簡単な地図を作っていた。


「上曰く、好きにやれだ」


日本異世界領の自衛隊第16旅団長の西田1佐が言う。

規模こそ200名程度の中隊規模だが、この辺りでは最高の軍事組織だ。

江戸川一尉も生真面目そうに頷く、他の小隊長の二尉も少しだけ嬉しそうに頷く。

西田は勇猛干戈なタイプの指揮官だ。この男とシャルクク村小隊を率いる波田間は盟友のような関係でもうあり、よく軍事的なシミュレートしている。

波田間のヴィエラでも有名な参謀タイプの指揮官なので、構想の様な面構えで一つのポイントを叩く。


「大軍を動かすなら水場は鉄則」

「だな。まあおそらくここだ」


地図の川の上流にある砂漠との国境、そこにある岩場の地帯。


「奄美君の雨でどうにかできるのかもしれませんが」

「あれは凄い、単純な破壊力とその範囲ならですが、真に恐ろしいのは上空からふるので通常の戦場ではまず防げない、それを考えても消費が激しいのでは」

「奄美君にもそれを聞きましたが、あれは軽量化を重ねた長い矢のようなもので、見た目は派手で破壊力もありと色々い性能に優れているが、真に優れているのは、低レベルの魔法使いでも使いこなすことができる。燃費だそうです」

「なら簡単だ雨で叩けばいい」

「しかし、我々にも経験というモノが要ります」


速水の一言に誰もが頷く、簡単な戦争なら多くの経験を積ませたいというものだ。


「それともヘリで背後?」

「火力支援、攻撃ヘリが欲しい」

「整備から申し上げれば、これ以上の負担は輸送量の問題から不可能です」

「・・・いやあるぞ、ほれ悠木が作ったヘリ」


自衛官は微妙な顔だ。剛毅な西田すら微妙な顔だ。


「いやあれは、蒸気機関だぞ?」

「そういいますが、車両の41式は全て蒸気機関ですが」

「もう少しテストしよう、正直あれは不安だ」



戦争の緊張で突かれた兵士達は皆食事をしてから休む。

魔法兵の班長をする信雪は、暢気にコーヒーを飲みつつ魔法の研究に余念がない。

魔力さえあればと惜しまれるほどの才能が有った信雪だが、魔力がないのはいいかえれば体力のない武術家だ。そんなものは単なるゴミだともいわれた。


「全く変わらないなぁ」


信雪が独白する。

昔から没頭すると時間を忘れたものだと思う。

研究も十分進み、重力系、光熱系を完成させた。

今開発しているのは魔導院でも担い手の居なかった魔法の研究の一つ。

亡き恩師の研究仲間だった人のものだ。

恩師と違い、魔力に優れた人で傲慢で自己中心的な人ではあったが、その魔法兵としての実力は本物で、この人物から魔法兵のイロハを習ったのだ。

その人は結局は戦死するが、一つの村を守って戦死したためにとても手厚く葬られた。

この人物が考えていた拠点破壊用魔法、正真正銘の軍用魔法だ。



4月中旬の10日。

陸自第16旅団(実際は中隊規模)。

シャルクク村義勇兵小隊20名は、アルク=レイド魔法ギルド義勇兵小隊50名、ヴィエラ族族長直属小隊50名の3個小隊の凡そ120名を第16旅団に一時的に指揮下に入る臨時中隊を編成する。

すでにシャルクク村義勇兵小隊の活躍は知られており、オリジナルの魔法を使い妖魔を撃退したことは記憶に新しいらしく、族長のラウラも快く兵を出し。

小隊のトラックには牽引車両も取り付けられ、一つのトラックで二つの人員輸送車両を牽引する。乗り心地はそれほど良くないが、搭乗人数は一階に50名、2階に50名の100名の二階用に変更された。

このトラックに2個小隊が輸送できるので、後にメジャーな兵員輸送車両のモデルとなる。

当然の様だが、魔法兵も、ヴィエラ兵もこのシャルクク村義勇兵の強さの秘密を探るのも一つの仕事だ。ただ車両が四両もあるのはさすがは日本と言った所らしい。

追い出された魔法兵班は緊急物資として運んできたが、使えないので返される予定のマウンテンバイク改造電動付自転車に搭乗し、8名で走行中だ。

そうして大きな川、上流に妖魔の拠点と思われる岩場の砦があるらしい。

すでに偵察小隊が張り付き、時間をかけて偵察中だ。


ちなみに車両の内部には冷暖房付きだが、トラックの兵員輸送車両、バイクの二つは雨風が吹き付ける。現代用に随分チェーンされているのでまだマシな乗り心地でも、これは辛い。


「停止するぞ!」


先頭を走る41式機動戦闘車の車長の谷口が拡声器で放送する。

独立した小池のある場所だ。

41式の最大の特徴である紋章蒸気機関、この世界でのメジャーな動力だ。これにより燃料は水のみで済む。経済的にも非常に助かる動力で、尚且つ整備性能も非常に高かったりする、現代の電磁制御エンジンに比べれば安価で丈夫だが、製造技術には魔力がいるのが難題だ。

41式機動戦闘車の車長の谷口、運転手の佐久間、砲手の緋村だ。

近くにはバイクが止まり、魔法兵班も下車する。


「では使います」


魔法使いのエマが言う。オリジナルの魔法系統の植物魔法を使い、広範囲にかけて体力回復などに傷の回復速度の上昇などの強力な回復支援を行う。

治癒系統の魔法にはない広範囲で、しかも治癒魔法と同じぐらいの効果に病すら治す魔法系統は、医療魔法の基礎を築いたと言ってもいい。


「はい弁当のお時間です」


来栖からしてもポイントの高い気配り上手だ。

師匠が結婚する気になるのも分かるというモノだ。だが嫁さんはもっと平和的な人が好いと来栖は思う。

ギル、レオン、ルリ、フラン、チェルピーの5人分に、ノブユキ分、来栖分、自らの分だ。


「まあユキの味には負けますね」

「いや、今は追い越された、凄く味が良い」

「そうですか?」

「ああ」

「だとしら嬉しいです」


サンドイッチを食べた。


「美味そうな物を食べているな」

「すまん少し分けてくれ」

「何でですか、私のお握りが」

「緋村、悪いが死にたくない」

「頑張って作ったんですよ!」

「爺ちゃんたち、はい」


姉弟からサンドイッチが渡される。


「うめえ」

「これぞ人の食べ物だ」

「酷いですよ。私のお握りも」

「じゃあ俺が」

「はい」


出されたお握りはカニの身がはみ出す、そのおんぼろさがかえって好感が持てる来栖だ。

食べたら悪くない味だ。


「そこそこに美味しい」

「え、美味しいですか」

「緋村?」

「いや、自信はないですけど」

「まずは自分なりに食べてみてくれ」


緋村も食べると、味が微妙、作った本人が黙るので、周囲も微妙。


「悪くない味なんだがカニが痛んでる」

「来栖さんすみません!」

「いやいいさ。痛んでいるが腹を下すまでじゃない、何やら懐かしい味だ」

「そ、そうですか?」

「あとどれぐらいある」

「10個ぐらい」


このカニの身が痛んでお握りを来栖が一人で平らげた。


「結構いけるなカニ身お握り」

「よく食べられましたね」

「カニが新鮮だったらもっと良かった」

「はい。もっと新鮮ものにします」


そんな、来栖と緋村の春が訪れ掛けた時。


「敵襲!」


全員がびっくりするが、戦争経験者の信雪はのんびりとサンドイッチを齧る。

この全く動じない信雪に、周囲の仲間やで詩や家族や新兵からすれば非常に安心感を与える動きで、確かに機敏ではないがぶれない芯のようなものが感じられる不思議な風格がある。


「おいて奇襲だぞ!」

「誤解だろ」

「バカか、敵が」

「なんで臭いがしないのに妖魔がいるのだ」


周囲の者が止まる。二個小隊の指揮官も黙る。


「風呂に入っているのか妖しい妖魔の匂いがしないのに、どうやって連中が臭いを消すんだ」

「あんた戦争の経験が?」

「ガンゲイル王国とダジギス王国との戦争で1年ほどな」

「隊長!」


二個小隊のアルク=レイド魔法ギルド義勇兵小隊の第2中隊第2小隊、ヴィエラ族長直属小隊の第2中隊第3小隊の隊長が来る。


「魔導院上位正規魔術師奄美信雪、現シャルクク村義勇兵小隊魔法兵班班長だ」


二人の隊長も敬礼する。


「アルク=レイド魔法ギルド義勇兵小隊隊長リム=アリーシャです」

「魔導院の経歴はないのか」

「はい。師より習いましたがまだ未熟と上位見習いのままです」

「なるほど、師の名前はガンエン殿か」

「師をご存しせなのですか」

「性格が相変わらず悪い、弟子の事はよろしくとでも手紙の一つを送ればよいのに水臭い」

「あの」

「魔導院時代の同級生だ。分け合ってこんな若さだがな、まあそっちは」

「はっ。ヴィエラ族戦士隊族長直属小隊のアームブラスター・クロウです。現在は第16旅団第1大隊第2中隊第3小隊隊長です」

「元気な奴だ。まあ戦争をしていると色々な知恵がつくが、古参兵は何かと生き残ろうとして適当な戦いをする、新兵はがむしゃらに戦いペース配分ができないから戦死する」

「・・・」

「だからこそ魔法兵には常に最高の秘術が伝えられる、やばくなったら逃げろ、それも数の少ない方へ、奇襲を受けたら脱兎の如く逃げろ。もし逃げ足自慢の者がいたら捕まえてでも同僚にしろ。だ」

「師匠、分からないでもないのですが、心苦しく申し上げればそれでは勝てません」


全員の意見を代表して来栖が言う。


「バカ野郎。戦争に国が勝って自分や同僚が死んだらその後の国は誰が守る、死体が守ってくれるのか?それとも傭兵でも敵の捕虜から選ぶか」

「じゃあ。どうやって勝つのです。逃げてばかりでは勝てません」

「お前はもう少し戦術や作戦立案を学ぶべきだな。簡単ではないか、敵が自分達より少ないもしくは弱い場合に襲って叩き潰し物資を奪えばいい、勝つたびますます強くなり敵は戦うたびにますます弱くになるだ」


全員が感心する。


「師匠は軍略とかやはり勉強した方なのですか」

「昔習った。そこの志雄に」


名前を呼ばれた志雄は、携帯食のドライお握りを食べていた。

他の第1小隊の歩兵はお握りをパクパクだ。

呼ばれた志雄は聞こえなかったらしく、地面の草畑に寝っ転がって寝息を立てる。

多くの兵士がこの姿に安堵した。


「警戒はしておくから休め」

「「は」」


戦い慣れない新兵を見て信雪は自らの新兵の時代を思い出す。


(懐かしいねえ。幼き頃の戦いだな。戦って勝つだけが全てだった)


1時間ほどの休憩後、再び進行する。

41式魔法兵用簡易パワードウェットスーツ<ヒミコ>のマスクは外してある。

そんな警戒も担当する信雪が速度を緩める。

通信機でもあるiイルミネーターで指揮車両に連絡を入れる。


「こちら信雪、残念だが伏兵だ。戦場の匂いと、妖魔の臭いが混じる」

『こちら瀬戸内、了解した』

「数はおよそ200以上だ。これは確実な数字ではないことを添えておく」

『了解した』


指揮車両では臨戦態勢を整えるために静かに命じる。

41式普通歩兵用高機動パワードスーツ<武尊>の歩兵が直ぐに周囲の警戒に入る。

歩兵班の浅間は、最近は全く危険な感じ、つまり危機察知能力が衰えたとも思うが、長年の後輩である信雪を信頼するので安心してペットボトルのコーラーを飲めた。


「こんな草原で待ち伏せですか?」


志雄が指揮者に返答する。


『ええ。少なくてもの奄美君の臭い探知機は正確そうですし、料理人は鼻が重要ですからね』

「ならどこに、見渡す限り草原ですよ」

『魔法的な幻覚もしくは幻影ではないかとの推測もあります』

「それでユキは」

『魔法兵班には熟練した兵士は奄美君だけです。分散はまず不可能なのが困りますが、まずは歩兵班より可能ですか』

「可能と言えばまあ可能ですが、二方向のみです。二人一組が基本ですし」


波田間より命じられ、二人一組に構成し、周辺の偵察を行わせる。

ARMMは射出せず、悠木も熱線突撃銃を握り、指揮車両のハッチから警戒していた。

音符も握るが、直ぐに外す。

少しでも良いからパワードスーツの管理を強めることにしたのだ。


指揮車両では二個小隊にも指示を出し、命令を伝え第2小隊、第3小隊はトラックの防衛を命じられる。進軍するのにどうしても必要な大事な足なので致し方ないと両名ともに納得した。


「どういうことだ臭いが強まるぞ」


通常の歩兵すら臭いがかぎ取れる。

警戒する信雪に指示が下る。


「了解した」

『無駄撃ちにならないことを祈りますよ』

「各員、適当に低レベル攻撃魔法準備用意」


これに反論はない。むしろ7名とも安どして魔法を詠唱する。

放たれた低レベルの攻撃魔法が、敵兵を捉え即死させる。


「総員戦闘準備ぃ!」


信雪の怒声と、姿を現した敵兵の妖魔に、第2小隊は魔法で応戦、第3小隊は直ぐに弓を射る、第1小隊の歩兵は直ぐ後退し、輸送車両の周囲で応戦する。

41式機動戦闘車は、50口径105ミリ超電磁砲では近すぎて無理と判断し、同軸機銃の6・8ミリ機銃を緋村が操作する、車のハッチに取り付けられた車長の谷口が立ち上がって銃巴に手を掛け、12・7mm重機関銃を使う。

大乱戦に陥る寸前で判明した敵襲に、第1小隊の歩兵班は直ぐに突撃銃で敵兵を薙ぎ倒す、魔法兵班は信雪の指示の元、戦闘車の近くに陣取り魔法ではなく41式熱線銃では不利なので、41式6・8mmPDWを握り、超電磁砲の機構から妖魔たちを薙ぎ倒し、片手では軍刀を抜いて敵兵を切り殺す。

混乱しつつもPDWを使い攻撃を受ける寸前で反撃した。

第3小隊の小隊長アームブラスター・クロウは必死に矢を射るが敵兵の多くが盾を持つたろに効果が薄い、このままでは白兵戦になると判断した。


「第3小隊白兵戦準備!」


弓から曲刀のシミターで迎撃に移る。

第2小隊の小隊長のリム=アリーシャも魔法による迎撃を判断したことを自分なりに高評価ではあったが、思うような一斉攻撃が出来なかったために敵兵はかなりの傍にいる。

魔法兵かもしれないが、魔法使いが先頭平気であったのは過去の時代、信雪たちの正規魔術師時代で終わりだ。必然的に戦闘訓練も受けていない上に装備も殆どない。

そこにお隣の信雪たちの魔法兵班が敵襲を撃退し、直ぐに第2小隊に近付く敵兵に向け熱線銃での狙撃を行い敵兵がバタバタと倒れる。

一番の敵兵が集まったのは意外な事に隊の腹の第2小隊、第3小隊だった。

第1小隊の魔法兵班は直ぐに第2小隊の援護を行う、しかし不幸なことに第3小隊は既に白兵戦に移り第1小隊の歩兵班では接近できないのだ。

結局交戦から1時間後、戦闘は終わる。

この第1512中隊と妖魔軍2個中隊の挟撃を受けるも、撃退することに成功する。

二倍の兵力差を覆したのはひとえに現代兵器と魔法だが、敵軍は欺瞞魔法を使う極めて厄介な魔法の使い手が加わっていることが明らかになる。

またこの戦いで第3小隊は壊滅的な被害を受けるも、第1小隊魔法班班長信雪の指示の元、第2小隊とともに治癒に専念し、体の一部を失った者すら完治させることから第3小隊は魔法兵にとても感謝した。

しかし、信雪は戦争を冷静に見ており、敵兵の遺体を埋葬することを提案し反感に近い物を買うが、恩やらなんやらもあってこれは受け入れられて妖魔たちを埋葬した。


待ち伏せの遭遇戦だが、信雪は敵兵の躯の装備から近くに拠点があると判断した。

妖魔たちの足元には砂がついていた、これは近くの砂場に行かないと着かないものだ。

そこに行き、今度は攻勢のための準備を整え1個中隊が真正面から敵兵に判別されながらも第1小隊魔法兵班、第2小隊の攻撃魔法で敵軍にランダム攻撃しながら、第3小隊は敵軍が伏せていると思われる小さな掛けの影に向け進軍、この進軍に第1小隊歩兵班が支援した。

欺瞞魔法の厄介な所は姿を隠すことだ。必然的に小規模な奇襲が相次ぐ結果になる。

敵軍は愚かな一面も持ち合わせるも、指揮官としては優れていた、もくは優れた参謀がいた。有る程度は戦い被害が大きくなると直ぐに撤退したのだ。

欺瞞魔法のために追う事も出来ずにいた。

前回と同じように魔法で治癒し、体を再生し、敵の遺体を埋める。

この戦後処理のような作業だが、最初こそ反感を抱くも、今では二回目になり、またヴィエラの者達はしぶとい敵兵を称え、喜んで葬った。

ヴィエラの価値観でいうと、弱い敵兵に価値はない、強い敵兵なら喜んで葬ろう。

こんな考えなので日本人やガンゲイル王国人にとってみれは奇妙に思うが、それは異文化というモノだ。

戦いに勝利するも、魔法を使い過ぎ魔力が心許無い、その為にここで休むことになる。

砂場の傍を流れる川、そこを信雪は調べる。

すでに熟練兵のは知れ渡っているので、誰も咎めず、何か重要な物を探すと思われた。

それは当たるものの、証拠の布切れと信雪の言葉に中隊指揮官、副官、小隊指揮官は最悪の気分だった。


「妖魔が風呂に入った。それも服を洗うほどに」


意味するのは、きつい臭いが薄れることになる。


「敵兵も気づいたのさ。欺瞞魔法で隠れているのに感知される理由を」

「追跡は不可能ですね」

「いや、敵兵の服も靴も濡れている、今なら追える」

「追跡を開始します。直ぐに進軍準備」


ベテラン兵一人いるだけで部隊のレベルが上がったようなものだと言えた。

ただ、疲れている兵士達は休ませてくれと言いたくなるのを我慢する。

しかし、信雪の判断は正しく、波田間の判断も正しかったが、今回は敵が予想を超える。

指示を下した波田間がふとペットボトルのお茶の水が揺れることで喉の渇きを感じ、取ろうとするが信雪が手を伸ばし掴む。


「水面が揺れる、敵の大軍が近づいている」

「奄美君にはぜひ兵士の訓練を頼みたいですよ。撤退します」


信雪が頷く。



二度交戦し勝利するも、三度目に撤退したことで士気は少なからず影響し第2小隊を中心に士気が少し減少していた。戦闘訓練を受けていた第3小隊の方は士気が高いのが好対照だ。第1小隊の方は士気がそこそこ高い、冷静な方だ。


後方を守る魔法兵班、なんだかんだ言って魔法班の働きには目覚ましいものがあるのは確かで、第2小隊も第3小隊も頼りにしているのはあるのだが、17歳という未成年の為に大人からすれば困るのが悩みどころだ。

ただ指揮官からすれば部下に欲しいなあとも思ったりもするが、年齢から無理だ。


時々信雪は止まり、ペットボトルを地面に置き、振動から敵兵の距離を測る。

そうやって撤退し、ある小川を挟んで反対側に陣取る。

ベッドボトルの水がわずかに揺れることから、敵軍はこちらを追跡している。

草原に残る車両の後を辿っているのは明白だ。

第2中隊の指揮官が集まり、指揮車両ではなく野戦テントだ。

地図から凡そ2㎞、数は凡そ3000名、一個連隊規模だ。

恐らく敵軍の中でも精兵がいることは確かであった。

川の近くに円形の野戦陣地を作り、濠を作った後に水を流す、敵兵が入れば警報のように水面が跳ねる、また水の音以外の音は敵兵だ。


「我々は追い込まれましたね」

「何故です?」

「ここで引けばアルク=レイドに接近するからです。つまりここが敵兵にとっても大事な場所であることも確かなようですし、当然の様に意地がぶつかります」

「訳すのなら、敵兵はここが欲しい、我々はここを守りたい、必然的にぶつかる、当然の様に被害も大きい、だが欲しい、その為に兵を出す、だから被害が広がる」

「なるほど、確かに意地です。1年戦争で経験は」

「ミコッタの丘、ちっょっとした丘で、そこを巡って何度も衝突した記録がある、俺も最後の方は参戦したが、あれはバカバカし過ぎて兵士としては笑えないな。まあ兵士が言う台詞じゃないが、そういう場所が戦争で最も怖い場所さ」

「丘ですか」

「車両を使う防壁にも使えるんじゃないか」

「下手したら魔法で破壊されるぞ、だがまあ、使えなくもないか」

「車両に隠れて射撃かよ」

「そこでなのだが、41式熱線銃、熱線突撃銃の二つを第3小隊に一時的に貸し出すのはどうかと考える、第1小隊は41式6・8mmPDWがあるからな」

「若宮さん、ユキの通りに、後短期間の教官をお願いします」

「心得た」

「俺も手伝おう」

「頼む」


若宮と来栖が武器を集め、第3小隊に教え始める。


「他には41式機動戦闘車だ。こいつは遠距離からの砲撃任務だな、パラミダの戦車のような扱いだが踏ん張ってくれ」

「爺さんは労われよ」

「労わりたいが、全滅よりは良いかなと」

「了解だ」

「残るのは魔法兵班と第2小隊だ」

「魔力温存はないですね」

「ああない、恐らく敵は川を凍りつかすだろうが、その為の魔力を考えれば消耗して結果として此方の魔力は温存される、防御魔法のみでよいからな」

「魔法兵の指揮は奄美殿にお任せします」

「ダメだぜ。リム=アリーシャ、お前にはさっさと一人前になってもらって魔法兵を束ねる仕事がある。難しいだろうが、助言はする偉そうに説教もしよう、だが士気と決断はお前の経験だ」

「はっ」

「恐らく敵兵は魔導院卒の魔術師だ。どっかで見たような魔法だが、やはりこれぐらいの魔法を一人で作るにはいくらなんでも時間がかかる。シャルククがいれば聞けたが、まあ対策はあるしまあ良いさ。第1小隊魔法兵班は対魔法用魔法を、第2小隊に関していえば罠を作ってもらう」

「罠?こんな平原に」

「川に雷撃を放ってもらう、敵兵が来れば欺瞞魔法を維持するために水面を凍らせる、敵兵が浸透してきたらその水面めがけて雷撃を放つ、雷撃系第1位でいい」

「なんとも初歩的な魔法ですが、破壊力で増すのですか」

「いや、敵兵が感電して痺れる、その間に他の兵士が攻撃して倒す、つまり戦闘支援だな」

「そんな子供騙しな、いえ、やってみますが、川幅の小ささから広げますか」

「エマ、重力系第2位で川幅を広げてくれ」

「それで指示を下したのですね了解です」


魔法による工事が始まり、短期間で川幅は広がり、川の上流側の岸に銃を持った兵士の入る第3小隊が配備される、その両脇にトラック、機動戦闘車が壁を作る。

この機動戦闘車の横に第2小隊が陣取る。

第1小隊は敵兵が最も重点を置くであろう、最短距離の箇所に配置する。



ペットボトルの水面が振動を激しく行う。

丁度小川の中腹にある、中州になっていない箇所に作られた、第2中隊陣地。

分厚い水に満たされた堀の陣地側で第2中隊の指揮車両にいる波田間、加藤、瀬戸内、ドローン制御室にいる悠木の四人、速水は第3小隊のアームブラスター・クロウの指揮下にいる、一時的な人材の貸し出しだ。


「そろそろ水面を凍らすぞ、十分近いが攻撃はするな、しかし警戒は怠るな」


信雪の読み通り、対岸から氷系統の魔法が放たれる、これで氷の橋を作る気らしい、しかも一個連隊規模の数か一斉に通るための橋だ。むしろ通路のようなものだ。

波田間も痛感する、古参兵がどんなに貴重な兵士なのかというモノを、本気で兵士の訓練を任せたくなるが、それでなくても忙しい為に難しいかもしないと思う。


「まだだ。攻撃はするな、警戒は怠るな」


第2小隊の小隊長のリム=アリーシャは喉が乾く、冷や汗が流れる、出来たら逃げたい気持ちを必死に抑える。戦争が終わったら奄美に頼んで教えてもらおうと考えた。


「落ち着け、俺達はまだ死なないさ。ゆっくり息を吸って吐け」


第3小隊の小隊長のアームブラスター・クロウは必死に考えない、ひたすら訓練を思い出し、ひたすら無事に生き残る事だけをひっに思い浮かべる。


「ようし、トリガーに指を掛けろ、弓の弦を引け、魔法の用意だ」


戦闘準備を行う。

氷の大橋が完成し、敵兵が突撃するような雄叫びが聞こえる。


「ほんじゃあ。攻撃開始」


41式機動戦闘車の50口径105mm超電磁砲より放たれた砲弾が対岸の敵の中心に着弾、凄まじい爆発を起こす。

第2小隊は攻撃魔法雷撃系第1位<サンダーLv1>を放ち、接近しつつあった敵軍に雷撃が走り川の氷の上にいた敵兵が感電する。

第1小隊の歩兵班・魔法兵班、第3小隊の攻撃が始まる。

僅か120名での野戦陣地防衛戦。

敵軍は氷の大橋を渡るために浸透作戦を行う。

すでに戦死した数を数えれば100名が戦死、数百名が負傷だ。

信雪の魔法を活用する作戦は見事なぐらいはまった。

それも魔法兵が不思議がるほどの被害を敵に与え、普通に考えてLv1のサンダー程度の戦果ではなかった。

第2小隊の魔法兵達は余裕をもって攻撃魔法を唱え敵兵に感電を与えていた。

41式熱線銃は熱線銃の中でも高性能な狙撃銃に近い上級選抜射手用の物だ。スナイパーライフルほど狙撃性能は良くないが、アサルトライフルほど連射性能もよくない、しかしこの二つの特徴を持つある程度の連射性能、ある程度の狙撃性能を持つ最新鋭の銃だ。

こんな中途半端な銃の様だが、兵士にとってみれは非常に性能が良く、よく当たるために第3小隊のヴィエラの戦士たちはよく当たる銃と呼ぶ。

対して突撃銃は命中精度より連射性能が高いが、その低い命中率からよく当たらん銃と呼ばれる。


第1512中隊の指揮車両


「始まりました、現在敵兵の確認戦死100、負傷者多数、予想500、対岸の敵兵予想数2400」

「41式機動戦闘車の砲撃完了、次弾装填中」

「ドローンより、敵軍二つ目の橋建設を開始」

「谷口さんに橋を壊してと伝えてください」

「谷口さん、聞こえますか」

『ああ聞けえるぜ。しかしすげえなおい、信雪の判断ばっちりだ。んでえ』

「第2橋を破壊してください」

『了解だ』

「敵軍被害多数、確認戦死数300を突破、負傷兵多数、数800、対岸の敵兵1900と予想」

「41式機動戦闘車砲撃準備完了、確実に照準を行います。命中率90、95、100%、砲撃」


41式機動戦闘車より放たれた二発目の砲弾は、二つ目の橋の根元を破壊するだけではなく着弾から中心に周囲に爆発の衝撃を与えた。


「敵軍の魔法兵に被害を与えたもよう」

「敵軍被害多数、戦死確認500を突破、1000名以上の負傷兵を確認、残る1500名を予想」

「敵軍姿を現します」

「画像出ます」

映し出されたのは確認された妖魔の中でも上位の存在の上位妖魔だ。

人数はおよそ1500名を残す。

「敵軍横隊を作ります」

「攻撃は続けてください、止める必要はありませんから」

敵兵がパタパタと倒れる。

熱線や超電磁砲の銃弾なので、火薬式の銃の銃弾とは違い、当たった個所は灼けており血は流れていないが、辺りには焦げ臭い臭いが広がる。

しかし戦場なので誰も気にしない。

120名で3000名と戦い、しかも被害もなく1500名まで減らしたことは十分奮戦したことを示す。むしろ善戦とよく言えるだろう。

第1小隊の歩兵班・魔法兵班のPDWの射撃が止まる。

すでに連戦で弾薬は品薄気味だったが、今回の戦いには全力を行う、しかし続く戦闘時間に進み具合でついに弾切れになった。

敵軍の将はニヤリと笑うのがよくわかる。

どうやら戦いでこちらの弱点をよく理解していたらしい。


「歩兵班抜刀」

「剣は得意だ」

「剣より~槍が良かったあ~」

「剣道の訓練を真面目にすべきだったぜ」

「後でしごいてやるよ浅間」

「まあまあ」

「甘々何かある~」

「どのみち川は渡ったら感電死だぞ」


生き物が感電死する程度の電流が絶えず流れている川だ。


「まあ姿さえ見れれば容易い、魔法兵班魔法攻撃を行うぞ、準備を始める」


信雪が冷気の魔法を唱え始める。

攻撃魔法冷気系第3位<氷海Lv1>

広範囲に渡り0Kに行い、生物を一瞬で凍死させる凶悪な攻撃魔法の一種だ。

この範囲は広く<レイガ>の200mに匹敵する180mの範囲にわたる攻撃だ。

7名が追従する魔法の詠唱を始める。

完成した8個の魔法は敵軍の中央辺りで展開し、敵兵を一瞬で凍結させた。

敵兵の生き残りは弓と銃で射殺させれた。


「おーし。戦闘終了、よく頑張った褒めてやる。しかし疲れたろ。今は休もう」


信雪の声が響くと戦闘が終わったと実感がわく、歓声が上がるが直ぐに静まる。


結局野戦陣地で一泊し、朝方に起きてから死体を埋葬する。

120名での3000名だ。一人25名を埋葬する。

銃の方は貸し出すことに決定し、さすがに整備は無理なので作戦までは元の持主が整備や管理を行う。返すことになった兵士は渋りに渋りるが、こればかりは無理な事の整備のマ入アルを見せられ、直ぐに返却した。



遅れて到着した大草原の大川上流の岩場の砦。

既に報告してあるが、波田間は直に伝えた。


「奄美、なんでいろいろ隠す」

「昔話ですから」

「バカ野郎」

「しかし、困ったものですよ。欺瞞魔法は軍事的には高度ステルス迷彩です」

「臭いで判別するとか、どんだけの兵士なんだよって突っ込みがあるが、ペットボトルの水に関しては理に適う、それで波田間さんはどんな作戦を」

「ええ。奄美君に聞いたのですが、奄美君が研究する魔法の一つに軍事用魔法の拠点破壊魔法が有るそうです」

「マジか?」

「はい。まあとある英雄が残した遺産です」

「魔法兵ですか」

「そうです。俺に魔法兵のイロハを教えてくれた教官です。最後は村を守って殉職しました」

「確かに英雄だ。その魔法はどんなものだ」

「上空1kmからの100mの太さの光熱を落とします」

全員が困った顔になる。

「キラー衛星なのか?」

「いえ、最高射程距離は1kmとそれほど射程はないのですが、魔力の消費が激しく連発は出来ませんし、また改良を行う段階なので命中精度もそれほど高くはないのです」

「すげえ破壊力もあるのなら、今使ってくれ」

「了解です。双葉さんのドローンでの情報支援を頼みます」

「ええ。許可します。直ぐにとりかかってください」


指揮車両に入り双葉に伝える。


「なるほどほど、その魔法の原理は」

「上空に巨大なレンズを作り、地上に収束させ太陽光の光熱で焼き払います」

「そのレンズは」

「冷気系を結集した氷のレンズです」

「なるほどほど、じゃあドローンによるサポートは入ります」

軍事用拠点破壊複合攻撃魔法<氷鏡太陽熱砲>を使う。

魔法に関しては、問答無用でデータ採取を行うのが趣味の悠木にとってみれば、絶好の新しいオリジナル魔法だ。その映像を収め音符と共に解析していた。

妖魔砦の上空1000mに巨大なレンズが作られる。そのレンズに太陽光が集まり出すの熱の感知から解析でき、その急激ともいえるほどの膨大な太陽光が収束を行い、地上に向け蓋のような氷が砕けた。

放たれた光熱の太陽光が地上にぶつかり大爆発を起こす、しかも命中率が悪という通りに照準がずれたらしく砦の城壁に落ち、ここを中心に大爆発が起こった。

あちらこちらから苦情が寄せられるのは仕方のない事だ。

注文した西田も波田間も、精度が悪いと判断するしかないほどに悪かった。

大魔法に分類されるような軍用魔法に、信雪自身が魔力を消耗し少しの間休憩を取る。


「さすがはノブ、凄いじゃないか」


この大魔法を見たレオンが言う、隣の兄のギルは渋い顔で頷く。

姉であるルリ、フラン、チェルピーもこの魔法の注意点を理解していた。


「下手したら巻き込まれるぞ」

「大丈夫だって」


瑠璃の言葉にもレオンは暢気にいう。

レオンを除き魔法にはシビアだった。


信雪が休んでから、砦が全壊した妖魔たちから使者が来る。

武器を持てない上級妖魔に、さすか誰も手出ししない。

「はろはろ、ゴブリン」

妖魔の言葉を話す信雪に、その上級妖魔は両目を見開き挨拶した

「かような場所でこの言葉を聞くとは思えなんだ、妖魔の王より使者としてのアルスロンド問います」

「人間の奄美信雪だ。ついてこい」

野戦指揮テントに来る。

「通訳してやる」

「感謝の使用がございません」

「すえ」

妖魔の王の死者の上級妖魔のアルスロンドの挨拶を通訳し、用件を通訳し、西田、波田間の挨拶と用件を伝える。

妖魔側の要件

①武装を持ち西の森に移動する、その為に一時的に停戦を求む

自衛隊側の要件

①武装を解き降伏せよ

信雪が通訳し、根気強く両者の言葉を訳し、加藤が公式記録としての記録を入力していた。

根強い交渉の元

①互い武装を解き、一時的に負傷者を魔法で癒し、魔法で病も癒し、魔法で体の一部を失ったたものの体を再生する。

②①が終わり一夜経てば、剣以外の武装を解き西の森に移動する

この交渉内容になり、妖魔の言葉は信雪が作成した。

魔法兵第1小隊魔法兵班と第2小隊がこれに当たる。



敵軍の債権に手を貸すようだが、交渉の元に停戦した以上、自衛隊は攻撃数出来ないのでその指揮下の第2中隊も攻撃手段はない、結果的に妖魔たちは感謝した。

そして小さなトラブルがあるも、概ね終わり、再び武装し一夜を明かし翌日約束通り圏以外の武器を捨て、妖魔たちは西の森に移動した。

西の森は大草原の外れにあるために問題はない


ちなみに妖魔たちからは同じ言葉を使う信雪を賢者と呼んだ。

知る者からすればお互い宮遣いは大変だと言った所だ。


「やっと海産物が食えるぜ」


全員が実感したのは戦争の終わりとは結構いいなと

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ