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[現代社会にダンジョンが現れたら~注意・異世界業務は役所のお仕事です]  作者: 123456789
異世界への一歩を踏み出したらお役所は戦争です
12/14

【03-03:1月14日】

日本政府、ヴィエラ族長府との交渉の前の段階の大会合、日本側の出席者、また日本の自治体としての沖縄県の出席者、ヴィエラ側の出席者が一つの会議場のような草原の中にある巨大なテントの下に集まる。

ヴィエラ側、日本側の両方に対しての通訳の仕事がいる。必然的に数がいるのだが、今まで交渉どころか接点すらなかったのが事実だ。当然の様に言葉を訳せるまでの通訳家は殆どいない、そこで二つの側に向けての同時通訳を二人が行う。

日本側には信雪、ヴィエラ側にはエマだ。

出席者の挨拶から始まり、それぞれの担当の説明、また沖縄側に関していえば自治体としての参考のためにでもあるし、何よりヴィエラ側との接点が多く仕事もあり顔合わせはすでに終わっていた事も有って、日本側からもヴィエラ側からの自治体としての出席を求められた。

ただ日本側の出席者、その担当の説明が終わると、ヴィエラ側から直ぐに文句が出る。

当然だ。

ヴィエラ族長も長老も出席するのに、日本側はいうなれば波田間のような役人というモノばかり、ちなみにその時に波田間から将来我が国を支える者達にどうか花を貰えませんかと、この自治体の課長からの言葉に、ヴィエラ側は少しの相談後に了承した。



会合の一日目が終わるのは、実にヴィエラの長老の一人が体調不良を訴えたことで、さすがに20時間も会議するのは大変だと休みになる。



二日目、白熱した会議の中、日本側にはなるべく敵で有れというのが当たり前になる、ヴィエラは味方よりも優れた敵を好む。日本人とは価値観が異なる人々なのだ。

そんな会議も昼食の会議中断になる。

両者に弁当だが、日本側にもヴィエラ側にもいる料理人たちが通訳のフランの元で協力し合い作る物だ。だが同じ料理や食材ではないのは同じ物を出して両者が倒れたら大変な事態になるからだ。その為に両者には別々の食材で作った料理を出す。

そんな忙しい調理の苦労もあり、二日目の料理は大変好評だった。

ちなみにヴィエラ側からの食材の中には川魚が多く、日本と同じように生で食べる習慣はないのだが、料理人たちには食材の質のために食べる習慣があるためにまかない料理の高級な海産物を使った刺身だ。


二日目の午後3時頃に第二ラウンド再開。

そんな時間も午後9時には終わる。

同時通訳をこなした二人は黙って日本製のペットボトルに入れられた暖かい緑茶を飲む。

二人ともこれ以上は喋りたくないらしく、疲れた体で出ようとした。

ここに雄真がいたら今出るなと叫ぶような大変なことになっていた。

言葉の通じない同士だが、自衛官にもバカにされる事は通じるし、自衛官がバカにするのも通じる。つもりそんな訳で喧嘩中。

護衛の来栖と若宮果等に観戦しながらドアの前で待機。

その後出てきた二人が魔法で鎮圧し、自衛官は一般ではない二等陸尉で、西田だった。

対戦相手は大柄な西田を上回る体格のヴィエラの男性、この男性はヴィエラの千人長のいうなれば将軍だ。

事の大変さに気づいた信雪とエマはもみ消した。

この世界での陸自最高責任者の西田、ヴィエラの千人長。

この二人が喧嘩したと知れたら酷いことになるのは明白だ。

会議の場でもめ事を起こす。定番ではあるが正気の沙汰ではない。

困った末にエマが妙案を言う

代表者同士の話し合いで解決するのなら安心だ。

外務省の杉原、族長の二人の休憩室は意外に近いのはこんな理由からだ。


来栖、若宮が二人を運び、杉原も奄美が呼んだ。


「なるほど、文句がたまたま聞こえたからと」


冷静に問いただすヴィエラの女族長のヴィエラ・ラウラ・アルクレイドの凍る様な美貌の赤い目が睨む。

アルクレイドの気持ちがよくわかる杉原も、奄美も、エマも十分よくわかる。


「そうそう偶々な」

「西田殿、幾らなんでも会議を破壊するおつもりか」

「ちょっとした拳の挨拶さ、このバニー野郎に」

「何だとちっこいの」

「死ぬかボケカス」

「ミンチにして」

「やめんか!」


室内に響く静かに起こっている族長の声にさすがに千人長の武官も黙るだけではなく、言葉の通じない西田までも口をつぐむ。


「よいか、いま日本と事を起こせばどうなる、そして日本はこの地での念願の味方を失いたいのか」


二人は共理性ではわかっていても、本能的に気に食わない間柄らしい。

相性というべきものかもしれないが、出合うなり喧嘩に発展する間からも珍しい。


「もしかしてこの武官は非凡な武官なのですか、普通だったら処刑ですし」

「その通り、優秀な武官だ。武・勇・智というヴィエラの勇者なのだが、この通り人の寄る仁がない特ともいえるな」

「なるほど、頭の方はよろしいのですね」

「優れているな。信雪殿、何か?」

「この武官をやる気にさせる方法がありますそう今以上に」


ノブユキが人の悪そうな笑顔を浮かべ、隣のエマに足を踏まれる。


「西田さん、武官の方、武勇はご自慢ですね」

「おうよ」

「任せてもらおう」

「ならばその武勇が封じられたら次に足るのは何です」

「これでも防大卒だぜ。頭は良い方さ」

「独自に農学の研究を行うからな、やはり智だ」

「了解です。こういう武勇大好きの二人に出す一つのゲーム、ズバリ兵隊を率いてゲームで対戦しようというモノ、そうすれば余興にもなるしね」

「そのゲームは」

「とても簡単、とある王国の武将に扮し、アホ国王の元に兵を率いて戦うゲーム、そのタイトルも三国志」

「よくわからぬがそれでよい」

「はっ。中国史なんて簡単すぎだぜ、余裕でボコれる」


二人の代表者も承諾し、トラブルを読郷のために興奮した二人の騒動と片付けられた。というか片付けるしかない、両者にとってみればおバカな見方の誤爆だ。

通信で用意された余興。



中国を舞台に行われる漢王朝末期ごろの話。

日本側の西田冬樹二等陸尉

ヴィエラ側のフェルルム・ヴィエラ千人長。

二人の君主は劉禅、劉備の息子ながらも孔明の死後に国が滅んだ君主。

二人に与えられた時間は凡そ3時間。

二人の戦う場所はこの大草原と同じ平原のマップ、この中には様々な例えば林などある。

二人に与えられた兵力は千、武装に関していえば好みもあるのでこちらはプレイヤーが担当する。

乗り物に関していえば象、馬のどちらかから選べる。


ゲーム上では最低レベルの数値しかない劉禅のコピー、その為に兵士は千名でも指揮・練度最低レベル、武装・乗り物は選択式。

この千名武装・乗り物は

西田:武装は騎射用の弓、乗り物は馬

フェルルム:武装は複合弓、乗り物は象

両者の選択した理由、通訳からの説明などを終える。

ゲームの市販品ではあるが、難易度が高く作られていた。

両者がぶつかり合う開始された。

西田の軍は遠く離れた林を目指し進軍、フェルルムも遠く離れた林を目指して進軍した。

同じ目標地点だ。


弓象兵千騎、弓騎兵千騎は同じように出発するも西田が到着するのが早かった。

ここに来たのは林だけではなく、林を維持するための湧水があり休憩ポイントの一つでもあるからだ。

一番の理由は小さいながらも砦があることだ。

休んでいる間に弓象兵が接近してくる、スクリーンに映し出された全高4mの象兵は見ごたえのあるリアルな作りとなる。


大して騎兵の方は2mもない、見るからに心もとないのはそうだが、弓の射程距離なども考えれば複合弓の方が上だ。

林の中で待ち伏せする西田に対し、フェルルムは像を突進させる。

そこに林から一斉射撃が放たれ、先頭の象兵に当たる。

さらに次の一斉射撃が斜め45度で放たれ、象兵の上に降り注ぐ。

二度に渡り先制されたことにフェルルムは笑う。

二度に渡り先制したのに、一頭も倒していない、大した力のない射手だと。

そこに火矢が放たれる。

林の中に踏み込んでいた象兵の足元に火が燃え広がる。

急に止まらない像は、最前列が止まるので後は事故の様に衝突しあう。

大きい象ゆえの事だ。


西田の騎兵は引き上げる。

拍車、追い打ちを当てない理由があるとするのなら、何らかの罠を考える。

しかし、西田の騎兵は颯爽と撤退し、フェルルムの象兵は玉突き事故。

この余興かもしれないが、武官の顔は中々楽しんでいるが、日本側は気が気でない。

すでに時間はそれほどない、このままでは損害の多いフェルルムが負ける。

スクリーンの西田の騎兵隊は、フェルルムの本拠地に向けて真っ直ぐに進軍中。

しかし、フェルルムはこれを読んでいたのか、象兵の100騎を置いていた。

西田も相手が単なる異世界の筋肉バカという評価を改めた。

足止めなら100騎で十分だ。しかも象兵のために中々倒れない。

しかもフェルルムの象兵900騎を西田の本拠地に向けて進軍させた。

西田の騎兵隊は攻撃を終えると直ぐに撤退し、方角からして西田の狙いは燃えている林。


両者の考えが続く中、日本側の意見とすれば絶対に負けれよ、こう思うものだ。所謂接待ではあるが、強い敵を好むヴィエラの民俗的価値観からしても西田の戦いぶりは好評だった。むしろ武勇智に長ける千人町相手によく奮闘したと。中には叩き潰してしまえと言った者すらある。


そんな訳でこのゲーム上での仮想対戦は決戦に映る。

燃えた林の方向から駆け出した奇兵隊、本拠地を目指す象兵隊。

その機動力に勝る奇兵隊が背後に騎射を行う。

象兵側も騎射を行う。

この激しい攻防戦に、フェルルムが象兵の一部を停止させると、騎射を続け幾頭の象兵を倒した。

反転し突撃してくる象兵を、西田の騎兵は1体多数のやり方で仕留める。

これにフェルルムも自分が騙されたことを理解した。

いつでも倒せたのに思惑に乗せるために泳がせた。

しかし、フェルルムも一人の隊長だ。全軍を停止させ、反転し、その間の損害を無視して進軍させた。

後は実力のみの消耗戦だ。



ぶつかり合う両軍ではあったが、阿保君主が効果を発揮、撤退ジャー

西田軍は引き分け寸前での撤退だ。

それに対しフェルルムの阿保君主は守るのじゃー

フェルルム軍は本拠地まで引き上げ。

戦場に残ったのがフェルルムなのでフェルルム軍の勝利。

納得がいくわけがない、あと少しで決着が尽きそうで君主のおバカだ。

宮仕えの二人にはよく身に染みるような話でもあった。

日本側はこのゲームは最高だと褒めるのも頷ける。

でももう少しで同じ結果になったのだから少しは決着もと考えるのも頷ける。

決着をつけたがる生き物も居るのだ。



そんな翌日の三日目。

昨夜の余興が楽しんでもらえたらしくヴィエラ側より幾つかの商談話が提案された。

娯楽に対する決まりだ。

軍隊同士の戦いから将棋、チェスなどが生まれたように、日本が誇る国取りゲームのようなものはリアルで有ればよいというモノもあり、ヴィエラ語のシミュレートが欲しいと。

つまり会議二日目の終わった後の余興が好評で、三日目の余興を非常に楽しみにしてことが伺える。

会議も順調に続き、料理も成功を続け、四日目に大まかな条文が完成することになる。

三日目の夕食後の午後9時。

今回は一人では撤退命令を受けたら試合が終わってしまうという、このような苦情を受け、両者がもう一人の副将をつけた。

日本側からは波田間忠孝が副将、ヴィエラ側からは戦士隊(軍隊)の参謀のクツツキ。

リアルな将棋のようなものでもあるが、勝利条件は色々と有る、その一番派手なのが本拠地を落とす、相手軍を全滅させるの二つだ。

この二つをされたら問答無用で敗北する。

また君主からの1時間及び3時間の間に問答無用の命令が出る。しかもステータスに依存するために、全てのステータスが最低な阿保君主は、全ての命令においてマイナス効果だ。プラス効果は微々たるものすら一つもない。

前回同様の条件、兵士のステータスは最低、武装は自由、乗り物も自由だ。

一部変更に関しては副将をつけるというモノだ。



波田間が立案した作戦は西田は即了解した

相手は昨日と同じ象を選ぶ、こちらは乗り物を載らないとすれば必然的に突っ込んでくる。波田間の説明に西田瀬も納得だ。

ならどうするのか、穴を掘って待つ。所謂落とし穴だ。

この地味な戦い方に、ヴィエラ側はどこまで効果があるのか謎のように思えたが、大きなものが落ちたなら相応にダメージも大きいし、何より登れない。

だがヴィエラ側から直ぐに、先頭を踏み台にすればよいと。

このヴィエラの考えは軍事的には正しいが、それを兵に命じれば士気に関わる事になるのは目に見えるので、軍人からは微妙だ。


しかし、フェルルムは参謀の意見を聞いてすぐに突撃させた。

確かに千社とも思える弓象兵の実力なら落とし穴などすぐに埋めることは確実だ。

だからこそ波田間の作戦は的を射た。

落とし穴で失われた数は少ない無い300騎。

そこに伏兵が油壷を投擲し、次々に油壷がなげられる。

危機感を持ったフェルルムは参謀の意見を聞き参謀のクツツキは直ぐに後退を提案するも、兵を犠牲としているのに交替は出来ないとフェルルムは拒否する。

フェルルムの意見は最もだ。納得するものが多い中、このままいけば全滅もという声が出る。

兵を犠牲にした後退、犠牲覚悟の前進。

この二つの選択肢で、フェルルムは前進を採用した。

敵は乗り物に乗っていない押せば勝てる。

この誘惑に絡まってしまった。

正しい判断でもあるが、損害が少ないうちに撤退する判断を下さないことが軍人たちには「バカだな」とは言いつつも「だろうな」という意見がそれなりにあったのも人というモノだ。

突進するフェルルム象兵隊600。

しかし。

前方に作られた巨大な落とし穴、その中には油壷が並べられていた。

象兵隊の後ろが炎上する。

フェルルムは降伏した。

西田のような真っ向タイプも居れば、波田間のように相手の心理を読んだ智謀というのにふさわしい者も居ることが分かり、二人のゲームの作戦は大きな拍手とともに包まれた。



四日目で本格的な条文が作成された。

ヴィエラの女族長のラウラ・アルクレイドより、バードマンの聖地ウルクイル及び周辺の空白地帯をシャルククの土地と定め、この所属を地球の日本国が持つことを定める外交が進められる、当然の様に大草原をヴィエラの土地であることも定められる。

相互に不可侵条約、相互認知、相互通商、相互人権に関しての条約、相互の教育に関係する条約などが結ばれ、この条約は、相互条約と定められた。

沖縄県としても産業分野での取り決めを固め、日本が締結する予定の条約に通住することを前提に色々と功績も多く、日本の自治体としては唯一の沖縄県のためにこれに配慮するとの事もあって沖縄県調査部異世界課課長の波田間忠孝との交渉も進められた。

前日の3日目に知略を見せたのが幸いになり、またヴィエラ族が独立するまでの同じ自治体としての産業の相互条文を締結するに至る。

ヴィエラ族も日本側が優れた国であることは分かっても、ガンゲイル王国の力は依然として強い者があり、また独立するにしてもヴィエラ族の実力がないために独立の事は先送りした。


こうして五日目に正式な仮条文(本格的な条約締結までの条約)を締結し、沖縄県もこれを追従した。

ちなみに仮条文の沖縄自治体版に関しては県民・財産などに保証が中心だ。産業に関しても提供できるが、沖縄県から技術者を集めてここで働かせることも出来なくはないが、それは無意味と判断され、代わりに県の教育・行政サービスの提供を提案し、この自治体独自のやり方には本来ならば無理だが、ヴィエラにはお手本となる自治体がないために困っているのも頷けることだ。


正式に終わったのが6日目。

本来なら記者会見でも開きそうだが、そんな面倒な物はない、代わりにインスタントカメラでパシャパシャ、直ぐに写真が取れてその場でそ渡せるからだ。

この会議で、両者の文化的な違いもあるが、料理の分野、ゲームの分野、映像の分野に関しては非常に好評だったために今後の開発目標に定められた。それは後に来る技術者たちが行うことになる。

日本・沖縄も色々と提供するに対する対価というべきものもかなりある。

ヴィエラとの通商条約を前提とした安全保障条約、相互不可侵条約の他にも各種族の空白地だったゲート周辺の土地を抑え、東にある海の200海里を確保などなどの国としての主権的な権利、自治体としての権利を確保したのが今回の交渉ごとの結果だ。

特に大きいのが通商を前提としたものだ。

最初から経済的な交流を前提としたものだ。日本側もヴィエラ族が経済的植民地にするつもりはないことを何度も説明していた。

何処まで行っても、お互いの権利を尊重し、互いに助け合う関係を維持していこうというのが主旨の条文だ。


この世界での日本人の民間人はおよそ8名、シャルクク一家のみだ。

調査部異世界課及びドローンサービス社及び竜胆研究所の人数は15名

自衛隊は凡そ100名、全員で123名程度だ。

中央の官僚たちは、これらの情報を地球側の日本に運ぶ予定だ。


そんな訳で忙しかった日々も終わりを見せ日本人の土地と佐田られた中にあるゲート近くの基地に帰る。

シャルクク、ディーバの二人はアルク=レイドに残り、魔法使い組合を運営する予定だ。

シャルククの養子でもある日本国籍のある5人兄妹はひとまずエマが預かる。

このエマは日本人基地の魔法使い組合の運営を行うので、その教え子となる。



「お疲れ~ユキユキ」

「ご苦労さん」

「よく頑張ったな」


同い年の三名に労われる。

話に疲れて何も言わずにカニ・エビの生け造りを食べる。懐かしい海産物の味が口に広がる実に幸せだ。


「うめえ、刺身最高、焦がれた醤油万歳、味噌汁に感謝」

「まあ食え、さすがに暇がなかったからな」

「こっちも大変だったよ~」

「後で話すわ」

「頼み申す候」

「僕の」


海産物を食べたら、生き返った。

シャルククの5姉弟も海産物が好きらしく、がっつりと食べる。

エマが面倒を見るが、注意することが少なくなるような程行儀が良い、食事のマナーは完璧だ。恐らく本能的に分かったらしい、今後の生活の主な仕事は通訳だと、当然の様に食事の席に立つような外交など条文作成の席では必要不可欠だ。


◆1/22日


基地に帰ったからの翌日。

調査課及び関係者が集められる。


「今回の条文に関する会議の話は本国に通達しましたし、この地唯一の役所である異世界課は解体が決まりました」


誰もが静まる。


「哀しい事ではありますが、致し方ない事でもあります。我々のようなはぐれ者を役所に置くわけにはいかない言うのが中央からの通達です」

「はい」

「なんでしょうエマさん」

「魔法ギルドの支部として活用したいと思います」

「そうですね。参加する者はエマさんに申し込みを、また関係者であるドローンサービス社、竜胆研究所には折り入ってお願いがあります。」

「民間企業だな?」

「はい。」

「総合商社でいい訳だ」

「もちろんです。谷口社長」

「竜胆」

「ばっちこいっす」

「悠木」

「どんとこーい」

「浅間」

「了解です一生ついていきます」

「佐久間は聞かなくてもよいか」

「ひでえが、まあこの歳ではなんだし、再就職先に谷口総合商社というわ」

「ばっちりだ」

「我々の方は語学と魔法に関しての勉強をしようと思います。それが出来なければとても難しい、幸い我々の大人の方には大学卒、高校生の4名はそれぞれ特徴的な才能も有りますし、ご安心を」

「ああ。俺達総合商社組は、現在のドローン、パワードスーツ、車両を戴くぜ」

「そうですね。いつもお世話になっております海産物のツケの支払いを兼ねた払い下げでよろしいでしょうか」

「了解だ」


それぞれが分かれる、同じ立場であるために目指す方向性の手段に違いに過ぎない。

ウルクイル日本人基地の南側に広がる沖縄県県民区が通称だが、日本としてはこれは不味いらしく日本人街と命名した。

これに土地の所有権のあるエマが抗議し、命名権に関してはシャルクク一家の物となる、また県の役所に関しては取り壊す予定だが、県より支払われる料金の事がもめており、主に賃貸での事を解決するために県の財務に関する役人との交渉を申し出る。

あれやこれやと協議するも、今まで異世界課があったから色々と出来ていた厄介な問題を解決するるところがなくなったことで、日本政府側から土地の一括購入を申し出るが、こちらの貨幣を持っていない事、また信用問題でもある事でもあるが、役所の解体は納得できないの旨を伝える。

そんな訳で日本側は、日本自衛隊基地の南側にある区には、手出ししないことが決まる。

これらはエマの署名で、立案は波田間や速水といった元々の頭脳たちだ。


また民間企業の創設に伴い、これを魔法ギルドの御用商人のような専属契約も結んでいた。しかも100年間の、これで日本政府の嫌がらせが止まる。


調査課と共にダンジョンに潜った自衛官などは、調査課からの話もあって理不尽な扱いの事の怒りを収めた。同じような危険を背負ってきた者にあまりに冷遇のような扱いだと怒ったが、中央からすれば政治の一言に尽きる、それが分かるだけあってなんともやりきれないものがあるのもまた一つの側面だ。


そんな訳で調査課の10名は魔法ギルドの研修生、エマが主に運営を行うので、上位正規魔術師の正式な称号の授与のある奄美・信雪が語学、紋章学、紋章機械工学を教えることになった。

何が変わったのかというと、日本円での給与の支払いが停止、物資の有料化だ。

それ以外はいつも通り、変わらずに通訳・翻訳の仕事は引き受けるし、エマによる植物の主に薬草などの知識の無償提供もある。

日本の中央も変わらずに業務を続けるので、仕事を依頼する事も有るのだが、担当者は知らされていないらしく、極普通に依頼の話をしていた。

研修生の9名に、谷口総合紹エ社の5名、エマの預かる5姉弟も参加し、小さな学校だ。


◆1/22日~


魔法ギルドでも、日本とヴィエラ殿・通訳・翻訳の仕事は続けていたし、人づての噂には流れていたが、アルク=レイドのヴィエラ族も、魔法ギルドの本部からも通達はない。

こちら側のガンゲイル王国語、ヴィエラ語の二つをマスターした9名+5名は、そのテストを受け、採点した信雪が合格として出せたのは全員だ。

また日本語、日本武道の空手、剣道、弓道、槍術は体育として教育された。

この他にも一般教養レベルの魔法に関する知識、学生レベルの魔法の知識、薬草に関係する知識、料理に対する勉強なども有ったりした。

日夜ガンゲイル語、ヴィエラ語と接していれば日常会話程度は出来るものだ。


一つの季節が過ぎた初春


この頃にさすがに日本に対してヴィエラ族を通し魔法ギルドが抗議した。

日本も色々と有ったらしく、だがなかなか言い出せずに現場の者で止まっていたらしい。

それはそうだろうと誰もが思う。

一度は自治体の協力を仰ぎ、終われば手を返したような裏切りとすら言える解体、その後の嫌がらせの数々、これらを知らされて暢気に話し合いましょうといえたらなかなかの厚顔だ。

なによりもシャルククとディーバの結婚の話は既にあり、日本の中央も知っていることに日本人とこの世界の女性との結婚だ。めでたいと無邪気にいえない厄介な政治問題がまだ解決されずに横たわるから困ったものだ。

手違いでしたという手管は通じないのは当たり前だ。

一つの季節を過ごしたことで、結構な文句が上がるのも頷けた。

しかし、いつかは話し合いをしなければならないのも事実であった。

前回の会議で、中央官僚の中でも異世界担当に押し付けられたりした者も居たりするし、結構な数が異世界課の事は知っていたし、いくらなんでも酷すぎるという意見が出るのも当たり前のことだ。またこの事が問題となりガンゲイル王国や周辺国との関係が悪化したらどれほどうえでも責任を取らされる、取らなかったとしてもいずれは情報が洩れて叩かれるどっかの国の密約と同じになる。

銜えて通信傍受をしたとしても、直に言って情報をばらすという手段もある。

それらをネットに流されたら終わりだ。

あっという間に世界に広まり、結果として汚点として残ることになるのは明白だ。

では日本政府がどうするのかと悩むも、周防、戸村も沖縄県の調査課より通達を受けていたが、納得できるはずもない、それを力という形で黙らせた。

叩いた側は覚えていなくても叩かれた側はどんなことがあっても忘れないものだ。

そして叩かれた側の不満は、秋の平原に放つ、野火の如く燃え広がる。


そんな訳で日本政府は困った。

人事の結果もあり、厄介ごとを押し付けるために新設された日本政府総務省異世界局には真っ先にこの難題を解決することになる。権限が集約されたことで対応も早くなったのが功を奏した。

ただ関係者も協力するのも心中複雑ながらも、調査課・ドローンサービス社・竜胆研究所、魔法ギルド、ヴィエラの事を伝えた。

少なくても波田間忠孝は話の分からない人物ではない、高尚なタイプながらも自由を好んだりもする性格だ。

速水は笑顔の中手にえげつないことを要求するような奴ではあるが、しっかりと道理と礼節を重んじるのなら話に理解を示す。

この二人に言えることは、権力、暴力でどうにかしようとするのなら辞めた方がいい二人だ。その為に国家権力の介入は帆と程にと国家権力の官僚たちに言われる。

そんな貧乏くじを引かされた新任の役人。

緋村瞳子。

キャリアに属する総務省の新卒。

無理にしか思えないこの難題の解決に異世界まで現れた。


シェル九九一家の土地の自衛隊借地、その南にある旧沖縄県県民区、もしくは日本人街の看板が二つ並んである大変歓迎ぶりだが、瞳子は無視した。

「何だい姉ちゃん」

若宮だ。丁度自衛隊の知り合いからビールを買ってきた帰りだ。

「緋村瞳子と言います」

「ああ。総務省の」

「はい。こちらでよいのですよね」

「魔法ギルドか?」

「はい」

「そうかい。ならそのまま直進したらガンゲイル語で魔法ギルドと有るぜ、まあ頑張んな」

「ご親切に感謝します」

と突っ走る。

「今回はどうなるやら」

何やら長い休暇が開けそうな予感だ。



「なにかなお嬢さん」

「谷口斎さんですか」

「ああ。まあこんな場所じゃあ。とある企業の社長だがな、こうして間借りした居るわけだ」

「はい」

「調査課を解体すれば日本政府に靡くだろうと考えたのが変わったのか」

「はい。変わりました」

「どんなふうに」

「日本政府は責任をもって自治体及び国民の財産・安全・権利を守ると」

「一度裏切ったとしても」

「はい」

「そうかい、まあ喧嘩腰になってもなんだ。こんなことが有ろうとも思って要求文は作成してある」

出された要求文を受け取る瞳子は、意外にも嫌われているようではないのが不思議だった。

「なんだい?」

「嫌わないのですか?」

「お嬢さんを、か?そうさなあ。まあどう見ても新卒の小娘いびりなんて柄じゃない」

「ありがとうございます」

「まあ貧乏くじを引かされた奴だしな」

「かもしれませんが、このまま喧嘩別れも、いえ貴方方からすれば酷い裏切りですし、当方の多くの関係者が罰せられて」

「だが出来ないものは出来ないものだ。出来ないからこうしてお嬢さんが貧乏くじを引いたわけだ」

「そうなります」

「その分を読んでみろ」


文章は様々な立場の人たちの名前と肩書が記載された。

本文には短く一つの一文。


『お互いに不幸だった』


日本語、ガンゲイル語、ヴィエラ語で記載された短い分だ。

要求文の公文書にはシミがぽたぽたと作る。


「泣くことはないだろう」

「はい」

「それだけで十分だ。どうせお互いにそうするしかないのだから、あんたらはこちらが必要だ。俺達の故郷もまたそちらにある、互いに不幸だったで十分だ」

「はい」


緋村瞳子は公文書をもって元の世界に戻る。

谷口は年を理由に見送れないがと一つ断り、日本語・ガンゲイル語・ヴィエラ語の教科書を送った。



「そうですか、政府も考えたものです」


波田間が茶を飲みながら話す。


「少なくても誤りに異世界までくるのは正気じゃないな、だがその子の心意気にはこちらも誠意を見せないとな」


谷口がビールを飲みながら話す。


「少なくてもよい休暇でした」

「全くだあ、意外と楽しめるもんだぜ」

「考えてみれば8月1日ですか」

「あと四か月だな」

「今後の事を考えるには良い機会でしょう」



ウルクイル日本基地南シャルクク町魔法ギルド支部、支部会議室。

全員が集まったの会議。

日本政府の裏切りにも似た行為は断固というのはない、なんだかんだ言っても故郷ではあるし、よくしてくれた時期もあるのも事実だ。それ以上に残してきた家族などもある。

そんな訳で日本政府には少しの休暇の許可を要求する。

日本への滞在を許可しますと返され準備してから日本の沖縄側に戻る。

信雪に関していえば家族は居ないのでエマと5姉弟を連れて日本側に来る。

5姉弟からしてもこちら側の世界は珍しく、こちらの人々からしても5筺体は珍しい異種族だ。

ドワーフのギルは子犬の様な耳に尻尾、フェルパーのレオンは猫耳に尻尾の兄と弟

エルフのルリは長い耳、ヴィエラのフランは長い兎耳、バードマンのチェルピーは漆黒の鴉のような翼。

エマは普通の人だが、姉のディーバにた美人さんであり抜群のスタイルの持主だ。

何よりもこちらの世界初めてなので信雪がこちら側での知り合いであるお隣さんの佐倉さんに頼み、沖縄旅行だ。


「田舎町だけで楽しんでねえ」

「「はーい」」

「素直でよい子」


(さすが看護士の自衛官子供の扱いも慣れている)


「ユキ、この世界は」

「いやだから日本の南にある小さな島だ。ちなみに大陸はもっとデカい」

「自然がない」

「うん。それは否めない」


ナハの町も随分と変わったのか変わらないのかと考えながら桜の運転するバスが進み、那覇市内の新都心のショッピングモールに来る。

駐車場に停め。


「はい、ここからは女子は佐倉さんに任します。何せ男性が入れない店もありますし」

「そうね。確かに女の子向けの店には男子じゃあ入りづらいわね。下着の店とか男性は入れないし」

「そうなの?」

「そうなの?」

「そうなのか」

「そうなのよ!男の子にこういうと困るわよ。この下着は似合う?」

「無理ですやばいです危険です。男子禁制です」

「こういうモノなのよ、という訳で奄美君はギル君レオン君を連れて行きなさい」

「いぞう二人とも」

「「おお!」」


長い休暇ですっかり馴染んでしまい三人は仲の良い学生仲間のようなものだ。



まずは一階のステーキショップに入り、他の客がまじまじと見る中、当然の様に礼儀を知らない者は獲るが、知らないことを押し通すことになっている。

ステーキ400gの霜降り肉を頼む。

日本語は読めても意味が解らない二人に一つずつ説明し、二人も注文した。

極普通に冷水がでることにまず驚く。


「さすが異世界、サービスも進んでいる」

「単に水を冷やすだけだけど、悪くないものだね」


ギルとレオンがそれぞれ感想を話す


「まあ持て成そうと思うもてなす側の心だ」


これに二人は納得する。

シャルククによって幼い頃から日本式の教育を受けているために、日本文化に対しての教養があるのだ。


「はい、茶」

「そうだ。日本と言えば茶だ」


ギルの方がやや幼く、レオンの方が大人っぽいが二人の年齢からは、ギル兄とレオン弟の年齢差がある。


「それに日本と言えば刺身、何よりも寿司」


ギルが次々という。


「ギルそれだけじゃあつまらない、エマ姉さんに禁止されていたゲームの店だ」

「おおさすがレオン」

「この施設の中の一つにそんな所がある、刺身も寿司も食べらるから安心しろ」

「なんか、店っていうより一つの商店街の様だ」

「その感想は正しいそんな設計思想で作られたんだ」

「やっぱり信雪はレオンに似ている」

「だぜ」

「俺の興味があるのが紋章学、その紋章学の紋章機械工学が俺の研究テーマだ」

「ついでに話も長い」

「いえている、長いよ」

「よく言われることだが、どうも俺は話が長いらしい」


そんな話をしていると直ぐに料理が運ばれた。


「あの」

「はい?」

「写真よいですか」


二人を見る信雪に、ギルの茶色の短髪に茶色の瞳、レオンの藍髪に紺碧の瞳はかなり目立つ色合いだし、ギルは見た目は子犬の様な少年だし、レオンに至っては美少年ではないがそれなりに容姿だ。


「あっはい。俺は了解」

「僕もいいよ」

「じゃあまあ了解で」


三人の返事に定員さんが写真をパシャと撮る。店員さん礼を言って去る。

ステーキを食べている。

男子は肉と言い切れるほどの肉が好きなものが多い年代、歳をとると肉汁の滴る様な分厚いステーキは嫌になるらしい、と谷口が言っていたことを思い出す信雪。

しかし、犬猫兄弟は肉に夢中だ。

何せ肉を食べられるのは年に1度だったしいので、当然の様に飢えていると判断した信雪の判断は正しかった、もしくは読みが当たった。


食べ終わったらのんびりとサイドメニューのドリンクを注文して少しだらけた感じでの談話。なぜかお姉さん方に非常に人気な二人の為に、度々写真の事を聞かれた。

ただうざい感じではなく、またこちらが嫌がるようなことはせずに礼儀をもって接するのでこちらも対応できるという構図だ。

料金を払って店員も一応ポイントカードの説明を行う。

どうも平日の、しかも客がそれほど多くない時間帯だったから、店員の中には割と暇な者も居たらしい。

ちなみに経済的な価値観を身に着けるために二人にもこのポイントカードを説明してもらったが、スマホを使うようなポイントは無理で、一番確実なポイントカードを作製し受け取る。

二番目に寿司店、店員も驚く三人組にきにせず座席に上がりに、注文した。

特上時価握り三人前だ。

店側は失礼だが財布の事を聞いた。

それもそうだろう。どう見ても学生程度の三人組が最高級のメニューを三個も注文したからだ。


「あっ。前金で」


財布の札束しか入っていない分厚い財布に店側も安堵。

信雪でも店側の意見はよくわかる、まさかの食い逃げと思うような三人なのだから。

ギル、レオンも不思議な顔でもある


「ああ。金か、日本のお札だ」

「いや、なんでそんなに金があるんだ」

「だぜ」

「ああ。まあそれもそうか、今まで無職だったのにってこともあるな」


店員が出した茶を啜り。


「実はな、まあ前ついていた仕事は年俸500万の仕事なんだ。ちなみにこの島平均年俸は200万ぐらい、割と良い仕事だ」


二人も感心する高級取りだ。


「これから色々としょっ引かれて実際に手に取るのは300万ぐらい」

「減り過ぎないか」

「そうだぜ。2/5も取られちゃあたまったもんじゃな」

「いや、そういう訳にもいかない事情がある。まずここに来るまでに通ったダンジョンなどそこに出現するモンスターの事、あっち側の危険性、それらに対処するための特殊技能、これらの育成のために資金、これらの為に自分に損失が出た場合の掛け金を出すことでその損失を埋める事、即ち保険に入ることが義務だった」

「保険?」

「ギル、さっき店で聞いた事の一つに保険についての事も有った。お金を出す川に損失があった時にその損失を補てんすることだ。そんな仕組み」

「レオンの意見は正しい、この保険の仕組みもあるし、職業を失うことも想定していた」

「波田間さんなら間違いなく入るね」

「ああ。あの男なら間違いない、しかし200万は大きい」

「そうだ。帰ってくる額も大きい」


二人は保険の仕組みから、かけ事に近いものであることを理解した。


「帰ってきた額は凡そ1億円だ。年俸の20倍だな」

「へ~職を失って儲かるなんて変な話だ」

「違うよギル。これがあるから職を失っても暮らせる、つまり安心だ」

「正解だレオン。結局のところ保険なんかのサービスはもしもの時の安心を提供するサービスだ。もしもの時の、そんなイメージでよいのだ」

「だが条件も当然の様にある?」

「そゃああるだろう。だって儲かりたければ辞めればよいのだから」

「そうだギルの言葉も正しい、レオンの言葉も正しい、この年俸の20倍は極めてあり得ないというレベルの失業時の支払金額だ」

「続き」

「うん」

「公務員はよほどのことがない限り失業しない、その確率は非常に稀だ。強いて言うのなら弓矢で400m先の的を射るようなものだ。」

「「おお、有り得ない」」

「そっ。有り得ない、何せ政府より解雇通知が届くのはあり得ない、それも働いていた役所その物の解体も有り得ない、有り得ない尽くしの為に保険会社もカンカンだよ。支払するしかないのが悔しいと」

「お金を巡る争いは大変だ」

「でもシャルククが言うには仕事を選ぶのが人間だとよく言っていたね」

「正しいかどうかは自分で判断するしかない、どこまで行っても俺は二人とは違った人なのだから当然違った考えも持つ者だ。しかし、仕事を選ぶのには賛成だ」

「話長い」

「賛成で済むのに」

「何言ってんだお前ら、魔導院に入ったら研究と勉強と噂話を両立しないと正規魔術師に慣れないぞ」

「安心だ。魔法ギルドの学校に通うから」

「うんうん言えているね」

「あのディーバとシャルククの息子たちが、魔導院に入らない訳がない、まっ運命だと思ってあきらめな」

「まだ決まっていないし」

「そうだぜ」

「まつ、お前さんたちの進路だ。じっくりと考える時間はそれほどんいぞ。俺が魔導院に入ったのは14歳だしな、エマはさらに幼い11歳だ。この歳に二人とも正規魔術師になった。翌年には上位正規魔術師だ」

「つまり早く決めるって」

「そう聞こえるね」

「まさか、じっくりと考えないからこそ決断が尊ばれるのだ」

「よくわかんない」

「同じく」

「とある人の言葉でいえば若さって奴だ。その方が身に付きやすいんだ。若いときはよく覚えられる、老いたら子に従えというのがよくわかると」

「谷口さん?」

「佐久間さん?」

「二人とも正解だ。二人からの受け売りだ」


店員が運んできた寿司をバクバクと食べる。

寿司のネタがなくなるとさらに追加

ボリボリと生姜を食べる。


「んでえ、ゲームはエマに怒られない範囲でよいか」

「その線で」

「ゲーム雑誌でも広げたい」

「すでに今月の雑誌など揉んでいる、PSDSの今月の新ソフト牧場物語DX+」

「牧場って」

「面白いの?」

「お勧めだ。なぜなら牧場ゲーム、農業ゲーム、RPGゲーム、SFゲーム、商店経営ゲームが混ざった余りの面白さに中毒者続出、間違いなくハマる要素には世界中のパワードスーツ、ドローン、農業用メカにとどまらず軍用、警察用、警備用も網羅」

「「おおお!」」

「続きまして」


仲の良い三人組はゲーム話で盛り上がる。

店員も客もじろじろとは見ないが、まさに10代のテンションの三人組を見ないもの居なかった。


◆食事後


即にゲームショップに突入、エマに見られたら怒られること間違いなしような娯楽嫌いな所があるのが困りものだ。しかし、突入し、すでに取り置きしてもらったソフトを購入し、異世界での楽しみにする。その他にも日本でしか手に入らないゲーム商品を買う。


その後に男性衣料品店に行き、気に入った衣類を買い、靴、帽子、サングラス、鞄なども買う、あちらと同じ季節頃なので安心だ。

その後に荷物を預け、今度は本屋に行く。

この本屋で色々な雑誌を買う。というのも異世界の厚地川では本は非常に高価な物なのだ。下手したら家宝のようなものだ。


「すげえ」

「ああ本が一杯だ」


二人はゲームショップ同じ様に、目をキラキラと輝かせて本を見て回る。


(魔法使いの人生の半分は本を読むからな)


そういうほどに本を読む、そんな職業なのだ。

魔導院に地下には有史以来の古文書、秘文、秘蔵書などがある、その数はこの県の図書館の書籍を易々と上回る。

久し振りに工業雑誌を購入し近くのカフェでコーヒーを飲みながら読書だ。

周防に戸村の老人方はよくやっているようで、二つの発展ぶりは雑誌からも分かるほどだ。何せ沖縄に産業を興すことで職業比率に変化を与えたのだから。


「よう」

「ん?」


声をかけてきたのはいつぞやの同じ学校に通うカップル二人だ。

津村厚樹、小早瀬小春の二人だ。


「何時かは礼になったな」

「学校で見かけたのだけど、言い辛くて」

「そういう二人は仲直りはしたのか」

「見ての通りよ」

「そっ、あの相棒はどうかしたのか」

「ああ。彼奴なら久しぶりに実家に帰っている、仕事の後の休暇さ」

「学校を辞めたの?」

「いや、仕事の都合での休学だ、暇が見つかれば登校でもするさ」

「何か礼をしたいんだが」

「じゃあ。ちょっと聞き来たいがまあかけてくれ」


二人が座る。


「今さ、久し振りにあった彼女がいるわけだ」

「おいおいおい、学校を休学しているのに彼女」

「まあまあ、それでその彼女は」

「年上だ。ついでに言うのなら仕事の上司だ」


二人の顔が微妙になる。

学生レベルの話ではないことは確かだ。


「んでなあ、そいつの姉が結婚するんだ」

「すまん、人生経験の違いからとてもアドバイスできそうにない」

「ですね」

「いや、相談はここからだ。どうもゲームが嫌いなんだな」

「「ゲーム?」」

「俺は主に携帯ゲーム機でロボゲーをよくやるんだが、どうも時間の浪費と言って怒られたりするんだ」

「二人の時間はしっかりととっている?」

「そりゃあな。何せ11年ぶりの再開だ。積もる話は多い」

「・・・11年?」

「ああ。昔の馴染みだ」

「幼馴染ね。うーん。簡単にいえば女の子ってミリタリー系、ロボ系なんかわ共感できないですよ。だから共感でそうなゲームソフトを選べばよいのではないでしょうか」

「なるほど、俺も困らず、彼奴も困らずか、参考になった」

「しかし、意外だ」

「うん。凄く意外、むしろ学生年齢とは思えない、じゃこの辺で」

「おうありがとな」


二人と別れ、コーヒーを飲み干す。

獣ナーの女子が二人を囲み強烈にアタック、所謂ナンパの女子番だ。


「何でこうなるのかねぇ」


弟のような二人を回収し、本や雑誌も購入、これらを預けるコーナーに預けてから一息つくためにバーガーショップのモフに入る。


「疲れたよう」


ギルが弱音を吐く


「うん」


レオンが短く答える。


「ひとまず休もう」



バーガーショップのモフで休み、地元の展示コーナーに回り、古い歴史の話や使われた道具に、船など、他にも護身用の武器などもある。

二人は興味津々で眺める、風変りコスプレ二人とその保護者の様な少年に、暇な担当者がほかに客もいないので一つ一つ説明してくれた。


「ありがとうございます」

「いやいや、最近は見ないような知的好奇心旺盛な学生だ。若い頃を思い出す」

「後輩になるのですよ」

「なるほど、コスプレイヤーの二人の面倒を見るのも大変だと思うが、頑張ってみなさい」

「ええ。重ねて礼を言います。少なくても学芸員レベルの知識を持つ方は多くはないので」

「そうだね。運がいい、ちょっうど終わり頃だ」

「こんな貴重な道具などに触れられる機会はそれほど多くはないモノです」

「君は珍しい学生だ。まるでこの道具を使いたいようだね」

「そこまではいきません、どんなところには地元の文化はありますから、俺はそれを尊重します」

「例え伝統的な農業が非効率的でも」

「もし、ここに使われる技術が使われていた時代の人々にそれを言ったらどう思うと思います」

「下手したら殺されたとおもう」

「そうです。地元にはそれぞれ重要な文化があります、例え時代がそれを壊してもずれこのように復活するわけです」

「君とは好い酒が飲めそうだ」

「まだ未成年ですけどね。大人になったら話せるとよいです」



荷物を受け取り鞄に荷物を収めてから、近くの時計屋に入る。ここで腕時計と懐中時計の二つを購入した。どこかの買い物の様にはせずに、必要な物を購入すると言った所だ。

駐車場の入り口に来る。

同じ頃に女性陣も現れる。

予想すべきだったことに男性より遥かに荷物が多い。

これを運んでバスに荷物を入れてからふと外を見れば街並みの中に雲と空が入り混じるまだら模様の空が見える。

あっちの世界はどうなのか、そう彷彿と思う。さらに考えれば自衛官たちにお土産も必要だなと思い、佐倉にの事を告げる。


「聞かないけど、聞かないけど、どんな仕事なの」

「異世界業務」

「そう・・まあ・・」

「佐倉さん再起動」

「私はロボットではありません。自衛隊100名分のお土産なんて無理じゃない」

「大丈夫、こういう時のお役立ち情報はありますから」


準備の好い少年だと佐倉は思う


沖縄での休暇を過ごし、再び地方の自治体の一つの沖縄県と日本政府との交渉は続けられていた。つまり異世界出身の日本人をど扱うか、当然の様に新しい県を作るしかないのだが、それまでにはどこが預かるしかなく、当然の様にすぐ近くで何かと好都合の沖縄県に話が持ち込まれた。


調査部異世界課の事も有り、沖縄県の態度は硬かった。

しかし、新しい県を作るまでの一時的なモノと、これは必要な事なので交渉は成功した。

シャルクク、ディーバの二人もこちらを訪れる。

待ちに待った結婚式、侘びも兼ねて派手な結婚式を行い、旦那さんが51歳、奥さんが26歳という歳の差カップルの誕生だ。

日本国籍、沖縄県の住民登録などの手続きを終え、色々と顔見知りばかりの所なので少しだけ遅くしてもらった。待つ間に色々と話せるからだ。


そんな手続きを終えれば今度は5名の養子手続き、かなりの手続きがいるが一日で終わるようには調整はされていた。というより事前に用意されていたりする。これには政府の方も詫びもあって大目に見てもらう。

その後の様々な手続き、また異世界帰りの面々の様々な手続き。

これらの手続きを一括して行うか、ねそれとも異世界で行うのかとかなりの話題になる。

県の職員の事でもあるし、30代の波田間なども長年の職場だ。

谷口総合商社の事も有る。



「久し振りだ波田間君」


波田間の元直属の上司の八角が、挨拶した。

波田間も迷惑をかけたと頭を下げる。


「・・・相変わらず、まず頭を上げてくれ」

「はい」

「彼らとは上手くやっていけそうか」

「そうですね。話の分からない方々ではないと言った所です」

「そうか、私には無理だな。」

「八角さん?」

「君の提案で有った出世の道具にしてくれという提案だ」

「ありましたね」

「しかし、私は政府の圧力に屈し、自らの道具を切り捨てた」


何を言おうと確かにこれは変わらない。休みがいくら出世欲が強くてもこれは堪えるのは波田間にもよくわかる。部下や上司を持てば誰でもわかるというモノだ。


「許せとは言えないな、たとえどんな結果になっても部下を守る必要があったあの時に、踏ん張るべきだった」

「かもしれませんが、物資の件は感謝します」

「そうか。県庁でも話題になっていたよ。異世界課の事は、あそこでの生活で、非常に気になるのだが、モンスターが出ないのだな」

「はい。ダンジョンのみなのかもしれないとも言われております。何かのルール」

「ルール?」

「いえ、何らかの法則のようなものがあるのかもしれないと」

「なるほど、通常の人が住む場所には出ないか」

「はい。後なのですが、米が食えなくなったら堪えますね」

「自衛隊の友人も言っていた。米が食えなくなったら米の事ばかり考えると」

「まさにその通りです。あれはもう飢えですよ」

「あちらでは農業は可能か?」

「自衛隊は調べている様子ですが、何分道具も資金も技術もありませんから、トラクターの一台もない」

「それでは難しいな、人は送れてもあのダンジョンの中を進めとは」

「さすがに無理時するわけにはいきません」

「役所の仕事は永遠になくならない」

「国がある限り、自治体がある限り、人に公務が作られる限り、なくなりませんね」

「そうその通りだ。後で知事からもあるだろうが、君達には選択肢が出される」

「この世界に残るか、それともあちらの異世界に行くのか」

「ああ。他の職員と違い異世界課の者は自衛官並みの戦う力がある、゛からこそ自衛ができるから可能であると判断された。私も最後の務めを果たす」



知事より出された選択肢、48番目の県への村役場への移籍、派遣は出来ない前回のようなトラブルに見舞われる事も有るからだ。その度に一々沖縄に戻るのも大変な労力という事だ。厄介払いの用であるが、異世界課の者達は異世界に憧れてそれを掴んだ。まともな大人なら忘れるようなことだ。掴んだ後には現実となる、当然のような様々な問題が降りかかる。また公務であるのなら公的な保護もあるので、何かと不安定な異世界での暮らしを順調に進めるために選択肢が出た。


①異世界で新しい県を発足させるその前身に村役場での公務につく。

②こちらの世界で公務員として快適な暮らしを送る。

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