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【01-01:8/1】

登場人物

奄美 信雪あまみ・のぶゆき・・・16歳。高校1年生、男性、調査課アルバイト

2年間異世界で過ごしたという中二病臭い少年、その言葉は魔法というモノにより信用されているが、本人曰く大したことのない魔法使いらしい、紋章学を発展させたものを専門として、紋章に関しては全て暗記する記憶力を持つが、イマイチ中二病臭い。


県庁職員[調査課]

波田間はたま 匡孝ただたか…29才。大学卒。男性。課長。

大学卒の青年、大学では情報が社会に与える影響についての研究を行う情報社会学の研究者だった。現在の調査課課長。


加藤 鈴美かとう・すずみ…24歳。大学卒。女性。課での地位は事務役。

主に備品を予算で購入するなどの予算の使い道を一人で担当する。公式には残らない予算の使い方も心得る頼れる財務・事務約。事務役。予算の範囲内で装備を整える資金を管理する担当者、意外にもやり手


瀬戸口 せとぐち・たかし…24歳。大学卒。男性。課での地位はオペレーター

誘導員役。通信・誘導を行う担当者、無口だが堅実


若宮 敦司わかみや・あつし…25歳。大学卒。男性。課での地位は安全確保。

現場支援役。現場の安全確保を行う担当者、空手の有段者。よく発案する


来栖 銀河くるす・ぎんが…25歳。大学卒。男性。課での地位は安全確保。

現場支援役。現場の安全確保を行う担当者。空手の有段者。無口


速水 はやみ・あかね…23歳。大学卒。男性。課での地位は参謀役の平

波田間の直接の後輩。予算より安全を重視する参謀役の県職員、頭脳労働に長ける以上に様々な手に入り難い備品を購入する伝手などを持つなど機材確保にも長ける。加藤とは真っ先に争う金遣いの荒さだが、それ以上の成果をもたらすなど調査課には必要不可欠な人材。


竜胆研究所:県内にあるパワードスーツの開発・研究の研究所、県内を中心に協力関係の企業・大学などが幅広い。


竜胆 りんどう・けい…40歳。男性。パワードスーツ研究所の所長

40代の妻帯者で子煩悩な中年の紳士、研究者乍ら剣道・弓道有段者。機械工学・情報工学の専門家の、研究所の所長で歴はバイト時代を含め20年に及ぶ。


竜胆・フィリス・音符りんどう・ふぃりす・おんぷ…20歳。大学2回生。女性。

試作スーツの専属整備士。20歳になったばかりの女子大生。子供のころから機械に触れていたため、かなりの機械工学についての知識がある。非常に胸が大きく、髪の毛も赤毛に近いペールピンク、父親の教育方針で剣道・弓道の二つも鍛えているし両方とも有段者。


浅見 雄真あさま・ゆうま…18歳。高校3年生。男性。パワードスーツのテスター。

冴えない風貌、中肉中背、頼りない容姿、いつも不安そうな瞳、危機察知能力に長ける。パワードスーツのテスターだが、テスター歴4カ月。日常生活では失敗ばかり


ドローンサービス社:新興企業。県有数のドローンでのサービスを行う企業


谷口 たにぐち・いつき…50~60歳。男性。ドローンサービスの社長

県内でも有数のドローンのビジネスで成功した会社、かつての遺跡、洞窟などのドローンでの調査に加え、ドローン操縦者、整備士の派遣も行うなど実力のある企業を率いる。


佐久間 勘八さくま・じんぱち

悠木 双葉ゆうき・ふたば…18歳。高校3年生。女性。ドローン操縦者の見習い。

縦に大きい瞳の2倍ある大型の丸型フレームメガネ。猫耳型ヘッドホン愛用。胸はそれなりにあるほう。一応可愛い系、半分綺麗系の顔立ち。操縦センスはあるが、まだ見習いレベル。

「これより県の調査を行います。この調査の建前はダムの耐震強度の調査です」


調査課課長の波田間 匡孝が話す。

調査課の副課長の速水 茜、調査課の事務担当の加藤 美鈴、調査課作業オペレータの瀬戸口隆、運転担当の若宮 敦司、同じく運転担当の来栖 銀河の5名が部下だ


「また協力してもらうドローンサービス社の皆さんです」


社長の谷口 斎、ドローン操縦の悠木 双葉、ドロー整備の佐久間 勘八


「ドローサービス社と同じように協力してもらうパワードスーツ研究所の竜胆研究所方々です」


所長の竜胆 慧、パワードスーツテスターの浅間 雄真、整備士の竜胆・フィリス・音符


「そして何故か紛れ込んでいた奄美 信雪君です」

「よろしく」

「彼は何故が尽きませんが、本人曰く異世界帰りだそうです」


全員が微妙な顔になる。


「また高校1年生なので、社会勉強のついでと思ってください」

「何の役に立つのでしょうか。先輩」


速水がそういうと、波田間は首を振り


「何の役にも立たない者でしょう」

「いやいや。役に立つって」

「どのような、もしかして魔法とかですか?」

「低レベルならできるぜ」

「じゃあ見せてください」


奄美の手から火の弾が生まれる。


「「!?」」

「どう?」


奄美の言葉に


「大変興味深い」

「どのような原理の」


竜胆親子がそう話す。


「マジか?」


浅間がそう呟く。


「うわー。マジで魔法だ」


悠木がそういう。


「こいつは掘り出し物だぜ。好かったな波田間」

「俗にいうファイアか、驚いたぜ」

「奄美信雪君、調査にはアルバイトという事でよろしいですか?」

「ばっちこーい」

「後なのですが、もしかして他の方で扱えます?」

「出来るぜ」


全員が沈黙する。


「ただ激痛を味わい苦しみ抜いてから魔力を得る。それでも良いのなら」

「具体的な痛みもありますし、後々という事で、では調査計画を練ります」


暫くの間に波田間、速水、竜胆慧、谷口の四人が話し合う。

全員の注目は奄美にあり、残る者が集まる。


「少年、本当に魔法なのね」

「触りたい?」

「たぶん痛いのよね?」

「初級中の初級だけど、当たれば即死するほどの攻撃力が有るからね」

「奄美でよいか?」

「うっす。ばっちっす。浅間さんですね?」

「ああ。マジで魔法が俺達でも使えるのか?」

「つかえるっす。即死するほどの痛みに耐えられれば」

「それは体験したくないな」

「一応本人の同意の元に人体実験もしたっす」

「それで?」

「非難する事じゃないっすか?」

「同意の元、それにそんな力を欲しがるのが人の性よ」

「そうっすか。まあ数百名の結果、誰もが口をそろえて言うのは死に程痛かった。このまま死ぬかもしれないとすら思わないほどの激痛、これなら拷問の方がマシ」

「ふ~ん」

「奄美、その力を得た者の感想は?」

「そうっすね。やっと魔法が使える。これで故郷に帰れる。これで復讐できる。これで仕事に就ける。これで病が癒せる」

「希望か」

「来栖さん。希望とは言えないっす。所詮は力を得ただけにすぎないっす。その力を得る為に血の滲むような努力をしたから得られるっす。努力をしなければ得られなかった力っす、努力こそがその使い手達のモラルも支えるっす」

「本当に15歳なのか?」

「16歳っす。そこは間違わないでくださいっす」

「異世界ってどんなところだ」

「そうっすね。まず人口はさっぱりわかりませんが、俺の所属していたガンゲイル王国は人口一千万人、人口における種族からすれば、人族の他はドワーフ族、エルフ族、フェルパー族、ヴィエラ族の五種族が有名っすでも王国に従うのは人族のみっす。この人族の人口割合は約60%の600万名ほどっす。」

「産業と魔法使いの割合は」

「産業でいえば農業は四輪農法、工業に関していえば蒸気機関車、商業においては農作物の過去品を利用した先物取引、人口における魔法使いの比率は魔導院に入れなかった者も含めると30%っす」

「結構発達しているんだな。作物の主な物は」

「それはミニトマトっす」

「なるほどねえ」

「ちなみにメンデルの法則が発見されているっす」

「船とかは?」

「そっちはさっぱりっす。ガンゲイル王国は大きくはない、小さくもない、中堅の国っす。でも海洋貿易を嫌うので港がないっす。魔導院もそんな王国の意向を受けて船は開発しなかったっす。でも魔導院の研究者は気球を作り、飛行船技術まで確立しているっす」

「私からもよい」

「どうぞ悠木さん」

「武器に関しては?」

「銃っす。ただし火薬を使わないレールガンの様な銃っす」

「じゃあ。火薬は発明されていないの?」

「ガンゲイル王国にはないっす。そもそも魔法が有るので必要ないっす」

「なるる。でその銃ってのはクロスボウとかボウガンとか?」

「全然違うっす。レール機構を持つ魔導装置を使った銃弾を連続して射撃する武器っす。はっきりと言って現代の火薬式銃よりも扱い易く、しかも作り易く、ついでに性能も上っす特に狙撃銃に関する性能はずば抜けているっす」

「じゃあ。その銃を無力化する兵器もあるの」

「あるつす。魔導院ご自慢の矢避けの護符っす。これが持ち主に矢をすべて無力化する護符っす。反則的な護符っすけど、軍事利用しているのはガンゲイル王国軍のみっす。というかあの国は中堅どころのミスター平均の器用貧乏の国っすけど、政治が随分進んでいて、その結果軍に関しても、産業に関しても切り替えが早く、周辺の国では最大規模の工業力に軍事力に経済力を持ち、特に輸送手段の蒸気機関車の性能は随分高いっす」

「私からもよいかしら」

「うっす。竜胆さんなんっすか」

「父さんが一緒だからフィリスでよいわ」

「うっす。フィリスさんなんっすか」

「その蒸気機関車の仕組みを教えてもらえない」

「極普通の蒸気機関車はご存知と思うっすけど。ガンゲイル王国製の蒸気機関車は水と魔導装置によって動くタイプっす。その為に燃料は真水のみっす」

「魔導装置はお茶を沸かすコンロのようなもの?」

「IHコンロっす」

「なるほど、確かにそれ妥当。う~ん随分進んでいるわね」

「そんな国っすけど。国外でも人気があるっす。侵略行為をしない、奴隷は全て解放奴隷とする、民主制の一部を採用する。新しい技術開発を好む。」

「奄美君、君からしてもその王国はどうだったの」

「日本なんかよりよっぽどマシっす。少なくても国を守るために戦う事をいとわない奴らっすから。日本はよい国っすけど弱者に冷たいっす」


大人の面々は気まずそうにする。


「奄美。通信に関しては」

「瀬戸口さん魔導兵による通信関係の魔法があるっす」

「ネットは?」

「ないっす。というかネットは元々は米国の軍事技術っすよ」

「だったか?」

「ググればいいじゃないっすか」

「そうだな」

「私からもよい」

「どうぞっす。加藤さん」

「教育は」

「そうっすね。今では初等教育の6年間、高等教育の6年間の義務教育期間があるっす。でも経済状態のせいで通えない者も居るっす。そう言った者にも教える無料学校もあるっす。後は障碍者にも専用の学校があるっす」

「好い国やなあ。好感が持てるわ。そんな国に貴族とかはおるんか」

「いけ好かない連中っすけど居るっす。人口の1%にも満たないっす。」

「貴族は、政治に口出しするの?」

「昔はして居たっすけど、今は無理っす」

「なんで」

「話を聞いていてわかると思うすけど、王国は成長しているっす。貴族が持つ影響力よりも、平民が上回り、更に解放奴隷階級の発展し、結果としては平民・解放奴隷の二つの合致により、貴族の影響力の数百倍規模っすから、俺が知る貴族はそれが面白くないらしく色々とするっすけど、キレた平民や解放奴隷に殺される話も多いっす。そう言った平民・解放奴隷は国外追放っすけど、貴族も殺されるのが洒落にならないと思ったらしく最近は大人いしっす」

「随分となんというか」

「ガンゲイル王国の身分階級を言えば、王族、貴族、平民、解放奴隷、奴隷の五階級っす。でも現在の皇太子が奴隷を全て解放したっす。だから王国には奴隷は居なくなり皆解放奴隷となったっす。解放奴隷は平民とさほど変わらない二等市民の様な物っす」

「つまり。ガンゲイル王国の身分階級を言えば、王族、貴族、平民、解放奴隷、奴隷を要し、人口は1000万人ほど、人族、ドワーフ族、エルフ族、フェルパー族、ヴィエラ族の五種族程、比率は60%が人族、残りが10%ほど。第1産業が最も大きく、次に第2次産業が大きく、最後に第3次産業が大きく、農業品はミニトマトが最大で、工業製品は蒸気機関車が多い、商業に関しては19世紀レベルの製品をやり取りする」

「大体そんな所っす」

「政治的には王政で、民主制の採用も行う、貴族の口出しはなし、代わりに兵混・解放奴隷の口出しあり」

「大体そんな所っす」

「軍事的には」

「大体6万名の正規軍、9万名の傭兵隊っす。武器はレール機構の魔導装置を使った歩兵銃、狙撃銃、軽機関銃、機関銃、騎兵銃、短機関銃っす。隣国との戦争もあったっすけど、結局防戦だけをして侵攻はせず、侵略が嫌いな国っすから蒸気機関車の戦車もあるっす。装甲車、輸送車、個人用、バス、トラック、最近は王国全土に鉄道網が引かれたっす」

「2軍制か」

「そんな所っす」

「日本との相性は」

「日本人は礼儀正しいっすけど、冷たいっす。でもガンゲイル王国人は何時も攻められているのに身内が少ないので、身内にもの凄く優しいっす」

「なんか共感するな」

「アサギさんも理解が速いっすね。所謂空気の扱いだった奴がいきなり成長し周りから攻撃される構図にそっくりな国っす」


また全員が微妙な顔になる。


「他の国は」

「隣国のダジギス王国があるっす。何度もガンゲイル王国に侵攻したっすけど。傭兵隊に阻まれて常に敗退っす」

「王家の力は衰退したな」

「そうっす。そんな中に貴族共和制を掲げる貴族たちが反乱を起こし、王党派と戦う中、ガンゲイル王国に侵攻し、結果として20万近い将兵を失ったっす」

「「20万!?」」

「そうっす。旧式の刀剣や弓などに比べ、歩兵銃などの銃の性能はけた違いで、20万、内9万の将兵が傭兵隊に寝返るなど、単純な真正面からの戦いを好まない傭兵隊の結果、武勇智謀のある傭兵隊と言われているっす。待遇としては屯田兵っすけどね」

「合理的だ」

「そうっす。傭兵隊は9万名も居るっす。それが畑を耕せば膨大な農作物が手に入るっす。これらを両王国に提供し、結果としてダジギス王国の王家はちょっと復興し、内乱は終結したっす」

「もしかしてそこと繋がっているのではと?」

「間違いなくつながっているっす。魔法の力、魔力が回復する為にはどうしても世界樹の力が要るっす。力の弱い俺みたい奴でも回復するほどの濃密な魔気があるっすから」

「銃、車、気球、飛行船、まるで20世紀の国ようや」

「加藤さん。その言い方は相手に失礼っすよ。その国をよく知らないのに自分達より下だという扱いは外交問題の当たりっす」

「すまへんすまへん。ほんま物知りな男の子やな」

「うっす」

「その異世界でどれほど過ごしたん」

「ざっと2年です。まあ最初は聞くも涙の話です。」

「拷問でもされたんか」

「いえ。最初は奴隷でしたから」


空気が凍り付く。


「3か月後には解放奴隷となり、半年で正規魔術師、翌年には上位正規魔術師だから随分と出世したっす」

「・・・大変やったな」

「好い人生勉強っす。今でこそ世界が変わっていますが、ガンゲイル人の奴隷仲間や解放どれの仲間には大変お世話になったっす。平民の知り合いや仲間もいたっすからよい国っす」

「戻るために力を貸すと?」

「そうっすよ佐久間さん。家訓にある義理は硬め、恩義は返せは絶対っす」

「なるほど、君がそういう少年なのは分かった」

「佐久間さん。俺の実力は恐ろしく低いっす。でも魔法の使えない、魔法の教育を受けない、魔法の戦争訓練を受けない、魔法の戦闘経験を持たない者より遥かに強いっす」

「俺のような奴にはよくわからないが、魔法の原理とかは教えられるか」

「安心するっす。ここにいる方々は善良な人っすから、悪用しようとはまず考えないですし、何より魔力がないっすから」

「善良ねえ」

「魔法の原理について、魔法使いには魔力というタンク、才能というランク、このタンクとランクが合わさり実力が決まる。二つ合わせて100が最高っす。どちらか一方なら50っす」

「なるほど簡単な物だな」

「うっす。それ以上に大切なのは何か分かりますか」

「教育か」

「そうっす。教育を受けられねばどんな優秀な素質を持つ魔法使い見習いは育たないっす。この教育法に関していえば現在の最高導師が確立したラスカル方式が最高効率っすこの方式のおかげで正規魔術師に慣れる者は2倍近くに上がったっす」

「それでお前さんの実力は」

「研究者レベルの正規魔術師なんすけど、戦闘用魔法に関する能力は精々学生レベルにすら入らない塾生レベルにも入らない最低レベルっす」

「つまり戦闘用魔法に関する才能がなかったわけか」

「そうっす。今までは魔法使いとは戦闘用兵器っす。俺が正規魔術師になった頃から随分と変わったっす」

「研究者、もしくは技術者、更に言えば学者かな」

「そうっす」

「君の功績か、それとも前任者の」

「今まで魔導院に入る為には最低でも平民でなければならなかった。だが奴隷解放により爆発的に増えた解放奴隷に目を付けた最高導師は、これをいち早く受け入れ、魔導院の改革に乗り出す。後に魔導院は解放奴隷との関係を多く持ち、結果として王国最高学府となる、また新しい技術の開発にも乗り出しこともあり、今まで戦闘用魔法専門の者が殆どだった王国魔導院の人材から、多様な人材に変貌し、魔導院の導師、魔術師もこれを歓喜して受け入れた。狂喜乱舞するほどに」

「皇太子の影響と、最高導師の柔軟な判断によるものという訳か」

「そうっす。二人がいて初めて王国は沸き上がったす。まあ貴族にとってみれば大損害っすけど。貴族のボンクラ共には残飯でも食わせればいいっす」

「魔法の話に戻るが、魔力というタンク、才能というランク」

「後は個人により魔力回復力、これは治癒力の様な物っす。半分は魔気、これは世界樹の力により回復するもう半分っす。この二つが揃い全快するっす。片方しか無ければ二倍の数値が要るっす。しかも半分までしか回復しないっす」

「たぶん誰もが疑問だが、見て目はまあ老け気味なことを考えて16歳と言えななくもない」

「16歳っす。いやマジで16っす。何か疑わしい要素でもあるっすか」

「いや、まあ見た目はどう見ても15歳なんだわこれが。身長は幾つだ」

「ふっ。将来は180を超えるっす」

「今は」

「169cmっす」


今までの大人びた顔から子供じみた顔になり全員が噴き出す


「伸びると言いな」

「伸びるっすこれは確定的な希望的感想っす」


来栖の言葉に直ぐに返答したが、最初の頃の印象と随分違う男の子らしい側面を見せ、大人は爆笑した。


纏め:

ガンゲイル王国:

人口約一千万人。

人族=60%(人族の人口比30%が魔法の素質持ち)ドワーフ族=10%、エルフ族=10%、フェルパー族=10%、ヴィエラ族=10%

社会階級:王族、貴族、平民、解放奴隷、奴隷(現在の奴隷は全て解放奴隷に昇格)

政治体制

王政、一部民主制

軍事体勢

正規軍5万、傭兵隊9万

主要兵器:レール機構の魔導装置を使った銃、蒸気機関車の戦車や輸送車など

隣国との関係

ダジギス王国と関係の改善、他の国とも外交的に良好

産業

第1次産業の農業が最大の産業の50%を占める、第2次産業に関していえば人工の30%が占め蒸気機関車が二番目の産業、商業的には20%を占める、主に交易・金融産業。


比較対象

ダジギス王国:

人口2千万

人族=80%(人族の魔法の素質持ち比率1%)その他の少数種族20%

社会階級:王族、貴族、平民、解放奴隷、奴隷

政治体制

王政

軍事体制

正規軍10万

主要兵器:刀剣、弓など、騎兵が数多くいるのが特徴

隣国との関係

余り仲が良くないが、ガンゲイル王国とは複雑な関係にあるも、王家同士の仲が良い

産業:

第1次産業の放牧、農業が人口80%を占める、第2次産業は高くない労働力の比率から言っても10%未満、第3次産業は交易が高く10%以上



「じゃあ。よろしく頼むぜ」


浅間がそういうと、奄美はオールフリーを飲み干す頷く、その後にカンを投げる。

放物線を描きゴミ箱に入る。


「ナイス」

「うっす。このパワードスーツって面白いっすね」

「どこら辺が気に入った」

「簡単っすよ。めっちゃに筋力増幅力が高いっす」

「だろ。ついでに防弾性などの防御力も高いぞ」

「これならガンゲイル王国に売れますよ」

「何に使うんだ」

「戦争はそれほど多くはないんすけど、モンスターがいますから、その狩り用ですね。後は荷運びに介護などにも利用できるす」

「おいおい。モンスターだって」

「なんか食いつきが良いっすね」

「あれだろ人々を脅かす化け物、この暴力から人々を守るのが」

「まあ間違いじゃないっすけど」

「なんだよ」

「そのモンスターにかかる賞金は知っていらっしゃらないと思いますっす」

「1億ぐらいか」

「ガンゲイル王国の解放奴隷の年俸の10倍っす。」

「銃と同じ値段か」

「そんなに安くないっす」

「安くないって」

「新型蒸気機関車の半額の値段っす」

「日本円で」

「一千万はするっす」

「・・とても危険?」

「モンスターハンターという職業の者を、トチ狂ったばかの自爆と同じっす」

「お喋りはこれまで、二人ともよいですか」

「浅間・雄真。スタンバイOK」

「奄美・信雪。スタンバイOK」

「スタンバイシグナルを確認、ハッチを開きます」


全身装甲フルスキンのパワードスーツを着込み、二人が収納シェルターより出る。


「ウェポン選択を」

「浅間。了解」

「奄美。了解」


ウェポンは銃火器、刀剣、鈍器、槍類だ。

浅間は銃火器を選ぶ、奄美は刀剣を選ぶ。


「浅間。火器を選択。奄美。刀剣を選択」

「奄美君には魔法がありますから、まあよいのですが、異世界での射撃の腕前が見たかったですね」

「私見ですが、奴隷の火器を持たせますか、私が思うに刀剣類が限界だったと思いますが」

「かもしれませんが、解放奴隷という奴らしいので、以外と戦功を上げたほうかもしれませんね」

「本人曰く即死するレベルの攻撃魔法の使い手、加えるのなら、本人に戦闘に関係する魔法の才能はなかったですからね」

「二人に指示を、悠木君のドローンはどうしました」

「はいな。色々と終ったらしいけど、搭載する装備の事で大ゲンカ中や」

「課長、本当に大丈夫ですか」

「大丈夫、被害を受けるのはドローンです。それに悠木君のドローンへの愛着もありますので、無茶な行動はとらないでしょう。パワードスーツはそのまま前進、ゲートの前で待機」


パワードスーツのオペレータの瀬戸口が伝える。

ドローンオペレータ担当の加藤は、現在喧嘩中の社長、社員の操縦者の喧嘩を聞きながら、のんびりと緑茶を飲む。

暇な警備担当の来栖、若宮の二人は簡易手的なパワードスーツ呆け取り、竜胆博士より使い方を指導されながら訓練をこなす。

司令車の中で司令塔の波田間、オペレータの瀬戸口、加藤の三名が待機中。

パワードスーツの整備を担当するフィリスがモニターを見ながら、テスト機の情報を集める。

ドローン担当の三名は社員と社長がぶつかる。


調査課の本日の営業時間と浅間は思うが、単に突っ立っているのも退屈だ。


(暇だな)


「おい奄美」

「暇っすね。なんかゲームとかないんすか」

「お前ゲームする方なのか」

「当たり前っすよ。高校の友人からお勧めだと言われてアーマードコアをプレイ中っす」

「素人には難易度が高くないか」

「ええ高いっす。というか一つのミッションを攻略する事すら辛いっす」

「装備は」

「知人からお勧めの軽量二脚っす。武装の方はアサルトライフル、シールドバルカン、ミサイルポットっす」

「無難にタンクにしておけ」

「タンクっすか。あれはいいっすよね。男のロマンっす」

「素朴な疑問だが、その友人のカモになっていないか」

「そいつもアーマードコアの素人っす。CMに惚れてやっているっす」

「まさかに二人とも素人、フィリス聞いているか」

『当たり前。私が思うにジェネレーターとブースターとラジエーターとFCSを弄ってないでしょう』

「金が足りないっす。あのゲームは金が足りないっす」

『そりゃあそうよ。アサルトライフルは実弾、シールドバルカンの実弾、ミサイルも実弾ならお金が弾薬費で飛んでいくわ。いい最初は高くてもレーザー系なのよ。わかった』

「それには異論があるな」

『あらら、浅間君何か』

「機体に対する被弾率からの費用もある、エネルギー系は色々と有償乍ら、ジェネレーターが必要という事は確実だ。これらの事からジェネレーターを弄る前には実弾こそが良いと俺は思うぜ」

『確かにその一面もあるわ。でもエネルギー系だからお金が貯まるのも一つの確定的な事じゃないかしら』

「分かったっす。つまりバカでかいレーザーキャノンを担いでぶっ放せば一ころっす」

『それはあるけど、奄美君の腕前とも密接に関係するわ』

「いえているな。何せレーザー系は連発する物じゃないからな。搭載できる弾薬量にも限界がある。そもそもアサルトライフルの平均的な弾薬量は200発に対し、レーザー系は100発も行かない、多くが50発ほどだ。総合火力的にはアサルトライフルには及ばず、こいつは腕前が要求されるぜ」

「いっそのこと白兵装備に切り替えたほうがいいっすかね」

『自殺は辞めなさい』

「全くだ。あんなトチ狂った武器はイラン」

「結構渋いっすよ。銃の中で剣で突っ込むとか、普通は戦死っすけどね」

『そうね。でも抜刀隊って知っている?』

「居合い剣士っすか」

『そう。1877年の西南戦争時の白兵戦専門部隊よ』

「往々古いっすね」

『平民などで編成されたものだけど、今の剣道ともつながるモノよ』

「・・・」

『興味が湧いたら調べてみるのもいいわよ』

「うっす。感謝っす」

「お隣さんは何て」

『搭載するのは何にするかで大喧嘩の真っ最中。勘弁してよ』

「安心するっす。悠木さんや佐久間さんは道具を大切にする人っす」

「おっ。しっかりとみているな」

『行きすぎなければいいわ』

「道具を大切にしない人より好感が持てるっす。ほら物のない時代を過ごすと道具の大切さに気付くっすよ」

「好い事を言うじゃないか」

「うっす」

『素朴な疑問だけどいい』

「専門っすか」

『ええ。貴方は上位正規魔術師と言った。なら正規魔術師になる為の何かしら手土産がいるはず』

「うっす。正規魔術師になるには研究成果が要るっす。俺の場合は料理っす」

「料理?ああ保存食か」

『そうなの?』

「あの国、ガンゲイルの飯は死に程不味いっす。これを簡単に大量に美味しく作るために奴隷時代から研究したっす。その中で考え付いたのが、人が美味いと感じるうま味をどうやって安価に作り出すことができるかという事でした」

「それで」

「今まで使わない出汁骨を使い使っただしはその美味しさから奴隷の黄金と呼ばれるほどでした。このダシを使った量が折れの研究テーマでしたし、これを提供し、この技術の元作った料理が奴隷でも作れて食べられるほどに安価な物です。この為に王国の隣国たちも採用するほどなのです」

「お前は日本人だな」

「うっす。今は試行錯誤の中です」

『なるほど、なら上位正規魔術師の研究は』

「新しい魔法の学問です」

『「学問!?」』

「要するに新技術です。新しい魔法過ぎて、魔法らしくないモノです」

『どんな物』

「紋章学というモノっす。俺の前に研究していた人が基礎を作り、それを受け継いで研究したものが紋章学っす」

『その紋章学は一体』

「紋章を刻むことでありとあらゆる物資の性質に干渉するっす。例えは機関車のIHコンロの様な伝導体、車体に刻み強度を上げる何かっす」

『それが実現しているの』

「半分は、まだ研究途中で使い手も少ないっすから」

『君の口調の事も有るけど、おバカな学生じゃないのね』

「何言ってんすか。俺なんかおバカすぎて困る位っすよ。本当に頭の良い人と出会ったらそう思うっす」

「中々好い心がけじゃないか」

『同感ね。そのおバカにしか思えない口調を直するが好いわね』

「無理っす。日本語は難しいっす」

「で、前任者ってのは日本人なのか?」

「たぶんと思うすけど、紋章学の基礎をただ一人で作った人っすから所謂天才級の人なんだと思います。凄く研究熱心というか、あの資料に関していえば早くデータ化して持ち込みたいです」

「一端の研究者だな」

『君の事は大体わかったけど、あっちの世界、私達が勝手にそう思っているだけの世界、この門から繋がる世界、そこに戻る気なの?』

「当面の目的はそうっす」

『その目的は資料のデータ化?』

「そんな所っす。他に言うのならこの日本という国を見せてやりたいっす。色んな奴がいますからあっちには、まさに戦極乱世の世の中ですし」

「女は居たか?」

「難しい問題っす。そもそも奴隷上がりの上位正規魔術師と結婚したがる女は居ないっす。出世したとはいえ、長年の階級制度はそんな物っす」

「よくわからないが、手伝う事が有れば手伝うぜ。話を聞く限りお前は悪い奴じゃない、なんというか謀るという事を嫌う性格だしな」

『おバカな口調の研究者、これはどう判断すべきか困るわね。少なくても料理の腕前が高く、魔法学問の一つの完成に導いた魔術師、決して無能ではないけれど、なんか口調のために全て損して居る様な少年ね』

「違いない」

「酷いっす。日本伝統の言葉である相撲語っすよ」

『まあ君の狙いは何であれ、どこかの国の諜報員とは思えないわね』

「当たり前っすよ。諜報員とか使う身分の人は大抵大人っす」

『子供の諜報員とかよく』

「居ないっす。そういうのは大抵が使い捨てっす、バリバリに洗脳した後の使い捨ての駒になるっす。しかも自分の意思と勘違いしている者も居るっす。そんな物に魔法を教える意味はないっす」

「ハードな人生を送っていたな」

「魔法使いは高価な戦闘用兵器っす、これはどんな時代でも変わらないっす。例え歩兵銃などでも変わらないっす、蒸気機関車の戦車が出来ても同じっす。なんせ魔法使いを育てるのに実に義務教育の12年、魔導院の試験を受けて1年生となり6年が過ぎて正規魔術師の試験を受けて合格した者が成り、実に18年も最大はかかるっす。それまでにかかる教育費用はバカみたいな金額っすから、それも個人当たり、教育に資金がいるからこそ義務教育が出来っす」

「んじゃあ。その魔導院の魔術師を暗殺者にすることは」

「浅間さん。貴重な技術者、研究者を使い捨ての駒にする軍がいると思うっすか」

「裕福な国とか」

「そうっすね。確かに裕福な国なら可能っすけど、正規魔術師一人に相当する兵士の数はおよそ10っす。これは10倍の兵力に対抗できるという数字っす。言い換えれば歩兵10名を使い捨ての駒にする考えっすけど、歩兵ならどん所にもいます、しかし魔導兵、所謂正規魔術師教育の果てに育てられた超エリートっす。軍の文官から技能職は全て魔導兵というのも当たり前っすよ」

「つまりそれだけ金のない国が多いのか」

「そうっす。ガンゲイルでも無理っすから、他の国ではまず考えません」

「ん?中の所って話をだったが」

「そうっすよ。隣国のダジギス王国は上の下、ガンゲイル王国が中の上、周辺の国が中規模、小規模、零細規模っす」

「ふーん。その世界とは必ず通じているんだな」

「うす。100%っす春夏秋冬が来るのと同じっす」

「フィリス。一体いつになって喧嘩は終わる」

『え?ああ。ごめん、色々と紋章学について考えていて、凄い利用価値よ』

「バカ言っていないでお隣さんはどうした」

『帰って研究したい。もう1時間も喧嘩中よ』

「フィリスさん。飲み物を飲むために休みたいっす」

『ごめん』

「奴隷並みにブラックな仕事っすね」

「ただ突っ立てっているだけだぞ」

「それって拷問の一種っすよ」


◆8月1日午後


「もう休みたいっす。腹減ったっす。飲み物が欲しいっす。突っ立つ拷問訓練をする必要がどこにあるっすか」


奄美の言い分は最もだと話を聞く浅間もフィリスも思う。

かれこれ朝の10時から2時間も突っ立つだけ。

同じ様に指揮車両の内部でも一向に終わる気配の見せないドローンチームの問題もあり、仕方なくパワードスーツを戻す許可を出す


「浅間はよく耐えています。奄美に関しても訓練もなしにここまで耐えられるのはなかなかどうして」

「若者を虐めるのはよくないですよ先輩」

「中々よい成績ですし合格です」


オペレータの二人は苦笑する。

この問題の機会をわざと放置し、試験内容も告げずに試験したのだ。

参謀役であり波田間の後輩の速水は二人は装着者の数字の良さはあるが、二人が良い相性にあることも確認している。


(先輩らしい)


後輩としては弾のやり方は勉強になる反面、人が悪いなとも思う。


「先輩、弁当の事について少々問題がありますが」


速水がにこにこと笑いながらな話す

波田間は苦笑した


(誰に似たのやら)


「あかん。あかんですよ速水副課長。どうせ公費だから高級な弁当をという」

「まさか2千円以内です」

「それなら千円以内に抑えるのはあかんのか」

「加藤さん。貴方は危険を伴う仕事の者に金がないからこれだけやと」

「悪党になるのは仕方ないせやけど、切り詰めんと来月の追加予算は」

「具体的な試算は出来そうですか」

「はやな。まあ13名やから五日間で6万5千、これで毎月28万6千、年間の費用としたら143万や。これだけの金額になると飲み物代が一人午前・午後に300円や毎月8万5千8百円、年末までに42万9千円や。二つを足せば185万9千円や」

「約3・8%ですね。」

「大きくない数値かもしれへんけど、削っておいては損はない、私は考えるけど」

「ええ。すでに改造した指揮車両。パワードスーツを収納する輸送車の費用も」

「そっちの方はまあ初期投資という奴やけど、上に言ったら凄まじい目でみられたわ。親の仇でも見るような目や。それに予算はもう半分だし、削りたいのも」

「使った費用からいえば、すでに半額ですか、うーん。1800円」

「飲み物付きで2000円や」

「それで行きましょう」

「こちらオペレータ。浅間、奄美、輸送車に戻っていいぞ」

『二人とも許可が下りたわ。浅間、奄美の二人の順で収納するわ』

「了解」

「やっとのこと昼飯だ。」


二人がゲート前から輸送車に戻り、パワードスーツを収納してから脱ぐ。


「結構快適でした」

「あんなに不平たらたらで?」

「浅間さん、魔剣ってほしくないっすか」

「欲しい」

「あ~あ。私もどのような物か知りたいわ」

「簡単っすよ。紋章を刀剣類に刻むっすあら不思議、魔剣の使い手には専用の魔法が使えるのでありました」

「マジか!?」

「その話が本当なら画期的な事ね」

「いやマジっすよ。というか紋章学の前身は付与魔法学っすから」

「付与?」

「物に与える力の意味か」

「浅間さんの言葉は大体正しいです。そういえば所長は」

「あっ。父さんにも教えないと」

「親父さんなら警備担当の二人のパワードスーツを弄っている。機会を弄るのが好きな人だから、まずそこを終えてから来るさ」

「んじゃあ作業に入る前に弁当っすか」

「それがね今から弁当を買うのよ」

「・・・マジっすか。腹減って死にそうっす」

「奄美朝飯は食ったのか?」

「お財布の関係でカロリーメイトっす」

「十代にカロリーメイトは辛いわね」

「うーん。少なくても奄美の食事でもよいから近くに店がなかったか」

「ダムの下にあるわよ。公園近くの小さなスーパー」

「よしそこで買おう。奄美行くぞ」

「感謝っす。マジ死にそうっすから」


と直ぐに弁当を買いに行く。


「一番安い弁当で」

「数量は」

「2個っす」


一番安い親子丼弁当を二個購入、浅間は三色弁当、フィリスは悩んだ末に天ぷら弁当だ。


昼食の終わりにアマミが魔法の術の一つの紋章学の魔法で、紋章というモノを刻み作られた魔剣、魔法の力を持つ剣ゆえに魔剣だ。

その実験結果見た研究者の竜胆博士は狂喜乱舞した。その娘は父親の喜びように気恥ずかしげだ。

奄美が説明した紋章学の前身である魔法あの一つの系統の付与魔法、この付与魔法から作られた紋章学の基礎を発展させ実用化したのが奄美という事になる。

研究者ならよくわかる大きな功績を上げた者だ。

それは動力を得ることにほかならず、動力が得られたのは蒸気機関からしても現代の電車とは比べものにならない物でも、その国、その時代の人にとってみれば非常に画期的な物と言える。しかも水のみの燃料ならどこでも手に入る。後は紋章学を学び個の育成を行う人々が育成できれば。

おバカな口調の奄美だが、純粋な戦闘能力からいえば他の民間人に比べて高く、またパワードスーツに強い適性を持ち、紋章学の紋章使いとなると、調査する予定の門の前になるべく手を尽くそうと考える調査課の首脳部の考えはよくわかる。

中々好い後輩が出来たので浅間はそう考えていた。

竜胆・慧博士、竜胆・フィリス・音符のような機械工学の学徒は、諸手を上げて喜べるが、これらの技術が悪用されるのを折れるのは当たり前だ。

アマミ自身が上位の研究者だったかもしれないが、戦闘用の魔法が大変苦手で有り、その為に奄美が尤も扱えるのは戦闘用以外の魔法系統で、それらの魔法系統はアマミの所属していた魔導院にも少ない為に、結果として本人の力を生かせないでいることは、周りには思えたし、その中で紋章学はこのような使い手にとってみれば典型の様な戦闘以外の技術で戦闘能力を強化するタイプだ。

来栖は奄美に言われたことを思い出す。

『希望とは言えないっす。所詮は力を得ただけにすぎないっす。』

『奴隷でしたから』

まだ16歳という若さに対し、その口調を差し引いても随分と大人びた少年だ。

少年らしい身長を気にするところはあるが、少なくてもこの後の調査に貢献すると思える。だが、来栖にもまだ成人していない子供を危険な場所に送り出すのは好きになれない。

とはいえ、あの少年には魔法があり、それも低レベルな物と言った。

彼の様な少年に魔法を教えた者はよほどの達人だった。

そう考えるのが自然だ。

だからこそ今の内に鍛えておく事を選択した。


(まさか魔剣を作れるとはな)


来栖は自分がうっすらと、久し振りに笑みを浮かべる事に、気づかなかった。


「来栖、どうした」


相棒の若宮が怪訝な表情で語りかけた。

ここに来て初めて自分が笑みを浮かべる事に気づく。


「いやなんでもない」

「魔剣の事か?」

「・・・ああ」

「彼奴は幼い子供だが、一端の技術者だったらしいが、魔剣なんぞを簡単に作り出す技術力には驚かされる。しかも俺達ですら魔法が使えるようになるのなら諸手を上げて喜ぶさ」

「ああ」

「少なくてもこの島に根付けば巨大な利益がこの島を潤す、波田間さんはそう考えるらしい」

「だろうな」

「奄美の能力はそれには必要不可欠だ」

「悪いこと以外なら賛成だ」

「俺達大人は色々と有るが、子供でも色々だ」

「人体実験の事か?」

「治験のようなものだろう」

「そうだな」

「分かっていることは、奄美の戦闘能力はゲームや漫画の様に万能な物ではないという事だ。その為に情報は徹底的に隠すしかない」

「奄美なら可能だ」

「だろうな。バカみたいな口調だが、作為的なものではないにしろ。口調と技術のギャップがナイアガラの滝並だ」


若宮とは学生時代からの付き合いのためによくわかるが、この男なりに色々と考えているらしい考える担当ではないとよく言っていたが、この島の事が好きでもある。


(長いというべきか)


「もし、銃に使えばどうなるのだろうか」

「強力な武器となるのは明白だ」

「纏めるのなら、魔法の力が宿る魔剣を紋章学で生み出すことが出来る。それは剣のみに留まらない物。死に程の激痛を受けて魔力を得ることもできるこんなものか」

「来栖、お前が何のためにそんな事を言うのかはわかるつもりだ」


来栖が若宮の目を見る。


「力が手に入るのだぞ。無力な者から守れる力を得れるのだぞ」

「その考えは、パワードスーツでよいとは思わないが、過剰な力は身を亡ぼすぞ」

「・・・」

「ただ俺達のような奴らが魔法の力、魔力を得てもそれを扱える才能が有るのかという謎だ」


若宮の指摘は最もだ。

奄美も魔力=タンクと才能=ランクがいると言った。


「しかし。一歩は前進だ」

「ああ。その通りだ」


二人がそんな会話をしていると県庁調査課職員のオペレータの瀬戸口、事務兼任の加藤の二人も弁当を食べ終え、奄美が話した魔剣や魔力を得る方法を考えていた。

何の力も持たない個人からすればあまりに魅力的に映るのだ。

強い事にステータスを感じる者には思える。

加藤はもう一つの側面を見る。

魔剣の様な単なる工業製品に紋章学の紋章を刻む過程を踏まえるだけで、世界最高水準の武器が手に入る。

この力は絶大な物だ。

魔剣の力なぞ、魔剣を簡単に大量生産する力の前には針の様な物だ。


「魔力か、そんな力なら確かに欲しいわ」

「知っているか」

「何や瀬戸口はん」

「美味い話には裏がある物だぞ」

「瀬戸口はん。あの少年が嘘をつくとでも?」

「彼奴か治験したのはガンゲイル王国人だ。俺達は日本人だ」

「それかいな。まあ確かに前例のない話になるわ」

「前例がない未知の毒を食らう気になるか」


瀬戸口の言葉に、加藤は首を振る。


「そんな度胸はないわ。せやけど。魔剣なら」

「魔剣を扱う能力がある前提だ。なければ単なる飾りだ」

「クールやな瀬戸口はんは」

「同僚がおバカだと苦労するぞ」

「中々好いセリフ」


二人の会話の後に、午後の会議が急遽に決まる。

調査課より課長の波田間、副課長の速水、ドローンサービス社より社長の谷口、竜胆研究所から所長の竜胆博士、アルバイト枠から奄美の5名だ。


「それでは会議を開きます。まず現状について速水君より」


波田間がそういうとニコニコとした笑みを浮かべた速水が、現状までの報告を行う。


「調査の成果なし、奄美君関連の問題ありです。では奄美君に質問があります」


速水からの前置きに奄美はこくりと頷く。


「声は出した方が聞こえやすいですよ」

「はい」

「では、現在まで確認されていることから幾つか、ます魔法の力を魔力と言い、激痛の中を耐えきれば魔力を得られる」

「はい」

「この魔力の回復手段は二つ、自己治癒力のような個人の回復力、世界樹と呼ばれる植物が発する魔気を吸収し回復する。また片方のみだと上限も回復速度も半減する」

「はい」

「魔法に関していえば、容器と言える魔力、使える魔法の術のランクこの二つだと」

「はい」

「魔法紋章学の力により非魔力持ちでも扱える魔剣を作れる」

「はい」

「この魔法紋章学によって、剣以外の魔剣化を可能とする」

「魔剣化?」

「こちらの用語です。要すれば紋章学の力によって魔法の力を与えた器です」

「なら、正しいのですが、完璧ではありません」

「具体的にどう完璧ではないのかね」

「竜胆博士、質問は後ほど」

「悪かった」

「①:魔法の力を魔力と言い、激痛の中を耐えきれば魔力を得られる

②:この魔力の回復手段は二つ、自己治癒力のような個人の回復力、世界樹と呼ばれる植物が発する魔気を吸収し回復する。また片方のみだと上限も回復速度も半減する。

③:魔法に関していえば、容器と言える魔力、使える魔法の術のランクこの二つ

④:魔法紋章学の力により非魔力持ちでも扱える魔剣を作れる

⑤:この魔法紋章学によって、剣以外の魔剣化を可能とする」

「はい」

「後は何か必要ですか」

「?」

「貴方は異世界からこちらの世界に戻った」

「はい」

「戻った世界にはすでに家族は居ない、住む場所すらない、戸籍がないために仕事にもつけない、君は困窮していると僕は判断した」

「う~む。鋭いっすね。この2年間の間にこの世界では一体何年過ぎたかわからないっす。そもそも俺の居た世界なのか、それとも並列世界なのかは謎っす」

「色々と手助けは出来るよ。100%完璧に約束する、君の提供した技術のおかげでこの調査は進む、未知の世界に進む中に、君という船頭がいることが、何よりも暖かく、嬉しく、喜ばしい」

「うっす」

「一日の日給は1万円程度でよいかい」

「超充分っす」

「後だが、君の性格からして工業系が良いかな」

「出来たら悠木さんか、浅間さんの後輩がいいっす」

「二人とも進学校だが、別にレベルが高い訳じゃないよ」

「速水さん、俺みたいなはぐれ者が、レベルの高い進学校ではやっていけないっす」

「確かに、じゃあ二人と同じと。住処に関しては何かあるかい」

「学校と仕事場の中間にあるビジネスホテルでいいっす。光熱費が要りませんし」

「うーん。シングル5千円ぐらいな」

「それでばっちりっす」

「日給は1日1万、月22万、登校先は二人と同じ学校で1年、住処に関していえば5千円が上限のビジネスホテルでよいかな」

「速水さん大丈夫なんすか?無理ならなんかの技術で」

「君のような子供を助けられない大人になるのはちょっといやでね。妻子が出来た時にこんなことを言えるならマシな人なのかとも思えるしね」

「はい」

「じゃあ。竜胆博士と谷口社長からの質問タイムです」

「この輸送車両のエンジンを紋章学で改造できるか」

「色々と分からないっすけど、まあ出来る範囲っす。でもどれほどの効果を生むのかは謎っす。下手したらエンジンの出力の関係でどうなる事やら」

「次に」

「谷口君、今度は私の番だ。という訳でパワードスーツの強化は出来るかね」

「飯の時にフィリスさんから教わったっす。結論から言えば可能っす。でも動力が強化されても人工筋肉などの強化もしなければならず、これらの技術をすべて施したパワードスーツが非常に作り易いっす。というのも魔導甲冑というモノがあるっす。それと大抵が似ているっすからこちらの方は直ぐに終わるっすよ」

「情報系の方に興味は」

「ないっす。なんか合わないっす」

「ドローンは」

「ドローンすか、あれはなんというか、装甲強化何て基本的なことは可能っすけど、情報系はさっぱりす。ソフトに滅茶苦茶弱いっす」

「その装甲強化の他に積載量強化とかは可能か?」

「可能っす。単にエンジン強化のみっすから。ただどのような悪影響がああるのも謎っすよ」

「つまりソフト以外の物に影響を与えられるのか」

「可能っす。というか元々付与魔法の前進っすから、物に力を宿す為に魔法系統っすね」

「魔法の工学の様な物かね」

「そうっすね。確かに工学には疎いっすけど、工業に関係する力っす。確かに似ているっす」

「それでその学問の一つである紋章学の原理はいえるかね」

「いえるっすよ。魔力っす」

「・・・もしかして魔力がなければ紋章学は扱えないのかね」

「そうっすよ。というか魔法の大前提っす」

「・・・魔剣の様な物はどれぐらい作れば枯渇するのかね」

「うーん。そうっすね。こちらは魔導士の称号を持つ上位正規魔術師の上っすけど。魔力を数値化すれば数千はあるっす。その上の最高導師は底なし沼っすね。正規魔術師、上位正規魔術師の研究員のおよそ二千~千、学生レベルが数百っす。学生に入る前の数値が100位かっす。こちらの100にもいかないのが俺っす。だから回数を言えば50程度っす」

「では君の様な紋章学に才能を持つ魔法の使いて」

「魔導士の中には一人もいないっす。上位正規魔術師の先輩も使える人は入るっすけど、俺みたいな新米は研究室を持つので精々っす。まあ学生も面白がって協力してくれたっすよ。魔導院は公平・平等・日進月歩・切磋琢磨なんていう場所っすから身分は気にしないし、性別に気にしないっす、ましてや年齢など全く意味がないっす。有るのは実力と実績っす」

「アメリカみたいな場所だな」

「確かに」

「でも紋章学はお勧めしないっす」

「何故だね」

「超地味っすから」

「具体的に」

「紋章の大きさを1ミリ大きした、そんな研究データがてんこ盛りっす」

「具体的な法則などはないのかね」

「あるっすよ紋章巨大化の法則っす。この法則は戦車なんかの大きくすることで性能を上げるやり方と同じっす」

「ふむ。紋章の大きさにより性能は変わるのかね?」

「変わるっす、でも子の紋章学が出てから1年程度っすから、分かっていない法則の方が多いっす。特に紋章の色に関係する分野に関していえば、この日本のある地球世界の色とは違い、凄くしょぼい幅で、この濃度のレベルから色々と変わるっす。濃ければいい訳ではなく、薄くても、濃くても大きな影響をよぼすっす」

「魔剣化のように紋章は刻まないのかね?」

「竜胆博士、自分で答えを言っているっすよ」

「あっ。ああ。なるほど、確かに紋章を刻む物には色が有るか」

「やっぱりこの紋章学はお勧めできないっす。むしろ薬草学とか、そっちの方がいいっす」

「君の好みと私の好みは違うのだ。サイズの法則、色素の法則の二つ以外は」

「紋章を刻む使い手が持ち得る特性の法則があるっす」

「魔法使いは人族のみだったね」

「ええ。ガンゲイル王国人、ダジギス王国人の他にもう一つあるっす」

「もしかして君の事か」

「そうっす。俺は日本人っす。だからあの世界で唯一の日本人が使える紋章学特性が有ったっす」

「どのような」

「ガンゲイル王国人は魔力の効率化に特性があり、ダジギス王国人は魔力の変換効率の高さに特性が有ったっす」

「タンクその物の出力に関する効率化かね」

「惜しいっす。タンクに関係するモノの全ての効率化っす。ダジギス王国人が出力に関係する変換効率が高い事っす」

「なるほど、エルフやドワーフは」

「超機密っすから教えられないっす。でも今なら教えてもよいかと思っているっす」

「興味深いが、日本人の特性とは」

「意外っすけど、日本人の俺のみしかデータが無いから何とも言えない反面っすけど、全能力の上昇っす。与えられた紋章の特性は全能力の上昇、大きくはないっすけど、この為に俺が作った道具は通常の1万倍するっす」

「ふむふむ。日本人の特性は分かったが、下手したら地球人の特性なのかもしれないね」

「かもしれないっす。そこの方は現地に行くことでしか調べられないっす」

「興味深いな、あの魔剣は」

「魔剣としての価値はそれほどないっす。所謂Lv1の品っすから、でも全能力上昇の特性の為に、欲しがる者は金貨1万枚をはたいても塵取りの中っす」

「ちなみに兵士一人の給与は」

「年俸100万っす」

「金貨1万枚は」

「約1億っす」

「では幾らぐらいが相場なのかね」

「其の10倍っす」

「魔剣一つで10億?べらぼうに高くないかね」

「暴利っすよ。でも魔剣なんて作れる物は紋章学の使い手のみっす。もしくは付与魔法に知識がある者達っす。最後の手段は探して見付ける事っすね」

「欲しがる者は星ほど居れど、作り手は砂漠の砂粒なりか」

「こんな感じっす」

「奄美君」

「なんすか竜胆博士」

「情報も工学の一部なのは知っているかね」

「え~とソフトの方はどうも」

「兎に角に情報も工学なのだ」

「そうっすね。」

「君の紋章学を使って、情報に干渉してくれ」

「ちょっと無理っすよ。マジ、無理っす。情報に干渉する魔法系統の学問はないっすよ。そんな魔法の系統は情報魔法なんて奴じゃないっすか」

「じゃあ。君が二度目の新しい学問の創設だ」

「マジっすか。本気で言っているんすか、超やばいっすよ」

「その危険性が分かるほどのデータはないのではないかね」

「そんな簡単な事じゃないっす。算数で爆薬の計算をするようなものっす」

「情報機器になれば可能だが」

「そんな虚数じゃないっす」

「何が危険なのかね」

「器に付与する為に作られた付与魔法、この付与魔法を発展・改良させた紋章学、紋章学は工学に適する補助的な物っす。その中でもわかる様に性能は日進月歩っす。その中で情報に関係することは紋章学の研究者も疑問には感じたっすけど」

「要するに何が危険なのかね」

「器となる器に干渉せず、満たす為の水を変質させるなど、どんな結果が生まれてもおかしくないっす。超弩級に危険っす」

「情報、即ちデータに干渉する術は危険性は分かるが、ドローン程度なら問題ないんじゃないか」

「あっるそれなら大丈夫っす、制御系っすか」

「よくわかんねえから兎に角にデータが欲しい。竜胆も同じでいいか」

「全く問題ない、直ぐにパワードスーツで試そうと思うよマシだ」

「という訳で、午後は実験を必要とするが」


かれこれ1時間近く話していたが、午後2時になり、残る3時間しかないために波田間は速見を見る。速水も波田間の視線に気づき頷く。


「午後は実験とする。奄美君から何かありますか」

「ドローンの事から10機ぐらいは潰すかもしれませんが、あと30回は魔剣生産が可能です」

「今の方が正しい敬語ですよ」

「いやっすね。この口調こそが日本伝統の相撲語っすよ」

「一応意図していたのかね」

「いや~敬語って難しくて」


苦笑がもれる。


「護身用の武器なんかにも刻めるっすよ。来栖さん、若宮さんが使うようなトンファーにも、瀬戸口さんが使うような砂鉄グローブにも可能っす。もちろん腕力の低い者が扱うようなスタンガンでも可能っす。後はグレネードでも大丈夫とは思うっす」

奄美の具体的な提案に、速水は素早く計算した。

(トンファー、スタンガン、グレネードが15個、30回だから15回か、だけどそれなら、迷うがまずは)

「その提案は受け入れるよ。もしこれらの紋章学の紋章を刻む代金はどれくらいかわかるかい」

「バッチっす。安い物を日本円で100万位っす。基本的に魔法の品は高価っすから」

「それなら衣類などは」

「あっそっちすか、そっちの方は大体、うーん。武器よりは安いっす需要がないっすから10万位っすかね」

「武器が100万、衣類が10万、靴は」

「靴っすか、これは軍用とか色々と有るすけど、まだ試したことがないっす」

「そうですか。うーん。まさか試してたことがないとは」

「1年間忙し過ぎてとても民間人相手の商売なんて言えませんから」

「なら護身用の武器のトンファーを頼みます」

「ウッス了解っす。ただなんというか」

「全員分が良かったのですか」

「いえ、簡単に言うと魔剣を一つ作りましたよね」

「いつもと違った?」

「ええ。なんというか、いつもより付加かかかり、製作された魔剣の魔法効果の分類の性能が一ランク上がっていました。いえ、気のせいかもしれないのですが、もしかしたら」

「付加が大きくなり、一部の性能が上がった?」

「そうっす。魔剣の威力も随分となんというか、気のせいの分類ですけど、1ランク上でしたし」

「過信しない方がいい?」

「いえ、むしろ使い手その者に負担が強くかかり過ぎて失神するかもしれないっす」

「具体的な数字でいえば」

「いつもなら10、こっちでの製作は15、性能に関してはあっちが10、こっちでは魔法性能関係のみ15っす。」

「魔法寄りに強化されたわけか、君のLvUPかな」

「いえ、LvUPって感じじゃないっす」

「では」

「重力が変化した感じっす。飛行機の中でのGとかと同じっす」

「ランダムの可能性は」

「そうっすね。データが足りないっすから」



トンファーの魔剣化を行い、その宿した魔法は単純な威力向上、攻撃の意思を持つ持ち主が目標に当てることで発動するモノ、またアマミの言う日本人の特性の全能力上昇があり、通常のノーマルタイプとは違い性能が格段に上昇していた。

性能が上昇した反面、重量に関しては変化はなく、これはアマミ自身が言う上昇しないからこそ強化された能力という奇妙な変化の一つだ。

また紋章学の刻印は相互に干渉しあうのが基本、中には非干渉の紋章もあるが、基本的には干渉しあう為に、これらの相互作用の法則から、一つの魔剣化には一つの紋章が鉄則だ。複数の紋章は干渉しあうのでどんな問題が出るか誰も知らないからだ。


ドローンを実験体に紋章学の刻印を行い、ソフト面の強化を試すも全てにおいて失敗した。

得られた結論は、紋章学は、ハード専用の魔法工学分野という事だ。


仕事が終わり日給を受け取った奄美は、速水が運転する大型バイクに乗り速水の知り合いのビジネスホテルに向かった。

朝食・夕食付で5千円とかなりのリーズナブル。

ホテルの前に止まり、降りてから中に入るドア前に立つ。開きかけた時に


「いらっしゃい速水君」


受付の女性、速水を見ると愛嬌よく微笑む。


「あらまあ、速水君の親戚?」

「預かる若者です。口調こそバカっぽいですけど、優れた研究者ですよ」

「そうなのね。ホテルタンデムにようこそ。オーナーのミアキ・カデンツァよ」

「奄美信雪っす。よろしく頼むっす」

「本当にバカっぽい口調ね」

「敬語が苦手だからこの口調だそうです」

「日本語は難しいっす」


これに速水とカデンツァは噴き出す。


「まあひとまず一週間ぐらい部屋を借ります」

「まいどありがとう」


速水が手続きを行い、奄美はその作業をじっくりと観察し、今後に生かす為に覚えた。

このホテルは英語に韓国語に中国語の三種類が追加されていた。

ホテルのシステムは、古風に見えて、かなり高度のシステムを採用していることはすぐわかる。

出なければホテルの受付から出入り口のスモークのドア、このドアの開く前に速水は判別できないからだ。


「手続きは覚えましたね」

「うっす。日本語なら完璧っす。ただセキュリティがちょっときついっす」

「ミアキ?」

「単なる学生じゃないのね」

「ミアキ、何を」

「簡単な登録よ。別に害はないわ」

「そうっすね。害はないっすけど、電子音が好きになれないっす」

「時々いるのよ耳のよい人が」

「ああ。可聴域外を聞こえる人の事ですか、中々珍しい特技ですね」

「そんなレベルじゃないの、結構きついのよ。セキュリティ上必要だけど、例えるのならそうねファミコンの電子音をかなりの数を揃えるような音ね。警備会社もそんな事を言って注意したけど、苦情が結構くるので変更しようと思うわ」

「ああ。終わったっす。やたらと電子音がひたすら続くのはきついっすね」

「ごめんね奄美君。画像パターンやらなんやらが必要なのよ」

「うっす。この後は夕食を食べてお休みっすね」

「まだ夕方よ?」

「何言ってんすか、日暮れと共に寝るのが当たり前っすよ」

「どういう農村出身者?」

「色々と有るので突っ込まないでください」

「了解了解

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