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ヤンデレと私3

喉も十分潤ったし美味しいサンドイッチで腹ごしらえも済んだ。

話を聞いてもらうのは今しかない。


ナプキンで口元を拭いテーブルへと戻して真っ直ぐ彼を見て話を切り出した。


「実は守様にお願いがございますの。聞いて頂けますか?」

「もちろん構わないけど‥楽しい話ではなさそうだね。」


私の表情から何かを感じ取ったのか笑みを消して真剣な面持ちで頷いてくれたので今から作戦(説得)を実行したいと思います!


「実は、婚約を解消してほしいのです。」


よし、言った。言っちゃいました!


「それは‥ずいぶん穏やかな話ではないね。急にどうしたの?」


まさか私の方から解消してほしいなどと言われるとは思わなかっただろう。

が、特別驚いたり怒ったりせず逆に唇に弧を描き私に尋ねた。

なんだかこの調子だったらあっさり婚約を解消出来そうだ。

私は心の中で万歳をしつつ数秒で考えた言い訳を口にした。


「13歳の私は貴方の婚約者に選ばれて舞い上がってしました。お側を離れたくなくて駄々をこねて半年間も日本に帰国しなかった位嬉しかったのです。ですが最近ふ、と思ったのです。

私達はまだ、15歳。これからもっと色々な経験や出会いをすることでしょう。

守様はとても魅力的ですもの、学園にはいれば私なんかよりも貴方に相応しい素敵な女性と恋に落ちるかもしれませんわ。

私も身の丈にあった男性に巡り合うかもしれません‥なので婚約解消しましょう!あっ、ついでに私なんかと同じ学校に通うのお嫌でしょうから学校変えようと思います。」



言い切った!

息継ぎなしで噛むことなく言いましたよ兵長!って兵長って誰だよ。


脳内ツッコミはおいといて。

きっと彼は了承してくれるはずだ、だって私のこと嫌いだもんね!


ワクワクと、期待に目を輝かせながら相手の様子を伺っていると彼は困ったというように眉根をハの字にさせ顎に手を当てて私を見た。


「色々言いたいことはあるけど‥とりあえず適当に潰しておくか。」


ん?なんか今潰すって聞こえたような。

気の所為だろうか、心なしか彼の背後に黒くて禍々しいものが見えるような?

幻覚かと思い目を擦って再び彼に視線を向けたがそこにはただ笑う美少年しかいない。

どうやらやっぱり幻覚だったようだ。


「ねえ、瑠璃香ちゃん。学校を変えたいと言っていたけどまずそれは普通に考えて無理だよ。」

「えっ、何故ですか!?」


両親にならともかく何故彼が無理だと言うのか驚いて声が裏返る。

彼はやれやれと、頭を降りため息を吐いて足を組んで理由は二つあるよ、と教えてくれた。


「一つ目は入学金や設備費などの支払いを既に済ませてあるということ。」

「嘘っ、もう!?」

「それだけじゃない、君のご両親は多額の寄付金を学園に送ったそうだけど‥君はそれでも学校を変えたいの?」



えええー、入学金って入学してから支払うものじゃなかったっけ?

違ったのか。私が高校に入る前のことなどだいぶ昔のことだからすっかり忘れてしまっていた。

入学金はまだいいとして寄付金ってなんてものもあったか、びっくりです。


「あの、ちなみに私の両親はどの位支払ったのでしょう?」


流石にそこまでは知らないだろうと思ったが

彼は呆れた顔で即答してくれました。


「確か2億と聞いているよ。」

「にっっ?!」


悲鳴を上げそうになるのを両手でなんとか押さえた。

2億?娘の学校に2億も寄付するってどうなの、この世界では常識なの?

そりゃ2億も寄付してれば学校もよっぽどのことがないかぎり瑠璃香がワガママ言っても何しても強く言えないね!虐めなんて酷いことしても黙認されちゃうんだね、ふざけすぎてるわ!

でもそんな大金を既に学校に渡してしまっていては‥



「無理ですわ‥。」


うん、いくら娘を溺愛していても払ったお金が戻ってこない以上ドブにお金を捨てるような真似は両親は絶対に許してくれないだろう。

いや、学校を変えることは出来なくてもせめて婚約だけでも取りやめれば!縋るように顔を上げた。

が、目の前に座っていたはずの彼は居らずどこに行ったのかと周りをキョロキョロ見回して右横を見やれば彼が私のすぐ隣に移動して座っていた。


いつの間に移動したのですか、貴方は影を薄くすることが出来るのですか。

あっもしかして忍者の末裔か!?

知らなかったってばよ。


身体が密着している距離に慌てて離れようと身体を浮かそうとするのと同時に彼はソファの背凭れに両手で私の身体を挟むようにして押し付けた。

壁ドンならぬソファドンされた私は魂が抜けたかのように口を開けて放心状態になってしまった。


「あと婚約を解消したいって言ってたけど、君の方から取りやめたいと言えばこの家どうなると思う?」


彼はさっきまでの笑みが嘘のように無表情で尋ねてきた。

再び恐怖心からなんとか放心状態から抜け出し質問の答えを考えるため頭を回転させたが特に思い浮かばなかったので首を傾げ分からない、の意を示す。


「僕と君の家柄を比べると、こう言ってはなんだけど僕の家柄の方が格上だよね。それなのに格下の君の方から婚約を断るなんて‥僕は恥をかいてしまうことになる。対面を気にしている父達は怒って君と家族に何をするか分からないんだけど、それでもいいの?」


淡々と言葉を並べる彼はまるで機械人形のようで息をのんだ。

しかし彼の言葉を理解した瞬間ヘドバンかと思われる程左右に首を振った。


つまり彼は『格下の分際で婚約破棄とはいい度胸してんなぁ、面子潰された代わりにお前の一族ぶっ潰してやんよ!』


って事を言いたいのだろう。

私だけなら殺される以外何をされてもいいが親に迷惑をかける訳にはいかない、絶対に。


「申し訳ありません、私がどうかしていました!婚約解消しません!」

「そう。良かったよ、考えを改めてくれて。瑠璃香ちゃんはいい子だね。」

「ひぇっ?!」


慌てて言葉を訂正すると彼は機嫌が直った様子でいい子と呟きながら私の唇を指でなぞり始めた。

何が楽しいのか分からないが唇をなぞったりつつくのやめてください、背中がゾクゾクするから!

別に快感でそうなる訳ではなくくすぐったくてなるだけですから、別に変態じゃありませんから!




結局私は学校を変えることも、婚約も解消出来ないらしい。

ゲーム通りにシナリオをなぞるしかないようだ。


切り替えろ、瑠璃香。

こうなったら全力でヤンデレルートを阻止して真っ当にヒロインとくっついてもらうしか私が生き残る道はない。


未だ私の唇を弄っている手を両手で離し、今度は作った笑顔ではなく挑戦的な目で、口角を上げて微笑んだ。


「婚約は解消しません。ですが婚約者という関係の前に私と友達‥いえ、親友になってください。もし心から愛する女性と出逢ったら教えて下さいませ。親友として誠心誠意、心を込めて微力ながら恋が成就するよう助太刀致します!」





あれ?私から婚約解消出来なくても雪村守が破棄してくれれば何も問題なかったような?















次回はヤンデレさん視点になります。

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