静かなる秋
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老婆が縁側で湯呑茶碗を持ちながら、
座っている。秋トンボが空を舞い
夕暮れが近づいている。老婆の家の周りには
収穫が終わった田んぼ、
たくさん実った柿の木、遠くに人里が見える。
老婆の家の庭に兎と狸が来た。この兎と狸は老婆に前から
飯を食べさせてもらっていた。しかし
最近は飯が置いてない。老婆は最近、元気がないのだ、
というより弱っているのが見てとれる。
そんな老婆を元気づけようと兎は笛を取り出し器用に吹いて見せる。兎の笛に
合わせ狸も踊りだす。夕暮れの乾いた空気の中に響く音色と踊り、
老婆はわずかだが口元が笑ったように見えた。それを見て兎は一層強く
笛を吹く、狸も一層強く踊る。
しばらくして老婆は湯呑茶碗を縁側に落としてしまった、
老婆は転がる湯呑茶碗を目で追うことも踊りを見ることも、
もうなかった。
人里と山にはもうじき冬が来る。
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