プロローグ
曇りや雨の多くイライラさせられさらに蒸し暑い季節、普段のように親に遅刻するなどと言われ、しぶしぶ起きパンを食べいつものように学校に通っている高校2年の鈴木一郎。
高校はたかだか2kmほどの距離にあるが、自転車で雨の中合羽を着て雨の降り注ぐ感触と体から吹き出す汗が何とも言えない気持ち悪さを醸し出す。
周りの学生はほとんど傘をさしているが、坂が少しあるとやはり合羽の方が便利だと思い仕方なく合羽を着ている。
学校についても特に話す人もいないので、周りのグループの会話を後目に小説の続きを読んでいる。
6時間の授業が終了すると文化部に入ったものの雰囲気に馴染めずさっさと荷物を纏め家に直行する。
家に帰ると1台しかないネットを親の帰ってくるまで使い、その後また続きの小説を読むこれが1日の生活である。
中学の時はまだ部活をやっており友人も多少いたがそれも過去の話であり、もう周りに誰もいないと疎外感を感じ始めている。しかし小説を読んでいた方が面白いとも思う。
だけどそんな中では当然のように彼女もできずクラスで充実した生活を体現している人を見ると虚しさを感じる今日この頃。
さてそれはともかくこの頃マヤ文明の2012年人類滅亡論が世間を大々的に騒がせている。
それも暦の1つ長期暦が、2012年12月21日から12月23日頃に1つの区切りを迎えるとされることから連想された終末論の1つらしいが、そもそも実際にノストラダムスの大予言が一部当たったことから世の中を戦々恐々とさせているからである。
ただ連日の報道は現実から少し遠ざけているように思える。
それも余談だが家の近くは有名な戦史跡地だが、古い墓や田んぼが周りに見えたりするのみで毎日見ていると有難みが減少していると思う。自身は歴史がそれなりに好きで探せば鉄砲の弾を見つけられるような場所なのに・・・。
ちなみに予言の当たりと言われるのは、1999年に世界にある聖地などの宗教的なものが突如地上から消え、神がこの世から居なくなったと騒がれたからであるみたいだ。
もちろんその時赤ん坊であった自分に全く知る由もなかったが。
そんな感じで日々が流れている。
7月後半となり夏休みに入る。
もちろん休みは嬉しいが勉強どころか宿題すらやる気の出ない自分にはそれほどの価値もないように感じる。
夏休みの始まりは、今年は宿題を真っ先に終わらせふらふらと1人旅をして、何か残るものを作って、さらに勉強に燃えようとも思うが結局1つも目標を実現できない。
これが自分の中の心理だと最近になりようやく理解しだした。
非常に虚しくなる話だが事実であるからどうしようもない。
やはり何かをするには具体的な目標、方針が不可欠である。
何となく日々の流れに身を任せている自分には不可能ではないかと思う。
「宿題終わったー」
と言われると咄嗟に
「もう終わってるよ」
と言いながらほとんど手を付けてなく、危機感を感じさせられるが明日でいいやとすぐに思い直してしまう。
実際今年も8月31日になり慌てて宿題をやる羽目になる。
幸い提出の日は9月3日だったのでぎりぎり間に合った。
しかし宿題を終えると同時に夏休みの終わりを実感し無意味な日々だと思った。
社会人に言わせれば休みがあるだけいい、唯の甘えだと言われそうだが。
さて今年も12月となる。期末テストが始まるが2年の2学期でそろそろ大学に向けて本格化しないといけない所である。
まあ自分には関係ないですという顔をしているが。
しかし今回は少し勉強しようと1週間前に教科書を開く、ただ30分するとテレビの音に気を取られだし、1時間すると小説の続きが気になり、2時間になるとのどが渇きだす。
そしてジュースを飲むとついでに小腹がすきお菓子を食べながら少しテレビを眺める。
すると9時になり今日は金曜ロードショーでなんとルパンの放送ではないかとなる。
これこそまさに負のスパイラル。
そして前日深夜12時、やばいと思い明日の教科の勉強に必死になる。
もちろん結果は言うまでもなく悪いと思う。
しかし意外に平均点くらいでまあ頑張ったなとそれなりに満足してしまい向上心は生まれない。
自分の人生はこの繰り返しだ。
いつから自分は……、中学生……、小学生……、もっと前からなような気もしてくる。
12月23日は大抵そうだが冬休みの始まりである。そういえば天皇誕生日か……、と一応休みをくれる天皇に感謝しておく。
まあ祭日はこじつけの休みも増えてきているが。
天気も良くたまには休みの日も外へ出ようと思うが、実態は本屋に行くだけだ。
さて今日は自転車で走っているとやけに恋人同士が多く感じるが気のせいだと無視する。
本屋に着きようやく今日がクリスマスイブなのだと分かった。
そんなことまるで気にしてなかったので、今更今日は出歩かなければよかったと思う。
特に一度クリスマスイブだと分かると1人身な人もいるはずなのにやけに恋人や家族ずれの人が目立つような気がして無性に寂しさが湧いてきてまぶたを若干湿らせる。
早々に家に帰宅しようとするが、何となくもやもやしておりボッーとしながらゆっくり帰る。
すると前から中学時代の友人とうちのクラスの一番可愛い子が仲良く手をつないで歩いてくるのが見えて咄嗟に顔を隠すようにしてその場から慌てて離れる。
少し離れた位置で振り向いて建物の陰に隠れるようにして、じっーとつい眺めていると田舎であり誰も近くにいないと思ったのかそっとキスをしていた。
密かにに見ていたのも問題だがもううんざりだと思うのは仕方ないだろう。
昔の友人の祝福をすべきだとも1瞬思ったが、最早感情のまま突き動かされる。
ついに唇を歪ませ,顔をくしゃくしゃにさせ涙をポロポロ流しながらすべてを振り切る勢いで家に突っ切った。
家に着くと当然のように両親と妹がいて、家に帰って来ると同時に部屋にダッシュした一郎を心配そうに見てくる。
「はぁー……」
自分は何をやっているのだろうと思い深く溜息を吐いてしまう。
その後妹がそっとドアをノックした後、軽くドアを開け心配そうに覗き込んでくる。
「どうかしたの?」
「いや……、なんでもない」
1瞬妹になら話しても問題ないと考える。
しかし笑い話で済めばいいが無駄に重い話になりそうな気がして仕方ない。
話せば少しは気分が晴れるとも思うがそんなこと人に話すのは情けないだけだと思い直す。
「はぁー」
再度軽くため息を吐くが憂鬱な気分が晴れる気配もない。
「ほんとに! 大丈夫なの?」
見るからに体調の悪そうな雰囲気を出しているのだろうか、かなり強い口調で問いかけてくる。
「ああ……、悪い、ほっといてくれ」
だんだん声が小さくなりかすれてしまう。
不思議と心配されると余計虚しさを覚え、脱力感を感じベッドに入る。
妹は悲しそうな顔をするが大人しく立ち去ってくれる。