2人の笑顔は花のようで
「う~ん。エルくんに会いたいよお~! それで、いっぱいいっぱいお話するの。好きな小説とか、映画とか!」
「そっか。美文ちゃんはエルトが好きなんだね」
「うん! だって、美文にとってカオス・クロニクルはもう一つのリアルで、暁の空は家族なの!」
美文は瞳を輝かせ、再びノートパソコンの画面を見た。
「あれ?」
しかし、すぐに視線を私に戻し問いかけてくる。
「真理奈ちゃん。どうして、エルくんの名前知ってるの? 美文はエルくんとしか言ってないのに……エルくんがエルトだって知ってるなんて……もしかして」
あ。しまった。そういえば、エルくんって呼んでくるのはプンだけだ。
「わかった、真理奈ちゃんは……」
美文の瞳がギラリと光る。まるで、獲物を目の前にした肉食獣のように。
「キラ・ヤマモトだね!」
「ええ?」
なんて勘違い。あれの中身にされるなんて……とんでもない屈辱だ。
「う~ん。まさか、ヤマちゃんが女の子だったとは! 美文は信じられない気持ちでいっぱいです!」
私も信じられない気持でいっぱいだよ、プン。でも、この勘違いぶりはまさしくプンだ。
「あの、違うから……」
「ええええ? 美文の推理は完璧なのに! 大人しく白状しなさい、ヤマちゃん! エルくんの悪口言ってた事は黙ってあげるから!」
ん? 悪口?
「悪口って?」
「『中尉はむっつりで彼女もきっといないから、二次元しか愛せない人種なんだお』って言ってたじゃない、昨日の夜」
ヤマモト……あの野郎……言ってくれるわね。今度、ヒールしないでおこう。
って、昨日の夜って言えば、フランソワーズを貸してた間のことか。……あれから、ルシエドたちに何かされなかったのだろうか?
「反応が期待してたものと違う! ……んー。もしかして、真理奈ちゃん、ヤマちゃんじゃないの?」
「うん。残念ながら」
「ががーん。美文はちょっとショックです……」
美文はがっくりと肩を落とし、ベッドの中にもぐりこんだ。
感情表現の豊かな子だ。なんか、見ていて飽きない。可愛いらしい。
それにしても……こんな近くにいたんだね、プン。なんだか不思議な気持ちだ。ずっと同じ街にいて、同じゲームをプレイしていたんだなんて……近いようで、遠い気がしてたけど、私達の距離はこんなにも近かったんだ。
もっとプンの。ううん、美文のことを、知りたい。……友達になりたいな、リアルのあなたと。ネットだけじゃなくて、リアルでも。
「そうだ!」
「きゃ!?」
急に美文はベッドから飛び起きると、私の腕を取って興奮気味にまくしたてた。
「真理奈ちゃん、お友達になろう! お見舞いのお菓子とかフルーツとか食べ放題させてあげるから、美文とお友達になろう! お願い!!」
私の気持が伝わったのだろうか……美文が眩しいくらいの笑顔で私の手を優しく包み込んでくる。なんだか暖かくて、優しい気持ちになる。
「……あ。ごめんなさい。美文、うざかった? そうだよね。美文なんかと、一緒にいたくなんか、ないよね」
「違うよ! その、嬉しかったから。私、美文ちゃんと友達になりたい」
「本当に、本当?」
「うん」
「ウソ、付いたりしない?」
「付かないよ」
「お菓子は半分残してね?」
「ちゃんと残すから」
「やったあ」
花が咲いた。とってもキレイな、美文の笑顔。病室に飾られた花もかすんで見えるくらいに、生き生きとしていて、とても愛らしい。
「キレイだね。真理奈ちゃんの笑顔」
「え?」
「なんだか、キレイなお花みたいで、美文、真理奈ちゃんの笑顔好きだよ」
いつの間にか、私も笑顔になっていたらしい。美文の笑顔は元気と言うか、パワーをくれる。太陽のように元気な子だ。
「美文さん……」
それから私達は日が暮れるまで互いのことを話し合い、笑い合い、すっかり友達になった。




