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言えない その2

 それから私は美文の着替えに袖を通すと、服が乾くまで321号室に止まることになった。


「ねえねえ、真理奈ちゃんはいくつなの? 美文は17歳だよー」


 突然美文が質問を繰り出してくる。17、か。私と同い年だ。でも、その割に美文は少々子供っぽい気がする。


「私も17だよ。高2なの。渡辺くんとは同じクラスで、席が隣なんだ」


「そうなんだ! 渡辺さんと同じクラスなんだ! ほー。へー。いいなあ。ねね、真理奈ちゃん! 渡辺さんって……普段はどんな男の子なの?」


 着替えを貸してくれた恩義はある。私に答えられることなら、何でも答えてあげよう。それにしても……えらく、渡辺くんを気に入ってるみたいだけど……この子は渡辺くんに気があるのだろうか?


 なんか……何でか解らないけど、ちょっと……嫌な気分だ。


「渡辺くん? うーん。そうだね。一言で言うと……」


「一言で言うと!?」


 美文は身を乗り出して、一言一句逃すまいと耳を傾けてきた。


 あの渡辺くんを一言で表すと……そうだな。


「ヘンな人、かな」


「えー。ヘンなの? 優しそうなのに!」


「美文さんは知らないかもしれないけど、あの子、ヘンな挨拶してくるの。それがちょっと、ね」


「ふうん。そうなんだ。でも、いいなあ。学校で毎日渡辺さんに会えるんだもん。真理奈ちゃんが羨ましい。美文は病気だから……この病院から出れないんだ」


「そう、なんだ……」


 胸の奥にズキリと何かが突き刺さった。もしかしたらこの子、何か重い病気を患っているのかもしれない。


「でもね! 美文は幸せなの! だって、ネットではいっぱい友達がいるから!」


「そっか。この病室、LANが引かれてるんだね。美文さん、SNSでもやってるの?」


 そう質問すると、美文は不敵な笑みを浮べ、ベッドの脇に置いてあったノートパソコンを私の目の前に突き出した。


「ううん。ネトゲだよ! カオス・クロニクルっていうMMO! 真理奈ちゃんは知ってるかな?」


「カオス、クロニクル……?」


 知っている。知っているも何も。私にとって、それはとても深いつながりのあるMMOだ。


「美文はね、ヴァルガスサーバーの暁の空っていうギルドのマスターなんだよ! ていっても、小さなギルドなんだけどね、えへへ」


 今、何て言った。この子、今、何て言った?


 私の疑問をよそに、美文はノートパソコンの画面を覗き込んで、いきなり歓声をあげた。


「あ! 素材売れてる~やったあ! このお金で、新しい装備買えそう!」


 わずかに視界の端に捉えることができた。そこに写っていたのはラグリアの広場。さらに、その中央に表示されているキャラクターは……。


「punpun321っていうんだ! 美文のキャラクター! ねえ、真理奈ちゃんもやってみない? カオス・クロニクル! すっごく楽しいよー」


「あ、ええと……私、パソコン苦手だから」


 信じられない。こんな所で……こんな近くに、プンがいただなんて……。どうしよう?


 私がエルトだと名乗ってみようか?


「それにね! エルくんって言って、とってもかっこよくて、頼りになる男の子もいるんだよ!」


「あ」


 男の子……そうか。私は、エルトは、一度もリアルの自分が女であると、誰にも言っていない。プンを……美文を……ずっと騙していたことになる……のか。


「美文は思うの。もしかしたら、渡辺さんがエルくんじゃないかって……。えへへ。もしそうだったら……運命、だよね。美文のこと、迎えに来てくれた王子様みたいで」


 もしかして、美文も渡辺くんのことを?

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